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CoCシナリオ「時間狂い」

「時間狂い(じかんくるい)」 シナリオ概要ページへ戻る


01:はじめに


このシナリオは「クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPGー」に対応したシナリオです。
舞台は時間が狂った特殊空間に佇む屋敷、推奨人数は3・4人程度。
*推奨技能:<目星><聞き耳><図書館><オカルト><鍵開け>
*使い所のある技能:<芸術(絵画・彫刻)><化学><天文学><戦闘技能>
*深く真実を探求するなら:<他の言語(ギリシャ語)>


●本文の表記について
各単語や文章によっては以下のように括弧表記を使い分けています。
少々の抜けや誤表記があっても各自で対応して頂くようお願いします。
重要アイテムや特記事項などの単語:【】
特筆する文章情報:<>『』
技能や呪文に関する単語:《》
補足説明やPL・KPへの特記事項:()※
NPCの台詞や名前など:「」


 

02:あらすじ


謎の老人からの招待という名の脅しにより、探索者たちは老人邸宅へ訪れることに。
老人の要件は昔住んでいた屋敷から【 赤薔薇の首飾り】を持ってくる事。
期限は約3日間。断ったり逃亡すれば殺されるため、仕方なく探索者たちは屋敷へ向かう。
・・・・・・
ところがいざ屋敷に到着すると、突然の衝撃と同時に外は異次元の世界へと様変わりしていた。
探索者たちは【赤薔薇の首飾り】と【異次元屋敷からの脱出方法】を求め奮闘することとなるだろう。


 

     ( 目 次 )


01:はじめに
02:あらすじ
03:背景
04:導入
05:謎の老人邸宅
06:時間の辺獄へ
07:屋敷1階探索
08:奥の黒い鉄扉
09:屋敷2階探索
10:地下一階の探索
11:地下二階の探索
12:屋敷からの脱出
13:結末の選択
14:クリア報酬
15:NPCステータス一覧
16:その他補足や裏話
17:参考・引用(敬称略)


 

03:背景


●「謎の老人」と舞台背景
「謎の老人」は高位の魔術師であり、魔導書【カルナマゴスの遺言】を研究・理解している。
(「カルナマゴスの遺言」キーパーコンパニオン改訂新版:P12-13参照)
この魔導書はたった数行読むだけでも10年もの歳月が流れたことにされる非情に危険な書物である。
そのため彼は時を止めた世界に魔術工房を転移させた。
結果、塵を踏むもの「クァチル・ウタウス」との契約も成功し、彼は不老不死となる。

しかし時空の辺獄に住まうとされている「クァチル・ウタウス」の召喚によって止めた時間は狂ってしまう。
狂いはおかしな世界と怪物までも生み出し、対処しきれない危険を回避するため彼は世界から脱出した。
脱出は果たしたものの、当初の予定とは違った方法だったため彼は両足を失うほどの瀕死の重傷を負う。
不老不死により生きながらえたものの、彼にはもう昔ほどの力は残っていない。
「あのような危険な場所に行くのはもうコリゴリだ」と思いつつ、それでも一つだけ心残りがあった。
それこそが屋敷に置いてきてしまった【赤薔薇の首飾り】だ。

また、急いで脱出したため屋敷にはまだ魔導書が残っている。
もし彼の不老不死を打ち破るならば、屋敷の地下で魔導書から【禁じられた言葉】を知る必要がある。
ただし、【禁じられた言葉】は知るにも使うにも大きなリスクが伴うだろう。
(※正直デストラップに近いのでお勧めはしません。)


▼老人の目的
一つは【赤薔薇の首飾り】、もう一つは時間狂いの世界から人間が無事に帰れるかの実験である。
彼が依頼する品である【赤薔薇の首飾り】は、遠い昔に彼が亡き妻へ贈り、遺品となった品だ。
首飾りの中には若い頃の老人とその妻の写真が入っている。
写真を見るならば、首飾りの特別な細工を解くために《鍵開け》に成功する必要がある。




●探索者に求められるもの
第一に依頼を達成すること、第二に屋敷からの脱出が目標となる。
とちらも探索者自身の安全を確保するために必要なことだ。
また本シナリオでは、さらなる真実の探求として「魔導書の発見」が用意されている。
しかしこの要素は扱いを間違えれば真っ先にロストへの片道切符と化す。


 

04:導入


●招待状と云う名の脅迫状
ある日の夜、探索者の元へ白い封筒に黒い蝋で封蝋された手紙が届く場面から始まる。
封筒を開くとシンプルだが上質な白い紙に、品の良い文字で以下の様なことが綴られている。

 <招待状>
 『この度、貴方様は名誉ある探索者として選ばれました。
  拒否権はございませんので、どうしても拒否しなければならない場合には死んで頂きます。
  就きましては明日の正午までに、裏面に記載された屋敷までお越しください。
  時間が厳しいようでしたら、お時間に間に合うよう迎えのものを寄越しますのでご安心下さい。』


▼最初の選択
探索者が最後まで読み終わってから、KPは皆に「行きますか?」と聞こう。
探索者が素直に行くことを伝えれば何も起こりはしない。
ただし、「ただの悪戯だ」「行く気になれない」等と行くことを拒否すると、以下の状況に晒される。

 『近くから悲痛な叫び声が聞こえ、探索者は思わず見える場所まで飛び出した。
  するとそこには、四肢を切断され歪んだ表情を浮かべた成人男性の死体があるではないか。』
 死体を目撃した探索者は(1/1d3)のSAN値チェックが発生する。

死体を見た直後、気づくと手には先程まで持っていなかったはずの紙切れが握られている。
紙切れには以下のような文章が書かれている。

 <追伸>
 『無理にでもご都合を合わせて頂かなければ
  それ同じ命運を辿ってもらう他ありませんのであしからず。』


▼迎えのもの
迎えのものを要求するならば早朝に探索者の目の前に現れ、目の前で猫騙しをするように手を叩く。
すると探索者は気絶し、気づけば屋敷に前で倒れているだろう。
迎えに来た者の見た目は、老人邸宅に使える使用人たちと同じ姿である。
彼らは鍵のかけられた屋内だろうと、アルプス山脈の頂上にいようと来てくれるので安心だ。
万が一にでも招待状通りに行かなければ、【13:結末の選択―●結末1】と同じ運命である。


 

05:謎の老人邸宅


●老人邸宅
探索者たちは一緒に来ても、バラバラに来ても構わない。
間に合わない距離の場所にいた探索者ならば、気づいけば屋敷の前に居るだろう。
コレに対して疑問を思ったら(0/1)のSAN値チェックが発生する。

外観は青々と茂る緑の庭園に囲まれた洋風のお屋敷だ。
全員が揃った時点で屋敷の中からメイドが現れ、依頼主である主人の部屋まで案内してくれる。
メイドは白髪に赤い瞳、容貌は整っているがどこか冷たい雰囲気を感じる。
因みに、案内から外れて他の部屋を散策しようとしても、どこの扉を開いても主人の部屋へ繋がる。
この不思議な現象に遭遇した探索者は(0/1)のSAN値チェックが発生する。

招待を受けた探索者たちが全員主人の部屋に揃うと、奥の扉から車椅子の老人が現れる。
「君達には遠いところご足労頂き感謝する。」と、老人は簡単な挨拶を済ませ本題に移る。
「ここへ招待した理由が、ただ会話をするためではないのは分かりきっているだろう。」
「要件は至極単純、私が昔住んでいた屋敷から【赤薔薇の首飾り】を持ってきてもらうことだ。」

▼老人の見た目
老人は車椅子に座っており、見た目はやけに小柄で背骨が曲がったような猫背をしている。
声はひどくしわがれ、灰緑色のローブを深く身に纏っているため顔は見えない。
手は辛うじて見えるものの、枯れ木のように細く生きているのかどうか怪しいほどだ。
謎の老人でなく、名前や在住国を設定したい場合はKPが決めて構わない。
ただし、探索者にそう易易と本名を明かすような人物ではないため、偽りの身分となるだろう。

★「謎の老人」不死の魔術師
STR:3  DEX:3  INT:50
CON:5  POW:50 SIZ:5  APP:3
HP:5   MP:50   回避:6  db:-1d6
――――――――――――――――――――――――――
[装甲]どのダメージも受けるが耐久が1以下になることは決してない。
    また、耐久1になった後1ラウンド後には元の値へ戻る。
[呪文]以下2種類と、KPが望む呪文
*《クァチル・ウタウスの契約》
 この呪文による不老不死は、契約者の能力値が固定化されるようになっている。
 固定された能力値は<STR、CON、SIZ、POW>
 クァチル・ウタウスによってその肉体に固定され、神が望んだ場合以外には決して減少しない。
 また耐久力も絶対に1以下にはならなくなり、通常は元の上限値まで回復する。
*《手足の萎縮》
 1ラウンドかけて10m以内に居る対象とMPを抵抗表に従って戦わせる。
 勝った場合はには対象の手足のうち、呪文の使い手が指定したどれか1本を萎ませ縮ませることが出来る。
 対象は耐久力を(1d8)ポイント失い、CONを3ポイント永久に失う。
 同時に犠牲者と目撃者はそれぞれ(0/1d3)のSAN値チェックが発生する。
 この呪文はコストとして8MPと(1d6)の正気度を消費する。なお老人はコストなしで行える。


▼依頼の説明
探索者が「何故自分たちに行かせるのか?」「自分で行くか使用人に行かせればいいではないか?」
このような問に対しては老人は以下のように答える。
「私自身あまり外を動ける体ではなく、近親者もいない。使用人たちは大切な財産だ。」
「何より古い屋敷故に少々危険なため、素知らぬ他人に取りに行かせたほうが都合が良いのだよ。」

どんな危険があるかは「行ってみれば理解する。」と答える程度である。
【屋敷の間取り図】は渡してもらえる。上手く聞けば少しだけ他のことも聞き出せるかもしれない。
※探索者用の間取り図には【地下への階段】【地下1・2階】【謎の広間】については記述されていない。

 <老人邸宅にいる時点で得られる情報>
 ・頼んだ品を持ってくれば報酬は約束する。
 ・期限は今から3日以内。多少の遅れは許す。
 ・屋敷には窓がなく、入り口も一つのみである。
 ・屋敷への距離は交通機関を使っても半日はかかる。
 ・年季は入っているが、床板が抜けるなどの心配は無い。

あとは老人が探索者が行かなくなるのを危惧して「ただの古い屋敷だ」としか言わない。
並びに、使用人は屋敷について何も知らないため聞いても無駄だ。
粘着的に老人へ質問し続けると「早く行け」と言う意思表示を示すだろう。






●依頼を拒絶する探索者への罰
脅しには屈しないという探索者に対して、老人は変わらず落ち着いた様子で以下の様な事を言う。
「君等には拒否権など存在しない。」
「どこへ逃げようと、どこへ隠れようと、誰かに助けを求めようと、何も意味もなさない。」
「疑うようであれば試してみるといい。死という結果は変わらないがね。」
それでも反発するようであれば、探索者には罰が下される。意外と老人も必死なのかもしれない。

 <罰の効果>
 『老人が反発する探索者へ向けて嗄れた指を向ける。
  指された者は突如として四肢がプレス機に押しつぶされ、捩じくられたように強烈な痛みが襲いだした。
  あまりの痛みと何が起こっているのか分からない恐怖に苛まれながらその人物は床を転げまわるだろう。
  一方で恐怖の元凶であろう老人は、いたって変わらない様子で落ち着きはらっている。』

老人の謎の力により、その探索者の手足が縮みSIZが1ポイント下がる。
同時に、この拷問のようなおぞましい体験により(0/1d10)のSAN値チェックが発生。
さらに、この光景を目撃した他の探索者たちも(0/1d3)のSAN値チェックが発生。
なおこの罰は行く事を決心するまで繰り返される。
例えSAN値が残っても、SIZ0となればその探索者は自動消滅する。
自動消滅まで見てしまった他の探索者たちは(1d3/1d8)のSAN値チェックが発生。

万が一に老人へ攻撃しようとしても使用人が身代わりとなって絶対にダメージは入らない。
使用人はどこからでも湧いて出る。あまりオイタが過ぎる探索者へは勿論上記の罰が与えられるだろう。




●出発前の贈り物
「旦那様よりお客様方への贈り物です。」と使用人から小箱を渡される。
「『屋敷へ行く際は必ず持っていくように』と旦那様からのお達しです」と念を押される。
その場で箱の中身を確認せずとも構わないが、使用人からは箱の中身についての情報は何も得られない。
戻って老人に聞こうとしても使用人が入れてくれない。

 <小箱の中身>
 ・螺旋模様の細工が施された【金の鍵】
 ・中に白くキラキラとした砂が入っているが固まったように動かない【砂時計】
 ・小さな【白紙の紙切れ】
(※この小箱の中身を屋敷へ持って行かないと入ることすらできない。)


 

06:時間の辺獄へ


●屋敷前
周囲に他の民家はない、孤立した場所に静かに佇む屋敷だ。
それほど大きくなく、質素な外観は目的がなければ目にとまることもないだろう。
ぐるりと見渡せば窓はなく、唯一の入り口である両開きの玄関扉には鍵がかかっている。
古い屋敷とのことだが、管理はされているのか傷んでいる様子ではない。

 《目星》に成功すると
 <玄関扉はどことなく普通の扉とは雰囲気が違う>事に気づく。
 《アイデア》に成功すると
 <ここの鍵は執事より渡された小箱に入っている【金の鍵】を使うことで開けられる>事に気づく。

玄関扉に触れるとほんのり冷たい。
この扉は不思議なことに、一見古くて脆そうにも関わらずいかなる《鍵開け》も《攻撃》も通じない。
もし探索者が鍵開けをしたならば自動失敗。呪文を使っても開くことはない。
物理的な攻撃を加えたとしたならば、攻撃した者は謎の力により強く弾かれて(1d3)のダメージ。
更に不可思議な力の存在を感じた事による(0/1)のSAN値チェックが発生する。

【金の鍵】を使い扉を開けば、内部は明かりがないため真っ暗だ。
移動前の屋敷内部はどこも鍵がかかっており、玄関扉と同様の攻撃反射効果がある。
《鍵開け》でも【金の鍵】でも開かない。


