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CoCシナリオ「いたずら娘」

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01:はじめに


このシナリオは「クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPGー」に対応したシナリオです。
舞台は日本にある一見普通の空きビル。学生探索者向けで、推奨人数は2~3人。
*推奨技能:<目星><隠れる>


02:あらすじ


ある四姉妹にハロウィンパーティに招待された探索者達は空きビルの前に居た。
なんでも今回は雰囲気を出すためにと、お化け屋敷も同時に行うようだ。
探索者はお化け屋敷をくぐり抜けて3階のパーティ会場へ向かうことになるだろう。


03:背景と流れ


パーティを主催する春上四姉妹
・長女――蒼子(そうこ:高校生)……おっとりしつつしっかり者な性格。3F会議室にて待機。
・次女――里英(りえ:高校生)……淡々としていて普段はあまり喋らない性格。1F担当で探索者と同行する。
・三女――和花(わか:中学生)……ムードメーカーで明るい性格。表向きは2F担当でブラフ引き立て役。
・四女――愛未(いつみ:中学生)……和花と同様の性格。案内役であり、かくれんぼでは鬼役。
(※三女と四女は双子である。探索者の学年に合わせて導入しやすくするため年齢の固定はしていない。)

表向きは普通のハロウィンパーティでは面白みにかけるので、お化け屋敷も取り入れて開催してみた。
今回の舞台となる空きビルについては、春上家はそれなりに裕福な家柄なのでビルも親の持ち物を借りている。
真相はこの四姉妹は全員人外的考えの持ち主であり、星の精を使役している。
ハロウィンパーティは悪戯という名の星の精への餌やり目的である。
四姉妹にとってはこれも遊び心の一つなので、心理学に成功すれば悪戯だと暴かれる可能性もある。
最初のブラフは次女、次に四女へ移り、最終的には姉妹全員が黒幕だと明かされる。
1階は普通の屋内だが、2階から異次元的な空間に閉じ込められる。
探索者たちにはこのお遊びに上手く付き合いつつ、無事に生還することが目的となる。
途中で行うSAN値チェックを案内役の姉妹が行い、もし発狂する値が出た場合は発狂したフリをする。

 

04:導入


探索者たちは姉妹たちの知り合いや友人という設定である。
舞台は日本、ある4姉妹の主催するハロウィンパーティにお呼ばれされた探索者たち。
雰囲気を出すために今回は廃墟ビルを舞台にパーティを行うとのことだ。
始まりはビルの前から開始で、案内役は末っ子の愛未(四女)が行う。

<愛未(四女)の台詞>
「パーティ前の余興に、ちょっとしたお化け屋敷で遊んで貰うね。」
「途中で脱落せずにお題をクリアして目的の部屋までいければ景品があるよ。」
「お題っていうのはあるものをゲットすることで、“ハロウィンに必須なもの”らしいよ。」
「因みにいつみは他のことは何も聞かされてないから、ドッキリポイントは一緒に驚いちゃうかも。」
「他の招待者はもう3階のパーティ会場にいるからちゃっちゃか行こうか!」
耳を澄ますと上の階から何人かの笑い声が聞こえるだろう。

 

05:1階


外観は3階建ての普通の空きビルで、廃墟というほどではない。
入り口扉には赤い文字で『わたしは左にいるよ』と書かれている。

扉を開けた瞬間、ちょっとした脅かしポイントが待っている。
『等身大の麻布製人形が上からぶら下がるように落ちてきた。』
SANチェックは発生しない。
同行する愛未はこれは知っているので、驚いた探索者がいたならば後ろでクスクス笑っている。
愛未「その人形の顔はあたしが縫いました!」と不格好なばってん目鼻の顔の人形を前に得意げに言う。

廊下には入って左右合わせて3つの扉がある。
この階は怪奇現象は何も起こらないので、いっそ先に明言して早く先へ行くことをお勧めする。

        ┏━━┓
(昇り階段)左C┃   ┃
(足の部屋)左B┃   ┃A右(手の部屋)
        入り口

左Cが階段への扉で鍵がかけられており、左B「足の部屋」で鍵を手にいれたら先へ進める。
(※もし左Cの扉を破壊して進もうとすると、愛未に「ここは借りた場所だから壊しちゃダメ!」と怒られる。)
右Aと左Bは鍵が開いており、扉には以下のような文章が書いてある。部屋の役割も異なる。


▼右A(手の部屋)
右A『わたしの手はここだよ さしちゃうのが怖いから指は取っちゃった』
マネキンの手が大量にぶら下がっている。人差し指の無い手が1本だけ有り探索者人数分の【飴玉】を握っている
<【飴玉】の情報>
この飴玉は包を開けると濁った赤色をしている。食べると鉄臭い味が口いっぱいに広がる。
《アイデア》に成功すると<まるで血でも舐めたようだ>と気づく。
姉妹に聞くと「輸入品店で見つけたハロウィン用のお菓子だよ。アメリカって変なお菓子多いよね。」と答える。


