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CoCシナリオ「まじない娘」

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※「いたずら娘」の続編シナリオです※

01:はじめに


このシナリオは「クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPGー」に対応したシナリオフックです。
舞台は日本のどこか、推奨人数は1~3人程度。
*推奨技能:<説得><目星><聞き耳>
 対象が学生のため、技能よりNPCとの会話が重要となる。
 探索難易度は高くないが、簡単な選択肢で進行が左右される。
 怪異への足がかりが「NPCを救う」一点のみなので、関係を深めたい探索者でなければならない。


●本シナリオについて
前作「いたずら娘」の四姉妹たちが「もし救われた場合どうなるか?」という前提で設定を考えました。
元々はテストプレイで、作者の予想以上に健闘してくれたプレイヤーさん方へのキャンペーンシナリオです。
前作から今作までに辿った過程は後述してありますが、かなり無理矢理な面が強いので各自で調整をお願いします。


●「いたずら娘」から本作までの繋ぎ
廃ビルでの事件後、彼女たちの行方が気になった探索者たちは執念深く情報を探し集める。
長女は消息不明なものの、次女と双子は某病院で3年前から意識不明状態で生きていることが判明した。
辿り着いた病院で、長女以外の姉妹たちは痩せた姿で深く眠っていた。
探索者たちは足繁く通い、根気強く姉妹たちの目が覚めるよう語りかけ続ける。
そんなある日、姉妹たちのまぶたが開いた。
「ずっと悪夢の中を彷徨っていたけれど、君たちがそばにいてくれた。」
彼女たちは過去の記憶が消えているらしいものの、ビルでの事件はうっすらと覚えているようだ。



●本文の表記について
各単語や文章によっては以下のように括弧表記を使い分けています。
少々の抜けや誤表記があっても各自で対応して頂くようお願いします。
重要アイテムや特記事項などの単語:【】
特筆する文章情報:<>『』
技能や呪文に関する単語:《》
補足説明やPL・KPへの特記事項:()※
NPCの台詞や名前など:「」

 

02:あらすじ


廃ビルでの事件から季節はめぐり、すっかり真夏となったある日。
探索者たちと彼らに救われた春上姉妹(里英、和花、愛美)は、一緒に遊びに行くほどの仲になっていた。
今日は姉妹の退院祝いも兼ねて街へ繰り出し、ひと時を楽しむはずだった。
だがある人物との邂逅が、新たな怪異への口を開く。

 

     ( 目 次 )

     01:はじめに
     02:あらすじ
     03:背景
     04:「発端」
     05:「思い出の場所 - 失踪編」
     06:「思い出の場所 - 同行編」
     07:「両親の帰郷」
     08:「希望を求めて」
     09:「蒼子との対峙」
     10:「求められる選択」
     11:「結末」
     12:クリア報酬
     13:NPCステータス一覧
     14:参考・引用(敬称略)


 

03:背景


●名前について
春上家の女人は後述の因果を背負っているため、厄除けに真名と仮名を与えられている。
戸籍上や普段の生活では仮名を使い、真名は母親しか知らない。
娘本人に伝えられるのは十八歳を迎えてからで、長女の蒼子のみ姉妹全員の真名を母親から聞かされている。
「いたずら娘」の結末で長女が「そんな名前は知らない」と答えたのは「真名が違う」と言う意味合い。



●前作から引き継いだ詳細な背景
蒼子は両親の所在を掴もうとする過程で魔導書『妖蛆の秘密』を見つけている。
「いたずら娘」ではこの魔導書が原因で姉妹は死亡済み、あるいは発狂済であった。
だが魔導書が原因の現象は<家に現れた蛇や蛆、体に感じた不快な感触>だけだ。

本来の原因はこの魔導書ではなく、春上家の血筋にある。
春上家は物の怪が信じられていた時代に「ヘビたちの父 イグ」より呪いを受けてしまった家系である。
呪いは隔世遺伝的に発症し、四姉妹は丁度その代に該当してしまったのだ。
この呪いは既に蒼子が発現しており、いずれは里英や双子たちにも起きる。

発症時期は、本来はみなの様子がおかしくなった時点で発症するはずだった。
しかし蒼子が魔導書の力を使った事により、偶然にも被害を自分へ逸らす結果となる。
一方で代償として行われたのが、一般人を対象に星の精を使った例の事件である。
狂気を一心に背負うことで、イグの興味を自分へ向けていたのだ。

だが無理に呪いの効果を逸らしたことにより、妹たちは意識不明に陥ってしまう。
その事実は蒼子をより狂気の世界へ引きずり込んで行った。
彼女は血筋の呪いのことなど知らない。
原因が何かも分からないまま未だに狂気の世界へ歩を進めているのだ。



●本作での蒼子の目的
蒼子は「暗きハン」から授かった予知により、妹全員が凄惨な死を迎える予知を幻視してしまう。
家族との幸せが元々の行動原理だったため、この物語では不幸を回避しようとしている。
しかし実際は不幸の回避でなく、寧ろ誘導になっている事を彼女は知らない。
彼女が助けうるだろうと考えた方法とは「イグ」との接触である。
神様に頼めばなんとかなるはずだと思っているのだ。
ところが彼女たちは「イグ」に呪われてしまった家系、もし接触すれば確実に殺されるだろう。
「イグ」を目指しているのは、予知を授けてくれた「暗きハン」の更に上位に位置するため。
蒼子は更に正気を失い、血族の呪いも進行しているためもはや時間の猶予はない。
彼女を正気の世界へと引き止めているのは、妹達への家族愛だけである。



●「暗きハン」の目的
「暗きハン」は蒼子のイグの崇拝心に惹かれて彼女らに前に現れた。
ところが蒼子からイグの呪いを感じ取り、彼女らはイグの意志により死すべきだと判断した。
ハンは彼女らが自ら死へと向かうように誘導している。
同時に、他の姉妹たちをも誘い込もうとするだろう。



●探索者の目的
探索者は姉妹を救うことが目的となる。
そのためには姉妹と協力し、蒼子を説得しなければならない。
蒼子本人は探索者に危害を加えるつもりはない。
元凶である「暗きハン」からも直接的な妨害はないが、何かを仕掛けてくる可能性はある。



●シナリオのギミックについて
姉妹たちと行動を共にする過程で、長女との思い出や心配する思いが語られる。
これらの話は最後の長女への《説得》で、探索者から長女へ伝えることで効果を発揮する。
なお【説得チャンス、説得補正】はPLには公開されない。


 

04:「発端」


●みんなで遊びに
今日は春上姉妹の少し遅めの退院祝いに、みんなで町中へ遊びに来た場面から始まる。
その場に居るのは里英・和花・愛美と、三人を救ったとも言える探索者たち。

日中は複合施設で映画鑑賞である。
上映中《アイデア》《目星》《聞き耳》のいづれかに成功
イデア・目星 → <誰かの視線を感じた気がする。>
聞き耳 → <上映中途中に誰かが入ってきた音が聞こえる。>

 <★リボンの思い出(和花と愛美)>
この日の和花と愛美は、いつものツインテールではなくおさげにしている。
双子に対して《目星》《アイデア》の何れかに成功すると
 <髪型は違うがリボンだけはいつもと同じものだ>と気づく。
リボンについて聞くと、長女の蒼子から贈られたものだと教えてくれる。
和花「蒼子ちゃんがプレゼントしてくれたリボンなんだ」
愛美「蒼子お姉ちゃんとの思い出、今はこれだけだから……大切にしてるの」

 ★リボンの思い出【説得補正+5%】



●蒼子との邂逅
上映後は軽食を摂るため近くのファーストフード店へ立ち寄る。
席はカウンターすぐ横のボックス席に座ることに。
姉妹たちは少し離席するとのこと。どこへ行くのか聞くと、里英が小声で「お手洗いだよ」と伝えてくれる。

探索者には席で注文待ちと荷物番をしてもらう。
テーブル備え付けのメニューを見て選んだり、雑談でもして時間は経過するだろう。
暫くすると、背後のカウンター席に座っていたらしい一人の人物が席を立つ。
目をやれば<帽子を目深に被り、この真夏にハイネックの長袖と手袋を着ている女性だと分かる。>

女性は何かを注文するでもなく席を立ってしまう。
この時《聞き耳》に成功すると、去る瞬間に呟いた言葉を聞ける。
「あの子……が……そうでよかった。……ないと、私が。そう、…………出来ないのだから。」