 <※KP情報※>
 全員が入った時点で屋敷は空間移動し、探索者たちは異世界へ飛ばされる。
 この場合の全員とは老人邸宅に招待された探索者たちであり、それ以外のNPC等は除外される。
 部外者には屋敷内・外どちらに居ても、一瞬の瞬き後に視界から探索者たちが消えたように見えるだろう。
 また、この時点の屋敷内は探索者に渡された間取り図通りで、絵画や像も存在していない。
 同時に、探し物も絶対に見つからないため、時間を無駄に浪費するだけとなる。
 KPは全員が家に入るよう誘導する必要があるだろう。




●時間狂いの世界
 <※KP情報※>
 KPは事前に【金の鍵】はどうしたか、扉は閉じてしまうのか聞いておくといいだろう。
 【金の鍵】は地下二階へ向かう際に必要となり、玄関扉は結末に記載された脱出法にも関わる。
 更に玄関扉は空間移動時に開けっ放しにすると吹き飛び、自動で外の世界を見ることになる。


探索者全員が屋敷に入ると、床が大きく波打ち全身へ空気が粘るような重みを感じ床に伏してしまう。
この時探索者には《幸運》を振ってもらう。
 ・成功→<怪我はない>
 ・失敗→<1点の耐久ダメージ>
粘り気のある重みは直ぐに無くなり、再び立ち上がれるようになるだろう。


▼屋敷外の世界
玄関扉が吹き飛んだ、或いは外を見に行ったならば、以下の様な外の世界を目撃する。
 『扉の外はつい先程まで見ていた景色は見る影もない。
  そこは背の高い草に覆われた草原が地平の彼方まで広がっていた。
  天は飲み込まれそうなほど深い青空で視界を満たしている。
  風も吹かず静寂に飲み込まれたこの世界の視界は清々しいほどに明るい。
  ところが、ぐるりと見渡した空にはどこにも太陽がなかった。』
 『雲ひとつなく澄み渡る真っ青な青空はとても作り物には見えない。
  見上げれども見上げれども太陽も月も星も見つからない。
  見据えども見据えども地上の彼方には草しか見えない。
  耳をすませども声を張り上げようと、全て静寂が飲み込み耳鳴りになりそうだ。』
この異常な空間に放り出された事を知った探索者は(1/1d6)のSAN値チェックが発生する。

 《アイデア》に成功すると以下のことを察する。
 <外の世界を出歩くことはできるが、探索しても何の成果も得られず体力を失うだけだ。>

<※KP情報※>
 外で迷った場合《ナビゲート》に成功しなければ屋敷を見失ってしまう。
 目印が何もない草原から二度と帰って来られないだろう。
 もしも外で迷うような事態に陥ったなら、「時間喰らい」の大群に襲われ死ぬこととなる。
 

▼探索者が確認できるもの
この時点から探索者たちが確認できるものは以下の通り。
・《目星》に成功すると<自分たちの足元から影が消えている>ことに気づく。
・所持している時計は、アナログ時計は針が左右へ狂い動き、デジタル時計はデタラメに変化し続けている。
・【金の鍵】を所持している場合は、鍵が綺麗に真二つに捩じ切れており使い物にはならくなっている。
・小箱の中に入っていた【白紙の紙切れ】に文字が浮かび上がっている。小さな紙なので短い文章だ。
  <白紙の紙切れに浮かんだ文章>
  『コレを読んでいるということは、君たちは“時間狂いの世界”に移動できた事だろう。
   先ずは頼んだ品と【金色の腕輪】を探してくれ。運が良ければ屋敷にあるはずだ。』

 <※KP情報※>
 影が消えているのは、元の世界へ戻れるよう命綱の代わりとして使われているためだ。
 完全に失ったのではなく、目に見えないほど細く引き延ばされ次元の狭間に隠れている。
 元の世界では影の命綱を謎の老人が握っており、紙を通じて一方通行の伝言を送っている。
 この後の行動によっては探索者の影が戻ってくるが、それは偽物である。
 【金の鍵】については、より深い真実を知ろうとする際に必要となる。(詳細は地下1階にて)


 

07:屋敷1階探索



 
左:PL視点 右:KP視点


●1階廊下
屋敷内は全体的に埃っぽく、所々軋んでいる。
さっきまで灯っていなかった筈の【燭台照明】が廊下や階段を赤々と照らし、屋内の様子を教えてくれた。
廊下の左右の壁には計4箇所に【絵画】が飾られている。
扉は右手側に2つ、左手側に1つあり、入って直ぐ右には2階へ上がる階段が伸びている。
全ての扉に鍵穴がついているが、鍵はかかっていないようだ。
更に奥の突き当りには両開きの鉄扉らしきものが見え、見取り図には書かれていない扉だった。

 《アイデア》成功で<燭台が灯る前には、絵画も一番奥の鉄扉は無かったハズだ>と気づく。
 【絵画】に《芸術(絵画)》で成功すると
 <それぞれ春・夏・秋・冬を象徴した子供の絵が描かれた絵画>だと分かる。


▼燭台照明
蝋燭の火は激しく揺らめいているものもあれば、ゆっくり動いている火や全く動いていない火もある。
 《目星》で成功で公開される<燭台照明の各効果>
 *火が激しく揺らめいている:15分程度しか保たないが、明かりや火としての効果は高い。
 *火がゆっくりと揺らいでいる:1時間は保つが、明かりや火としての効果は若干弱い。
 *火が全く動いていない:弱い明かりは保ち続けるが、火としての効果はない。

 <※KP情報※>
 この照明は1F廊下のみに存在する。 燭台照明は耐久3点。
 数の指定はなく、KPは質問されたら適当に数を決定できる。
 取り外して持ち運ぶことが可能だが、 探索者が手にとった時点で燭台の時間は動き出す。
 壁に設置された状態ならば同じ時間を繰り返しているので時間制限はない。




★徘徊するもの(※KP選択イベント)
一階廊下には時折、人の形をした人外が徘徊している。探索中に不意に遭遇する危険がある存在だ。
これは屋敷に巣くう化け物によって精神を全て貪られ、発狂死した過去の犠牲者である。
化け物の名は「影追虫」。餌を求めて死体に入り込み、屋敷周辺を動きまわる習性をもつ。
こうしたいくつもの死体は、再奥の扉の向こうにある謎の広間をよく探すと見つけることが出来る。
死体はこの異次元のせいか、腐敗すること無く肉体を保っている。
特徴として、耳と唇は失った状態の死体が多い。

遭遇するきっかけは、一階の部屋を探索後、廊下へ出ようとする際に起こる。
廊下へ戻る場合は《聞き耳》を行う。
*《聞き耳》成功
「ぺたり ざり ぺたり ざり ざり」
 不規則な足音なのか這いずっているのか分からない音が聞こえる。
 暫くすると通り過ぎ、どこかの扉を開け閉めした音とともに無音に戻る。
 間を空けずに廊下へ出れば、失敗した時と同様に対面することになる。

*《聞き耳》失敗
 徘徊するものに気付くことができない。そのまま出れば遭遇することとなる。
『廊下へ出ると、人らしきものが後ろを向いている。
 そいつは音に気づくと、首から不快な軋みを響かせながら頭を真後ろへ回転させた。
 瞳は濁り瞳孔の代わりに赤い斑点が浮きでていた。
 生を感じさせない顔には唇と耳がなくむき出しの傷口が生々しく残っている。
 隠すものがない歯の間には黒茶けた粘液が糸を引き、壊れたくるみ割り人形のように顎を落としていた。』
人間だったものを目撃した探索者は(1/1d8)のSANチェックが発生する。


▼徘徊者との戦闘ラウンド
この人型影追虫が正気を保つ人間を見つけると組み付いて、耳か口に貪るかのごとく食いついてくる。
食いつかれた犠牲者は、影追虫に強制的に寄生されてしまう。
影追虫が宿主を移動した時点で、徘徊者は物言わぬただの死体に戻る。
徘徊者と遭遇せず、ただ死体を見ただけでも探索者は(0/1d3)のSANチェックが発生する。
或いは、徘徊者を耐久ゼロ以下にすれば死体は崩れて消えるのでSANチェックは発生しない。

 <影寄生の効果>
 『突然かぶり付かれた穴にズルリと冷たく細長い何かを突っ込まれたような感覚が襲った。
  ところが耳を離し確認すると怪我も何もない。
  残っているのは背筋を逆なでするような気持ち悪さだ。』
 この気味の悪い体験に遭遇した探索者は(0/1d3)のSAN値チェックが発生する。

 <※KP情報※>
 これは鉄扉の聞き耳トラップと同じ現象である。よって寄生されると探索者に影が戻っている。
 (詳細は【08:奥の黒い鉄扉―◎1人でも扉に《聞き耳》をした場合の追加イベント】参照)


★「人型影追虫」徘徊する者
STR:15  DEX:7   INT:16
CON:5  POW:14  SIZ:13
HP:9   SAN:0  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]《組み付き 50%》:ダメージは入らず、対象の行動を抑制する目的。
    《影寄生 90%》 組み付き後のみに行う。詳細は「影追虫」のステータスに記載。
[正気度喪失]目撃した場合(1/1d8)
*INTやPOWは影追虫に依存する。
*回避や受け流しは行わない。
*影寄生は組み付きに成功した次ラウンドにしか行えない。
 影寄生をし終わるか、耐久を0以下にすれば元の死体に戻る。
*影追虫に操られているため、限界ギリギリまで体を酷使されている。
 そのため脆く、耐久を0以下にすると崩れ落ちる。




+++++   左手側   +++++
●居間(左手の扉)
絨毯敷きの床、大きめのソファやテーブル、小ぶりなタンスが並べられている。
奥にはまだ部屋があるのが見えるだろう。
 《目星》に成功すれば、<タンスの引き出しから【救急箱】を発見する>
 【救急箱】は《治癒技能》に[+20%補正]が付与される。



●食堂(居間から繋がる場所)
白いテーブルクロスが引かれた長机に数脚の椅子が並べられており、更に奥へと続く扉が見える。
 《目星》に成功すると<テーブルクロスの端に【黒い粘液】のような物が付着している>事に気づく。
 【黒い粘液】に対して《化学》で成功すると<石油と似た臭いがし、可燃性がありそうだ>と分かる。

実際に燃えるか試してみたならば、燃え広がらないかの《幸運》ロールを行う。
成功すれば燃焼途中で時間が止まって火の広がりは抑えられる。
失敗すれば食堂に入る探索者は火に囲まれてしまう。
屋敷全体が燃えることはないが、火傷の危険はあるだろう。

 <※KP情報>
 この黒い粘液は「時間喰らい」という化け物の体液である。
 キッチンで物音がするのはこの怪物が移動したためだ。また探索者は浴室で強制的に遭遇することとなる。
 他にも家の中に何匹か忍びこんでおり、天井の隙間などへ潜み時折不審な物音が聞こえるかもしれない
 もし探索者がファンブルでも出そうものなら新たに「時間喰らい」を出現させてもかまわない。
 また「時間食らい」はその名の通り時間を食す。対象は生物の年齢だ。
 キッチンでは年齢を絞り尽くされ、胎児まで退行して死亡した犠牲者を発見することが出来る。



●キッチン(食堂のドアの先)
 入る前に扉越しに《聞き耳》を行うと
 <ガシャンと陶器が割れた音が聞こえ、次いでガタガタとぶつかったような物音がした>のを聞き取る。
中へ入れば何も居らず、整然と食器類が並べられた棚や調理器具・調理台が設置されている。
調理台を調べると、フライパンやボウルと言った調理器具、棚には小麦粉や調味料、酒瓶等が置いてある。
食器棚にはスプーンやフォーク、皿やコップのような食器類が並べられている。

よく調べれば食器が数枚落ちて割れており、真上の天井には隙間が出来ているのがわかる。
のぞき込んでも何かと遭遇するわけでもなく、人が入れそうにない1階と2階の隙間をみれるだけだ。

 天井へ《目星》で<天井の隙間の縁に、黒い粘液がついている>とわかる。
 更に《アイデア》に成功すれば<この部屋に入る前に何かが天井裏へ逃げ込んだかのようだ>と感じる。

 割れた食器付近へ《目星》したならば<干からび黒く変色したらしき親指大の固まり>を見つける。
 固まりに対し《医学》に成功すると
 <まるで生物の胚の死骸だと感じ、よく見れば人間の胎児である>と分かってしまう。
 へその緒もない、奇妙な胎児の死骸に気づいてしまった探索者は(0/1D3)のSANチェックが発生する。





+++++   右手側   +++++
●使用人部屋(右手手前の扉)
部屋には机、クローゼット、二段ベッドが置いてある。
机には筆記具やいくつかの料理本等が置かれているようだ。


▼机から見つかるもの
机に対して《目星》に成功すると<日記帳らしきもの>が置いてあるのに気づく。
 <使用人の手記1>
『旦那様は無事に元の世界に戻られたのだろうか。
 私があの化け物どもを引きつけている間に逃げて貰ったが心配だ。
 いや、今は自分の心配をすべきだろう。
 私はこの世界に取り残され、死を覚悟はしたがまだ諦めはついていない。』
『化け物どもはいくら殺しても湧いて出るため非常に厄介だ。
 特に黒い影のような害虫は火に弱いようだが、いかんせん数が多い。
 今後のためにも何かしら対策を立てねばなるまいだろう。』


▼クローゼットから見つかるもの
クローゼットには老人邸宅で見かけた使用人たちと同じ服が掛けられている。
《目星》に成功すると<服のポケットに詰め込まれた紙>を見つける。
どうやら日記帳から千切り取られた紙のようだ。

 <使用人の手記2>
『私も何日も風呂に入っていないため言えたものではないが、白い奴は臭くて困る。
 そもそも私が臭うのもあの白いぶよぶよのせいなのだから、やはりすべて奴が原因だ。
 いっそ屋敷ごと焼き払いたい所だが、旦那様と奥様の大切な思い出ごと焼却するわけにはいかない。
 …………
 私は何を考えているのだろう、もう旦那様がここへ戻ってくるはずなどないのに。
 もう守る必要などないのに、それでもこの恩義を貫きたいと思うのは、私が狂ってきた証拠だろうか。』


▼二段ベッドから見つかるもの
二段ベッドの一段目は寝具として使用されていた痕跡がある。
二段目は整頓された本がに積み重ねて置かれている。
これらの本へ《目星》を行うと、紙切れが挟まれた本を見つけることが出来る。
紙切れだけを抜いたならば、日記帳と同じ紙だとわかり、次のことが記されている。