▼左B(足の部屋)
左B『わたしの足はここだよ お菓子をちょうだい』
部屋は倉庫のようになっており、ダンボールやパイプ椅子などが置かれている。
入って最後尾のPCが一人だけ足首を冷たい手で捕まれる。冷たい手の正体は里英(次女)である。
驚かした後は里英はダンボールから出てきて「甘いの頂戴」と言う。
自前のお菓子や右Aの【飴玉】を1つ渡すと【左C扉の鍵】をくれ、その後も探索者たちに追加の案内役としてついてくる。
合流直後に里英は探索者の一人にあることを耳打ちする。
それは案内役の愛未は実は双子の和花が入れ替わって演じているというものである。
<里英の台詞>
「実はね、愛未は今日風邪で家で寝てるんだ。いま案内役しているのは双子の姉の和花(三女)。」
「和花は愛未と双子なのを利用して入れ替わりの悪戯を思いついたみたい。」
「私たち姉妹くらいしか分からないだろうって高を括っているから、気づかないフリして会場に着いてから驚かしてご覧よ。」
この事を直ぐに愛未に追求すると、「なんのことかな?」とすっとぼける演技をしながら里英をチラリと見る。
(※以降の文章は、入れ替わりを考慮したうえで案内役は“愛未”と表記している。)

 

06:2階


2階に上がると探索者たちは強制的に赤いペンキを頭から被らされて全身が真っ赤になる。
同時に「ガランッ」と音を立てて足元に真っ赤なペンキの缶が落ちてくる。
これには案内役たちも予想外だったらしく、愛美はかなり驚く。
愛未「まさかここまでやるとは思ってなかった……。」
  「クリーニング代とかは後で全部出すから許してほしい。」と謝罪する。
この段階から携帯電話の類は圏外になっている。

天井からはどこから湧いてくるのか、赤い水滴がポタポタと一定間隔で滴り落ちて探索者たちに単調な刺激を与え続けている。
見渡せば探索者たちだけでなく廊下全体が真っ赤なことに気づくだろう。
壁や床や天井だけでなく照明も強い赤色光で、人がいるのは分かるものの他の色は認識できないほどだ。
廊下は階下で見たものより明らかに長く、階段口から左右に真っ直ぐ伸びている。
扉は見当たらず、両方の突き当りから左へ曲がり角があるのみである。
この廊下はただの一本道にも関わらず見た目以上に端から端へ行くのに時間がかかるため、端から端へ往復するなら10分はかかる。

┃ ┗━━━━━階段━━━━━┛ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛

愛未とは対象的に里英は若干不服そうな顔をしつつも冷静を保ったままである話をする。
<里英の台詞>
「そういえばこんな話を知ってる? 赤い部屋の拷問って都市伝説。」
「人間って単調な刺激に弱いらしくてさ、ずっと赤い部屋に閉じ込められていると脳機能が麻痺して朦朧状態になったり、酷いと気が狂うらしいよ。」
「それを利用して中国だかどこかで囚人を赤い部屋に何日も監禁して発狂させたんだってさ。」
「この話をしたのは姉さんだし、ここまで趣味の悪い仕掛けもきっと姉さんの仕業かもね。」
この話を聞いた探索者は(0/1)のSAN値チェックが発生する。
以降はこの空間に長く居続けると30分経過毎に加算数値でSAN値チェックが繰り返される。

●時間経過とSANチェック
SANチェックの際は時間ごとに幻聴や幻覚が発生する。
なお、これらを体験するのは探索者のみであり、羽色兄弟は体験しない。
探索者が異様な雰囲気を示したなら、兄弟は不思議そうにしたり心配するだろう。

<時間経過によるSAN値チェック数値の変動>
▼30分経過
『「きみ は なにいろ?」
 囁やき声が、通り過ぎようとした壁から聞こえた気がした。
 だが壁は貴方を飲み込もうと壁が溶け出し崩れてきた。
 あかいあかい泥が襲い来ると思えたが、落ちてきたのはただの赤い水滴だった。』
赤い泥の幻覚を見た探索者は(0/1d2)のSANチェック

▼60分経過
『赤だらけの視界に目がチラついてきた。
 足元が揺らぎ沈みそうになりながら、ふと覚えのない熱を感じた。
 ドクン ドクン 床が体内さながらに脈動している。
 柔らかな床から消化液が染み出し、貴方の足を焼いていく。
 沈まぬようにと一歩踏み出すと、しっかりと踏みしめられる硬さだ。
 粘液質に見えた足元は、赤い液体で照らされ光っているだけだった。』
仮想体内の幻覚を見た探索者は(0/1d3)のSANチェック

▼1時間半経過
『「おなか すいたよ」
 緊張感のない間の抜けた声が聞こえた。
 足元に見覚えのない白い欠片――白い歯が落ちている。
 歯がひとりでに飛び跳ね、探索者へ突き刺さる。
 刺すような痛みを伴いながら、肉へ食い込み抉っていく。
 取り出そうと掻きむしったが、気づけばひっかき傷だけを残して何もなかった。』
幻覚を見た探索者は(1/1d4)のSANチェック

▼2時間経過
『誰かがついてくる足音がする。
 複数人いるのだから当たり前だと思いたかったが、足音は明らかに皆の音と違っていた。
 足音は裸足のようで居て、時折砂利道でも歩むかのようなノイズが混じっている。
 そして何も居ない真上から聞こえ、ピッタリと自分の歩行に合わせて足音は聞こえ、止まる。
 音に気づいてしまってから、そいつが居なく成る気配はない。』
足音が止まない探索者は(1/1d6)のSANチェック