言葉を聞いたPCのみ《精神分析》か《アイデアの半分》が行え、成功すると以下の様に察する。
<今の言葉には強い決意のような思いを感じた。>


女性が店を出たところで姉妹たちが戻ってくる。
和花と愛美は席に座るが、里英のみが立ち尽くしているだろう。
声をかけようとすると、突然店の外へ駈け出してしまう。
追いかければ、店の出入口で辺りを見回してるだろう。
何事かと聞けば言い淀み、以下の様に誤魔化すだろう。
里英「見間違いだから気にしないで。それよりお腹すいちゃったよ、さっさと注文して食べよ。」

ここで《言い包め》に成功すれば、里英は成功者にだけ小声で話してくれる。
「姉さんに似た人がいたの。でもきっと気のせいだから、驚かせてごめん。」
「和花と愛美にはナイショにしてね。アタシより動揺しちゃうから。」


 <※KP情報※>
女性は四姉妹の長女、蒼子である。
姉妹を助けることに執着し、呪いの進行を隠してまで様子を見に来たのだ。
呟いた言葉の全文は以下の様。
「あの子たちが幸せそうでよかった。守らないと、私が。そう、私にしか出来ないのだから。」



●最初の分岐点
食後にはすっかり日も暮れて、あとはそれぞれが家に帰るだけだ。
この時に姉妹を家を送ろうとすれば、里英は「そこまでしなくていいよ」と苦笑気味に遠慮するだろう。
愛美と和花は喜んでいる。少し押すか、二人の様子に里英も折れる。
帰路の道中に、里英を真摯に気にするか、《心理学》などに成功すれば次のように探索者は感じる。
<里英の様子はどこかよそよそしく、隠し事をしているかのように髪をいじっている。>

コレに対して《説得》や《信用》に成功するか、真剣な意志を感じさせるRPを見せれば、里英は心境を話してくれる。
もし曖昧な態度をとったり、交渉に失敗した場合は、翌日になると探索者へ電話がかかってくる。
電話の主は双子たちだ。彼女らの声からは不安が表れ、次のことを伝える。
「里英ちゃんが居なくなっちゃった…!」
詳しく聞けば昨晩の就寝時には居たという。
以降は【「思い出の場所 - 疾走編」】の項目へと移る。


 <★里英の心境>
観念した里英は、自分たち姉妹の実家へ向かおうとしていた事を話すだろう。
きっかけは姉、蒼子らしき人物をみかけたこと。
里英は自分だけがのうのうと幸せでいようとすることに罪悪感を感じていた。
あんな目に遭ったとはいえ、大切な姉であることには変わりない。
何より自分たち姉妹を誰よりも大切に想っていてくれていたことはしっかりと記憶に残っている。

黙って行こうとしたのは、自分の大切な人物に何かあっては困るから。
和花と愛美だけでなく、事件に関わった探索者のことだ。
一方で独りで行こうとしていたことに不安も感じていた。
強がっているとはいえ、怖くないわけではない。
里英は自分から「一緒に来てほしい」と頼むことはしない。
だがこの場で引き止められようと、里英は行くのを止めることはないだろう。

 ★里英の心中【説得補正+5%】


探索者には選択肢がある。
里英を一人で行かせるか、一緒に向かうかだ。
一人で行かせるならばこのシナリオは姉妹の死を持って終了する。
一緒に向かうならば、新たな怪異に足を踏み入れることとなる。
だが、姉妹を救う最後のチャンスを得ることと同意でもある。
怪異に巻き込まれる覚悟があるならば、2日目からは姉妹との探索が開始される。


 

06:「思い出の場所 - 失踪編」


●里英が失踪した場合
双子から話を聞くと、今朝起きた際に置き手紙がしてあったと言う。簡潔すぎるほどの内容だ。
 <里英の置き手紙>
『調べ物をしに暫く留守にします。
 困ったことがあったら大家さんや○○(探索者名)を頼ること。』

和花も愛美も泣き出しそうな顔で、二人にどこへ行ったのか心当たりが無いかと聞くだろう。
この後は《アイデア》の結果でルートが別れる。
失敗すると<もしかしてあの時の廃墟ビルだろうか?>と浮かぶ。
成功すると<姉妹をずっと担当していた医者なら何か知っているのでは?>と思いつく。

 <※KP注意点※>
リアル時間の進行上、厳しそうならば双子に居場所を思い出させる。
どのみち、里英よりは遅れて到着することとなるだろう。




●廃墟ビル(※省略可能)
いたずら娘の舞台となった廃墟ビルだ。
探索者と姉妹の事件の思い出を語る場面になるかもしれない。
入り口付近には【髪留め】が落ちており、状態からそう古くないと分かる。
これは蒼子の落とし物で、和花と愛美が誕生日にプレゼントしたものである。
双子がその場に居るならば、聞けば答えてくれる。
愛美「これ蒼子お姉ちゃんのだ」
和花「和花たちがあげたのだね」
愛美「うん、リボンのお返しにって」
和花「ずっと大切に着けてくれてた」
愛美「捨てる…なんてこと、お姉ちゃんがするはずないだろうし……。」
和花「でもなんでこんな所にあるんだろう…?」

 ★髪留めの思い出【説得補正+5%  髪留めを見せる→チャンス+1回、】


更に探しまわると、屋上に血痕があり、ボロボロの本が置いてある。
しかし手に取ると本は崩れ落ちてしまう。
崩れ落ちた破片を《目星》を成功させれば<血が染み込んでいる>と分かる。
気味の悪い本だと察した探索者は(0/1)のSANチェックが発生する。
前回例の本を見た探索者ならば見覚えがあるだろう。
PLにはリアルアイデアで「星の精がまた召喚されたのでは?」と察するヒントとなる。




●姉妹たちの担当医の話(※省略可能)
担当医「羽野先生」の電話番号は和花が知っている。
退院したとはいえ元は重症患者なのもあり、もしもの備えだろう。
電話をかければすんなり本人が出てくれる。
里英の失踪と行きそうな場所を聞けば、春上姉妹の実家を候補として挙げてくれるだろう。
住所を聞けばちゃんと教えてくれるが、鍵は里英に渡してしまったと言うだろう。
場所は電車で1時間はかかるような場所だ。
なお、姉妹たちは意識不明になった後遺症で一部の記憶が欠如している。

 <※KP情報※>
住所は春上姉妹の実家であり、鍵はその家のものだ。
里英は最初の担当医からこれを受け取っていた。
事件の発端であろう実家に向かう勇気は出ず、妹達にも相談はできなかったのだ。
だが日中に蒼子と思しき人物を見かけたことで単身で向かおうと考えたのである。



●春上姉妹の実家
探索者が実家前に着くと、そこはなかなかに大きなお屋敷だ。
住宅街から離れているため近所に人影はなく、屋敷の後ろには裏山が構えている。
双子に聞けば確かに自分たちの実家だと教えてくれる。
ただ自分の家だと確信はあるが、無意識に刷り込まれた恐怖に二人は震えている。

呼び鈴を鳴そうとすると、意外なことに音がなる。
電気はまだ通っているようだ。
扉を引いてみようとすると、鍵はかかっておらず開く事ができる。
玄関には靴が一足だけ置いてある。
《アイデア》に成功すれば<この靴は里英のものだと察する。>
呼びかけても返事が返ってくることはない。

屋敷内は全てふすまで仕切られており、どこも閉め切られている。
その中に一箇所だけ開いている場所がある。
中を覗いてみれば、ダンボール箱から取り出された書類が散らかっている。
その傍らには倒れている里英の姿がある。
起こせば少し身じろぎした後に目を覚ますだろう。
誰かに襲われた等といった事はなく、単純に少し眠気に誘われて休んでいただけである。
来たはいいものの、少々空気がこもっていたため家の軽く掃除をしていたのだ。

探索者の姿を認めれば、驚きの表情で「なんで…」と動揺する。
問い詰めれば、ここへ来ようと思ったきっかけを話してくれるだろう。
ただし、負い目や不安と言った心中は話してくれない。(=補正用の情報「★里英の心境」なし)
屋敷に来た一番の目的は【長女である蒼子の手掛かり】を得ることだ。
早朝に引き止め損ねたなら、探索者に選択肢が与えられるのはここだろう。
今すぐ帰って日常に戻るか、捜索に協力して怪異に巻き込まれるかだ。