 <使用人の手記3>
『旦那様から伝言が届いた。今脱出の準備を整えているとのことだ。
 私は見捨てられたのではなかったのだ!
 旦那様の準備が整うまで、なんとしても生き抜いてみせよう。
 幸いにも食料は腐敗もせず、時には時間が巻き戻ったかのように備蓄が戻っている。
 狂った世界の不幸中の幸いだ。今は伝言の指示を遂行しよう。
 とはいえ私も旦那様の弟子の端くれ、少しでも負担を減らすべく自力で帰る方法も探らなければ。』


◇トリモチチャンス
紙切れが挟まれた本の表紙をみたならば、【パンの化学】という料理本だとわかる。
既に紙切れを抜き取ってしまったならばどのページに挟まれていたのか分からなくなってしまうだろう。
開いてみたなら、紙切れは次の内容が記載されたページに挟まれていたことがわかる。

 <紙切れが挟まっていたページ内容>
『パン生地を作る際に小麦粉と水を合わせて練るとグルテンが形成されます。
 このグルテンは強い粘性を持つタンパク質の塊であり、これがパンのモッチリ感へと繋がります。
 また、パン生地を水で洗うとネバネバしたグルテンだけが残ります。』

 <※KP情報※>
 このグルテンの知識は、脱出に絶対に必要というわけではない。
 「影追虫」という寄生体を安全に取り除く際にトリモチが必要となるため、代用品を示唆する情報だ。
 トリモチについては、2F書斎に情報が用意されている。
 なお、寄生体を取り除くだけならば、使用人の日記の通りダメージ覚悟で火を使えば可能である。
 もしグルテン情報を逃してしまったならば、以下の手順を踏めば情報を開示して構わない
 1)小麦粉と浴槽の水を発見する
 2)《製作(料理)》か《化学》に成功する。




●トイレ・浴室(右手奥の扉)
入る前に《聞き耳》で成功すると<微かに水音のようなものが聞こえる。>
扉を開けば、ユニット式の浴室とトイレが設置されている水場だ。
入室後は直ぐに酷い臭いが探索者を襲うだろう。

天井をみたならば<天井に隙間があり、黒い粘液がついている>事に気づく。
浴槽には存外と綺麗な水が貯められたままだ。
トイレには濁った白い泡のような液体が溜まっている。

 《アイデア》に成功すると
 <普通ならば蒸発して水はなくなるが、ここは普通の世界ではないためそのままのようだ>と察する。
 部屋に対して《目星》を行うと
 <浴室は見取り図や屋敷の間取りを考えるとやや狭い>と気づく。
 トイレの泡へ《アイデア》か《目星》をすると
 <白い泡かと思えたそれは、何かの卵のようだ>と感じる。

 <※KP情報※>
 浴室にいるのはこの卵の生みの親である「時間喰らい」だ。
 軽く調べた直後、卵を見に来た親と探索者は遭遇することとなる。
 この段階で卵が孵化することはないが、探索者が化け物を倒さずに放置すれば孵化するかもしれない。
 後から抜け殻の卵に気づかせれば、化け物が増えたかもしれないと焦燥感を煽れるだろう。



★「時間喰らい」との遭遇
どこかに技能ロールを行った後、探索者には《聞き耳》をして貰う。
 ・《聞き耳》に成功
  <上からぬちっとした濡れたよう音と一緒に「カチ…カチカチ…」という音が聞こえる。>
 ・《聞き耳》に失敗
  化け物が天井から飛びつき、対象1体(特に年長者)の頭部へ《噛み付き》が自動成功する。

何かと思った探索者は天井を見るだろう。すると天井には――

『マンホールほど大きさはのそれは、どうやって天井に張り付いているのだろうか。
 生白くぬらぬらとした光沢に、液体が流動するようボコボコとした表面をもった体。
 その体から大小幾つも赤子のような手足を生やしていた。
 口は黒い唾液をヌチャヌチャとさせながら、人間のような歯を剥き出しにしてカチカチと鳴らしている。
 歯の奥からはムカデのような舌を覗かせ、うぞうぞと這うように舌なめずりをする。
 天井に張り付いたまま、目玉があるのか分からない眼孔で探索者達を見下ろす化け物がそこにいた。』

SANチェックは後に回し、《聞き耳》に失敗した者がいればその状況を描写する。)

『頭部への鈍い痛みと共に、ネチャネチャとした唾液が腐った油のようなを異臭と共に絡みついてくる。
 気持ち悪さに振り払おうにも、突如として力が抜けてしまい、もがくことすら叶わない。
 身の毛もよだつ嫌悪感と何も出来ない焦燥感に駆られながら、何かが抜かれる恐怖が体を支配した。』

冒涜的な化け物を目撃した探索者たちは(0/1d6)のSAN値チェックが発生する。
更に噛みつかれてしまった探索者は(2/1d6+1)のSAN値チェックが追加で発生する。
なお、噛み付かれた探索者はこの化け物を誰かに倒してもらうまで動けなくなる。

以降は「時間喰らい」との戦闘ラウンドとなる。
逃走する場合は犠牲となった探索者を置いていけば一時的に難を逃れる。
助けるならば「時間喰らい」を耐久ゼロ以下にして引き剥がさなければならない。


★「時間喰らい」時を貪る胎児
STR:10  DEX:14  INT:13
CON:15  POW:14  SIZ:3 
HP:9   MP:14   回避:28  db:-1D4
――――――――――――――――――――――――――
[武器]《噛みつき》 60%:ダメージ 1d3 麻痺3d3ラウンド
    《時間喰い》噛みつきが成功した対象とPOW対抗を行い、1ラウンドに5歳の年齢を喰らう。
[装甲]打撃的なダメージは表面の特殊な粘液により最小限のダメージ。
    ただし火には極端に弱く、押し付けるだけで(2d3)のダメージを受ける。
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(0/1d6)、噛みつかれた瞬間(2/1D6+1)の消失
*その場の年齢が最も高い者を優先して狙い、主に頭部へ噛み付く。
*麻痺は(3d3)ラウンド続き、その間は頭に噛み付いたままとなり回避などは行わない。
 麻痺中の犠牲者は思考すること以外の行動が極端に制限される。
*《時間喰い》は噛み付いた対象と[POW対抗]を行う。
 時間喰らいが対抗に勝つと対象から年齢を5歳分吸い取り、退行・若返らせる。
 POW対抗ロールに成功する度、年齢を吸い取られた対象は[1D3]のSAN減少が発生する。
 もし犠牲者が自身の若返りを察してしまったならば、年齢を吸い取られた際のSAN減少は[1D3+1]となる。
*退化した年齢ごとのハンディキャップ(各項は元の値からマイナス)
 ・児童(12歳以下):POW・INT・EDU・APP以外の能力値が-2、身体的技能値が半減する。
 ・幼児(6歳以下):APP以外の能力値が-3、全ての技能値が半減する。
 ・乳児(1歳以下):APP以外の能力値が-5、技能値が全て0になる。
 ・胎児(0歳以下):探索者はゆるやかに死亡する。


▼「時間喰らい」を倒した場合
化け物は幾重も重なったような金切り声をあげ、何かを吐き出した。
手足をばたつかせながら痙攣しつつ息絶えると、死骸はブクブクと音を立てながら泡となって消滅する。
その時の煙は酷い刺激臭を発するだろう。
吐き出した何かを見ると、それは【小さな鍵】だ。
 【小さな鍵】に対して《アイデア》か《鍵開け》に成功すると
 <扉の鍵と言うよりは、引き出しなどの鍵のようだ>とわかる。


 

08:奥の黒い鉄扉


一階廊下の最奥には、真っ黒な金属でできたであろう両開き扉がある。
周りとは随分雰囲気の違う、一言で言えば異質な扉だ。

 扉に対して《目星》をに成功すると
 <玄関扉から感じた雰囲気と似たものを感じる>
 ここで良い出目をだったならば<一瞬だけ表面が蠢いたように見える>
 扉に対して《聞き耳》に成功すると
 <扉の向こうからは微かに金属音が擦れた様な音が聞こえる>

★《聞き耳》トラップ
黒い扉に対して《聞き耳》を行った探索者は、失敗・成功関係なく以下の現象が起こる。
 『突然耳の穴にズルリと冷たく細長い何かを突っ込まれたような感覚が襲った。
  ところが耳を離し確認すると怪我も何もない。
  残っているのは背筋を逆なでするような気持ち悪さだ。』
この気味の悪い体験に遭遇した探索者は(0/1d3)のSAN値チェックが発生する。

 <※KP情報※>
 探索者は《聞き耳》をした時点で「影追虫」に寄生されてしまっている。
 この怪物たちは主に人間の耳や口から入り込み、犠牲者の影に擬態しながら害をなす性質をもつ。
 扉には大量の「影追虫」が擬態をして潜んでおり、獲物を待ちかまえていたのだ。
 化物たちの擬態は黒く塗装されたようにしか見えず、なかなりの目敏さを持っていなければ気づけない。
 対して、弱点である火を擦り付けたならば表面が蠢きただの扉ではないことがわかる。
 ただしあまりやりすぎると「影追虫」の大群がその場で襲いかかってくるので注意。


★寄生された者の状態
扉に《聞き耳》を行った探索者は、不意に自分の足元に違和感を感じて見下ろすと【自分の影】がある。
【自分の影】に対して《目星》で成功
 もしくは<自分たち影が消えている>ことを知っていれば自動成功で以下のことが分かる。
 『自分の影が、自分は動いていないはずなのにもぞもぞと動いてる。
  それは時折プツプツとした細かく赤い目玉の集合体がコチラを見つめていた。』

探索者は自分が得体のしれない何かに寄生されたことに気づくだろう。
この臓腑を掴まれたような気持ち悪さに、寄生された探索者は(1/1d4+1)のSAN値チェックが発生する。
発覚が遅れた場合は、時間経過によって発生する「影追虫」の正気度喪失で寄生を知るだろう。





●謎の広間
扉を開くと部屋の中に照明がないため、他の部屋よりもかなり見え難い。
扉から漏れる光のおかげで、大きな広間だと言うことは分かるだろう。さながら体育館のようだ。
暗いため判りづらいが、4本の黒々とした大きな柱が、先が見えないほど高い天井へと伸びている。

 もし事前に屋敷の外観を確認したか、《アイデア》に成功したならば、
 <屋敷にこのような大きな空間があるスペースなど無いはずだ>と気づく。

 探索者には柱を確認した時点で《目星》を振ってもらう。
 成功、若しくは柱に近づいてみた場合には自動成功で以下のことが分かる。
 <目を凝らすと柱には何やら萎びた茶色い物体が、黒い釘のようなもので打ち付けてある。>
 <それは一箇所どころでなく柱の下から上まで夥しいほど無数に存在していた。>
 見た時点で《アイデア》か《医学》に成功すると
 <その萎びた何かは人間の耳や唇である>とわかる。
 この狂気的な光景に気付いてしまった探索者は(1/1d4+1)のSAN値チェックが発生する。


▼金の腕輪
更に広間の奥へ行くと、大きな柱の裏に<キラリと光るものが高い位置に引っかかっている>と気づける。
《目星》に成功すれば<柱に引っかかっているのは【金の腕輪】である>ことが分かる。
この時KPには(1D6+17)ロールをしてもらう。
SIZ(ロール値)キャラが手を伸ばして届く場所が【金の腕輪】が引っかかっている位置だ。




★「影追虫」との遭遇
もし【金の腕輪】を取ろうとしたならば、柱に手を付いているなら手から、その他は足元から
『ヒトデを幾つもくっつけたような無数の黒い影が探索者を取り囲んでいた。
 プツプツとした赤い目玉の集合体を蠢かせながら探索者たちの元へ群がってくる。』
得体のしれない虫の軍勢に囲まれた探索者たちは(0/1d4)のSAN値チェックが発生する。

KPには(1d6+4)ロールして貰い、出現した「影追虫」の数を決定してもらう。
以降は「影追虫」との戦闘ラウンドとなる。

 <※KP情報※>
 影追虫を全て殺しても、部屋に入る度にKP側が<1d6>ロールをして出現するかの決定を行う。
 ・[1~3]の出目ならば、影追虫は出現しない。
 ・[4~5]の出目ならば、再びKPは(1d6)ロールして「影追虫」を値の数だけ出現させる。
 なお「影追虫」は部屋の奥まで人が入らないと柱から実体化せず、襲うこともない。
 並びに、探索者全員に「影追虫」が各3匹ずつ寄生している場合も出現しない。



★「影追虫」寄生する影
STR:2  DEX:25   INT:16
CON:2  POW:14  SIZ:2
HP:2   MP:14   回避:50  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]《影寄生 70%》:寄生後に時間経過で対象から[1D3]のSAN値を吸い取る。
[装甲]実体化中は通常通りダメージが入る。
    ただし物質への同化中や影寄生中はあらゆる打撃的な攻撃が効かない。
    生物へ同化中であれば、火を押し付けるとダメージが入る(同時に、寄生宿主にも同じダメージ)
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(0/1d4)、初回寄生時に(1/1d4+1)の消失。


▼擬態能力
影追虫は黒い物質であれば何にでも完璧に擬態同化でき、近づいてきた獲物の耳や口から侵入する。
この場合の《影寄生》は自動成功となる。


▼寄生能力
人間一人に対し、3匹まで影追虫は寄生できる。
《影寄生》に成功すると、寄生してから30分~1時間後に宿主の正気度を奪い取る。
寄生1匹ならば[1D3]、2匹目[1D3+1]、3匹目[1D3+2]とSAN減少値は上昇する。
(1匹ごとに時間をずらす必要はなく、複数いるならばまとめて判定して構わない。)
影追虫が対抗に勝つと、宿主はSAN減少し影追虫に吸い取られてしまう。
もし宿主のSAN値がゼロ以下になると、影追虫に完全に乗っ取られて発狂し続けるNPCと化す。
寄生された人間が息絶えれば、影追虫は影から離れて新たな宿主を待ち構える体勢に戻る。


▼影追虫の寄生を除去する
影追虫の耐久をゼロ以下にすれば自然と消滅し、その時間中の寄生によるSAN値減少も無しとなる。
有効な手段として、人間へ寄生虫の影追虫に火を押し付けると焼き殺すことが可能である。
強い火ならば1匹につき(2d3)、弱い火なら1匹に(1d3)でダメージを与えることができる。
ただし宿主も同量のダメージを受け、装甲を無視し、火傷となって症状が現れる。
また、このシナリオでは【トリモチ棒】を使えば宿主にダメージを与えず安全に引き剥がせる。