▼2時間半経過
『「はやく みつけ て」
 軽い音と一緒に何かが背後で落ちる音がした。
 振り返ろうとする前に、身動きできない強い力で頭が掴まれる。
 「はやくはやくはやくはやく」
 耳元で濡れた声が囁来、頭も四肢も胴体も何かに拘束され後ろへ倒れる。
 引きずり込む何かから抗おうともがく貴方を見下ろしたのは
 白い肌に長く伸びた牙の 黒い 赤い 黒い 赤い 赤 赤……』
「床に倒れて突然暴れだしてどうしたの?」
『周囲の呼びかけでハッとする。
 どうやらまた幻覚だったらしく、安堵しながら重だるい痛みに自身の手足に目を向ける。
 皮膚には無数の跡がついていた。赤黒く変化し、痛みを与える手の跡が。』
幻覚を超えて危害を加えようとする何かに探索者は(1/1d8)のSANチェック

▼3時間以上
3時間目に突入するようならば、情報を発見できずとも移動すれば「まっかな扉」の前へ辿り着く。
ただし情報は入手できなくなるため、次へ続く扉は強制的にトラップ部屋へ繋がってしまう。
その際は扉のボロボロの人形が「ておくれ」と呟いて鍵が開かれる。
(詳細は【★トラップ部屋】を参照)



●ループする廊下
更なる異変は先へ進むと理解させられる。それは廊下がループしていることである。
突き当たりを曲がるといつまで経っても扉らしきものは見当たらず、元の廊下に戻ってきてしまうのだ。
ペンキの缶がそのままであったのならば、角を曲がるとそれが全く同じ状態で置かれているのが見えるだろう。
2組に分かれて両側から回り込むと逆走した相手と鉢合う。

階段扉も一度閉めると開かなくなっている。
もし階段への戸を開けっ放しにしていたとしても、階段は下ったはずなのにいつの間にか上って同じ階にいる。
ループの事実に気づいた探索者たちは(0/1d6)のSAN値チェックとなる。

暫く繰り返し続けると、愛未(四女)がどんどん焦りだすが里英(次女)はまだ冷静そうな雰囲気を保ったままである。
心理学に成功かRPで上手く引き出せば、実は里英も内心ではとても焦っていると分かる。
妹が泣きそうだから姉の自分がしっかりせねばと言う気持ちだったのだ。



●脱出のための情報
このループ廊下からの脱出法のヒントは赤い文字で書かれている。
情報を得るには《目星》で成功するか、《幸運の半分》で成功しなければならない。
廊下全体を探さねばならないので、1度の探索にはそれなりの時間を要するだろう。
何回でもチャレンジ出来るが失敗するほど時間は経過していく。

<赤い廊下で見つかる情報>
『あなたの あかいろ くださいな』
『まっかなうそ は ゆるさない』



●まっかな扉
情報を見つけてからループすると、変わらず赤いままだが正面に扉のある通路に出る。
この扉が出現した時点で、廊下反対側の曲がり角は多量の髪の毛の壁で封鎖される。
扉にはボロボロの人形が掛けられており、裁縫針が突き刺さって針山状態になっている。
この人形は取り外すことは出来ず、壊そうとすると噛み付かれて(1d3)ポイント耐久が減少する。
動いた人形に傷つけられた探索者は(0/1)のSANチェックも発生する。

人形に探索者の血液を擦り付けると鍵が開き、扉を開けると上階に行ける階段通路へ繋がっている。
もし情報を勘違いして赤いペンキや廊下の赤い水滴だけを擦り付けると、鍵は開くがトラップ部屋に繋がってしまう。
血液を擦り付ける際に赤いペンキ等が付着する分には影響はない。



★トラップ部屋
入ると部屋全体を赤いクレヨンで塗りたくったような内装をしている。
調べても特に何もないが、出ようとすると唐突に扉が閉ざされてしまう。
閉まり方はただ鍵がかけられるのではなく、大量の髪の毛が出入り口を覆うようにして退路を塞がれる。
もし誰かが扉を抑えているような状態だったならば、突如出現した髪の毛に絡めとられて身動きが取れなくなるだろう。
生き物のような髪の毛に囚われた探索者は(0/1d6)のSAN値チェックとなる。

閉ざされた扉には崩れているものの、はっきりと読める赤い文字で文章が浮かび上がる。
『「わたしは うしろだよ」』
読み上げようとしたと同時に、同じ文言が真後ろから聞こえた。
息遣いが聞こえそうなほど間近な距離からだ。

ここでKPは探索者たちに振り向くかどうか聞かねばならない。
振り向いた探索者は何かを目撃するでもなく、無条件に何かに目を潰され視界が真っ赤になる。
これにより(1d3)の耐久減少、更に(1d6)のSAN値減少が発生する。
(※目潰しは眼球を直接潰すようなものではないが、暫くは視界が奪われる。)

振り向かずに1分以内(約5ラウンド以内)に部屋を出れば部屋からの逃走成功である。
脱出には髪の毛の壁(耐久15)を攻撃して、耐久0以下にすれば道が開く。
時間が迫るほど、真後ろから「ざわざわ」と何かが押し寄せ満たそうとする音が大きくなっていく。
1分経過、つまり逃走に失敗すると全員首を締められて苦しみながら気絶させられる。
その後は全員の耐久とSAN値が半分になって、謎の屋上で目を覚ます。
この時点で不定の狂気や一時的発狂を起こすかはKP次第である。