怪異に巻き込まれる事を選んだならば、以降は同行ルートと同じ道筋となる。


 

07:「思い出の場所 - 同行編」


●実家の探索
場所は電車で1時間はかかるような場所だ。
探索者が実家前に着くと、そこはなかなかに大きなお屋敷だ。
住宅街から離れているため近所に人影はなく、屋敷の後ろには裏山が構えている。
双子に聞けば確かに自分たちの実家だと教えてくれる。
ただ自分の家だと確信はあるが、無意識に刷り込まれた恐怖に二人は震えている。
(項目引用)

同行ルートならば、屋敷の鍵は里英が持っているのですんなり入ることが出来る。
中へ入ってみれば、どこもふすまで仕切られた純和風のお屋敷だ。
空き家同然であったが、未だに電気や水道はまだ通っている。
もしここで里英と合流したならば、彼女を発見した物置部屋は何もない。
それは里英自身が教えてくれるだろう。
なお、里英や和花と愛美の部屋は本人が拒否するため探索できない。
探索すべき場所は2部屋、【両親の部屋】と【長女(蒼子)の部屋】だ。




―◆両親の部屋◆―
両親の部屋には沢山の書物が溢れかえっている。
姉妹に話を聞くと「夫婦共同の書斎のようだった」と教えてくれる。
手頃なものを手にしてみると、難解な古語が達筆な行書で書かれているため読めそうにない。
どうしても読むためには《日本語の半分》と《歴史》の両方に成功しなければならない。
もしも成功したならば<これらの書物は、呪いや呪術と言った事に関する書物だと分かる。>


図書館》に成功すると
書物に混じってノートが混じっているのを発見する。>
<ノートの中身>
呪いを解くためにはどうすれば良いかの研究がびっしりと綴られている。
だが、どれも中途半端で方法が最後まで書かれていない継ぎ接ぎしたような内容だ。
ページを進めていくと、最後に《退散の呪禁》というものがある。
この言葉を修得するためには[INT×4]に成功しなければならない。
言葉と一緒に、「これだけでは足りない」と書かれた一文を最後にノートは終わる。

 <※KP情報※>
《退散の呪禁》は《プリンのアンサタ十字》に感じての不完全な記述である。
アンクの作成方法は記述されておらず、アンクを使用するときの呪文だけが習得できる。


《目星》に成功すると
<木の箱に収められた、古めかしい巻物のような書物を発見する。>
紐解いていくと、書面には沢山の名前が綴られ線で結ばれている。
どうやら【春上家の家系図巻】だと分かるだろう。

《アイデア》か《歴史》に成功すると
<家系図の名前から、春上家は随分と長く続く女系族であると分かる。>
《目星》に成功するか、姉妹の名前探せば
<四姉妹の名前も書かれているが、赤い丸で囲ってあるのが分かる。>
他の人物にも赤い丸がないか探してみれば
<何代か感覚を開けつつ赤い丸がされている事がわかる。>

長く家系図を見ていた探索者には次のような現象が発生する。
家系図を見ていた探索者は<自分の手に鱗のようなものが浮き出ているのに気づく>
『すると視界が真っ赤に染まり、強烈な耳鳴りで頭を抑えこむも全く止まない。
 ノイズ混じりに赤い視界が切り替わる
 知らない世界 知らない男 知らない女 高らかに響く笑い声
 近くに居た誰かが声をかけた瞬間、視界は元に戻り、耳鳴りも止み、手も普通の人の肌に戻っていた。』
悪夢のような、まるで何かの呪いを受けたような幻覚を見た探索者は(0/1D3)のSANチェックが発生。

 <春上夫妻の話>
もし夫妻の話を姉妹に聞くと、少し顔を見合わせつつ話してくれる。
里英「父さんと母さんの話ってなると……」
和花「お父さんは妻っ子の親馬鹿で」
愛美「それをクールにあしらうお母さん!」
里英「――って、感じかな。夫婦仲は至って良好もいいところだったよ。」
和花「喧嘩なんて全然しなかったもんね。する前にお父さんが泣いて謝ってたし。」
愛美「愛美たちもお母さんたち大好きだったし」
里英「だからこそ居なくなった時は一層落ち込んじゃったんだけどね……。」




―◆長女(蒼子)の部屋◆―
蒼子の部屋は机と本棚や姿見などがあるが、どこか閑散としている。
姉妹に聞けば「こんなに物が少なかったかな?」と気にしているだろう。
《アイデア》に成功すると
<まるで居なくなる前に、身元の整理をしたかたのようだ>と思いつく。

《目星》に成功するか、机へ目をやれば
<家族のアルバムらしき本が積み重ねて置いてある>
《アイデア》に成功すると
<埃が全く被っておらず、最近置かれたものではないか>と察する。

 <アルバムの中身>
アルバムには四姉妹の写真が赤ちゃんの頃から丁寧に収められている。
旅行の思い出や何気ない日常、入学式に卒業式、誕生日のお祝いなど、穏やかな日常に溢れている。
姉妹全員が仲良く寝入っているものや、互いに髪留めと付け合う蒼子と双子姉妹。
中には蒼子に泣きついている幼き里英の姿もある。
ところが几帳面に収められていた写真も、里英たちが中学の頃からパタリと途絶えてしまった。
その後に続く白紙のページを見ながら、姉妹たちは暗い顔をしているだろう。

《目星》か《幸運》に成功すると
<一枚だけ写真が抜き取られた跡があることに気づく。>


 <★里英の幼少の思い出>
里英にどうして写真の中で泣いていたのか尋ねると、少し恥ずかしそうに昔話をしてくれる。
母の日に花をプレゼントしようと山の中に入ったが、迷ってしまい帰れなくなってしまった。
段々と辺りも暗くなりだし、小雨まで降り出してきた。
周囲の木々のざわめきがまるでお化けのようで泣き喚くも誰も来ない。
どうすることも出来ず、疲れ果てて随分と古めかしい祠のような場所で座り込んで怯えていた。
すると、目の前の茂みが動いた。
そこから現れたのは、自分と同じように目元を真っ赤に泣き腫らした蒼子だった。
迎えに来てくれた姉の顔を見て、自分は思わずまた泣きだしてしまったそうな。
きっと泣いているだろうと分かっていたように、姉はこっそり持ってきたらしいお菓子を渡してくれた。
その後は姉が手を引いて、無事に家には帰れたという。
家に戻れた安心感からまた姉に抱きついて泣いた時に、いつの間にか写真は撮られたようだ。

 ★里英の幼少の思い出【説得チャンス+1回、説得補正+10%】




●蛇の使者(※省略可能)
 <※KP注意点※>
リアル時間の進行上、厳しそうならば「蛇の使者」イベントは省く。
家族写真は蒼子遭遇前に設置。《目星》か《幸運》で発見させる。


両部屋の探索が済んだところで、外を見ればすっかり暗くなっているのが分かるだろう。
探索者が良ければ、この家で宿泊する頃が可能だ。
部屋は有り余っているし、布団は人数分ある。
提案は里英からしてくれるだろう。
ただ、食事は少し遠出してコンビニなどで買ってこなければならない。

宿泊した場合、あるイベントに遭遇することとなる。
寝る準備をしている最中に《聞き耳》をしてもらう。
成功すると<縁側の方向から愛美か和花の叫ぶような声>が聞こえる。
縁側へ駆け込めばへたり込んで何かに絡みつかれている愛美がいる。
絡みついているのは【何匹もの白い蛇】である。
赤い目をした幾つもの白い蛇からは、まるで人間のような声で「おいで おいで」と誘う声が聞こえる。
人語を操る不可解な蛇を目撃した探索者は(0/1d3)のSANチェックである。

あまりの事態に恐怖しすぎた愛美は気を失ってしまう。
蛇は絡みついたまま、じわじわと愛美を外へ連れだそうとするだろう。
探索者は意を決して蛇を取り除かなければ、愛美は連れ去られてしまう。
蛇から危害を加えるつもりはないため、掴んで投げ捨てればそそくさと逃げ隠れて行く。

だが一匹だけは残り、じっと愛美を見つめている。
すると女性の声で「みんな むかえに いく まって いて」と呟く。
言葉を終えると、他の蛇と同様に姿をくらますだろう。
《アイデア》に成功すると
<廃ビルで話した、蒼子の声に似ていたような気がした>と感じる。