▼影追虫に【トリモチ棒】を使用した場合。
影に寄生した影追虫なら自動成功で安全に引っぺがし、尚且つ実体化した状態で捕獲できる。
寄生する前の影追虫を攻撃でなく《捕獲》するなら50%の確率かつ、対象の回避を無効化できる。
一番最初に【トリモチ棒】で影追虫を捕獲した探索者に限り(1d3)のSAN値回復が行える。
(※【トリモチ棒】1本につき1匹しか捕獲はできない。)




●【金の腕輪】の入手方法(補足案)
入手する手段とリスクなど
下記の方法以外や組み合わせる場合は、探索者がKPと相談の元で決めていくといいだろう。
これは一つの案として考えてもらい、状況によってはリスクは省いてしまっても構わない。

*探索者同士での肩車
 《下で支えるPCのSTR》と《上に乗るPCのSIZ》で対抗ロールをする。
 通常の肩車ならSIZは(下で支えるPCのSTR)対(上に乗るPCの“半分”のSIZ)
 立ち肩車の場合は、(下で支えるPCのSTR)対(上に乗るPCのSIZ)。
 リスクとして、肩車中は無防備ということになり両者とも「影追虫」に強制的に寄生される。

*椅子や棒を使う
 プラス出来るのはSIZ(1D4)程度だろうが、KPや探索者たちのロールにもよる。
 取ることに集中するためやはり「影追虫」に狙われやすくなるが《回避》が[-10%補正]で可能となる。
 使用人部屋の二段ベッドの梯子を使えば、技能ロールせず目的の高さまで登れる。
 ただし登るPCと支えるPCの《回避》が[-20%補正]される。

*柱を登る
 《登攀》で成功すれば可能だが、「影追虫」が潜む柱にベッタリくっつくため確実に3匹に寄生される。
 《跳躍》の場合は垂直跳びをするため、《跳躍》できる高さは(PCのSIZの半分)程度までだろう。
 柱を使って二段飛びを考えた場合、柱は打ち付けられた釘だらけだということを思い出して欲しい。
 足に釘が刺さり(1d3)のダメージが入って自動失敗だ。
 他の探索者に踏み台になってもらい《跳躍》する場合は《幸運》ロールにも成功してもらう。
 成功すればプラスされるSIZは(3d3)程度。
 土台に乗って《跳躍》する場合も、物によるが不安定な場所での《跳躍》なので[-10%補正]がつく。

*物を当てて落とす
 《拳銃》などで撃ち落とすならば、破損を避けるため精密な射撃を求められ[-10%補正]される。
 失敗をすると【金の腕輪】の耐久1点下げることになる上、落下時に【金の腕輪】が破損する危険がある。
 《投擲》などで軽い物を当てて落とす場合は技能値のマイナスはないが、落下時の破損は同様だ。
 予め腕輪の下にクッションになるものを引いておく場合は、そこに落ちるか《幸運》ロールしてもらう。
 受け止める場合は[DEX×5]に成功する必要がある。

<落下時の【金の腕輪】の破損ダメージ>
この破損は脱出直前のイベントに関係する。
 ・高さSIZ19~21からの落下:3点のダメージ、砂時計を鍵に変形時の時間+3分
 ・高さSIZ22~25からの落下:5点のダメージ、砂時計を鍵に変形時の時間+5分
 (※耐久が1ポイント減る度に+1分の追加だと思って下さい。)



▼【金の腕輪】(耐久8ポイント)
手にとって確認すると、腕輪というよりは首輪のような大きさだ。
側面には細かな彫刻がされている。

 《知識》に成功すると<この細かな彫刻は12星座を表している>ことが分かる。
 《知識》に成功後、《オカルト》に成功すれば
 <12星座の環を表していることから、これが『獣帯』を表している>事がわかる。
 (※《天文学》で成功すると、《知識》《オカルト》の肯定を飛ばして両方の情報が公開される。)

 <獣帯>
『太陽が通る道を黄道といい、黄道を12等分して12の星座が象徴として並んでいる。
 12星座は「牡羊座、牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座、天秤座、蠍座、射手座、山羊座水瓶座魚座」のことだ。
 この中に「獣」が多いことから獣帯(ゾーディアック)と呼ばれ、西洋占星術などで使われている。』


▼伝言の追加
金の腕輪を入手した時点で【白紙の紙切れ】の内容が写り変わる。
 <白紙の紙切れに浮かんだ文章2>
『【金の腕輪】を入手したならば、それを使い【砂時計】にアイオーンの加護を与えよ。
 それが新たな鍵となる。ただし鍵は対をなす扉にしか使えないので注意するように。』


 

09:屋敷2階探索



 
左:PL視点 右:KP視点


●2階への階段と廊下
階段踊り場の壁にも【絵画】が飾られている。
【絵画】に対して《芸術(絵画)》に成功すると<大地の女神を描いた絵画>だと分かる。

2階廊下の突き当りには以下の様な物が設置されている。
・【獅子頭の人間が蛇に巻きつかれ、鍵と杖を手にしている像】
・像の左右に【落葉しきった木と緑に覆われた木】
・像の前に【青い鉱物で出来た球状土台の上に、金色の円盤が固定された祭壇】

 像に対して《オカルト》か《芸術(彫刻)》に成功すると
 <この像はギリシャ神話の“時間の神アイオーン”を象徴している>ことが分かる。
 左右の木々に対して《アイデア》で成功すると
 <これが夏と冬のような対をなすもの>だと分かる。
 祭壇に対して《目星》で成功すると
 <金の円盤の表面上に円状のくぼみ>を見つける。




●客間(階段から見て左手の扉)
簡素なベッド、机と椅子、コートハンガー等が置いてある。
《目星》で成功すると<ベッドと壁の隙間から【千切られた紙切れ】を見つける>
 他にもないか探せば、いくつかの紙片を見つけることが出来る。
 紙切れを全て広い繋げると、使用人の手記の続きだとわかる。
 ところが千切れた紙が揃っていないため、欠けた状態で以下の内容だけ読むことが出来る。

 <使用人の手記4>
『入ることは躊躇われたが、××を探らなくては××××緒(いとぐち)は見つかりそうにない。
 まだあの不吉な×××××こえる。ずっとあそこにいる私を×××××いるのだろうか。
 だが×××××様が必要と考え用意したもの。上手く扱えば、私×××××きれるかもしれない。
 この家を×××とする者には丁度良い相手だろう。』


 <※KP情報※>
 上記の文章全文は以下の通り。
 『入ることは躊躇われたが、原因を探らなくては脱出する緒(いとぐち)は見つかりそうにない。
  まだあの不吉な笑い声が聞こえる。ずっとあそこにいる私を見張っているのだろうか。
  だがあれは旦那様が必要と考え用意したもの。上手く扱えば、私ならば御しきれるかもしれない。
  この家を荒らそうとする者には丁度良い相手だろう。』

 これは屋敷の番人である「星の精」の情報だ。
 地下を守る番人は過去に謎の老人が仕掛けたものであり、そのことについて書かれている。
 後にこの使用人も「星の精」の召還と使役に成功し、2階廊下で行うイベント時に登場する。
 使用人がこのような事をしたのは、主人から指示された内容のためである。
 「今後もし屋敷に訪れる者がいた際に、あまり荒らされぬための仕掛けを施すように」という指示だ。




●妻の部屋(階段から見て右手の扉)
化粧台や姿見の鏡、洒落たベッド、大きなクローゼット、小ぶりなテーブルとソファがある。
置いてある家具から探索者たちはここが女性の部屋であることが分かるだろう。

化粧台を調べると一段だけ鍵のかけられた引き出しがある。
鍵を開けるには【小さな鍵】を使うか、《鍵開け》に成功する必要が出てくる。
引き出しの中には宝石箱が置いてある。
箱を開ければ様々な宝飾品の中に【赤薔薇の首飾り】が収められている。


▼【赤薔薇の首飾り】
首飾りに対して《知識》で成功すると、
 <赤薔薇の花言葉が「愛情」である>ことがわかる。
首飾りに対して《鍵開け》に成功すると、以下の情報がわかる。
『仕掛けが解除され、装飾の赤薔薇が蕾から開花しつつ花の中心が円状に開いていった。
 中にはかなり古そうだが写真が入っている。
 そこには美しい男女が仲睦まじく寄り添って写っていることが分かるだろう。』
若いころの夫婦は美男美女(APP14以上)だが、服装は現代の様式とは到底思えないほど古めかしい。




●書斎(一番奥の扉)
ここは主人の部屋だ。書斎のようで机と幾つも本棚が置かれている。
本は植物図鑑や医学書数学書に民話歴史集など様々な分野の本があるようだ。


▼脱出のための情報
《図書館》に成功すると<本棚から【ギリシャ神話の神々】という本>を見つけ、以下のことを知る。
(この情報は屋敷内全ての【絵画や彫刻】等の情報を得た探索者が《オカルト》に成功しても開示できる。)

 <時間の神アイオーン>
『アイオーンは“時間”や“永遠”を象徴とされ、原初神の1柱であると考えられている。
 文献の少なさ故に謎の多い神であり、一説では世界創造時代に生まれたとされる。
 混沌(カオス)から大地(ガイア)が分化した際に生じた運動変化が時間(アイオーン)だというものだ。』
『アイオーンは冬を象徴する裸の木と夏を象徴する緑の木の間で、獣帯の内側に立っている。
 また彼の前には四季を象った四人の子供と、母なる大地の女神(同時に結婚の女神)が座っている。』
『謎の多い神だが、神々の王ゼウスの戦車を彼が制作したという話がある。
 戦車は金剛不滅のアダマス製であり、東西南北の風神たちの力を利用してあらゆる道を駆け巡ったそうだ。
 アダマスは黄金より更に強力な不滅性を表しており、アイオーンが象徴する“永遠”を強く感じさせる。』

アイオーンについての情報を知った後、《オカルト》に成功すれば以下の情報が分かる。
 <アダマスとは>
『アダマスとはギリシア語で「征服されない力をもつもの」を意味し、日本語では「金剛」と訳される。
 アダマント、ダイヤモンドの語源ともされている。
 現代ではダイヤモンドが最も硬い自然的な鉱石とされている。
 一方アダマントはより詩的な表現の「非常に硬い物質」の意味で用いられている。』


▼手記とトリモチ
主人の部屋で《目星》に成功すると、紙切れが挟まれた本を見つけることが出来る。
紙切れだけを抜いたならば、日記帳と同じ紙だとわかり、次のことが記されている。

 <使用人の手記5>
『流石旦那様と言うべきか、全ての書籍を読み漁ってやっとこの段階まで解くことが出来た。
 あの方に直接の師事を受けた私でなければとても分からなかっただろう。
 あと一歩の段階まで紐解いた私を、あのお方は呆れられるだろうか、それとも叱られるだろうか。
 だがお叱りを受けたとしても、何かに没頭させてほしい。
 待つだけでは気が狂いそうな、生きているのも苦しいこの場所では。』


◇トリモチチャンス
紙切れが挟まれた本の表紙をみたならば、【植物図鑑】の本だとわかる。
既に紙切れを抜き取ってしまったならばどのページに挟まれていたのか分からなくなってしまうだろう。
開いてみたなら、紙切れは次の内容が記載されたページに挟まれていたことがわかる。

 <紙切れが挟まっていたページ内容>
『ヤマグルマ(モチノキ)は適湿な谷間や崖・岩場などに生える常緑木である。
 樹皮からはガム状の粘着性物質が得られ鳥もちの原料としても使われる。
 鳥もちは5~6月中に樹皮を剥ぎ、長期間水に浸したものを臼でついてから流水で洗う。
 これを数回繰り返すと鳥もちが完成する。主に捕鳥、捕虫に用いられた。』

 <※KP情報※>
 使用人の部屋で得られる情報と同じく「影追虫」をキャッチするための【トリモチ棒】の情報である。
 料理本から知れるグルテンがトリモチの代わりにすることが可能だ。
 グルテンを得るための生地の材料、調理器具はキッチンに置いてある。
 完成した【グルテントリモチ】を適当な棒に巻きつければ【トリモチ棒】の完成だ。
 思いついて見つけた棒の数だけ【トリモチ棒】は作成可能だが、1本につき5分以上はかかるだろう。
 (※【トリモチ棒】の性能は棒によるが、麺棒なら小さい棍棒と同じ程度。)




●隠し通路
書斎部屋にて《目星》を行うと<この部屋は屋敷の間取りを考えるとやや狭い>と気づく。
壁に対して《目星》で成功すると<不自然な切れ目>を見つける。
この切れ目部分を軽く押すと壁が一部分だけ回転し、人間一人がやっと通れそうな狭く急な階段が見つかる。
この階段の通路には照明がないため、明かりがなければ転げ落ちかねないほどだ。

もし階段を降りている途中で《目星》をしたならば<今にも破れ崩れそうな走り書きのメモ>を見つける。
メモの字は荒く、紙が崩れているため内容は欠けている。
 <走り書きのメモ>
『何ということだ ×××××んて恐ろしいものを××をしていたんだ
 隙間から光が××××でくる あんなものどうす×××できない
 ふれるべきでは×××た ひらくべきで××××た
 もうここには××場なんてない だが×にはあれを試してみる他×いのだ
 私に残された×はわずかだ 生××待てというのがあのお方の××だ
 私はそ×××らなければ ×××さねば
 あ×××××うとしている××××えるのが×××××』
(この【走り書きのメモ】は読み終わると手から崩れ落ちる。)


 <※KP情報※>
 上記の文章全文は以下の通り。
 『何ということだ あの方はなんて恐ろしいものを研究をしていたんだ
  隙間から光が差し込んでくる あんなものどうすることもできない
  ふれるべきではなかった ひらくべきではなかった
  もうここには逃げ場なんてない だが私にはあれを試してみる他ないのだ
  私に残された命はわずかだ 生きて待てというのがあのお方の指示だ
  私はそれを守らなければ 恩を返さねば
  あの方が成そうとしていることを叶えるのが唯一の使命』

 これは地下最奥にある魔導書「カルナマゴスの遺言」を見てしまった使用人の最後の手記である。
 触れるだけでも危険な魔導書から逃げ出した際に、混乱を落ち着けようと記したのだ。
 劣化しきった紙に無理矢理書いたため、内容は殆ど崩れ落ちている。
 使用人は魔導書の効果で寿命を多く削られ、主人からの助けを待つ時間もなくなってしまった。
 残された選択、主人と同じく魔導書の力で不死になろうと選択した狂気の決意を記している。


 