 

07:3階(謎の屋上)


階段を上がりきって戸を開けると何故か屋外に出る。
屋上かと周囲を見るとこのビルより高い建物が見当たらない。
建物もよく知る民家でなく、地面から生えるようにせり上がった肉の塊のような立方体の集団であった。
とても現実とは思えない光景を目にした探索者は(0/1d3)のSAN値チェックが発生する。
もしこの場から飛び降りでもした場合は、高さは3階どころでなくなっているので確実に死ぬだろう。

周囲の景色を確認した当たりで、里英に目の前に居るはずの和花(三女)から電話がかかってくる。
愛未は「こんな景色は信じられない」といった様子になり、少し離れた位置で景色を呆然と眺めるフリをしている。
里英は圏外だったにも関わらず電話がかかってきたことを不審に思いながらも電話に出る。
内容は、和花は驚かす地点でずっと待っているのになんで全く来ないのか。
和花「ずっと途中のびっくりポイントで待っているのに、なんで全然来る気配ないの? もう待ち疲れちゃったよ。」
これを聞いて里英は驚愕のあまり携帯電話を床に落としてしまう。同時に電話も切れてしまい、再び圏外になる。
何故電話がつながったのかは里英自身にもわからない。


▼姉妹以外の誰か
この事態に里英は探索者の一人へ「あの子は偽物かもしれない。」と耳打ちをし、電話からの推測を話す。

<里英の台詞>
「私は和花(三女)がふざけて愛未(四女)の真似をしていると聞いていたけど、今さっき和花本人から電話がかかってきた。」
「なんで電話が今だけ繋がったのか、私にもわからない。でも声は確かに和花だったんだ。」
「愛未は今日は風邪で泣く泣く家で休んでるはずなんだ! 家を出る時に確認したから間違いないよ!」
「だから和花(三女)がここに居ないなら、今ここにいるのは誰……?」

この時点から愛未か和花だと思っていた人物を怪しんで先んじて唯一の退路、下の階へ逃走も出来る。
ただし<忍び歩き>に成功しないと直ぐに感付かれて後ろから追いかけてくるので、かくれんぼイベントの猶予時間が短くなる。
攻撃すると怪我をした様子はあれどケロリとした様子のままであり、本人に質問してみると以下の展開に移る。
愛未「あれ、バレちゃった? やだなあ和花ちゃんったら、やっぱり口止めしておけばよかった。」
里英「お前は愛未なの? 風邪は嘘だったの?」
愛未「嘘じゃないとしたら? やだなあ怖がらないでよ。」
愛未か和花だと思っていた人物はクスクスと笑いながら首を傾げ、目を見開いてニンマリ笑っている。

見開かれた瞳孔は黒の面積をどんどん広げていき、白目が見えないほど真っ黒の眼球になっていく。
口もつり上がっていると言う粋を超えて、最早裂けているのではと思えるほど大きな弧を描いていた。
その表情のまま、愛未だった存在は探索者たちに詰め寄ってくる。
人外的な変容を目撃した探索者は(1/1d4)のSAN値チェックが発生する。

★かくれんぼイベント
里英は探索者たちに「あれは愛未でも和花でもない! 逃げよう!」と呼びかけて下の階へ駆け出す。
これに応じて愛未は以下のように答える。
「あれあれ? 逃げちゃうの?」
「それならかくれんぼしようか!」
「3分だけ待ってあげるね、クスクス……。」
探索者はこの場に残って足止めをしてもいいが、残った者はタッチされた瞬間、強制的に気絶させられるので意味を為さない。
急いで下の階に移動すると、何故か赤い廊下ではなくなり普通の廊下になっている。
廊下には扉が4箇所あり、各ABCDとしてそれぞれ以下のような違いがある。

  ┏━━┓
階段   ┃
 A┃   ┃C
 B┃   ┃D
  ┗━━┛

・A→鍵はなく中はあまり物がない。《隠れる》は10%マイナス補正が入る。
・B→鍵が開いていて内鍵がついており、侵入を防げるかもしれない。物はそこそこあるので《隠れる》も行える。
・C→鍵はないが物がたくさんある。《隠れる》に20%プラス補正が入る。
・D→鍵がかかっているため入れない。確認したことにより行動回数が消費されるだけ。
探索者が行える行動回数は3回まで。部屋の確認で1回消費、《隠れる》技能で1回消費である。

里英は半場狂乱状態で真っ先にDへ向かい、ドアノブをガチャガチャさせながらその場で捕まる流れにする。
里英を部屋に匿うならば探索者は《交渉技能》ロールに成功しなければならず、行動回数は2回分消費される。
もし里英も含めて逃れることが出来たとしても、里英は恐怖でそこから動けなくなってしまう。

