保存庫-シナリオ棟-

シナリオ閲覧用のページ

CoCシナリオ「後追い夢」

「後追い夢(あとおいゆめ)」シナリオ概要ページへ戻る


01:はじめに


このシナリオは「クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPGー」に対応したシナリオです。
舞台は現代日本の街、推奨人数は2~4人程度。
*推奨技能:<交渉技能><精神分析><戦闘技能><図書館><目星>
*使い所のある技能:<聞き耳><治癒技能>

●本文の表記について
各単語や文章によっては以下のように括弧表記を使い分けています。
少々の抜けや誤表記があっても各自で対応して頂くようお願いします。
重要アイテムや特記事項などの単語:【】
特筆する文章情報:<>『』
技能や呪文に関する単語:《》
補足説明やPL・KPへの特記事項:()※
NPCの台詞や名前など:「」

 

02:あらすじ


ある街に不可解な事件が多発していた。
この一ヶ月で失踪者が常識では考えられないほど急増しているのだという。
探索者たちはこの事件に巻き込まれてしまう。
あわや己も犠牲者と成るのか、それとも無事生還することが出来るのか。
事件解決を目指して探索者たちには奮闘してもらうことと成るだろう。


     ( 目 次 )

     01:はじめに
     02:あらすじ
     03:背景
     04:憑き纏う呪い(概要)
     05:憑き纏う呪い(効果)
     06:導入
     07:最初の探索
     08:辿り着く人物
     09:大きな平屋屋敷
     10:元凶の場所
     11:悪夢の最後
     12:クリア報酬
     13:NPCステータス一覧
     14:その他補足や裏話
     15:参考・引用(敬称略)


 

03:背景


元凶となる人物の名前は「風窓 京枝(かざまど きょうえ)」、オカルト研究家である。
彼は研究旅行中に「別世界が覗ける鏡」を入手する。
この鏡の正体は【レンのガラス】と呼ばれるアーティファクトだ。
(「レンのガラス」…KPコンパニオンP.65~66参照)

事件の発端は探索者が事件の捜索を始める1ヶ月前の出来事。
帰国した風窓は入手した鏡の効果を試してみようと、自宅で儀式を行った。
確かに鏡は未知の世界を映したものの、彼は運悪くもその世界の住人である邪神に認識されてしまった。
邪神の名前は「ゴグ=フール」、狂気を食らうグレート・オールド・ワンの一柱だ。
(「ゴグ=フール」…マレウス・モンストロルムP.171参照)

ゴグ=フールに見つかってしまった風窓は「後追い夢の呪い」をかけられてしまう。
彼は呪いの効果により、迫り来る自分ではない自分に恐怖させられる日々が始まった。
恐るべき事に、この呪いは風窓だけでなく他者へも伝染する仕組みだ。
感染の条件は「呪いの現象について他者へ口伝する」だけである。
耐え難い恐怖は彼の口を開かせ、己の知人たちに恐怖の記憶を話させる。
呪いの記憶を聞かされた者達は同じ呪いを受け、風窓と同じようにまた話をする。
こうしてねずみ算式に呪いの犠牲者は増えていった。

呪いに侵された者は証として【不可視の虫】が常に纏わりついている。
呪いの軸は風窓に取り付いてた虫であり、女王蜂のような群集の母胎的存在である。
この時点であれば風窓の虫さえ取り除けば事件は拡大を止めていたが、彼には知る由すら無いことだ。

呪いは鏡面を通して進行するため、風窓は鏡のない山奥の廃墟に潜むように成る。
やがて「異世界を覗ける鏡」こと【レンのガラス】に原因があると疑い始める。
彼は改めて儀式を行えば何かしら好転するかもしれないと考え、密かに自宅へ戻り実行した。
儀式を行って助かる確証など全くなかったが、他に手立てとなる情報はなかった末の決断である。
それが更なる事態の悪化を招くなどと予見する余裕は無いほどに、彼は正気を磨耗させていた。