10:地下一階の探索


長く狭い階段を下って地下に入ると更に梯子が設置されている。
相変わらず部屋は暗くて何も見えないだろう。
ここで《目星》をすると、<梯子の横に固定された小さな燭台立て>があることに気づく。
この小さな燭台に火を灯すと、<部屋の各角に設置された照明が連結して明かりを宿す。>
もし手持ちの照明だけの場合は、目を使うを技能から[-10%補正]がされる。
だが部屋の照明が起動すれば技能値のマイナス補正はなくなる。


●地下一階の書庫
部屋は大きな本棚が壁を覆い尽くすほど並んでおり、更に中心近くに4つの本棚がある。
本棚に囲まれた中央には、大きな書斎机が鎮座している。

▼部屋の構造
 部屋に対して《目星》か《アイデア》で成功すると<この部屋は12角形である>ことに気づく。
 位置関係を把握するのが難しいため、地図を公開すると良いだろう。




▼本棚
本棚はほぼ全て白色だが、一箇所だけ黒い本棚がある。
貯蔵されている本は難解な古代語ばかりで、身になりそうな情報はない。
 本棚に対して《目星》を成功すると
 <本棚には青黒く艶のある背表紙が出っ張っている部分がある>ことに気づける。

 <※KP情報※>
 罠の作動を促すため、あえて<全ての本棚>と表記せず背表紙の出っ張りを示している。
 地下の魔導書の存在を知った時点で、探索者には脱出後にも大きなリスクを背負うこととなる。
 これは罠を作動させやすくすることで、なるべく最奥へ行かないようにするための措置だ。
 PLが確認RPをしたなら、全ての本棚に出っ張りがあることを開示して構わない。
 もし正解以外の本棚の背表紙スイッチを押した場合、罠が作動してしまう(罠の詳細は後述)。


▼書斎机
机上には細かい灰のようなものが散っている。
 書斎机を《目星》で成功すると【塵を被ったメモ】を見つけ、以下の様なことが書かれている。
 <塵を被ったメモ>
 『始まりと終わりを示す時、知識は黒く沈む。
  円環を紡ぎ無限の繰り返しを均衡にせし時、塵は舞い積るだろう。』

 <※KP情報※>
 このメモは使用人が最後の段階まで暗号を解いた名残である。メモの解答は以下の通り。
 ・時計の12時に位置する場所には黒い本棚が置かれている。
 ・円環を紡ぐ無限の繰り返しは「8=∞=無限」
 ・12時から時計回りに数えて「8番目の本棚」を意味する。




●正解の本棚
8番目の本棚の背表紙を奥へ押し込むと、向かい合わせの本棚の中心に【金色の天秤】が出てくる。
この天秤には異次元世界への移動時に【真っ二つになった金の鍵】を乗せて釣り合わせる必要がある。
なお、金の鍵以外では釣り合うことは絶対にない。
天秤を釣り合わせると目の前の本棚が横へスライドし、更なる地下へと続く梯子が見つかる。

梯子を降りる前に《目星》を宣言したならば<スライドした本棚の隙間に紙屑が挟まっている>のに気づく。
引きずられたことで今にも破れそうな紙屑だ。
挟まった状態で分かることは、使用人の手記と同じ紙であること。
慎重に取り出せば辛うじて文章が少し読める。
だが普通に取り出そうとしたならばぼろぼろに崩れ、塵となってしまい読めずに終わってしまう。

 <使用人の手記6>
『おそらくここにあるのは旦×××××××けていた例のものだ。
 ×××××秘密もあれが××××るに違いない。
 しかし×××××示は、あれに誰×××××しろというものだった。
 屋××××は外部に漏らすべきではな×××××えなのだろう。
 ××かかるのは、何故持ち帰る×××××なかったかと言うことだ。
 ×××××重に保管されているならば××××××のはずなのだが。』


 <※KP情報※>
 上記の文章全文は以下の通り。
 『おそらくここにあるのは旦那様が研究し続けていた例のものだ。
  この世界の秘密もあれが握っているに違いない。
  しかし旦那様の指示は、あれに誰も近づけなくしろというものだった。
  屋敷の情報は外部に漏らすべきではないという考えなのだろう。
  気にかかるのは、何故持ち帰る指示はされなかったかと言うことだ。
  あれほど厳重に保管されているならば、大切なもののはずなのだが。』

 なお地下2階の存在を知った時点で、探索者はとんでもない爆弾情報を抱えてしまっている。
 その点にKPは留意しなければならないだろう。



★不正解の罠
間違った本棚を選んだ場合は、屋敷の主人が設置しておいた罠が発動し「星の精」が現れる。
罠作動時には、先ずは探索者に《聞き耳》をして貰う。
・《聞き耳》に成功
 <降りてきた梯子の方から「クスクス」という笑い声が聞こえる。しかし声の主の姿は見えない。>
 成功者は半分の値で《回避》か、声の聞こえた場所に向かって《攻撃》が可能となる。

・《聞き耳》に失敗
 先手を打たれ奇襲される。
 標的となった探索者は「星の精」に(1d4)本のカギ爪で捕まれ、吸血される。
 並びに「星の精」の吸血を受けた探索者は(1/1d10)のSAN値チェックが発生する。
 血を吸われた者は1ラウンドで(1d6)のSTRを失い、回復するのは3日後だ。

吸血後は「星の精」の不可視が6ラウンドだけ無効化される。
しかしそれは”目撃する”ことと同義だ。

『人間の血を吸ったために、声でしか分からなかった敵が姿をあらわした。
 赤い雫を滴らせる体はやはり赤く、まるで波打つ無数の触手のついた真紅の塊だ。
 附属機関の先端で、吸引のための口がガツガツと飢えたように開閉している。
 頭もなく、顔もない大きな塊は、恐ろしいかぎ爪で探索者たちに狙いを定めている。』
不可視の吸血鬼を目撃した探索者たちは(1/1d10)のSAN値喪失が発生する。

以降は「星の精」との戦闘ラウンドとなる。
なお、この場の「星の精」は地下一階から離脱すれば追跡することはない。
ただしこの部屋に居座り続けるだろう。


★不可視の吸血鬼「星の精」(ルールブックP.190参照)
STR:28  DEX:10  INT:8
CON:15  POW:20  SIZ:20 
HP:20   MP:20  回避:20  db:+2d6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]《かぎ爪 40%》:ダメージ 1d6+db
    《噛み付き 80%》:吸血ダメージ 1ラウンドに(1d6)STRの消失
[装甲]地球外物質の皮膚:4ポイント(弾丸はダメージ半分)
[呪文]なし
[正気度喪失]星の精を目撃したか、星の精の攻撃を経験したものは(1/1d10)の消失。
*星の精は見えないが、クスクス笑いで見当をつけることで半分の命中率で攻撃が可能となる。
 吸血後の星の精は6ラウンドの間だけ姿が見えるようになり、通常の命中率で攻撃が可能となる。
 ただし6ラウンド後には血液を新陳代謝して透明にしてしまうので、再び不可視へと戻る。
*攻撃の際には、一度に(1d4)本のかぎ爪を使って特定の対象をつかむことが出来る。
 犠牲者は生死にかかわらず血を吸い取られ、血を吸われた者は1ラウンドで(1d6)のSTRを失う。
 殺されずに済んだ場合は、STRの喪失分は3日以内に回復するだろう。
*このシナリオでの星の精は従属されているため、行動範囲に制限がかけられている。


 

11:地下ニ階の探索


梯子を降りると、どこよりも埃っぽい石造りの部屋に着く。ここには照明がなく真っ暗だ。
『探索者たちはこの部屋に入った途端、ひどい疲れに襲われる。
 思考は鈍り、手足は重く視界もかすみ、耳も遠くなったように感じるのだ。
 立ち入り拒まれたか、或いは咎めるかの如く。』
謎の肉体への負荷を感じた探索者は(0/1)のSANチェックが発生する。

これは暗くて見えにくいだけでなく、肉体への極端な疲労である。よって道具の補正も無意味となる。
なお、この部屋では《クトゥルフ神話》以外の全ての技能値へ[-10%補正]が付与される。


●誰かの痕跡
手に照明を持って部屋を見渡すと、床には塵が散らばっており、部屋の中心には【小さな塵の山】がある。
塵の山に対して《目星》で成功すると
 <頂点に小さな足跡のようなもの>を見つける。
更に《クトゥルフ神話》に成功すると
 <この塵は元は人間であり、こんな姿にしたのは自分たちが知り得てはならない存在の仕業だ>と察する。
 そして<この小さな足跡こそ、その存在が確かなものである証だと分かってしまう。>
この事実を知ってしまった探索者は(1d3/1d8)のSANチェックが発生する。



●触れるべきではないもの
更に部屋の奥へ行くと【今にも崩れそうな本棚】が置いてある。
 本棚に《図書館》で成功すると
 <摩り下ろし金のようにザラザラとした表紙の本を見つける>
 手に持ったならば、その瞬間から全身に異様な気だるさを感じる。

 《知識》に成功すれば装丁が判明する。
 『重い表紙は鮫皮で作られ、くすんだ白色の留め金は金属ではなく人骨で留められていた。』
 装丁を判明してしまった探索者は(0/1d3)のSAN値チェックが発生する。

本の表紙には<ギリシャ語の表題>が表記されている。
ギリシャ語》で<表紙のタイトルが【カルナマゴスの遺言】だと解読できる。>
クトゥルフ神話》に成功すれば<この本が部屋の異常な状態を生み出しているのではないかと察する。>

(※この魔導書は燃やそうと火を近づけても、火元のほうが先に消えてしまう。)



★魔導書の恐ろしい効果
本を開いて中の文章を “意味がわからなくても数行読んだ” 探索者は、以下の事態に見舞われる。

 『文章を目で追った瞬間、疲労感を超えた凝縮された老いの恐怖が降りかかった。
  肌はかさつき皺が浮き上がり、足元もおぼつかなくなっていく、急激な老衰の感覚だ。』

 『目の前の本棚は崩れ落ち、その場にあるもの全てがみるみると老朽化していく。
  燭台照明は一気に蝋燭を燃焼して火元も無くなり、電気照明も途端に電力を失い消え失せてしまう。
  服は綻びだし、金属はサビつき、プラスチックすら劣化しボロボロだ。
  食料や水も途端に腐りだし、果てはただの塵屑へと成り果てていった。』

朽ちゆく現場を目撃した探索者は(1/1d6)の正気度喪失。
己の時間が吹き飛ばされた探索者は(1d4/1d8+1)の正気度喪失が発生する。
文章を見た探索者は10歳分年をとってしまい【CON1点を永久喪失する】。
並びに、その場にいた全員が肩で息をするのがやっとの疲労感となる。
よって【屋敷を脱出するまで全ての技能値が-5%される】。

全ての持ち物は朽ちて使い物にならないため、あらゆる照明も消えてしまう。
例外として廊下一階にあった【火が止まっている燭台照明】は時間の運動がないため照明扱える。


 <※KP情報※>
 この部屋は魔導書【カルナマゴスの遺言】の封印を兼ねている場所だ。
 部屋から魔導書を持ち出すことすら危険であり、もし脱出時に所持していると死亡ルートへ一直線である。
 またこの部屋以外の場所に置かれた場合、部屋にいるのと同様の[-10%補正]が全技能にかかり続ける。
 ▼「時間喰らい」活用法
 魔導書よって加算されてしまった年齢については、「時間喰らい」の《時間食い》を行えば対処が行える。
 老化してしまった分を吸い取らせて、若返らせる事が可能であり、CONの喪失も治すことができる。
 ただし《噛み付き》による正気度喪失や、麻痺とダメージはしっかりあるのでご利用は計画的に。
 時間食らいは屋敷内の個体を倒してしまっても、外の世界へ出て《幸運》に成功すれば遭遇可能だ。
 遭遇の際はKPは(1d3)ロールをし、出現個体数を決定すれば良い。




●《禁じられた言葉》の入手方法
(※このシナリオでのみ限られた方法です。)
修得するためには【《ギリシャ語》と《幸運の半分の値》】両方に成功する必要がある。
失敗する度に上記の「本を開いて中の文章を “意味がわからなくても数行読んだ” 」効果と同じ結果だ。
成功すると《禁じられた言葉》について記載されたページを発見し、《禁じられた言葉》を修得できる。
クトゥルフ神話》+8%が与えられ、(1D4/1D8)の正気度消失を行う。

更に《禁じられた言葉》を読んだ探索者は<1D100>ロールを行う。
これは20%の確率で「クァチル・ウタウス」を招来する可能性があるからだ。
もし成功してしまった場合は、冒涜的な存在との邂逅を招く。

『探索者たちは一呼吸する度に急速に老いていくような、無気力と衰弱が増大していく。
 手元の照明は全て消え、どこからか吹いてきた冷たいすきま風を感じた。
 そして気付いてしまう――照明は消えて闇が支配するはずの部屋が、全くの暗闇でないことに。』
『多大な努力を要して持ち上げられた眼は、壁の一部に不規則な裂け目ができているのを見つけた。
 射しこむ青ざめた鉛色に輝く死の光条は、想像を絶する暗黒の世界との間に橋を形作っている。
 すると硬直した何かが光条に沿って、静止した世界を錯覚させながら素早く部屋へ滑り降りてくる。』
『その体は小さな子供くらいの大きさしかない。
 体は一度も呼吸をしたことがない中絶胎児のようでありながら、千年の時を経たミイラのようだ。
 骸骨のように細い首の上に乗る頭部に顔はなく、無毛の表面に無数の網目状のすじだけが見える。
 腕はまるで永遠に手探りをしながら固定した形のままに、前へ突き出されている。
 先端から伸びる骨のようなかぎ爪は管状で、あらゆる時を吸い込む虚空へ続いているのではと思わされる。
 恐ろしき胎児は硬直し直立の姿勢でまま、青灰色の死の光条の中に浮かび、我々の前へ招かれた。』

塵を踏むもの「クァチル・ウタウス」を目撃した探索者たちは、(1d6/1d20)の正気度喪失。
同時に、全員10歳年を取り[CON1点を永久喪失]する。
そして《禁じられた言葉》を知った探索者のみ、以下の様な最期を迎える。

『恐ろしくも神々しき存在は、今や貴方の間近に迫っていた。
 硬直した足は我が身の胸と、無毛の頭は己が額と同じ高さで向かい合う。
 過ぎゆく一瞬の間、貴方は神に抱きしめられたような気さえした。
 それは恐ろしき神から突き出された手と、硬直し浮遊した足に触れられたからだった。』
『あなたを神の怒りを受け入れるしかなかった。吸収し、同化され、存在が一体化していく。
 血管は塵でつまり、脳細胞が一つずつ崩壊していくのを感じていく。
 もはや貴方は一人の人間ではない。
 星々の間を吹き抜ける計り知れぬ風に吹きやられて、渦巻きながら暗黒へと墜ちていったのだ。』