愛未はA・B・Cと順番に探していく。B扉は鍵を閉めたのならば、「ドンッドンッ」と強く叩かれて終わる。
部屋で《隠れる》に失敗した探索者は見つかってしまい、愛未にタッチされた瞬間に気絶しどこかへ連れて行かれる。
もし全員捕まってしまった場合はSAN値が(1d6)減少し、3階の会議室で目を覚ます。
愛未が居なくなるとD扉の鍵を廊下に落としていく。D扉の先は本当の3階への階段である。
(※隠れ場所から出てきた時点で、謎の屋上まで繋がっている階段は跡形もなく消えている。)


▼<※KP選択情報※>
この情報はクリア後に姉妹を探すきっかけでもある。
姉妹を探すことは、続編へ繋がる足がかりとなるだろう。
またこの呟きは悪意や演技ではなく、存在の干渉元となっているNPC本人の思いだ。

里英を逃がすことに成功したならば、動けなくなった里英は次のようなことを呟く。
「あの子たちがおかしいんじゃない、あたしたちみんなが異質の存在なんじゃないの?」
「何故ここ居るの? 誰かの夢にでも迷い込んだんじゃ?」
「あたしは本当に存在する人間なの?」
「わからない わからないよ……」
「誰か たすけて……誰か……」

 

08:3階(結末)


3階に上がると、普通の廊下に1箇所だけ開かれた扉がある。
そこに入ると広々とした会議室に飾り付けがされた明るいパーティ会場だと分かる。
長机にはテーブルクロスが引かれ、お菓子やハロウィンらしい置物が並べられている。
だが自分たち以外に招かれたという客はおらず、がらん堂とした様子だ。
途中で捕まってしまった探索者は、端のほうでパイプ椅子を並べた即席ベッドに寝かされている。
他の探索者が起こせばその探索者は起きることが出来る。
部屋に入ってきた探索者たちは、扉の脇からこのパーティの主催の一人である蒼子(長女)から声をかけられる。
<蒼子(長女)の台詞>
「随分遅かったけどどうしたの? しかもそんなお化けでも見たような顔をしちゃって。」
「でも集まってよかった、さあパーティを始めましょう。」

他の招待者が居ないことについて聞くと以下のように答える。
「クスクス、何を言っているの? もうみんな集まっているのに。」
勿論、改めて見渡しても蒼子以外は見当たらない。蒼子は笑顔のままでコレ以上の事は言わない。
招待者がいない代わりに不可視の吸血鬼が潜んでいるが探索者には何も見えないのだ。
他の姉妹について疑問を投げかけたとしたら、どの姉妹に対しても以下のように答える。
「それってだあれ? 私の姉妹にそんな名前の子はいないけど?」
新たな疑問に更に質問をするだろうが、蒼子は全く動じておらず勝手に話をすすめる。
(※何も質問をしなくても、このイベントは強制的に発生する。)
「そんな事より今日はハロウィンよ。」
「トリックオアリート、お菓子をくれないなら悪戯しないとねぇ。」
ここからは状況により結末が分岐する。何か質問しても笑顔のままで何も答えてくれない。



●お菓子を持っていない
お菓子がないことが発覚すると、部屋の扉は自動で閉ざされていつの間にか他の姉妹たちに取り囲まれていた。
蒼子はにこやかな笑顔で「なら悪戯しましょう」と言うと、他の姉妹たちも「そうしましょう」と口を合わせ、
有り得ないほどの怪力で探索者たちを拘束してしまう。(STRで言うと30くらいで、対抗しようとしても自動失敗。)
彼女らは楽しそうにクスクスと笑い出すが、よく聞くと姉妹たちの笑い声に混じって明らかに異質なクスクス笑いが混じっているのだ。
気味の悪い笑い声はどんどん増えていき、探索者たちの逃げ場などなくなってしまうほど声は増えてしまった。
異様な雰囲気に飲み込まれてしまった探索者は、突然姉妹たち以外の何かが自分を掴む感覚に驚かされる。
そして気づいてしまうだろう、見えない何かが眼前でクスクスと笑いながら自分を掴んでいることに。
探索者は掴まれた箇所から鋭い痛みが走り、その何かにより吸血されてしまう。
これにより(1d6)のSTR喪失と、(1/1d10)のSAN値チェックが発生する。

更に何かが吸血したことにより、探索者は宇宙的恐怖を目の当たりにしてしまう。
『人間の血を吸ったために、声でしか分からなかった何かの姿が見えてきた。
 赤い雫を滴らせる体はやはり赤く、まるで波打つ無数の触手のついた真紅の塊だ。
 附属機関の先端で、吸引のための口がガツガツと飢えたように開閉している。
 頭もなく、顔もない大きな塊は、恐ろしいかぎ爪で探索者たちに狙いを定めているようだ。』
星の精を目撃した探索者たちは(1/1d10)のSAN値チェックが再度発生する。

SAN値チェックを終えたところで、探索者は更なる吸血により貧血を起こして気絶するだろう。
次に目覚めた場所は病院のベッドの上である。
廃墟ビルの前で倒れているところを、近所の人が発見して救急車を呼んだとのことだ。
この日から3日間、探索者はSTR1となりまともに動くことができなくなる。



●持参したお菓子を渡す
指定のお菓子はないが、持参したお菓子を渡すと「これだけ?」と蒼子から質問が帰ってきた。
更に手持ちのお菓子を渡す、或いはどうすればいいか聞くと「あるじゃない」と指をさす。