風窓は儀式を実行するも、僅かな希望は呆気なく打ち砕かれる。
再びゴグ=フールと接触してしまった彼は捕食されかけるが、寸でのところでその場を逃げ出す。
鏡のない山奥の廃墟へ向かえば、怪物からも逃れられると考え必死に逃走を続けた。
しかし、命からがら廃墟まで逃げ延びた風窓だったが、絶望的な事態に遭遇してしまう。
廃墟の中には鏡が並んでおり、更には背後から複数人に拘束されてしまったのだ。
よくよくその人物たちの顔を見れば、皆自分の知り合いであった。
全員、風窓が悪夢について話をしてしまった人間たちだ。
風窓よりも早く呪いの末期症状に陥ってしまい、邪神の操り人形になっていたのだ。

逃げる道は見失い、恐怖と畏怖にまみれながら風窓の正気は削りきられ、その場で狂い死んだ。
彼の死は強い未練を残し、邪神はその未練を利用することを思いつく。
風窓が経験してきた恐怖を、他の感染者たちに体験させる呪いの強化を行ったのだ。
呪いは虫を経由しながらより強力になった悪夢を感染者たちへ体験させ、更なる脅威を注いでいる。
風窓の死体は呪いの根源としての役割を果たし、感染を広げる虫どもの巣となっている。
狂気を蔓延させて人間達を効率的な家畜にできた邪神は、満足げに風窓の死体の近くで食餌を貪食している。

誰にも言わずに逃げ出した風窓は、遺族に失踪届が出されている。
唯一の家族である最愛の息子は、父が心配させまいと話は聞かしていないため呪いに感染していない。
風窓が隠れるように行動していたのも、息子を巻き込まないための父親なりの配慮だ。


★オカルト研究家「風窓 京枝(かざまど きょうえ)」男性/55歳
STR:9   DEX:11  INT:14   EDU:18
CON:13  POW:16  SIZ:11   APP:9
――――――――――――――――――――――――――
昔から民族的なオカルト研究に没頭しており、世界中を飛び回っていた。
妙な趣味だが気さくな性格で人当たりはよく、妻と息子にも恵まれた。
妻が他界してしまうも、男で一つで息子を育て上げ独り立ちさせる。
息子の職も落ち着いた頃に、久しぶりに海外へオカルト研究の足を伸ばすようになった。
しかし出張先の国でナイラトテップに「レンのガラス」を買わされたのが運の尽きである。
シナリオ開始時には既にゴグ=フールに殺された後となる。


 

04:憑き纏う呪い(概要)


これは『夢や鏡面を見ることで自分が狂人化して死ぬ呪い』である。
呪いを「気のせいだ」と言い聞かせても無駄であり、抗う術は極端に限られている。
呪いが進行すると夢だけでなく、水溜りや鏡の反射面を通して狂気の一端を覗いてしまう。
黒幕となっている神話生物は「ゴグ=フール」(マレウス・モンストロルムP.171)

●呪いの伝染経路
呪いは人から人へ感染する。
条件は『口頭による悪夢についての話の伝聞』である。
文字情報を読んだだけでは感染しないが、その情報を読み上げてしまうと感染する。
録音の話も効果がなく、テレビやラジオからこの話が流れてもまだ感染はしない。
人間の生声による音読を直接聞くことが要となっている。
夢の内容をどの程度まで話すと感染するかのラインはKPに任される。


●病原体のような虫
感染者には普通の生物には見えない【不可視の虫】が取りついている。
この不可視生物が媒介となって、ゴグ=フールの悪夢を感染者に見せているのである。
不可視生物を暴露・接触するためには魔術的アーティファクトや呪文が必要になる。
しかし虫を取り除いたからといって、二度と取り憑かれないわけではない。
根本的な原因は別の存在にあるため、再び話を聞いてしまうと再発してしまう。
再び感染した人物は、虫を取り除かれる直前の状態に逆戻りする。