立ち去った後に《目星》に成功すると<一枚の写真が落ちているのを発見する。>
見てみれば、それは四姉妹と両親が映った【家族写真】だと分かるだろう。

 ★家族写真【説得チャンス+1回、写真を渡す+20%】


愛美は気絶したまま朝まで目を覚ますことはない。
屋敷以外の場所へ移動させることは難しいだろう。
騒ぎを聞きつけた里英と和花も遅れて縁側にやってきて、何があったか聞くことだろう。
話すかはどうかは探索者次第である。

この事で警戒心を抱く中、早朝になると屋敷に新たな訪問者が訪れる。


 <※KP情報※>
この蛇たちは蒼子の意思を利用した「暗きハン」からの誘いである。
ハンは長女だけでなく、姉妹全員を「イグ」に殺させたいのだ。
アルバムから抜き取られた写真は落ちていた【家族写真】である。
抜き取ったのは蒼子だが、それをハンが掠めとり誘いこむ餌の材料にしている。


 

08:「両親の帰郷」


●突然の来訪者
部屋の探索が終了したら、頃合いを見て《聞き耳》を行う。
成功すると<玄関の方から戸を開いた音と、誰かが廊下を歩いて行く足音が聞こえる。>

恐る恐る見に行けば、女性が玄関から中を伺っている。
女性の髪は長い白髪だが、老人にしてはやけに背筋がしっかりとしており、美しく着物を着こなしている。
窺い見る探索者たちの背後からは、もう一人の人物が歩み寄り、肩を叩いて驚かせることだろう。
振り返り見れば、ひげを生やした胡散臭そうな外人の男が、探索者たちを見下ろしている。
家族写真を見たならば《アイデア》を行える。
成功すると<家族写真で見た姉妹の両親と同じ顔だ>と察するだろう。
若しくは、この二人を確認した姉妹が両親であると知らせることとなる。



●春上夫妻(四姉妹の両親)
彼らは姉妹たちの両親である、母「文子」、父「タデウス」だ。
今作では事の発端の説明、そして解決の糸口を示す存在として登場する。

前作の時点では姉妹の両親は娘から呪いを取り除くべく、研究目的で蒸発している。
下の姉妹たちが辛うじて無事だったのは、蒼子の偶然、そして両親の力によるものである。
母親は姉妹の呪いを代わりに自分たちへ向けていたため、肌も髪も白くなりにも鱗模様が浮き出ている。
また、妻の負担を緩和しようと父親も初期症状を起こしており、うっすらと鱗模様が出ている。
これは蒼子も同様だが、彼女は母親よりも呪いが進行してしまっている。
両親の力も、イグへ直接的な接触をしかけている蒼子には効果が無いのだ。

探索者たちには、血族の呪いと、解呪方法が見つかったがあと一歩足りないことを話してくれるだろう。



●春上の血筋にかけられた呪い
  <春上家の血筋>
 その昔、先祖が崇めていた蛇神に対して無礼を行った。
 必死に怒りを沈めたものの、一族は呪いがかけられてしまった。
 それは一定の感覚を開けた何代後に、子供がヘビの怪物に変容するという呪である。
 変化は生まれつきでなくじわじわと兆候を見せる。
 産んだ子が無残に変容していく様を味合わせることでより強い後悔を抱かせるためだ。
 発症した子供の体は色素を失い、瞳は赤くアルビノのようになる。
 口には牙が生え、舌先は二股に別れ、肌は鱗が覆いはじめる。
 体温は徐々に低くなっていき、最後には理性を失って人を襲いだす。

 <※KPの注意点※>
話す上で重要なポイント
・呪いは蛇神(イグ)が原因であることを主張
・蛇神の姿は蛇そのものであること

 ★両親の帰還【説得補正+10%】
 ★原因の開示【説得補正+10%】



●解呪に必要なもの
《プリンのアンサタ十字》-ルルブ280p:神話生物を追放するアンクを作成する
※※※※※※※※※※   ルルブ引用   ※※※※※※※※※※※
この呪文はクトゥルフ神話のクリーチャーを
一時的、あるいは永久に追放できるアンサタ十字(アンク)を作る呪文である。
呪文のコストは[POW5ポイント]および[1D6]正気度ポイント。
対象となる品物は単一の金属でできたアンク(上が輪になっている十字)でなければならない。
純粋な銅・鉄・銀・鉛が手に入りやすく、成形も簡単な金属だ。
呪文の使い手は[20-INT]日間、散発的に儀式と供え物をする。
それからアンクに魔力を付与するために[POW5ポイント]および[1D6]正気度ポイントを消費する。
これでアンクは使用可能となる。

クトゥルフ神話のクリーチャーと戦うために、呪文の使い手は3ラウンドの間詠唱行う必要がある。
詠唱後、任意の値のMPを使用し、対象のMPと対抗ロールを行う。
呪文の使い手の仲間が、1人につき1MPを提供して協力してもいい。
呪文の使い手は[POW5ポイント]の印として、無償で使えるMPが5ポイントも加える。

呪文を知っているものなら、誰でもアンクを振りかざしてクリーチャーを追い払う試みをする事ができる。
ただし、本来の呪文の使い手に与えられる5MPのボーナスは与えられない。
アンクを振りかざす者とその仲間がクリーチャーに勝った場合、
クリーチャーは故郷の次元へ追い返されてしまう。
追い返すことに失敗した場合は、クリーチャーはまずアンクを振りかざした者に最初に襲いかかる。
その後、そこにいる他の者たちへ注意を向ける。
※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※※


両親はこの呪文を習得し、アンクは完成してPOWも込められている
しかし、神話生物に対抗する力(MP)が足りないと言う。
そこで春上家が所有する山の山中に治められている祠の話を始める。
祠には代々の頭首が魔力が込めてきた【宝珠】があり、それを使えば力も足りるだろうと推測したのだ。
因みに、里英の思い出話に登場した古めかしい祠と同じものだ。

ところが呪いを発症した者が入っても、結界により辿り着けなくなっているという。
両親は呪いの身代わりをしているため行くことは出来ない。
一方、下の姉妹たちは兆候は出ていないため行くことが出来る。
両親は自分の子供達に今までの秘密を打ち明け、取りに行くようお願いするために戻ってきたのだ。
この話を聞いて、探索者は自分で同行するならば自身から提案する必要がある。
でなければ、姉妹たちだけで取りに行く事となるだろう。
その場合、祠の近くで待ち受けていた蒼子によって全員が死ぬ結末へと繋がってしまう。

探索者から自分たちが祠へ行くことを提案すれば、両親たちは戸惑う。
自分たちの問題を、全くの他人に押し付ける形になってしまうからだ。
だが同時に、自分の子供達を危険な目に遭わせようとしている事実に酷く嘆いている。
強い意志さえ示せば、謝罪と、感謝を込めて任せることだろう。




●姉妹には話さなかった危険
話し終わる頃には日中になっているだろう。
まだ明るいため、探索者さえ良ければこの時間から探しに行くことが出来る。
その際に、探索者だけ両親から呼び出しをされて「ある話」をされる。

実は道具が揃っても、呪いを解くには蛇神と直接対峙しなければならない必要がある。
一度蛇神を呼び出した上で呪文とアンクで退散させる際に、アンクに細工された特別な呪法が呪いを断つのだ。
そして、この方法は多大なる危険が孕んでいることも話す。
なにせ元々は蛇神の怒りを買ってかけられた呪いなのだ。
下手に遭遇してしまえば春上の血筋の者は容赦なく殺されてしまうだろう。

ところが、肝心の蛇神の招来方法はまだわかっていない。
招来の呪文を探すべく、両親は道具を入手したらまた家を出るだろうと言う。
姉妹たちにはまた内緒で出かけるだろうから、探索者たちに伝えてほしいと願い出る。


 

09:「希望を求めて」


●山に入る準備
解呪に足りないものを山中へ取りに行くならば、里英は否が応でも着いて行くだろう。
双子は迷っており、探索者が行こうと言えば同行するが、何も言わなければ両親に止められる。
山の入口まではタデウスが送ってくれるだろう。