『にこやかに「クスクス」と微笑み、蒼子が指で示していたのは探索者自身だ。
 探索者が不可解さに困惑すれば、頬にひやりとしたものが触れる。
 一体何だろうかと見れば、1Fで見たマネキンの手だった。』
『手は一つではなく沢山あった。
 あの部屋と同等の数の手が自分たちを取り囲んでいるように思えた。
 ところが吊り下げられたワイヤーや紐などが見当たらない。
 マネキンの手は「ギギギ」と不快な音を滲み出しながら宙に浮かんでいる。』
『「早くお菓子をチョウダイ?」
 目の前にいた蒼子が急かすように手を差し出し首を傾げる。
 その様はマネキンのようにイビツな動きだ。』
異質なマネキンたちに捕縛された探索者は(0/1D3)のSANチェックが発生する。

沢山のマネキンの手が探索者たちに絡みつき捕縛する。
拘束を振り払うならば[STR8]との対抗ロールになる。
成功すればそのまま部屋の扉から脱出が可能である。
通路へ出ると元の何も飾り付けされていない廃墟ビルだ。
通路にはポツンと封筒が落ちている。中身はメッセージカードだ。
メッセージカードには『ヒントは名前の最初』と綴られている。
(答えは飴玉を渡すルートのものと同じく「うそいつわり(嘘偽り)」)

マネキンに囚われた状態でいた、或いはSTR対抗に失敗した場合。
「クスクス」という笑い声が増え、星の精が登場するシーンへ移り変わる。
以降は「お菓子を持っていない」結末と同じ処理になる。

他2つの結末と違う点は以下のとおり
・最初から姉妹に囲まれている時と違い、探索者がSTR対抗に勝てば振り払える
・手紙はあるが【赤黒い書冊】は貰えない



●1階で入手した【飴玉】を誰かが一つでも渡す
「クスクスちゃんと持ってこれたのね、じゃあ悪戯は終わり。」
「景品はこれよ」と蒼子は手紙と【赤黒い書冊】を一冊渡す。
「バイバイ、またね。」と言われた瞬間、視界が真っ赤になって探索者は急激な目眩により全員気を失う。
目を覚ますと、探索者は元の何も飾り付けされていない廃墟ビルの会議室に佇んでいた。
唯一残された手紙を開くと『ヒントは名前の最初』と綴られている。
長女は蒼子(”そう”こ)、次女は里英(”り”え)、三女は和花(”わ”か)、四女は愛未(”いつ”み)
頭文字にある漢字の読みを並べ替えると「うそいつわり(嘘偽り)」となる。


▼【赤黒い書冊】
装丁はザラザラとした赤黒いハードカバーの日記帳のようで、前半は日本語、後半はラテン語で文章が綴られている。
装丁は《目星》と《アイデア》の両方に成功すると<赤黒い装丁の正体は人間の血を多量に吸い込んだ紙である>ことが分かる。
内容は蒼子の日記と、魔術書から引用した星の精に関する2種類の呪文が綴られている。
日記の文字は日本語で黒いインクである。約200ページはある分厚さなので日記部分を読み終わるには(1d4)時間かかる。

<日記要約内容>
『母が蒸発してからもう何年経ってしまったのだろう。
 それを追って父も消えてしまい、私たちは置いてけぼりになってしまった。
 私があの子たちを引っ張っていかなければ、長女なのだからしっかりしないと。』

『母の部屋を掃除していたら不思議な本を見つけた。
 英語に似ているけど、見覚えのない言葉で書かれている。
 もしかしたら居なくなってしまった手がかりがあるかもしれない。
 ありがたい事に我が家には山ほど資料になりそうな本がある。なんとかして読み解こう。』

『今まで不審に思わなかったのが不思議なほど、不気味な本が家に沢山あったことに気がついた。
 あの本は旅行記に仕立てたホラー小説まがいの内容のようだけれど、フィクションにしたってやけに気味が悪い。
 お母さんもお父さんも、一体なにと関わっていたのだろう。
 関わっていたといえば、この歳になって両親の仕事を私は知らない。』

『最近庭で蛇をよく見かける。元より山の近くだから可笑しくはないものの多すぎる気がする。
 蛇はまだいいけれど、家の中で幼虫のような白い小さな虫が這いまわっていた時は背筋がゾッとした。
 ちゃんと掃除はしているのに、疲れて無意識に手を抜いてしまったのだろうか。そう言えば最近気分がすぐれない。』

『全身を何かが這いまわるような気持ち悪い感覚が続いている。
 例の本にも似たようなことが書いてあった気がするし、あまり関わらないほうがいいのかな。
 それかお医者様に看てもらったほうがいいのかもしれないけれど、下の子達に心配をかけるわけにはいかない。』

『どうしよう みんなの様子がおかしい
 病院に行ったら精神的なものではないかと診断された 原因なんて思いつかない
 あの本のせい? そんな馬鹿なことがあるはずない 私がしっかりしないと』

『(空白のページが続く)』

『わたしがしっかりしないとしっかりしないとあのこたちがわたしがわたしがわたし(潰れて読めなくなっている。)』

『しんじない』

『(紙が赤黒い何かで塗りつぶされたり、凝着してしまって捲れないページが続く)』

『(赤黒い色の殴り書いたような文字になる。)
 今度は吸血鬼と出会うことができた 彼らは星のまたたく夜がすきみたい
 けど手がかりは見つからない きっとまだ(黒い斑点により潰れている)
 ああ あの子たちだけでも足りないというのか もっともっとあつめないと』