★狂気の媒介者「不可視の虫」
STR:1   DEX:20   INT:10
CON:3  POW:10  SIZ:1
HP:2   MP:10
――――――――――――――――――――――――――
[武器]攻撃も回避もしない
[装甲]視認された上での魔術的な攻撃以外は全て無効
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1d3)
*ゴグ=フールが生み出した呪いの媒介生物
 青色の外殻に何本もの触覚が蠢き、その先端に付属する小さな目が周りを伺っている。

★狂気を食べるもの「ゴグ=フール」
STR:100   DEX:16   INT:18
CON:380  POW:35   SIZ:計測不能
HP:380   MP:38   db:該当せず
――――――――――――――――――――――――――
[武器]触手 90%:ダメージ 1d6(各1ラウンド毎)
[装甲]なし
[呪文]ゴグ=フールが望むもの全て
ただし通常、夢、悪夢、狂気に関するものを使用できる。
ゴグ=フールはクトゥルフ神話のほかの存在や種族とほとんど関係はない。
[正気度喪失]目撃した場合(1d10/1d100)
*各触手には2d6の耐久がある。
 触手が破壊されたら、ゴグ=フールの総耐久力から差し引く。
*ゴグ=フールは目がついた触手で犠牲者を調べる。
 次に、2d6本の棘の生えた触手か、歯のついた触手で犠牲者を刻み始める。
 大量の血液が吹きこぼれ、肉片が飛び散る。
 血と肉は集められ、ゴグ=フールのいる次元へと吸い込まれてむさぼり食われる。


 

05:憑き纏う呪い(効果)


●従属化
呪いの進行要因は【睡眠(夢見)】【鏡面を見る】ことである。
進行する度に正気度は削られていく。
正気度がゼロ以下に成る前に条件を満たすと、感染者の中身が別のものに入れ替わり従属化NPCとなる。
条件とは【5回の睡眠や気絶の発生】【7回鏡面を見る】かどうかである。
探索者も含めて条件を満たした人物は、永久的狂気に成るまで呪いを広め続けるだろう。

<従属者の主な特徴・行動>
 ・常にヘラヘラと感情のない笑顔を浮かべている。
 ・目線が定まっておらず、一見して気味が悪い。
 ・会話をすると悪夢の話ばかりする。
 ・睡眠を取らなくなる。(眠れなくなり、寝たふりなら可能。他者の攻撃による気絶は可能。)
 ・虫が巣(狂気の発生源)へ戻るために宿主が失踪する。(邪魔をされないよう主に深夜に行動する)
 ・巣と距離がありすぎると、大きな鏡を用意してSANゼロ以下に成るのを待つ。
 ・ゴグ=フールの命令を遂行する従属奴隷となっている。

残っていた正気度は、1時間で1ポイントずつ失われていく。
(条件を満たして従属化した際にSAN30ならば、猶予時間は30時間ということになる。)
正気度がゼロ以下となれば、ゴグ=フールの餌となるために自ら鏡を見に行く。
逆に、元凶を叩いた時にまだ正気度が残っていれば、普通の状態に戻ることが可能である。
つまり探索者が従属化したならば、鏡のない場所で拘束した上で猶予時間内に解決すれば救えるのだ。
間に合わなければ、例え事件を解決してもその人物の精神は崩壊する。



●呪いの末路(正気度をすべて失う)
正気度がゼロ以下になった感染者は操られたように鏡へ向かう。
鏡から出現するゴグ=フールに捕食されるためだ。つまり自ら死へ向かう。
死体はゴグ=フールに跡形もなく食われてしまうため、世間では失踪者(行方不明者)の扱いとなる。
うっかり捕食に居合わせた人物は精神が崩壊しており、まともに話はできなくなっている。
探索者であろうと捕食場面に居合わせたなら、行動によってはその瞬間を見てしまうだろう。
つまりゴグ=フールを目撃して(1d10/1d100)の正気度喪失が課せられると同義である。
正気度は残っていれど、呪の恐怖に耐え切れず自殺した感染者は死体が残る。