『探索者が居たであろうその場所には、小さな塵の山と、その頂点に残った小さな足跡だけが残っている。
 あの嗄(しわが)れた胎児も、居たはずの人間もいない。
 皆一様に、本当にそこに誰かいたのかすら曖昧な感覚となっていた。』

以上の結果により《禁じられた言葉》を読んだ探索者は、塵となって蘇生不可の永久的死亡となる。
人間が塵となり、その姿を失う瞬間を目撃した他の探索者たちは(2/2d10+1)の正気度喪失が発生する。


▼《禁じられた言葉》の効果
この言葉は「クァチル・ウタウス」の招来に使われる。
読んだ者は、声に出して読み上げてなくても、20%の確率で「塵を踏むもの」を知らぬ間に招来してしまう。
しかも招来に成功した場合は、自分自身がこの神の怒りの対象にされて確実な死を与えられる。
この死を与えられる確率は「禁じられた言葉」が読まれるたびに10%づつ増加していく。

「クァチル・ウタウス」との契約者の前で唱えられた場合、神が顕現するとその契約者を吸収する。
契約者、契約する意志がある者がいない場合は、呪文を唱えた者を吸収する。
いずれの場合も、神は塵の山だけを残して去っていく。

《禁じられた言葉》を唱える事は、[MP10点]と[1D6]点の正気度喪失を行う。
更に、その結果として顕現するクァチル・ウタウスを目撃する事で(1D6/1D20)の正気度喪失が発生する。

 <※KP情報※>
 《禁じられた言葉》の使いどころは、契約者である「謎の老人」を殺したい時だけである。
 勿論この魔導書を研究していた老人は呪文の効果を知っている。
 そのため魔導書の存在を知っているだけでも、その者は消そうとされる。
 脱出後の報告時にこの場所について口を滑らした場合、いかなる言い訳も老人には通じない。
 この情報を死への片道切符とするかどうかは、探索者次第である。



★「クァチル・ウタウス」塵を踏むもの(ルールブックP.211-212参照)
STR:12  DEX:3   INT:19
CON:20  POW:35  SIZ:6 
HP:13   MP:35   db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]タッチ:自動成功 対象は即死(塵になるため回復も不可能)
[装甲]すべての物理的・魔術的な攻撃から影響を受けない。攻撃すれば、武器が即時に老化して塵となる。
[呪文]KPが望む呪文を知っているが、その中に“生・死・時間・老化”などに関わるものが含まれる。
[正気度喪失]目撃した場合(1d6/1d20)の消失。
*召喚後の行動順はクァチル・ウタウスが最初になり、対象一人にタッチを行うと直ぐに帰っていく。
 その場には塵の山と、その頂点に小さな足跡だけが残っているだろう。


 

12:屋敷からの脱出


もし途中で【砂時計】や【金の腕輪】を失った場合、探索者たちは異次元からの脱出が叶わなくなる。
永遠に元の世界へは帰れなくなった事でゆっくりと発狂していくのだ。
最期には自殺や自然死を迎えるか、時間狂いの化け物達の餌食となるだろう。



●脱出のための鍵
脱出のためには特殊な道具【アダマスの鍵】が必要となる。
入手するには【金の腕輪】と、最初の箱に入っていた【砂時計】を使用し、以下の過程を踏む。

2階の像の前にある祭壇のくぼみへ【金の腕輪】をはめ、輪の中心に位置する場所に【砂時計】を置く。
すると今まで微動だにしなかった【砂時計】の砂が落ち始める。
砂が落ちきるまでには、全て正常なら3分ほどかかるだろう。
 <正常でない状態>
 ・アイオーンに関係する彫刻・絵画や木々を移動させたり破損させる。
  [破損・移動した数×2ラウンド]ずつ時間が追加。
 ・【金の腕輪】破損
  耐久が8から、耐久-1されるごとに[1ラウンド]ずつ追加。

【砂時計】の砂が落ちきると、複雑に形がねじ曲がり【アダマスの鍵】へと変化する。
【アダマスの鍵】に対して《目星》や《アイデア》で成功すれば
 <この鍵は一番最初に玄関扉に使用した鍵と似た効果を持つが、決して壊れないだろう。>
 <しかし時折形状が不安定になることから、力は1度きりしかなさそうだと分かる。>
あとはどの扉に【アダマスの鍵】を使うか探索者たちに思案しもらう。



●機会を伺う番人
砂が落ち出した所でKPは[1D6]ロールを行う。
・[1~3]の出目
 3分間は何も起こらない。ただし3分経過してもまだ2階にいる場合は以下と場合と同じルートに移行する。
・[4~6]の出目
 3分経過するまで残り1分(約5ラウンド)の時点で「星の精」が探索者を襲う。
 (3分以上必要とする場合は、そのラウンド分が加算される。) 
 その際<探索者たちはどこからか「クスクス」と言う笑い声が聞こえる。>
 もし事前に地下一階で「星の精」に遭遇したならば、あの時と同じ笑い声であると気づくだろう。
 (※このイベントの「星の精」は地下一階で遭遇した個体とは別個体である。)


▼直ぐにできる対処
《聞き耳》に成功すれば<声は客間から聞こえた>と気づける。
地下1階で既に遭遇済みであれば危険さを認識できているため、以下のことに気づくことが出来る。
<今直ぐ扉を押さえつければ廊下へ出て来る前に抑えられるかもしれない。>
直ぐに扉を塞げば、星の精との[STR対抗]で出現を防ぐ、或いは遅らせることも可能である。
ただし星の精は[STR28]なので、探索者一人ではとても抑えきれない。

逆に笑い声が聞こえた直後に客間の扉を開いた探索者が居たならば、頭上から「星の精」が飛び降りてくる。
この強襲に対し、探索者は《幸運》に成功すれば《回避》が自動成功となる。
《幸運》ロールに失敗した場合は「星の精」の組み付きを受け、吸血されるだろう。


▼星の精との対峙
以降は廊下へ出てきた「星の精」との戦闘ラウンドになる。
「星の精」は客間から出現するため、探索者たちが像の前にいた場合は1階への階段が塞がれる状態となる。
対象が不可視状態ならば《聞き耳》に成功すれば、[DEX×3]ですり抜けての逃走が可能である。
可視化されているならば、《聞き耳》なしに[DEX×5]で逃走判定が行える。

注意すべきことは【砂時計】を忘れると壊される可能性があることだ。
そのため【砂時計】の砂が落ちきるまで耐え切り、鍵になった所で持ち出し一階への逃走をお勧めする。
この場の「星の精」の行動範囲は2階のみなので、1階へ逃げ切れば追いかけて来ない。
時折2階からクスクス笑いが聞こえる程度だ。
もし二度目の鍵の変化作業が必要になると、既に「星の精」が階段で待ちかまえている。




●扉の選択
鍵穴は地下へ続く隠し扉以外であれば存在する。
脱出できるのは両開きである【玄関扉】と【奥の鉄扉】のみである。
もし異次元へ移動した際に【玄関扉】を吹き飛ばしたなら【奥の鉄扉】を使うしかない。
玄関扉・奥の鉄扉以外の扉だったならば、何も起こらないが【アダマスの鍵】が【砂時計】に戻ってしまう。
再度2階の像の前で【砂時計】を【アダマスの鍵】にする過程に戻ってもらわなければならない。


▼脱出時の注意点
*化け物を一匹でも連れたままの場合
 「影追虫」に寄生されたままの状態が主な対象となる。
 化け物は時間狂いの住人のため、次元の移動の際に流れが妨害されてしまう。
 よって脱出路が不完全になってしまい、「奥の鉄扉からの脱出」が更に悪化した展開となる。
 《幸運》ロールが存在せず、ファンブルを起こした場合と同等の不幸が探索者全員を襲うのだ。
 なお元の世界に戻ると、時間狂いの化け物たちは綺麗サッパリ消えている。

*魔導書【カルナマゴスの遺言】を所持したままの場合
 魔導書の強力な魔力により探索者たちは正しい時間世界へ戻れない。
 次元の狭間にある時間の乱流へと巻き込まれ、元の世界へたどり着けないのだ。
 体は何度も老いと若返りを繰り返し、時間の乱気流により壮絶な損傷を繰り返すだろう。
 四肢や胴体、頭といった体の部位を悉く引き千切られ、巻き戻り繋がり直されては挽き肉にされる。
 死ぬことも叶わず永劫にこの痛みを与え続けられるのだ。
(※屋敷内の品物は【カルナマゴスの誓約】以外の、持ち運び可能なものに限り持って帰ることは可能。)


▼玄関扉からの脱出
玄関扉の鍵穴は外にあるため、一度外に出る必要がある。
まだ外の世界を目撃したSANチェックをしていないならば、チェックして貰うこととなる。

ここの鍵穴に【アダマスの鍵】を使うとカチャリと小気味いい音がする。
この時、鍵は鍵穴から抜けなくなっており、鍵穴を塞ぐようにして溶け込んでしまう。
『扉を開けようとノブに手をかけると、扉ごと強引に奥へ引っ張られてしまう。
 謎の力はその場に居た探索者たちを暗い闇の中へ引きずり込んだ。
 引きずり込まれた先で、暗い闇と眩い光を繰り返し見せられ探索者たちは気絶してしまった。』
『気を失ってから目を覚ますと、どこかの地面に寝そべっているではないか。
 起き上がり周囲を確認すれば、ここが屋敷に入る前の景色と同じであることに気づくだろう。
 探索者たちは無事に元の世界へ帰還を果たしたのだ。』
日付と時刻を確認できれば、異世界に移動して戻ってきてから1時間も経っていない事を知る。
ゆっくりと依頼主の屋敷へ報告に戻れるだろう。


▼奥の鉄扉からの脱出
鉄扉の鍵穴は廊下側にあり【アダマスの鍵】を使うとカチャリと小気味いい音がする。
この時、鍵は鍵穴から抜けなくなっており、鍵穴を塞ぐようにして溶け込んでしまう。
『扉を開けようとノブに手をかけると、再び全身へ空気が粘るような重みを感じ床に伏してしまう。
 すると開きかけた扉が勝手に開き出した。
 奥からは白い煙のような、何かの手足のようなものが這い出し探索者達を中へ引きずり込んだ。』

ここで探索者たちは《幸運》ロールをして貰う。
結果により、異次元移動間で以下のような状況に陥る。
 成功:何もなし
 失敗:耐久(1d6)の永久耐久消失を受けるほどの怪我を負う
 ファンブル:乱気流に巻き込まれ四肢の内1本を失う。耐久(1d6)に加え[CON3点]の永久消失が起こる。
 クリティカル:誰かのファンブルや失敗結果を打ち消せる。無ければ成功と同じ。

以上の結果を探索者たちに与えた後、強烈な耳鳴りと共に意識を手放される。
『頭痛を感じながら目を覚ますと、どこかの地面に寝そべっていた。
 起き上がり周囲を確認すれば、ここが屋敷に入る前の景色と同じであることに気づくだろう。』
探索者たちが使った鉄扉は時間狂いの世界が生んだ扉だったため、不完全な脱出口になってしまったのだ。
それがこの結果を生み出したものの、なんとか元の世界への帰還は果たせたようだ。
日付と時刻を確認できれば老人が定めた期限まで残り半日しかない事を知るだろう。

*四肢の一つを失った探索者が居た場合
『乱気流に巻き込まれた者は、自身の体に与えられた大きな喪失感に気づかされる。
 そこに自分の体の一部はなく、痛みがないことから切断されたわけでも、潰れたわけでもないようだ。
 だがあるべきものを失った部位には、異質なほど萎縮し、指一本程度の大きさしかない。
 最早なんの感覚も持たない体の一部だったものは、痙攣する赤黒い残りかすと化していた。』
その状態を目撃した探索者は(0/1D4)、受けた探索者は(1/1d10)のSANチェックが発生する。
四肢を失った点に関しては命の危険はない。




●耐久値が危険な探索者が居た場合(補助案)
耐久2点以下の危険な状態に陥った探索者が、元の世界へ戻ってきた場合である。
病院へ行こうとせずとも、帰還した事を悟った老人が屋敷の使用人を迎えに寄越してくれる。
使用人は「依頼を達成できた自信がおありならば、旦那様が手を打って下さるでしょう。」と伝える。

耐久ゼロ以下で死亡し、その場に死体が存在する探索者がいるならば、次の提案をされる。
<生存中の探索者の中から[合計CON6点]を捧げることで、瀕死状態(耐久1点)まで復活させる>
使用人は強要しない。選択するのは探索者である。
なお、能力値を捧げた探索者は(1/1D3)のSANチェックが併せて発生する。
復活した探索者は自身が死んだことも、時間狂いの世界での記憶も失ってしまう。
よってクリア報酬①と②は取得できない。(詳細は【14:クリア報酬】を参照)


 

13:結末の選択


●結末1:依頼期限の3日間を経過する
老人は探索者たちが逃走したと見切り、呪術をかけてしまう。
呪いを受けた探索者たちは老化が段階的に加速していく。
急激な老いに恐怖しながらひと月後には老衰で死ぬこととなるだろう。
もし生きている間に泣きつきに行こうとしても、老人邸宅は跡形もなく消失している。




●結末2:依頼の達成失敗
【赤薔薇の首飾り】は見つからなかったと老人に報告した場合である。
老人はどこか寂しそうな声で了承したことを伝える。
探索者たちへは苦労をかけたと、それぞれに売れば相当な額になる金の装飾品を与える。
その後は何を尋ねても「渡すものは渡した、さっさと出て行ってくれ」と屋敷から追い出されてしまう。
老人邸宅の門を出て振り返ると、屋敷は跡形もなく消えており広い空き地しかない。
悪い夢でも見ていたような光景に遭遇した探索者たちは(1/1d4)のSAN値チェックが発生する。




●結末3:依頼を達成した
【赤薔薇の首飾り】を見つけたことを報告し、渡すことで達成される。
なお渡すことを拒否し続けると、導入と同じ罰が繰り返されるので素直に渡そう。
因みに【赤薔薇の首飾り】が破損していた場合は、老人によって目の前で一瞬で修復される。
謎の修復技術を目撃した探索者は(0/1)のSANチェックが発生する。