入り口に着くと、タデウスは探索者にあるものを渡す。
文子の力が込められた【アンク】と、重みのある巾着袋の2つだ。
祠への道が一族の力に反応して自然に導かれる仕掛けになっているため、【アンク】は力の代用だ。
巾着袋の中身は【イブン=グハジの粉】である。
道中には見えない道標が有り、それを可視化するために必要なのだ。
「枝分かれの道に出たら、この粉を撒くんだ。ただし予備はあまり無いから無駄遣いは控えるんだよ。」
姉妹が一緒ならば、強く心配する素振りと、探索者に「守ってやってくれ」と強く願うだろう。
なお《退散の呪禁》を習得していなかった場合、タデウスがもしもの時にと呪文が書かれた紙を巾着に忍ばせている。




●山中の探索
しっかりと【アンク】を持ち、道を進んでいけば【三本の分かれ道】に出る。
【粉】の使用回数は3回。1箇所に振り掛ける度に使った探索者が《幸運》を行う。
成功すれば振り掛けた道に<蛇を拒むような赤い図が浮き出てくる。>
失敗した場合は何も起こらない。その道を進むと、いつの間にか元の別れ道へ戻っているだろう。
2回失敗したならば、消去法で粉を1回分残して進んでも構わない。



●山の祠
正解の道を進んでいくと、縄で囲まれた少し開けた場所に出る。
中央には【赤い祠】と、その横に【小さな石碑】がある。
石碑は苔むしており、風雨で削れてしまった字の痕跡と、絵が刻まれている。

字をなんとか読もうとするならば《目星》に成功しなければならない。
成功すると<「蛇神 呪詛 女」「付呪縄 呪い 拒絶」>と言う文字だけが読み取れる。

絵をよく見た場合、それは<人の形をした蛇>だとわかる。
認識した瞬間『脳内に叫び声が響き、知るはずのない記憶が蘇る。』

『元は真っ白であっただろう着物が真紅に染まっている。
 白い肌に赤い瞳。口からは牙が覗き、片手に大きな鉈を持っている。
 凶器を持つ腕には、月明かりを反射し煌めく鱗が覆っていた。
 物の怪の類へ変容したであろう女性は、眼前の男に鉈を振り下ろす。』

『返り血が着物のより生々しい赤へと染め上げる。
 男は叫ぶ 助けてくれと
 女は笑う 血化粧に彩られながら
 二人は 叫び 笑い 泣いていた
 殺し終えた女が天を仰ぎ、口元を歪め嗚咽を漏らす。
 月光が露わにした女の顔は、姉妹たちの面影があった。』

石碑に宿る凄惨な過去を覗いてしまった探索者は(1/1D6+1)のSANチェックが発生する。


【赤い祠】の戸にはしっかりとした縄で閉ざされている。
縄は付呪がかけられており、蛇神の呪いを発症した者が触れられないようになっている。
呪いさえ発症していなければ、刃物か何かを使えば縄の切断は可能だろう。

祠の戸を開き、中を覗けば宝珠はなく、代わりに【銅鏡】が収められている。
【銅鏡】を手にすると、反射面には探索者は映らず、春上家の女性だけが映し出される。
該当する女性が銅鏡に手を伸ばせば、手がするりと鏡面の中へ入り込める。
鏡の中を少し探ると、何か硬いものに触れる感触がし、取り出してみれば【宝珠】であるとわかる。
この【水晶球】が探し求めていたアーティファクトだ。


<【宝珠】の効果>
この水晶球には春上家の代々の当主が積み重ねて蓄えてきた力が込められている。
所有者が力を求めて願うと、一時的に大きな力を人物に貸し与える。
時間は[1d10+4ラウンド]、力の大きさは[MP50ポイント]。
使用時のコストは(1D4)正気度ポイント。
時間が経過すると与えられた力は瞬く間に使用者から失われてしまう。

人間ならば誰でも使うことができ、使用回数と力の上限は水晶球に込められたMP分。
一度貸し与えると、蓄積されたMPは半分になっていってしまう。
つまり初回は[50ポイント]だが、2回目は[25ポイント]、3回目は[12ポイント]しか付与されない。


 

10:「蒼子との対峙」


水晶を見つけた時点で家に残って居た姉妹全員は連れ去られている。
祠に三人の姉妹が全員いるならば、うち一人が連れ去られる。
犯人は蒼子に使役されている星の精だ。

*家に探索者が残っていた場合
星の精が屋内へ忍び込み、姉妹の周囲に居る人物を跳ね除けて連れ去ってしまう。
その際に、星の精を食い止めようとした文子は怪我をして動けなくなってしまう。
粉は使いきって既になく、製法を知っている文子もアンクの作成や怪我により作成出来ない。
タデウスは文子を治療するため家に残るという。
文子は呪文のメモ《退散の呪禁》を探索者に渡して意識を手放すだろう。
探索者は早急に可視化された星の精を追いかけなければならない。



●連れ去られた姉妹
アーティファクトを入手したところで《聞き耳》を行う。
失敗では<背後の茂みからガサガサと音が聞こえる。>
成功すると<背後の茂みから「クスクス」という鳴き声が聞こえる。>

探索者がまだ粉を所持したままならば、《聞き耳》に成功者のみ
《幸運》か《投擲+20%》に成功すれば粉を当てて可視化することが出来る。
勿論、可視化すればSANチェックも発生する。
星の精を目撃した探索者たちは(1/1d10)のSAN値チェックだ。

この場では星の精の先制となり、探索者は粉を振り掛ける程度しか出来ない。
星の精は攻撃をすることは一切せず、姉妹の誰か一人を触手で絡みとり、連れ去ってしまうだろう。
その際に姉妹が【宝珠】を所持していたならば、それは地面に落としていく。

星の精が消えた先には、道標のように粉が落ちているだろう。
これは家に襲来した星の精を可視化するため、文子が振り掛けた【イブン=グハジの粉】だ。
よって姉妹が家から連れ去られた場合は、文子が所持していたで可視化されている。
もし先に実体を目撃していなかったならば、辿り着いた先で(0/1D10)のSANチェックを行う。




★【家族写真】を入手出来る追加イベント
追いかけた姉妹が消えてしまった手前で《目星》か《幸運》で発見させる。
成功すると<一枚の写真が落ちているのを発見する。>
見てみれば、それは四姉妹と両親が映った【家族写真】だと分かるだろう。

 ★家族写真【説得チャンス+1回、写真を渡す+20%】




●変わり果てた蒼子
道標の粉を辿って行くと、やがて深い霧に覆われて先が見えなくなる。
霧を抜けると大きな木々に囲まれた開けた場所に迷い込まされている。
奥まった位置に、連れ去られた姉妹は倒れ伏しているだろう。
ここで無事な姉妹が居たならば、手とつないでいないと星の精に掴まり気絶させられる。
また、文子により実体化させられた星の精を目撃した探索者たちは(1/1d10)のSAN値チェックだ。


木々の影から蒼子は現れる。

『木々の影から現れた人物は、探索者の記憶にある女性だ。
 姉妹たちの長女、蒼子の面影はあるが――明らかに姿が異質であった。
 彼女の髪は真っ白になっており、瞳も赤く、顔中に鱗がハッキリと浮かんでいる。
 うっすらと歪曲された口元からは、裂けた舌先と鋭い牙が見え隠れしていた。』

怪物へと変容してしまった人間を見た探索者は(0/1D6)の正気度喪失が発生する。


意識のある姉妹がその場に居れば、蒼子の姿が信じられない様子で怯えているだろう。
蒼子は探索者たちは眼中に無く、まだ意識のある姉妹をこちらへ引きこもうと星の精たちをにじり寄らせる。
「神様が私達を助けてくれるの、だからおいで」

蒼子にどういうことかと問えば「今から蛇神様を呼び出し自分たちを救ってもらおう」としているのだと話しだす。
「彼が私達に危険が迫っていると、この先の未来を教えてくれたの。」
「だから私はあんな未来から絶対にあなた達を救うために行動していたの。」
「神様は彼が呼び出してくれる! 手荒だけれど、それさえ済めば私達は救われるわ…!」
「彼が言うのだから大丈夫 信じれば彼は応えてくれるはずよ…!」

探索者は話を聞いた後に《アイデア》を行う。
失敗すると<もしこのまま蛇神と姉妹たちを遭遇させたら、皆殺しにされかねない>と感じるだけだ。
成功すると上記の情報に追加で<蒼子は”彼”と呼んでいる何者かにたぶらかされているのでは?>と察する。
クリティカルを出すと
<もし蛇神を呼び出された時に自分たちで退散させることが出来れば、全員を救える可能性があるのでは?>と察する。