『みつけた』

日記の内容はこの一文を最後に終わっている。読み終わった探索者は『女の笑い声』が一瞬聞こえるだろう。
この内容を読んだ探索者は(0/1d3)のSAN値チェックが発生する。
並びにこの本には狂気を誘発する怨念めいた効果があるため、所持者は一週間毎に(0/1d3)のSAN値チェックが発生する。
この狂気から逃れるためには本を燃やすしかない。
後半は手書きのラテン語、インクは人間の血、殴り書いたような文字で呪文について綴られている。
<2種類の呪文>
・《吸血鬼を呼ぶ準備》(=《本に魔力を付与する》(ルルブP.287参))
・《吸血鬼を招待する》(=《星の精の召喚/従属》(ルルブP.283参))
解読の際には『何かが皮膚の下を這いまわる感覚』が発生する。
呪文を習得するまで読むには(3d6)時間程度かかり、習得に際には正気度喪失(1/1d4)、《クトゥルフ神話技能》+3%となる。


このシナリオはまだ1階探索中で帰ったのならば特に何もなく終わる。
後日、学校の生徒たちに四姉妹の話を聞いても誰一人として「聞いたことすらない」と言われるのは共通である。
もし誰かが廃墟ビルの中で死んだ場合は、その探索者は行方不明失踪者として扱われる。

 

09:クリア報酬


●廃墟ビルからの脱出
生還した全員にクトゥルフ神話技能が2%与えられる。

●お菓子を渡して脱出
全員生還で(1d6)のSAN値回復が行える。

●星の精に吸血されて脱出
クトゥルフ神話技能が3%与えられる。


10:NPC一覧


★「春上 愛未/和花(はるうえ いつみ/わか)」(案内役中の仮状態)
STR:11   DEX:15   INT:10   EDU:7
CON:14   POW:12   SIZ:6   APP:14
HP:10    MP:12   db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]こぶし %:ダメージ 1d4+db
[技能]SAN(60%)、アイデア(50%)、幸運(60%)、知識(35%)
    目星(25%)、聞き耳(25%)、回避(50%)、隠れる(30%)
*中学生で春上四姉妹の末子(四女)、三女の和花と双子でそっくり。
*ムードメーカーな明るい性格。喜怒哀楽がハッキリしている。
 一人称は「あたし」や「自分の名前」
 男子でも相手をちゃん付けして呼んだりする。
*愛未と和花は全く同一の能力値である。


★「春上 里英(はるうえ りえ)」(案内役中の仮状態)
STR:12   DEX:4   INT:18   EDU:9
CON:8   POW:13  SIZ:9   APP:14
HP:8    MP:13   db:0
――――――――――――――――――――――――――
[武器]こぶし 50%:ダメージ 1d3+db
    ナイフ 40%:ダメージ 1d4+貫通
[技能]SAN(65%)、アイデア(90%)、幸運(65%)、知識(45%)
    目星(30%)、聞き耳(25%)、回避(30%)、隠れる(25%)、ナイフ(40%)
*高校生で春上四姉妹の次女、1F担当で探索者と同行する。
*綺麗な鑑賞用ナイフを所持している。
*淡々としていて普段はあまり喋らない性格。不器用なだけで冷淡なわけではない。
 一人称は「あたし」、二人称は「キミ」や名前呼び捨てが多い。 


★「春上 蒼子(はるうえ そうこ)」
STR:13   DEX:11   INT:18   EDU:22
CON:13   POW:16  SIZ:12   APP:14
――――――――――――――――――――――――――
*パーティの主催者中は高校生の姿で春上四姉妹の長女。
*おっとりしつつも、しっかりものな妹思いの性格だった。
 一人称は「私」、二人称は「あなた」
*家族を失ったことにより狂気に陥っている。
*『妖蛆の秘密』の他、複数の魔術書を研究している。


★「春上 愛未(はるうえ いつみ)」(かくれんぼ時)
STR:28   DEX:18  INT:10
CON:34  POW:20  SIZ:6 
HP:20   MP:20   回避:60  db:1d6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]タッチ:自動成功で相手を気絶させる。
[装甲]物理攻撃無効化
[呪文]なし
[正気度喪失]変貌を目撃(1/1d4)
*ニタニタとしたおよそ人間とは思えない顔で追いかけ回す。
 身体能力も人間の域を超えており、最早人間とはいえない。
(※結末で探索者を拘束する姉妹の能力値もこれに準ずる。)