首飾りを渡そうとすれば老人は枯れた手を差し、首飾りを受け取って確認する。
依頼した品であるかを確認が完了したところで雰囲気が柔らかくなり、探索者へ労りの言葉をかけるだろう。
渡した時点で依頼達成だ。老人は謝礼にと金の宝飾品の贈与と回復をしてくれる。
また報酬を使用人に用意させる間「もし今回の件について聞きたいことがあれば話そう」と提案してくれる。

 <※KP情報※>
 探索者から以下のことについて聞くと、報酬はもらえず【結末4】へ移るため注意。
 ・地下2階の存在について(地下1階までであればセーフ)
 ・【カルナマゴスの遺言】について


▼負傷の治癒
探索者がこのシナリオで失ったSAN値以外の年齢や能力値を、老人が直ぐに元通りにしてくれる。
また以下の代償さえ支払えば、能力値の永久喪失や、四肢をの喪失も修復可能である。
 ・四肢一部位につき[2d3]の正気度喪失
 ・能力値一点につき[1D3]の正気度喪失
この正気度消失による発狂は発生しない。


▼金品の贈呈
戻ってきた使用人が幾つもの美術品を並べ、老人は好きな者を一つ選んで構わないと言う。
それらは純金と大振りの宝石で彩られたものもあれば、繊細優美な芸術品とまで言える品と様々だ。
それらの中から一つを選んだ探索者は[1D10]ロールを行う。
[1D10]×100万円がその宝飾品の価格であり、今回の報酬となる。
因みに現金を望んだ場合、老人自身が紙幣は信用ならないという理由で用意されていない。
一方宝飾品はオークションなどで上手く売買すればより高い値段がつくような品ばかりである。


▼首飾りの写真について尋ねる
これは渡す前に【赤薔薇の首飾り】に対して《鍵開け》を成功した探索者のみが行えるだろう。
老人から【赤薔薇の首飾り】は遠い昔に彼が亡き妻へ贈り、遺品となった品であることを教えてもらえる。

「最早顔すら思い出せないほど昔に、この首飾りは私の伴侶へ贈ったものだ。」
そう言いながら、老人はしわがれた手で懐かしむように首飾りの仕掛けを解除する。
「君等のお陰でやっと思い出せた。感謝せねばなるまい。」
「恩人の君等に何も知らせず帰すのも心苦しいものがある故、少しあの屋敷について話しをしようかね?」
(※この提案は拒否することも可能である。)


▼屋敷について訪ねる
時間狂いの屋敷について尋ねると、最初に老人は魔術師であることが明かされる。
そしてあの屋敷は、魔術研究の果てに生んでしまった異次元であると説明される。
「最初に告白せねばならないことがある。信じても信じなくても良いが、私は魔術師だ。」
「そしてあの屋敷は私の魔術研究の末に生み出してしまった怪物屋敷だよ。」
「アイオーン像を見たであろう?」
「研究の都合上、時間を止めなくてはならなくなり時の神の力を借りたのだよ。」
「ところが研究は途中で失敗してしまった。」
「結果、あの通り混沌とした時間軸の世界になってしまったのだよ。」
異次元屋敷についての話を聞いた探索者たちは(0/1)のSANチェックが発生する。
並びに《クトゥルフ神話》2%を取得する。

 (※注意※)
 【地下2階】と【カルナマゴスの誓約】についての説明はない。
 もし探索者から魔導書について聞く【結末4】へ強制的に移行する。


▼呪文の修得
これは首飾りの写真について尋ねた探索者にのみ提案される報酬だ。
「君等には多大な迷惑をかけた。このことに関しては深く詫びよう。」
「先の礼の他に、私の知恵の一つを与えてもいい。如何するかね?」
持ちかけられた知恵の報酬内容は、呪文習得のチャンスを得られるというものだ。

 <呪文の習得について>
探索者たちは許容と拒否が自由に選べ、正気度減少のようなリスクもない。
許容した場合は、[INT×3]に成功すれば呪文修得となる。
本来なら1週間の時間経過が必要だが、この修得法は老人の力の大きさがなせる方法である。

『知恵を授かることを了承した探索者は、老人と手をつながされる。
 すると突然頭に一気に情報をつめ込まれたような感覚が襲った。
 手を離されると目眩と立ちくらみでフラフラとしてしまうだろう。』
支えてくれる人がいるならば支えてあげるといいだろう。居なければ使用人が支えてくれる。
この特殊習得儀式により、探索者は《肉体の保護》の呪文を修得する。(ルールブックP.275参)

 <《肉体の保護》について>
 物理的な攻撃に対して保護を与えてくれる呪文。
 コスト:1d4正気度喪失、任意のマジックポイントの消費
 対象:使用者か選ばれた対象一名
 効果:1MPにつき(1d6)ポイントの非魔術的攻撃に対しての装甲
 時間:かけるのに5ラウンド、持続時間は24時間
 補足:一度かけると上掛け不可


▼怪異との別れ
話し終えた老人は深々とした礼と今までの無礼を詫びる。
「困ったことがあれば私を尋ねなさい……と言いたい所ではあるが」
「私には成さなければならない役割がある。今後はこの私が君たちと廻り逢うことはないだろう。」
「気をつけてお帰りなさい。」
それだけ告げると、老人は部屋の奥へ戻ってしまう。
代わりに使用人が探索者たちを屋敷外まで見送ってくれるだろう。
見送りの際、使用人は次の事を話す。
「今回の件で我々をお恨みになることがございましたら、我々は甘んじてそれを受け入れましょう。」
「ですが、そのお気持ちを理由に我々の妨害を企てるようなことがあれば――」
「例えいかなる恩人であろうと、容赦はいたしません。」
「どうかお気をつけてお帰り下さい。」

見送られた探索者たちは何かに襲われることもなく、無事に自分の居場所へ帰ることが出来るだろう。
後日その屋敷へ向かうと美しい赤いバラ園だけがそこにあった。
その後はあの言葉通り、探索者が謎の老人と再び廻り逢う事はないだろう。




●結末4:知るべきではない真実
地下で見つけた本【カルナマゴスの誓約】、或いは【地下2階】について老人の前で話してしまった場合だ。
老人は驚愕した様子を浮かべたかと思うと、直ぐに重苦しく禍々しい雰囲気へと変貌していく。
どす黒い瘴気にでも包まれたような息苦しさは、ただの人間を黙らせるには十分であった。
部屋の明かりは徐々に暗がりへと変貌させながら、老人は口を開く。
「残念だが、それを知ってしまった者を生きて返す訳にはいかん。」
この後の展開は《禁じられた言葉》を知っているかどうかで分岐する。


▼《禁じられた言葉》を知らない場合
部屋はどこから逃げようとしても、扉も窓でさえ必ず主人の部屋へ戻ってきてしまう。
閉じこめられた探索者たちの前には何人もの使用人たちが現れ、探索者たちを拘束していく。
自身ではとても逃れられない拘束を受けたまま、使用人たちは探索者の四肢を千切っていく。
ある者は斧で、ある者は鋸で、ある者は人間ではあり得ない怪力で引きちぎっていくのだ。
探索者たちが泣こうが喚こうが、懇願しても罵倒しようと言葉は返ってこない。
老人も使用人たちも無表情のまま、淡々と探索者たちは虫ケラのように扱い、引き裂かれる。
四肢を全て失った探索者は、最後に首を跳ねられ、意識を完全に手放した。
探索者の近親者たちは、突然の知り合いの失踪に為す術なく月日だけが過ぎていくことだろう。


▼《禁じられた言葉》を知っている場合
以降は「謎の老人」との逃走不可の戦闘が開始される。
気づけば部屋の中はもやであふれ、部屋らしさを失った広場のようになっているからだ。
老人から攻撃はしてこないが、何かの文言を唱え始めている。
老人へ攻撃をしようとした場合、何人もの使用人が立ちふさがり攻撃が届くことはない。
探索者に残された道は呆気なく殺されるのを待つか、《禁じられた言葉》を使い老人を殺すかだ。
制限時間は老人が文言を唱え終わる3ラウンドまで。
《禁じられた言葉》を使ったならば、【結末5】へ移行する。


▼老人の呪文が唱え終わる
3ラウンド目に入った時点で以下の現象が起こる。
『探索者たちは不意に部屋の違和感に顔をしかめるだろう。
 ただ広くなっただけではなく、みるみる内に老人たちとの距離が離れていく。
 老人の嗄れた声が聞こえる――「聖なる光の中で全てを忘れなさい」
 やがて彼らは点となり、見えなくなった。
 上下も左右もわからない場所で、途方に暮れるまもなく気づかされる。
 奇妙な、幾何学的でありながら、邪悪とも思えないなにかの存在を感じたことに。』

『形がないわけではない。だがその形はあまりにも複雑に入り組み、目で形を確認するのは不可能だった。
 いくつもの半球体と輝く金属とが長い可塑性の棒で連結されている。
 棒は全面同じ灰色をしており、どれが近くにあってどれが遠くにあるのかわからない。
 半球も金属も棒も、一緒になってただ平板な固まりのように見えた。
 その塊から筒が何本も突き出している。
 それを見ているとき、貴方は棒の間から輝く目がこちらを見ているような、異様な気配を感じた。
 しかしよく見つめてみると、棒の間にあるのはただ空間があるのみであった。』
ヴェールをはぎ取るもの「ダオロス」を目撃した探索者たちは(1d10/1D100)の正気度喪失を行う。

老人によってダオロスの元へ送られてしまった探索者が助かることはない。
探索者は瞬く間に全ての正気度を失い、異世界へとばされ二度と元の世界へ戻ることはないだろう。




●結末5:老人を殺した
老人を殺せるとすれば《禁じられた言葉》しか方法はない。
それは同時に「クァチル・ウタウス」との接触を意味する。
探索者は塵を踏むものの目撃による正気度喪失を行わねばならない。
神との契約者である老人は、神が招来されたことを認めると諦めを示し、大人しく塵となる事を選ぶ。
老人が死亡すると、屋敷中の十何人もの使用人たちは一斉に狂気に陥る。
ある者は泣き叫びながら走り回り、またある者は探索者たちへ襲い掛かってくる。

混乱が生じる中、屋敷内のありとあらゆる物体がボロボロと崩れていき塵になっていく。
ここで探索者には《幸運》ロールをしてもらう。
運が良ければこの阿鼻叫喚の屋敷から脱出成功する。運が悪ければこの塵と化してゆく建物と同じ運命だ。

脱出後には沢山の禍々しい悲鳴を聞かされながら、目の前で屋敷が崩れていくのを目撃することとなる。
悲惨な地獄絵図の光景を目撃した探索者たちは(1d3/2d10+1)の正気度喪失が発生する。
そしてあまりの衝撃により探索者たちはその場で気絶してしまうだろう。

こうして多くの肉体的、心理的損傷を抱え、探索者たちは病院のベッドで目を覚ます事となる。
探索者を襲う者はもう何もいない――そう思えたならどれだけ楽だろうか。
確かに直接的に襲う者はいない。しかし、見つめ続ける視線があった。
赤い瞳の視線。憎悪と悪意に満ちた幾つのも視線が常に探索者を監視し続ける。
視線に振り向かされれば、あの屋敷にいた使用人を彷彿とさせる、白い髪の毛をした無表情の浮浪者だ。
彼らはじっと見つめるだけで、何もすることはない。
ただひたすらふとした瞬間にだけ、主人を殺した者たちへ悪意を凝縮した視線だけを刺し続けるのだ。


 

14:クリア報酬


①異次元屋敷からの脱出
全員生還したならば(1d10)で正気度回復が行える。一人でも欠けた場合は(1D6)の正気度回復となる。
(※脱出後に死亡状態から復活した探索者はこの報酬は得られない。)

②異次元屋敷の化け物を倒す。
対象は「時間喰らい」「影追虫」「星の精」の3種。
なお行える正気度回復はどれか1パターンのみである。
1種類のみ倒した場合は、生存者は1点のみ正気度回復。
2種類まで倒した場合は、生存者は(1d4)の正気度回復。
3種類すべて倒した場合は、生存者は(1d8)の正気度回復。
(※脱出後に死亡状態から復活した探索者はこの報酬は得られない。)

③依頼を達成した
謎の老人に【赤薔薇の首飾り】を渡した場合である。
生存者全員が(1d6)の正気度回復が行える。

④首飾りの写真について老人に尋ねた
老人から話を聞いた全員が(1d6)の正気度回復が行える。

⑤魔導書【カルナマゴスの遺言】を見つけて帰還した
老人に話していなければ、生存者は《クトゥルフ神話》を(1D4)%を取得できる。

⑥謎の老人を殺した
「異次元屋敷からの脱出」「異次元屋敷の化け物を倒す」以外の上記報酬は全て無くなる。
代わりに不定の狂気【視線恐怖症】と、《クトゥルフ神話》10%を取得する。


 

15:NPCステータス一覧


★「謎の老人」不死の魔術師
STR:3  DEX:3  INT:50
CON:5  POW:50 SIZ:5  APP:3
HP:5   MP:50   回避:6  db:-1d6
――――――――――――――――――――――――――
[装甲]どのダメージも受けるが耐久が1以下になることは決してない。
    また、耐久1になった後1ラウンド後には元の値へ戻る。
[呪文]以下2種類と、KPが望む呪文
*《クァチル・ウタウスの契約》
 この呪文による不老不死は、契約者の能力値が固定化されるようになっている。
 固定された能力値は<STR、CON、SIZ、POW>
 クァチル・ウタウスによってその肉体に固定され、神が望んだ場合以外には決して減少しない。
 また耐久力も絶対に1以下にはならなくなり、通常は元の上限値まで回復する。
*《手足の萎縮》
 1ラウンドかけて10m以内に居る対象とMPを抵抗表に従って戦わせる。
 勝った場合はには対象の手足のうち、呪文の使い手が指定したどれか1本を萎ませ縮ませることが出来る。
 対象は耐久力を(1d8)ポイント失い、CONを3ポイント永久に失う。
 同時に犠牲者と目撃者はそれぞれ(0/1d3)のSAN値チェックが発生する。
 この呪文はコストとして8MPと(1d6)の正気度を消費する。なお老人はコストなしで行える。