●追跡の悪夢
睡眠や気絶によって夢を見た場合の正気度喪失についてだ。
夢の内容は、事件の始まりとなった最初の犠牲者こと「風窓鏡枝」の記憶である。
悪夢は呪いを進行させてしまうが、真相へ辿り着くための諸刃の剣にも成る。
一人を犠牲にして情報を得ようとするならば、極度に睡眠を恐れる不定の狂気にするといいだろう。
また、夢の内容を正確に思い出すためには《アイデア》が必須である。
更に思い出すたびにその夢で行ったSAN値チェックを行う。


▼眠気や気絶について
眠気に抗うというならば1d100で[CON+POW]以下の値を出さなければならない。
不眠日数も増えるほどに技能値や対抗値のマイナス補正を加算していくべきだろう。

またKPは気絶を誘発させたいのであれば、探索者に気絶判定[CON×5]を行う事ができる。
虫が狂気の進行を早めようと時折探索者に危害を加えるためだ。
発生タイミングの指定はない。問題なければファンブル処理として行ってもいいだろう。
発生させた際には以下のような現象が探索者を襲う。
 『虫の羽音のようなものが聞こえた。
  すると突然、首の後ろを鋭く刺されるような痛みを感じる。
  頭痛と目眩で視界は歪み、白黒に反転して立っているのもままならない。』
探索者は[CON×5]を行い、成功すれば辛うじて意識は保てる。
失敗したならば気絶し、ある程度の時間は意識を失ってしまう。
意識がなくなった探索者は、呪いを進行させる夢をみることとなる。


▼悪夢の内容
睡眠は回を重ねるごとに正気度喪失量、情報の重要度が高まっていく。
<段階ごとの正気度喪失量>
1回目:(0/1d3)=(0/1~3)
2回目:(1/1d6)=(1/1~6)
3回目:(1d3/3d6)=(1~3/3~18)
4回目:(1d6/2d10+1)=(1~6/3~21)
5回目はゴグ=フールを目撃することとなり、(1d10/1d100)の正気度喪失が起こる。
同時に条件を満たしたことになり、狂気をまき散らす従属者となる。
夢の内容は以下のように変遷していく。


<1回目>
要約:目の前に鏡が有り、鏡の中から触手のようなものが襲いかかる。

眠りの中で夢を夢だと感じながら、ぼやけ揺れる視界が次第に定まっていく。
『見覚えのない部屋で、古ぼけた鏡を目の前に何事か呟いていた。
 鏡の先は真っ暗で、何かを覗きこむように瞳を巡らせると――目が合った。』
『まるで情愛の篭った、これからを期待するようでもあり、何かを待ち望むため耐えるような瞳だ。
 大きな青い目があなたに焦点を絞るように瞳孔を縮めながら、眼球ごと近づいてくる。
 それは触手となって貴方を捉えようと鏡の中から飛び出した。』
眼前まで迫った瞬間に貴方は目覚め、何かの影から逃れたことを知るだろう。
ところが夢の内容はよく覚えておらず、底知れぬ恐怖だけが貴方の肝を掴んでいる。
悪夢から目覚めた探索者は(1/1d6)の正気度喪失。


<2回目>
要約:自宅らしき場所を出て逃げ出す。【赤いポスト】が目印として夢に出てくる。
《アイデア》に成功すると、ポストに書かれた住所を思い出すことができる。
このアイデア情報に関しては、再度SAN値チェックを行う必要はない。

眠りについた探索者は、昨晩見た夢の内容を思い出す。
『眼前には目玉が差し迫っていた。体が跳ねるようにその部屋を飛び出し外へ向かう。
 慌てるあまり交差点にあった赤いポストにぶつかり転んだ。
 追いつかれてしまうと思い背後を振り返ると、怪物は居ない。』
『すると近所の住人らしき人物が大丈夫かと近づき手を差し伸べてくれた。
 ほっと胸をなで下ろして手を取ろうとする。
 だが、伸ばされた手の上に落ちてきたのはその人間の頭部だった。
 頭上に合ったカーブミラーから、あの触手が伸び出て目の前の人間を切り刻んでいる。
 殺される!――恐怖だけが支配する空間から、一刻も早く逃げ出したい貴方は再び駆け出した。』
気づけば貴方は寝床から落ちたような体勢で目を開く。
やはり夢の内容はよく覚えていない。ただただ震えの止まらぬ手足を抑えるのに必死だった。
二度目の悪夢から目覚めた探索者は(1d3/1d8)の正気度喪失。