闇雲に「そんなことをしたら皆殺しにされる」と言っても、彼女が探索者を信じることは不可能だろう。
蒼子の瞳は狂気に染まっているため《精神分析》でも回復は難しい。
ここからは《説得》の内容で決まる。
蒼子が言う彼こと「暗きハン」より、探索者を信用してもらえるよう様々な情報を駆使するのだ。




●決死の説得
星の精は最低3体はいる中、接近しようとしても軽くあしらわれてしまうだろう。
救いとしては、蒼子は誰かを殺したい訳ではないため、星の精に攻撃させることはない。
探索者側からの攻撃的な行動は、全て星の精で妨害される。
姉妹全員が蒼子側に捕まってしまっているならば、補正の着く情報を言わない限り連れ去られてしまう。
該当する情報さえRPで伝えれば、蒼子はその場で立ち止まり探索者の方を気にしだすだろう。


この後は蒼子を《説得》しきれるかどうかにかかっている。
何もしなければ、《説得》チャンスは一人一回、補正は(-10%)である。
説得RPで的確な情報を出せば、情報量に応じたプラス補正と追加ロール回数が付与される。
説得チャンスは1人1回のロールで消費される。
プラス補正は累積式であり、蒼子の心を動かすだろう情報を言うほどに増加される。

 <プラス補正のとチャンス追加が出来る情報>
 ★その場で意識のある姉妹の人数×5%
 ★リボンの思い出【説得補正+5%】
 ★里英の心中【説得補正+5%】
 ★髪留めの思い出【説得補正+5%  髪留めを見せる→チャンス+1回、】
 ★里英の幼少の思い出【説得チャンス+1回、説得補正+10%】
 ★家族写真【説得チャンス+1回、写真を渡す+20%】
 ★両親の帰還【説得補正+10%】
 ★原因の開示【説得補正+10%】




●説得結果による分岐
説得イベント後の共通点
*悪夢の霧に囲まれる
*暗きハンの顕現
*「イグ」招来の呪文が開始(3ラウンドかかる)

【暗きハン顕現文章】
『自分たちの吐く息が白く曇る。

『真夏だというのに、周囲は凍えそうなほどの冷気を放つ濃い霧に覆い満たされていた。
 異常な起床の変化に背筋を粟立てていると、一瞬の静寂を切り裂く叫び声が脳内に響く。
 嘆くかのような金切り声に混じって、苦しみ身悶えるうめき声まで脳内をかき乱しだした。
 恐ろしさに誰かと顔を見合わせれば、まるで強酸を浴びせかけられたように爛れた顔をしている。
 そんな幻聴が、幻覚が、引っ切り無しあなたの精神を拗じり潰しにかかってきた。』

『ただ一つ確かなことは、霧の向こうに浮かぶ覚えのない影が増えたこと。
 3メートルはあろうフード付きの外套をはためかせた、人間とも生霊ともつかない姿がいる。
 悪夢の霧を発生させる恐ろしい何かが現れたと言うことだ。』

濃霧によって現れた何かを目撃したことによるSANチェックはまだ発生しない。
長く晒されれば正気を失いかねない、精神への圧力を受けた探索者は(0/1)のSANチェックが発生する。
【※注※この霧に囲まれている限り、1ラウンドに(0/1)のSANチェックが発生する。】


【暗きハン目撃文章】
『顔は骸骨か、それともジャック・オ・ランタンか……
 空っぽの目、鼻、そして大きな歪んだ口の中には不浄な炎が燃えている。
 こちらへ移動しながら外套の欠片は剥がれ落ち、コウモリのような、あるいはヘビの姿となって空へ飛び上がった。
 冷淡な炎をちらつかせている虚ろの穴から吐出されているであろうおぞましき言葉が、聴覚を震え上がらせる。
 影のような骨格が、食事のナイフを構えるように這い伸びる。
 悪夢のような霧で下ごしらえをした、あなたの精神を貪り尽くさんと狙いを定めながら。』

暗きものを目撃した探索者は(1D8/2D10)のSANチェックが発生する。



 ―――説得に失敗する―――
蒼子は説得をされるも混乱しきってしまい、ひたすらに神様へ助けを乞い出す。
「わからない そんなの分からない! そうよ神様が…!神様さえ来てくれればきっと解決するのよ…!」

戸惑う蒼子に声をかけようとすると、周囲に濃い霧が立ち込め始めていることに気づくだろう。
彼女に近づこうにも、霧が濃すぎてどんどん視界から薄れていく。
「ああ…!あの方が来てくれた! 早く 早く早く早く! 神様を呼ばなくちゃ!」

【暗きハンの顕現文章】

蒼子の近くには「暗きハン」が顕現する。
説得に失敗している状態の蒼子は、自分がハンに騙されていることなど考えもしていない。
彼女はハンに縋るように近づき、神を呼び出して欲しいと懇願する。
そんな蒼子に、ハンは影のような骨格で触れ、容赦なくPOW(2D10)を吸収するだろう。
蒼子の体はみるみるしわがれて行き、最後には枯れ木のようになってその場に倒れ伏し、衰弱死する。

蒼子に使役されていた星の精も制御を失い、近くにいるだろう姉妹から飢えを満たすために吸血を死ぬまで行う。
近くに誰も居なければ、星の精たちは探索者たちを襲い出す。
そしてハンは、「イグ」招来の呪文を唱えだしている。

星の精の対象にさえされなければ、探索者は姉妹を見捨てて逃げ出すことが可能である。
逃走する場合は《幸運》と《DEX×3》の両方に成功しなければならない。
逃走に成功すると、蒼子は確実に殺されてしまううと同時に【結末2】へ移行する。
もし《幸運》でファンブルを起こしてしまった場合は、知らぬ間に「暗きハン」に近づいたこととなる。
【暗きハン目撃文章】
よって目撃による(1D8/2D10)のSANチェックが発生する。




 ―――説得に成功する―――
蒼子は自分の間違いに気づき、ハンが言った事に不安を感じ始めて激しく戸惑う。
「だって 彼が あの方が教えてくれた夢は あんなにも生々しくて……」
「そんな…いったい何が、どれが本当なの? 私がして来たことは間違いだったの?」
「まさか わたしは 騙されていたの……?」

戸惑う蒼子に声をかけようとすると、周囲に濃い霧が立ち込め始めていることに気づくだろう。
彼女に近づこうにも、霧が濃すぎてどんどん視界から薄れていく。
すると蒼子は何かに気づいた様子で声を張り上げる。
「逃げて!! 彼が来た 来てしまった…!早く!」と叫び警告を伝える。

【暗きハンの顕現文章】

逃げ出さない場合、蒼子はせめて姉妹や探索者たちだけでも逃がそうと反旗を翻すだろう。
星の精をけしかけるが、ハンにはとても届きそうにない。
そしてハンは、「イグ」招来の呪文を唱えだしている。

囚われた姉妹は霧の向こうだ。
ここで逃げ出せば、少なくとも探索者だけは生還が可能である。
逃走する場合は《幸運》と《DEX×3》の両方に成功しなければならない。
逃走に成功すると、蒼子は確実に殺されてしまううと同時に【結末2】へ移行する。
もし《幸運》でファンブルを起こしてしまった場合は、知らぬ間に「暗きハン」に近づいたこととなる。
【暗きハン目撃文章】
よって目撃による(1D8/2D10)のSANチェックが発生する。


 

11:「求められる選択」


●ハンの詠唱中
暗きハンは呪文の詠唱が終わる3ラウンドの間は攻撃らしい行動は行わない。
探索者に与えられた選択肢は、
「ダメ元で攻撃を行う」「逃走する」「《退散の呪禁》を使う」「囚われた姉妹の元へ行く」この程度だろう。

姉妹は揺り起こせば虚ろげに意識を覚醒させる。
しかし神話的存在の目撃によるSANチェックも発生する。

説得に失敗しているならば、3体の星の精から逃げ惑うこととなる。
説得に成功しているならば、蒼子が星の精で攻撃を行っても全く当たらない事から無駄だと分かるだろう。
ハンは生きている影であり暗闇なので、魔術と魔力を付与された武器によってのみ危害を加える事ができるのだ。