★「星の精」不可視の吸血鬼(ルールブックP.190参照)
STR:28  DEX:10  INT:8
CON:15  POW:20  SIZ:20 
HP:20   MP:20  回避:20  db:+2d6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]《かぎ爪 40%》:ダメージ 1d6+db
    《噛み付き 80%》:吸血ダメージ 1ラウンドに(1d6)STRの消失
[装甲]地球外物質の皮膚:4ポイント(弾丸はダメージ半分)
[呪文]なし
[正気度喪失]星の精を目撃したか、星の精の攻撃を経験したものは(1/1d10)の消失。
*星の精は見えないが、クスクス笑いで見当をつけることで半分の命中率で攻撃が可能となる。
 吸血後の星の精は6ラウンドの間だけ姿が見えるようになり、通常の命中率で攻撃が可能となる。
 ただし6ラウンド後には血液を新陳代謝して透明にしてしまうので、再び不可視へと戻る。
*攻撃の際には、一度に(1d4)本のかぎ爪を使って特定の対象をつかむことが出来る。
 犠牲者は生死にかかわらず血を吸い取られ、血を吸われた者は1ラウンドで(1d6)のSTRを失う。
 殺されずに済んだ場合は、STRの喪失分は3日以内に回復するだろう。
*このシナリオでの星の精は従属されているため、行動範囲に制限がかけられている。




★「クァチル・ウタウス」塵を踏むもの(ルールブックP.211-212参照)
STR:12  DEX:3   INT:19
CON:20  POW:35  SIZ:6 
HP:13   MP:35   db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]タッチ:自動成功 対象は即死(塵になるため回復も不可能)
[装甲]すべての物理的・魔術的な攻撃から影響を受けない。攻撃すれば、武器が即時に老化して塵となる。
[呪文]KPが望む呪文を知っているが、その中に“生・死・時間・老化”などに関わるものが含まれる。
[正気度喪失]目撃した場合(1d6/1d20)の消失。
*召喚後の行動順はクァチル・ウタウスが最初になり、対象一人にタッチを行うと直ぐに帰っていく。
 その場には塵の山と、その頂点に小さな足跡だけが残っているだろう。




★「時間喰らい」時を貪る胎児
STR:10  DEX:14  INT:13
CON:15  POW:14  SIZ:3 
HP:9   MP:14   回避:28  db:-1D4
――――――――――――――――――――――――――
[武器]《噛みつき》 60%:ダメージ 1d3 麻痺3d3ラウンド
    《時間喰い》噛みつきが成功した対象とPOW対抗を行い、1ラウンドに5歳の年齢を喰らう。
[装甲]打撃的なダメージは表面の特殊な粘液により最小限のダメージ。
    ただし火には極端に弱く、押し付けるだけで(2d3)のダメージを受ける。
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(0/1d6)、噛みつかれた瞬間(2/1D6+1)の消失
*その場の年齢が最も高い者を優先して狙い、主に頭部へ噛み付く。
*麻痺は(3d3)ラウンド続き、その間は頭に噛み付いたままとなり回避などは行わない。
 麻痺中の犠牲者は思考すること以外の行動が極端に制限される。
*《時間喰い》は噛み付いた対象と[POW対抗]を行う。
 時間喰らいが対抗に勝つと対象から年齢を5歳分吸い取り、退行・若返らせる。
 POW対抗ロールに成功する度、年齢を吸い取られた対象は[1D3]のSAN減少が発生する。
 もし犠牲者が自身の若返りを察してしまったならば、年齢を吸い取られた際のSAN減少は[1D3+1]となる。
*退化した年齢ごとのハンディキャップ(各項は元の値からマイナス)
 ・児童(12歳以下):POW・INT・EDU・APP以外の能力値が-2、身体的技能値が半減する。
 ・幼児(6歳以下):APP以外の能力値が-3、全ての技能値が半減する。
 ・乳児(1歳以下):APP以外の能力値が-5、技能値が全て0になる。
 ・胎児(0歳以下):探索者はゆるやかに死亡する。




★「徘徊する者」人型影追虫
STR:15  DEX:7   INT:16
CON:5  POW:14  SIZ:13
HP:9   SAN:0  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]《組み付き 50%》:ダメージは入らず、対象の行動を抑制する目的。
    《影寄生 90%》 組み付き後のみに行う。詳細は影追虫のステータスに記載。
[正気度喪失]目撃した場合(1/1d8)
*INTやPOWは影追虫に依存する。
*回避や受け流しは行わない。
*影寄生は組み付きに成功した次ラウンドにしか行えない。
 影寄生をし終わるか、耐久を0以下にすれば元の死体に戻る。
*影追虫に操られているため、限界ギリギリまで体を酷使されている。
 そのため脆く、耐久を0以下にすると崩れ落ちる。




★「影追虫」寄生する影
STR:2  DEX:25   INT:16
CON:2  POW:14  SIZ:2
HP:2   MP:14   回避:50  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]《影寄生 70%》:寄生後に時間経過で対象から[1D3]のSAN値を吸い取る。
[装甲]実体化中は通常通りダメージが入る。
    ただし物質への同化中や影寄生中はあらゆる打撃的な攻撃が効かない。
    生物へ同化中であれば、火を押し付けるとダメージが入る(同時に、寄生宿主にも同じダメージ)
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(0/1d4)、初回寄生時に(1/1d4+1)の消失。

▼擬態能力
影追虫は黒い物質であれば何にでも完璧に擬態同化でき、近づいてきた獲物の耳や口から侵入する。
この場合の《影寄生》は自動成功となる。

▼寄生能力
人間一人に対し、3匹まで影追虫は寄生できる。
《影寄生》に成功すると、寄生してから30分~1時間後に宿主の正気度を奪い取る。
寄生1匹ならば[1D3]、2匹目[1D3+1]、3匹目[1D3+2]とSAN減少値は上昇する。
(1匹ごとに時間をずらす必要はなく、複数いるならばまとめて判定して構わない。)
影追虫が対抗に勝つと、宿主はSAN減少し影追虫に吸い取られてしまう。
もし宿主のSAN値がゼロ以下になると、影追虫に完全に乗っ取られて発狂し続けるNPCと化す。
寄生された人間が息絶えれば、影追虫は影から離れて新たな宿主を待ち構える体勢に戻る。

▼影追虫の寄生を除去する
影追虫の耐久をゼロ以下にすれば自然と消滅し、その時間中の寄生によるSAN値減少も無しとなる。
有効な手段として、人間へ寄生虫の影追虫に火を押し付けると焼き殺すことが可能である。
強い火ならば1匹につき(2d3)、弱い火なら1匹に(1d3)でダメージを与えることができる。
ただし宿主も同量のダメージを受け、装甲を無視し、火傷となって症状が現れる。
また、このシナリオでは【トリモチ棒】を使えば宿主にダメージを与えず安全に引き剥がせる。

▼影追虫に【トリモチ棒】を使用した場合。
影に寄生した影追虫なら自動成功で安全に引っぺがし、尚且つ実体化した状態で捕獲できる。
寄生する前の影追虫を攻撃でなく《捕獲》するなら50%の確率かつ、対象の回避を無効化できる。
一番最初に【トリモチ棒】で影追虫を捕獲した探索者に限り(1d3)のSAN値回復が行える。
(※【トリモチ棒】1本につき1匹しか捕獲はできない。)



◇トリモチチャンス
影追虫は【トリモチ棒】を使えば比較的安全に捕まえることができる。
居ないだろうが、【トリモチ棒】を探索者が事前に購入や製作して屋敷に持ち込むことも可能だ。

 <【トリモチ棒】を作るための情報>
1)主人の部屋で【植物図鑑】を読み以下の情報を得る。
『ヤマグルマ(モチノキ)は適湿な谷間や崖・岩場などに生える常緑木である。
 樹皮からはガム状の粘着性物質が得られ【鳥もち】の原料としても使われる。
 【鳥もち】は5~6月中に樹皮を剥ぎ、長期間水に浸したものを臼でついてから流水で洗う。
 これを数回繰り返すと【鳥もち】が完成する。主に捕鳥、捕虫に用いられた。』

2)使用人部屋で【パンの化学】を読んで以下の情報を得る。
(若しくは小麦粉と浴槽の水を確認してから、《製作(料理)》か《化学》で成功する。)
『パン生地を作る際に小麦粉と水を合わせて練るとグルテンが形成されます。
 このグルテンは強い粘性を持つタンパク質の塊であり、これがパンのモッチリ感へと繋がります。
 また、パン生地を水で洗うとネバネバしたグルテンだけが残ります。』

グルテンがトリモチの代わりとなる。生地を練るための調理器具はキッチンに置いてある。
上記の情報と、キッチンで小麦粉、浴室の風呂に水が貯めてあることを知れば作成可能になる。
完成した【グルテントリモチ】を適当な棒に巻きつければ【トリモチ棒】の完成だ。
思いついて見つけた棒の数だけ【トリモチ棒】は作成可能だが、1本につき5分以上はかかるだろう。
(※【トリモチ棒】の性能は棒によるが、麺棒なら小さい棍棒と同じ程度。)


 

16:その他補足や裏話


●謎の老人こと不死の魔術師について
彼は幾度と無く人を殺し、絶望へ陥れてきた、紛うごとなき極悪人である。
異次元屋敷に関しても何度も犠牲者を送り込み、今回の脱出法を編み出してきた。
ただどんなに人間離れしていようと、どれだけ高位の魔術師であろうと、元は人間だ。
赤薔薇の首飾りに干渉した際に少しだけ雰囲気が和らぐのは、彼もやはり人間だった故だ。

彼が不死を目指し成し遂げたのは、ある目的のためである。
このシナリオで発生した事柄は、ここでの彼にとっては通過点にすぎないだろう。
探索者は再びこの老人と出会うことはないとされたが、再び邂逅する未来はゼロではない。

因みに時間狂いの舞台となった屋敷は、老人が遙か昔に伴侶と暮らしていた住居の一つである。
伴侶が生前の間も、彼は幾つもの屋敷と転々としてきた。
その後、伴侶が亡くなった後に再び弟子とともに訪れ実験を開始した。



●招待状が届いた時に死んだ男
実は招待状にかけられた幻影呪文であり、誰も死んではいないのだ。
よって警察も呼ばれなければ、近所の住人が騒ぐこともない。
いつの間にか手に持っていた紙も、最初から2枚持っていた記憶をすり替えられただけである。
めった刺しに近い死体を目撃したのに正気度喪失が(1/1d3)程度ですんだのもこのためだ。



●使用人たちの正体
彼らは皆、老人こと不死の魔術師が作り上げた人造人間(ホムンクルス)である。
使用人たちに正気度はなく、老人の力によって平静を保って仕事している。
そのため老人が死んだ瞬間、使用人が一斉に狂気に陥る混乱が起きたのだ。
彼らの生まれた理由は、主人である老人へ奉仕するただそれだけである。
老人を殺したならば、生まれた意味を奪った探索者たちを彼らが許すことは絶対にない。
ただ、主人からの命令がないという理由だけで、探索者を襲うことは絶対にしない。
しかしその事実を探索者が知る事はないだろう。



●創作神話生物について
「時間喰らい」と「影追虫」は、本シナリオの為に創作された神話生物クリーチャーである。
屋敷の謎の広間は、時間狂いの世界へと変貌した際に空間も歪んだことで出来た場所である。
もしかすれば、時空の辺獄の一片かもしれない。
「時間喰らい」と「影追虫」は、その歪みからやってきた化け物だ。

柱に打ち付けられた耳や唇は、今まで犠牲となった探索者たちの部位が使われている。
主に影追虫に乗っ取られた発狂人間がやったものだ。
これは影追虫たちが寄生する際に、侵入しやすいの耳や口を気に入っているからである。
(余談ですが、トリモチ棒はちょっとしたネタ要素のつもりで加えました。)



●手記を残した使用人について
このNPCは使用人というだけでなく、老人こと不死の魔術師の優秀な弟子でもある。
使用人は老人をとても尊敬しており、かなり恩義を受けていた。
同時に、老人もこの弟子をそれなりに可愛がっていたのだ。
老人が最初に屋敷からの脱出方法を模索し始めたのも、弟子を屋敷から助けるためである。
しかし何度かの交信を取ったが返事がなくなり、老人は弟子の死を悟ることとなった。
使用人を行かせたがらないのはこの事も要因の一つである。

弟子は自分なりに脱出しようと必死にあがき、最悪なことにクァチル・ウタウスと接触を果たしまう。
名残の一つとして老人の暗号を解いたメモ――地下の謎解きを最終段階までもっていった状態がある。
神との接触を果たした末路は、地下2階にあった小さな塵の山が全てを物語っている。
これは「塵を踏むもの」の原作を意識した要素でもある。



●脱出方法の補足
老魔術師は完全な時間とは正確に時を刻み続けることだと解釈した。
そのためアイオーンから獣帯を外すことで時間の概念を不完全にし、空間の時間を止めていた。
脱出も時間が凍結された状態下での方法で考えられていたが、不測の事態が発生する。
魔導書の空間への干渉力が高すぎたため、時間の凍結は狂いになってしまったのだ。
ところが魔術師はその変化に気づかず、予定通りの間違った方法を使ってしまう。
結果、計算から大きく脱線した末に瀕死の重傷を負いながらの帰還となった。
魔術師は復帰後からの研究により間違いの原因を確信し、実験を重ね今回の方法を編み出したのだった。
アイオーンを不完全な状態から、完全な状態に戻すというものだ。
その後は実験体たちに獣帯をアイオーンへと戻させ、加護を受けた安全な方法で脱出させるようになった。




●二重の真実について
一つ目の真実は【赤薔薇の首飾り】について、二つ目の真実は【カルナマゴスの誓約】についてである。
一つ目だけを知ればハッピーエンドへと繋がるが、二つ目までを知るとバッドエンドに近くなるのは何故か。
それは深く知りすぎると破滅へと繋がるクトゥルフならではのホラーを意識したからである。
この世界観では貪欲過ぎる探究心ほど人は狂いやすくなるものだと思い、本作のような展開へと発展した。




○大幅な修正にあたって(追記:2017/03/25)
再び回す機会ができたため、改めて大幅な修正を行いました。
知識不足故にそのままにしていた神話生物の認識違いも改変し、構想中の続編の要素を加えてあります。
続編は構想段階のため完成するかもわかりませんが、もしお目見えすることがあればよろしくお願いします。

 

17:参考・引用(敬称略)


湖の隣人の小屋:http://www5d.biglobe.ne.jp/~lake-god/index.html#top
唐草図鑑:http://www.karakusamon.com/index.html
クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPG
キーパーコンパニオン 改訂新版



***ここまで読んで頂きありがとうございました。***
(2013/08/13) シナリオ製作:kanin(http://kanin-hib.hateblo.jp/
(2013/09/02) 一部の文章を修正
(2014/06/18) 全体の文章を校正
(2014/06/26) イベントを追加
(2017/03/27) 大幅な情報修正