<3回目>
要約:街を駆け巡り【大きな平屋敷】の前で追いつかれてしまい、片腕を折られながらも逃げ続ける。
大きな平屋屋敷はまるで神社のような大きさだ。近所では有名なため、聞き込みすれば場所はわかる。

眠りについた探索者は、昨晩見た夢の内容を思い出す。
『駈け出した足を止めてたまるものかと靴下のまま地面を走り続ける。 
 走り続けるが、体が重くまるでどんどんと年老いていくような疲労感に苛まれる。
 ついに耐え切れず、大きな平屋屋敷の前で足を止めてしまった。
 せめて隠れようと木で出来た大きな玄関戸を強く叩き、大声で住人に助けを乞う。
 だが無慈悲にも、それともこの世界には最早自分しか居ないのか、誰も中から出てくる様子はない。
 虚しく響く叫び声の中に、パシャリと水が跳ねるような音がした。』
『驚き背後を見れば水溜りがあった。
 中から這いずるように触手が這い出し、先端についた瞳が貴方を捉える。
 今は逃げるしかないとまた駆け出そうとするが、触手に追いつかれ腕へ絡みついてきた。
 触手の胴体についた牙のような鋭い突起が、貴方の腕を切り落とす。
 痛みで喘ぎ、転がる。もう殺されるしか無いのかと諦めかけたが、ふと誰かの顔がよぎる。
 怪物の方を見れば手を貪りまだ隙があるようだ。
 貴方は無駄な足掻きとわかっても、生き残りたい意思に縋って重い体を動かした。』
重いまぶたを持ち上げる。片腕が根本からやけに痛み、持ち上げることすら出来ない。
暫し痛みを堪えていると、じわりじわりと痛みは引いていった。
三度目の悪夢から目覚めた探索者は(1d6/1d10)の正気度喪失。


<4回目>
要約:逃げ込んだ山道で見つけた看板には、休憩所と小川へ続く道が示されている。
   小川へ向かい、川上へ登って廃墟となった施設管理用の建物を見つける。
4回目の夢を見た探索者は《アイデア+ナビゲート》に成功すれば廃墟へ辿り着くことが可能となる。

眠りについた探索者は、昨晩見た夢の内容を思い出す。
『重い体を引きずりながら、鏡がない場所は山くらいだろうと山道へ足を運ぶ。
 今のところ気配はないが、怖くて後ろは振り向けない。
 ひたすら道に沿って歩いて行くと看板があった。
 看板には休憩所と小川への分かれ道が示されており、体は徐ろに小川へ向かう。
 開けた小川の砂利道を踏みしめ、川上へ登って行くと、捨てられた施設管理用の建物があった。』
『錆びた扉を片腕で必死に開き、崩れるように壁にもたれかかって座り込んだ。
 恐れだけではなく、奪われた片腕から流れ出る血液に体温も奪われてガタガタと震える。
 掠れるような息をし、意識が朦朧とする中、眼前に光が見えた。
 正確には、壁全体からの反射光だ。
 壁と目が合う
 いや、壁の奥の……鏡の向こうにいる数えきれない青い瞳と目が合う。
 それは最初に見た情愛と、期待と、辛抱さを湛えた瞳と同じだった。
 だがあの時よりも、その感情はより強く感じられる。』