 ◆説得による分岐の相違点
<失敗ルート>
 *蒼子が死んでいる
 *星の精3体が敵NPCとして参加する
<成功ルート>
 *蒼子が生存し、探索者の味方となる
 *星の精3体が味方NPCとして参加する

失敗した場合、星の精は敵対してしまう。
前作「いたずら娘」では次の呪文を習得するチャンスが有った。
《吸血鬼を招待する》(=《星の精の召喚/従属》(ルルブP.283参))
ほぼ居ないだろうが、もし習得している探索者がいればこの呪文を使うことも可能だ。
呪文を使えば星の精を敵対させずに味方にできる可能性はある。


 ◆霧の効果
※霧に囲まれている限り、1ラウンドに(0/1)のSANチェックが発生する。
*ハンの霧の中では、視覚か聴覚に関連した行動を行う場合
《目星》か《聞き耳》を半分の値で成功する必要がある。
攻撃を行う場合、上記の技能に成功して対象を見つけ出す。
次に、命中率を半分にした攻撃ロールに成功すると、対象に命中する。
攻撃ロールが失敗した場合、KPの裁量で霧の中に居る仲間の探索者に命中した可能性を作ってもいい。



●ハンの詠唱後
詠唱が終わるのは、3ラウンド目のハンの行動順番が来た瞬間だ。
もしもハンが顕現する前から呪文の準備をしていた場合
詠唱し終わる前に《プリンのアンサタ十字》の呪文を成功させることが出来るだろう。
その結果、《イグの招来》は発生しない。
よって【結末1ー●姉妹との別れ】になる。

(※入れるかは検討のイベント※)
<蒼子と星の精3体が生存している>
ハン詠唱が終了し、蒼子が生きていなければそのまま姿を消す。
説得成功後ならば生存している蒼子からPOWを吸い取ろうとするだろう。
探索者か姉妹の誰かが蒼子の近くにいてやれば、その危機を喚起することが可能だ。
喚起することが出来れば、星の精一体を身代わりにして蒼子は難を逃れる。

『外套の姿が消えていく。それと同時に冷たい霧も晴れていった。』
『脅威が消えたことに一息着こうと息を吸うだろう。
 だがそれも、足元を撫で擦るように蠢きすり抜けていく感触で喉を詰まらせることと成る。』




●蛇神イグの顕現
『足元は白い絨毯を敷いたかのように、ヘビの群れで一面が覆われていた。
 白い蛇たちは森の奥からやってくる何かへと群がっていた。
 現れたのは、逞しい体を艶やかな鱗が覆った、ヘビのような頭部を持つ大きな人物。
 鼻は表面と一体化して突き出た口から腕一本を軽く貫けそうな牙が生えている。
 釣り上がった赤い瞳を鋭く煌めかせ、畏怖を抱かせる眼光を浴びせてくる。
 蛇神は周囲を一瞥すると、ゆっくり姉妹たちの元へ、ヘビを引き連れながら歩を進めだしていた。』

蠢くヘビの巣を目撃した事により(0/1D2)
更に、蛇神を目撃した事により(0/1D8)のSANチェックが発生する。

イグの行動方針は【春上の血筋を殺すこと、それを邪魔する者も殺すこと】である。
探索者たちはなんとかしてイグからの攻撃を躱しながら《退散の呪禁》を成功させなければならない。
呪文に必要な時間は3ラウンド、宝珠のMPはハンに対して使いかけていたならば、次は半分になっている。
(なお、呪文を行った探索者のMPが消費されている。)
蒼子の説得に失敗していると、イグを躱すことは自分たちだけで行わなければならない。
成功していれば、蒼子は引き続き姉妹と探索者を守るべく星の精を使役して協力していくれる。

探索者が全員イグに殺されたならば【結末2】と同じようなルートになる。
また、呪文を使わずにイグの耐久を削り切ると、イグは身を潜めて再び招来しなければならない。
よって呪いは解除されず【結末1】へ移行する。
見事呪文とアンクを使いイグを退散させたならば、アンクに込められた力により呪いは解除される。
そして【結末3】へ移行する。


 

12:「結末」


●結末1ー「姉妹との別れ」
暗きハンがイグ招来の詠唱を終える前に退散させてしまった場合である。
暗きハンの脅威は去るが、イグの呪いは解けないだろう。
姉妹たちは生き延びるものの、両親が招来の呪文を探す過程で呪いは発症してしまう。
呪いの末路を知っている姉妹は、迷惑をかけるまいと探索者たちの前からひっそりと姿を消すだろう。
再び巡り合えるとしたならば、それは何十年も先の話と成る。




●結末2ー「失われた未来」
ハンやイグが顕現してから逃走した場合である。
例え姉妹を連れて山を逃げたとしても、ハンが招来したイグが春上の血筋の者を直ぐに探しだしてしまう。
その際、イグは呪いの因子を持つ者を見つけた順番から[POW対抗ロール]を仕掛ける。
イグが対抗に勝利した場合、受けた姉妹は(D100)の正気度減少が発生してしまう。

イグと遭遇してから《プリンのアンサタ十字》を成功させれば【結末3】へ移行する。
ただし蒼子は既に霧の中から逃げ出すことが無く、置いてきた時点で星の精の助力はありえない。
探索者は3ラウンドの間、生身でイグと渡り合うこととなるためかなり厳しいものとなるだろう。

イグは姉妹を全員殺し終わると、次は春上家へと夫妻を殺しに向かう。
探索者は窒息させて意識を失わせる程度に留める。
今の蛇神が興味をもつのは春上の血筋のみだからだ。
だが抵抗が激しければうっかり殺してしまうかもしれない。

探索者が全員意識を手放し、取り戻す頃には春上家の人物は皆生きていない。
縊り殺された者はまだいい。血の風船が破裂したような痕跡に、遺体も、痕跡すら無い人物もいる。
特殊な毒で殺されたか、丸呑みにされてイグの体内で消化されてしまったのだ。
凄惨な光景によるショック、守れなかった悲しみと悔しさ、ごちゃ混ぜの感情に苛まれた探索者はSANチェックが発生する。
正気度喪失は(2D3/3D6+2)

その後の行動は探索者に委ねられる。
無気力に一生を過ごそうが、復讐に囚われようが、姉妹が君たちの元へ戻ってくることはない。




●結末3ー「呪いからの解放」
『アンクが強い熱を持ち、鉄を焼いたかのような烈火の色を放ちだした。
 それと同時に、蛇神の周りを囲むように光が灯る。
 光は人魂のようにゆらめきながら数を増やしていく。
 人魂は蛇のように細くなったかと思うと真っ二つに断ち切れた。
 切れた光の帯は再び結ばれ、やがては円となり蛇神を拘束する。
 蛇神は忌々しげに光を断ち切ろうとするが、光の円は急速に収縮していく。
 蛇神を中心とした光の円が収縮しきった瞬間、眩い白が辺りを包んだ。』

『白い光りに包まれ、眩んだ視界をゆっくりと元に戻していく。
 そこには地面一面の蛇も、蛇神の姿もなかった。』

呪いを発症しているものは、イグ退散とほぼ同時に以下の様な症状が出る。
『鱗がポロポロと剥がれ落ち、そのしたから元の人間らしい肌が現れた。
 牙も次第に小さくなり、精神を蝕んでいた殺意の焦燥感も消えていく。
 赤い瞳は冷静さを取り戻すように元の色へと染め治っていた。
 真っ白の髪は直ぐには戻らないようだが、いずれは黒髪に戻るだろう。』
蒼子が生きているならば、彼女は呪いから開放された事で(1D10)の正気度回復が行える。


春上家に戻ってくれば、包帯を巻いたタデウスが探索者と姉妹たち迎えるだろう。
文子の様子を聞けば「複数の見えない怪物に襲われた際に動けなくなっている」と説明する。
とは言え、結果がどうなったかは文子と一緒に聞くため部屋へ案内する。

部屋を通されると、布団で横になる文子が青い顔をしつつも探索者を迎える。
自分たちが成し遂げたことを報告しようとすると、文子は知っていたかのように微笑む。
彼女が自分の手を差し出すと、鱗が剥がれ落ちだしているだろう。
文子は自分の体の異変に気づき、探索者が何を成し遂げたのか察したのだ。
危険なことを冒した事へのお叱りと、多大なる喜びと感謝を込めて探索者にお礼を言うことだろう。