★不可視の吸血鬼「星の精」(参照:ルールブックP.190)
STR:28  DEX:10  INT:8
CON:15  POW:20  SIZ:20 
HP:20   MP:20  回避:20  db:+2d6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]かぎ爪 40%:ダメージ 1d6+db
    噛み付き 80%:ダメージ
    吸血:1ラウンドに(1d6)STRの消失
[装甲]地球外物質の皮膚:4ポイント(弾丸はダメージ半分)
[呪文]なし
[正気度喪失]星の精を目撃したか、星の精の攻撃を経験したものは(1/1d10)の消失。
*攻撃の際には、一度に(1d4)本のかぎ爪を使って特定の対象をつかむことが出来る。
 犠牲者は生死にかかわらず血を吸い取られ、血を吸われた者は1ラウンドで(1d6)のSTRを失う。
 殺されずに済んだ場合は、STRの喪失分は3日以内に回復する。
*星の精は見えないが、クスクス笑いで見当をつけることで半分の命中率で攻撃出来る。
*吸血後の星の精は6ラウンドの間だけ姿が見えるようになり、通常の命中率で攻撃が可能となる。
 ただし6ラウンド後には血液を新陳代謝して透明にしてしまうので、再び不可視へと戻る。

 

11:その他補足や裏話


●指定の飴玉でないと悪戯される理由
入手できる飴が「血のような味がする」ことから、お菓子は姉妹たちに対してでなく「星の精」へ渡すものが求められている。
そのため普通のお菓子を渡しても満足せず、星の精のエサとなる血液を求めて人間(探索者)を指差すのだ。


●姉妹の正体
本当の姉妹たちはとうの昔に世間から消え、長女以外は本人でなければ人間でもはない。
妹達は蒼子の記憶や思い出から創られた魔術的な何かである。
元凶の蒼子は過去に親の手がかりを探そうと、魔導書『妖蛆の秘密』を解読しようとしていた。
ところが読み進めていくうちに残された家族も失う事態となる。
最期には魔導書の力にまで縋った結果、狂気に陥ってしまった。
今では魔導書の力を開放していくことに執着しており、普通に広げるだけではつまらないため恐怖もまき散らしている。
結末で赤黒い冊子を渡したのはもっと世に魔術を広めようとしたからである。


●続編シナリオについて
姉妹と特別仲を深めた探索者を対象とした本作の続編シナリオを作成しました。
興味がありましたら配布ブログ(http://kanin-hib.hateblo.jp/)を覗いてみてください。

◯続編へのエピローグ
姉妹の話は他の生徒から聞けない。しかもクラスメイトからは信じられないことを言われる。
「(探索者)さん、この前も白い蛇に向かって話していたし大丈夫?」と心配されるのだ。
この前とは招待状を貰った日だ。
招待状は確かに春上姉妹から受け取ったはずだというのに、他者からは蛇と見つめ合っていたと言われる。

諦めきれずに調べるのであれば、学校の図書室へ向かうと良い。
《図書館》に成功すると、数年前の在校生名簿の中に「春上蒼子」を見つけることができる。
卒業生徒の中には居ないことから、おそらく転校しているだろうと推測できる。

学校の教師に聞き込みをすると、一人の教師から「知ってはいるが詳しくは話しづらい」と断られてしまう。
しつこく問い詰めるか、《交渉技能》に成功すれば、次のようなことを話してくれる。
「この話は3年ほど前だったか……」(※KPが続編に以降する上で都合の良い年月を設定してください)
「春上は優秀な生徒ではあったんだが、家は両親が不在のことが多かったそうでな。」
「そんな大変な時でも一番上の蒼子君が、妹たちの世話をよくしてやっていたよ。」
「だが突然――本当に突然だった。妹たちが皆揃って入院することになったんだ。」
「事故にでもあったのかと聞いたが、原因不明の病とかで……私も詳しくは聞いていないものの心配になったよ。」
「その後すぐに蒼子君も休学届けが出され、次いで転校届けも出され今はどうしているかわからない。」
「ただあくまで噂程度ではあるが……」
「蒼子君は、行方が分からなくなってしまったそうだ。」
「ご両親とも連絡は取れず、学校側も教師一人だけの力では動くことなどしてくれない。今も後悔しているよ。」

ここまで聞いたところで、教師から【春上姉妹が入院している病院】を教えてもらえる。
「実は彼の妹たちも原因不明のまま、今も病院で入院していることだけは聞いている。」
「入院費などはしっかり払われているそうだから、まだこの病院に居るだろう。」
「君たちが何故今は在校していない春上蒼子君のことを知っているのかは、私には検討もつかない。」
「ただどうしても気になるならば行ってみなさい。」


◯「いたずら娘」から続編への繋ぎ
廃ビルでの事件後、彼らの行方が気になった探索者たちは執念深く情報を探し集める。
長女は消息不明なものの、次女と双子は某病院で3年前から意識不明状態で生きていることが判明した。
辿り着いた病院で、長女以外の姉妹たちは痩せた姿で深く眠っていた。
探索者たちは足繁く通い、根気強く姉妹たちの目が覚めるよう語りかけ続ける。
そんなある日、姉妹たちのまぶたが開いた。
「ずっと悪夢の中を彷徨っていたけれど、君たちがそばにいてくれた。」
姉妹たちは過去の記憶が消えているらしいものの、ビルでの事件はうっすらと覚えているようだ。

 

12:参考・引用(敬称略)


クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPG
キーパーコンパニオン 改訂新版


***ここまで読んで頂きありがとうございました。***
(2013/10/26) シナリオ製作:kanin(http://kanin-hib.hateblo.jp/
(2015/11/03) 結末分岐、一部文章を追加
(2016/09/30) 一部の描写変更・追加
(2016/11/27) 続編への繋ぎを追加