 もう逃げられない

 そう思うしかなかった

恐怖に涙しながら、あなたは目を覚ました。
四度目の悪夢から目覚めた探索者は(1d8/1d20)の正気度喪失。


<5回目>
要約:廃墟の中で震えていると周囲が全て鏡になり、ゴグ=フールが現れて捕食される。

眠りについた探索者は、昨晩見た夢の内容を思い出す。
『鏡から溢れんばかりの期待、情愛、辛抱に満ちた大きな青い目が貴方を凝視している。
 それだけで一体の巨大生物にも見える頭部が、数多の青い目を瞬かせる。
 巨大な頭部の下、鏡の奥に広がる無限の空間そのものが途方もないそのものの体で溢れている。
 禍々しい青い星空に混じった黒点は、一つ一つが口吻のように開閉を繰り返している。
 まるで貴方に語りかけているようだ。』
『反射面を通ってそれはやってきたそれは、多数の触手で貴方をつかみ、包み込んだ。
 幾重もの瞳で途切れることのない視線が突き刺される。
 茨のごとき無数の棘を思わせる鬼歯、それに覆われた触手で肉が削がれていく。
 肉が綺麗に何枚にもおろされ、剥き出された骨までも幾分に寸断される。
 溢れる血肉や臓物は、全てかき集められ青い瞳の主の元へ運ばれる。
 微塵切りにされた体と共に生まれた狂気、それら全てを狂気の怪物は貪り食らっていた。』

狂気を食らうものを目撃したことにより(1d10/1d100)の正気度喪失。
例え正気度が残っていても、NPCになるので内容を共有することはできない。
従属化への変化は、下記の「鏡面を7回見た現象」と同様。
上記のゴグ=フールの正気度喪失後、夢の中で強制的に鏡面を見せられイベントが発生する。

 <※KP情報※>
現場となった廃墟には、まだ風窓の遺骸が残っている。
この悪夢で見せられた死の惨状は、邪神が風窓の狂気を引きずりだすために見せた幻覚である。
風窓は幻覚にはまり、見事に正気は削りきられその場で狂い死んでしまった。
なお、風窓の遺骸は現在も呪いの母胎として機能している。




●鏡面の呪い
これは初回の悪夢を見た後から発生する。
鏡で見る正気度喪失量は睡眠時の悪夢とは別である。
鏡を見れば確実に発生し、外が暗いガラス面や水の反射面は[DEX×5]に失敗した場合に起こる。
内容は『鏡面を見るたびに、過去の自分自身が背後へ迫ってくる』というものである。
この鏡面の中の過去の自分は、本能的によくないものと察しがつくだろう。
鏡面を見た回数が「7回目」に達すると完全に追いつかれてしまう。
完全に追いつかれると、中身が別の何かに入れ替わってしまい従属化NPCとなる。
入れ替わった何かは事件が解決しない限り狂気をまき散らし続けるだろう。


▼鏡面を増やす
KPは鏡面を見させる回数を増やしたいならば、天候を雨にすると良い。
外が暗ければ、明るい屋内から窓の外を見ると、ガラス窓は鏡面になっている。

<天候を連想させるための表現>
『その日の夕焼けはやけに黒ずんだように見えた。明日は雨かもしれない。』
『冷たい風が探索者に吹き荒れる。雷雲が近いのかもしれない。』
→『外は土砂降りの雨が降っている。太陽はすっかり姿を隠し、窓の外は常に薄暗い。』
『朝焼けがやけに眩しいが西の空は暗い。今日は天気が崩れるかもしれない。』
→『しとしとと雨が降り出してきた。太陽は雲に隠れている。』
(これらは天気のことわざを引用したものである。)

<探索中に見そうな鏡面の例>
 ・探索者の家の鏡(洗面台など)
 ・車のミラー、磨かれた黒い車の側面
 ・夜の外が見えるガラス壁
 ・家宅の玄関に設置された鏡
 ・雨上がりの水たまり
 ・出されたお茶の水面やグラス面
 ・トンネルを通る際の電車の窓