この後は、春上家の血筋に呪いを受けた子供が生まれることは二度と無い。
そして、両親が姉妹たちの前から姿を消すことも。
この喜びを返すように、姉妹は探索者たちとの仲をこれからも、より深めていくことだろう。


 

13:クリア報酬


●「蛇の父イグ、暗きハン、星の精」全てを目撃した
クトゥルフ神話技能が(2D3)%与えられます。


●姉妹を血の呪縛から救った
正気度回復として(1D3)を助けた姉妹の人数分振ることが出来ます。


●イグを退散させた
大きな苦難を乗り越えたことにより、シナリオ中に使用した技能の内1種類の成長ロールを行えます。
種類の指定はPLの自由です。


 

14:NPCステータス一覧


★「春上 愛美(はるうえ いつみ)」16歳/四女
STR:11   DEX:15   INT:10   EDU:7
CON:14   POW:12   SIZ:6   APP:14
HP:10    MP:12   SAN:40/70  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[技能]SAN(60%)、アイデア(50%)、幸運(60%)、知識(35%)
    目星(25%)、聞き耳(25%)、回避(50%)、隠れる(30%)
*中学生で春上四姉妹の末子(四女)、三女の和花と双子でそっくり。
*ムードメーカーな明るい性格。喜怒哀楽がハッキリしている。
 一人称は「あたし」や「自分の名前」
 男子でも相手をちゃん付けして呼んだりする。
*和花よりはのんびりとした性格
*愛未と和花は全く同一の能力値である。



★「春上 和花(はるうえ わか)」16歳/三女
STR:11   DEX:15   INT:10   EDU:7
CON:14   POW:12   SIZ:6   APP:14
HP:10    MP:12   SAN:40/70  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]こぶし 50%:ダメージ 1d4+db
[技能]SAN(60%)、アイデア(50%)、幸運(60%)、知識(35%)
    目星(25%)、聞き耳(25%)、回避(50%)、隠れる(30%)
*中学生で春上四姉妹の末子(四女)、三女の和花と双子でそっくり。
*ムードメーカーな明るい性格。喜怒哀楽がハッキリしている。
 一人称は「あたし」や「自分の名前」
 男子でも相手をちゃん付けして呼んだりする。
*愛美より行動的で、場を盛り上げようとするのが好き。
*愛未と和花は全く同一の能力値である。



★「春上 里英(はるうえ りえ)」20歳/次女
STR:12   DEX:4   INT:18   EDU:9
CON:8   POW:13  SIZ:9   APP:14
HP:8    MP:13   SAN:43/70  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]こぶし 50%:ダメージ 1d3+db
    ナイフ 40%:ダメージ 1d4+貫通
[技能]SAN(65%)、アイデア(90%)、幸運(65%)、知識(45%)
    目星(30%)、聞き耳(25%)、回避(30%)、隠れる(25%)、ナイフ(40%)
*綺麗な鑑賞用ナイフを所持している。
*淡々としていて普段はあまり喋らない性格。不器用なだけで冷淡なわけではない。
 一人称は「あたし」、二人称は「キミ」や名前呼び捨てが多い。 
*蒼子や両親不在のため、今は自分がしっかりしなければと強がっている面がある。



★「春上 蒼子(はるうえ そうこ)」21歳/長女
STR:13   DEX:11   INT:18   EDU:22
CON:13   POW:16  SIZ:12   APP:3(元値14)
HP:13    MP:16   SAN:10/80  db:1D4
――――――――――――――――――――――――――
*前作に引き続き、今作の黒幕。
*おっとりしつつも、しっかりものな妹思いの性格だった。
 一人称は「私」、二人称は「あなた」
*家族を失ったことにより狂気に陥っている。
 しかし僅かばかりの正気を保ち、姉妹を救うことを目的として行動する。
*『妖蛆の秘密』の他、複数の魔術書を研究している。
*呪いの進行により、魅力値が減少している。



★「春上 文子(はるうえ ふみこ)」42歳/姉妹の母親
STR:9   DEX:11  INT:16  EDU:17
CON:10  POW:13(元値18)   SIZ:12   APP:9(元値14)
HP:11   MP:18  SAN:60/90  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[技能]アイデア:80% 幸運:90% 知識:85% クトゥルフ神話:25%
*春上家の現当主であり、四姉妹の母親。
*一族の呪いから我が子を守るために夫と蒸発していた。
*呪いの進行により、魅力値が減少している。



★「タデウス=春上=モーリス」46歳/姉妹の父親
STR:12  DEX:12  INT:16  EDU:14
CON:13  POW:14  SIZ:15   APP:11
HP:14   MP:14  SAN:46/70  db:+1d4
――――――――――――――――――――――――――
[技能]アイデア:80% 幸運:70% 知識:70% クトゥルフ神話:25%
*春上家に婿養子入りした元魔術師。四姉妹の父親
*表向きはジャーナリストで活動している。
 裏の顔は呪医であり、家族の呪いを解く方法を妻と一緒に探し続けていた。



★不可視の吸血鬼「星の精」(ルルブP.190参)
STR:28  DEX:10  INT:8
CON:15  POW:20  SIZ:20 
HP:20   MP:20  回避:20  db:+2d6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]かぎ爪 40%:ダメージ 1d6+db
    噛み付き 80%:ダメージ
    吸血:1ラウンドに(1d6)STRの消失
[装甲]地球外物質の皮膚:4ポイント(弾丸はダメージ半分)
[呪文]なし
[正気度喪失]星の精を目撃したか、星の精の攻撃を経験したものは(1/1d10)の消失。
*攻撃の際には、一度に(1d4)本のかぎ爪を使って特定の対象をつかむことが出来る。
 犠牲者は生死にかかわらず血を吸い取られ、血を吸われた者は1ラウンドで(1d6)のSTRを失う。
 殺されずに済んだ場合は、STRの喪失分は3日以内に回復する。
*星の精は見えないが、クスクス笑いで見当をつけることで半分の命中率で攻撃出来る。
*吸血後の星の精は6ラウンドの間だけ姿が見えるようになり、通常の命中率で攻撃が可能となる。
 ただし6ラウンド後には血液を新陳代謝して透明にしてしまうので、再び不可視へと戻る。



★「ハン」暗きもの
STR:該当せず  DEX:16   INT:28
CON:31    POW:41  SIZ:25
HP:28     MP:41   db:該当せず  移動:10
――――――――――――――――――――――――――
[武器]タッチ 75%:ダメージ 2d10のPOW吸収
[装甲]ハンは生きている影であり暗闇であり、
    魔術と魔力を付与された武器によってのみ危害を加える事ができる。
[呪文]KPが望むもの全て
[正気度喪失]目撃した場合(1d8/2d10)



★「イグ」ヘビたちの父
STR:30    DEX:18   INT:20
CON:120  POW:28  SIZ:20
HP:70   MP:28   db:+2d6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]手や尾で掴む 90%:ダメージ db(=2d6)
    噛みつき 95%:ダメージ 1D8 装甲を貫けば毒による死
    丸のみ 組付かれていれば自動成功:ダメージ 毎ラウンド1D6+窒息と胃酸による1D10
[装甲]6ポイントのうろこ
    貫通武器は、貫通ロールが出た場合のみダメージを与える。
    貫通の結果が出たら、普通のダメージを与え、装甲は無視される。
    貫通以外のロールだった場合、攻撃は跳ね返されてしまう。
    近接戦の攻撃は通常のダメージを与える。
    その場合にはイグの装甲が通常に働いてダメージを守る。
    イグのうろこの装甲を通り抜ける物は、
    物を崩壊させるイグの血液の毒によって3D6ポイントのダメージを与える。
[呪文]普通の《召喚/従属》および《接触》の呪文を全て知っている。
    そしてほかのグレート・オールド・ワンよりもずっと頻繁にそれらを教えてやろうとする。
    特にクトーニアンに関する呪文が得意である。
    KPは他にも加えたい呪文があれば加えても構わない。
[正気度喪失]人型の姿を目撃した場合(0/1D8)、蠢くヘビの巣を目撃した場合(0/1D2)


 

16:参考・引用(敬称略)


クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPG
マレウス・モンストロルム
キーパー・コンパニオン


***ここまで読んで頂きありがとうございました。***
(2014/08/30) シナリオ製作:kanin(http://kanin-hib.hateblo.jp/
(2015/08/08)公開用に調整