▼鏡面の目撃による光景
感染者が鏡を見ると以下の様な現象を目撃する。

<1回目>
『ふと鏡を目にすると、貴方のずっと後ろに ”あなた” がいた。』
『貴方らしき者は、今の姿ではなく、子供の頃の姿をしている。』
『遠くて表情はよく見えないが、頭をゆらゆらと揺らしているようだ。』
『振り返っても、そこにあなたは居なかった。』
嫌な予感のする気配を覗いてしまった探索者は、(0/1)の正気度喪失が発生。


<2回目>
『また鏡を見た貴方は、前より少し近い場所に ”あなた” がいる。』
『背後に居るあなたは前よりも近い位置におり、その表情が伺えた。』
『あなたの顔は笑顔を浮かべているのに、無邪気とは思えない邪悪さを孕んだ笑みだ。』
『ゆらゆらとした動作をピタリと止め、まだ幼いあなたは足を上げて一歩踏み出す。』
『振り返ると、やはりあなたは居なかった。』
本能的に気味が悪いと感じる存在を覗いてしまった探索者は、(0/1d3)正気度喪失が発生。


<3~6回目(共通)>
『また鏡を見た貴方は、前に覗いた時より近い背後に ”あなた” がいる。』
『前に見た時よりも成長した姿で、更に嬉しそうな、気味の悪い笑みを浮かべている。』
『成長したあなたは音もなくゆっくりと、しかし確実に貴方の背後に歩み寄っているようだ。』
『振り返ると、”まだ”あなたは居なかった。』
貴方を狙う悪意が確実に近づいていることを察してしまった探索者は、(1/1d6+1)の正気度喪失が発生。
(簡略版)
『一目見た鏡面の背後に”まだ”あなたはいない。だが、前よりも貴方の今の姿と位置に近づいている。』
這い寄る自分に正気を貪られ(1/1d6+1)の正気度喪失が発生。


<5回目 追加要素>
描写と正気度喪失後、探索者の視界の隅に子供の姿がチラつくようになる。
ハッキリとは見えないが、それらしい人影を何度も目にするのだ。
視界の隅のあなたは”まだ”話しかけてくる様子はない。
もし気になって注視しようとしたならば、多くの場合は鏡面が近くにある。
探索者は《幸運》を振り、成功すれば運良く振り返った場所に鏡面を見ずに済む。


<6回目 追加要素>
描写と正気度喪失後、探索者の視界の隅に子供の姿は現れなくなる。
代わりに、ドッペルゲンガーじみた存在が様々な場面で先回りするようになる。
初対面の人物相手ならば「さっきも会わなかったか?」と聞かれることもあるだろう。
聞けば「つい先ほど探索者に似た人物を見た」と答え、初対面だと言うのに名前も知られている。
答えた人物は「そちらから笑顔で自己紹介をしてきたのではないか」と訝しげな様子だ。
対象探索者と同行している探索者がいるならば、そんな余裕があったとは思えないだろう。
相手へ似た人物について聞けども詳細はわからず、会った事実だけ覚えている。
どうやら”まだ”あなたの居場所は奪われていないようだ。


<7回目>
『 あなた が 真後ろ に いました。』
『あなた は いいます こんにちは と』
『あなた は ささやきます ありがとう と』
『あなた は わらいます』
『おつかれさま』
『挨拶をした貴方は、みるみる過去の記憶が消えていく。
 友人や家族の名前も顔も、貴方自身の名前や感情も。
 足を地についてどうやって立つかも、言葉を紡ぐにはどの部位を動かせばいいのかも。
 何もかも忘れて、貴方は消えていく。』
『代わりの何か別のものとなって』
(1d8/1d20)の正気度喪失のち、以降は従属化したNPCとなって自発行動は不可となる。


 

06:導入


導入の段階で探索者には「後追い夢の呪い」がかけられる。
全員が呪いの感染者とすることで、探索者は調査を始めなければただ死を待つだけの状態にするためだ。
導入の推奨時間は夕方~夜頃。
初日はあまり探索させずに、一度寝てもらうことで呪いの初期進行を起こすためだ。
会話をする感染者NPCは今晩が初めて悪夢を見る人々にすると良い。
噂話のノリにすれば、探索者たちにあまり危機感を与えずに直ぐ就寝するだろう。
KPが望むなら、NPCは既に呪いの初期進行、末期進行と変えてしまって構わない。

世間ではここ1ヶ月を通して、謎の連続失踪事件が横行し、人々を震え上がらせていた。
対象とされる人物の特徴は様々で、警察の捜査も進展を見せていない。
部屋に閉じこもっていた人物でさえ煙のように消えていたことから、ろくな証拠も挙がっていないのだ。


●職業ごとの導入パターン
・警察や探偵
「頻発する失踪事件についての調査」として依頼が来る。
警察ならば犠牲者の遺族、探偵ならば依頼者が感染者となっており、その人物から話を聞かせて感染させる。

精神科医やメンタルセラピスト
感染者自身が「おかしな悪夢に悩まされている」と患者の役割をして来るだろう。
NPCが患者ならば呪いは末期にまで達しており、探索者が聞き出せば何かしら情報を与える手もある。
ただし話を伝聞したNPCが末期だと言うならば、探索者の抵抗虚しく近日中に失踪・自殺するだろう。

・ジャーナリストや他職業
「謎の連続失踪事件」というネタを追いかける事となり、感染者にインタビューさせると良いだろう。
その他の職業探索者は、親しいNPCに噂話として件の悪夢の話をさせればいい。
勿論話せると言うことは、そのNPCは事件を解決しなければ死ぬということだ。


●悪夢について話すまでのパターン例
・パターン1(捕食された犠牲者の知り合い)
○○は昨晩忽然と姿を消し、寝ずに探しまわったが全く消息が掴めなくなってしまった。
○○が行きそうだと見当がつく場所は殆ど探したのに見つからない。
最後に話した時、奇妙な夢の話をしていた。
→悪夢の話へ

・パターン2(中身が入れ替わった後に捕食された犠牲者の遺族)
○○は始終何かに怯えた様な状態であったが、数日後には笑うようになった。
しかし徘徊症状が出ていたので、よくないと分かっていても部屋に鍵をかけて閉じ込めていた。
にも関わらず、ある日忽然と部屋から居なくなっていた。
窓も扉も鍵は全てかかった密室状態で、どうやって部屋から出たのかわからない。
そういえば、話を聞こうとしても妙な夢の話ばかりしていた。
→悪夢の話へ

・パターン3(呪いの中期・末期状態で恐怖にされされている犠牲者)
最近妙な悪夢にうなされ続けて、不眠症を通り越してもう眠ること事態が怖くて困り果てている。
精神科医ならば、夢の話を聞き出さないと流れとしてはおかしいでしょう。)
→悪夢の話へ

・パターン4(今から呪いにかかる犠牲者)
ネットやゴシップ誌で見た噂だが、最近変な夢の話が広まっている。
その夢の話なんだけど……
→悪夢の話へ

話される悪夢は以下の点が共通していればある程度改変してあっても問題ない。
『全く見覚えのない部屋にいた』
『鏡から目が離せなくなる』
『青い大きな怪物が襲ってくる』
進行が始まっている感染者なら最後に付け足す。
「実はこの話を聞いてから、自分もその夢を見るようになってしまい恐ろしい。」


 

07:事件についての情報


以下のような場所に情報は用意されている。
【現場】【警察署】【図書館】【インターネット】【報道関係者】


●失踪者が居なくなった部屋
部屋は散らかり、ガラス片があちこちに飛び散っているため素足で入ると危険だと分かる。
場合によっては現場の写真と言うことで見せてもいいだろう。

・大量の空き缶と残った中身が床を焦げ茶色に汚している。
 →空き缶はブラックコーヒーばかりである。
・刃が血塗られたカッターが落ちている。(0/1)の正気度喪失を起こす。
 →《アイデア》で自傷行為でもしたのかと予想がつく。
・ガラス窓はガムテープで無造作に貼られた新聞紙が覆っている。
・殆どの家具はガラスや鏡が割られている。
・姿見ほどの大きな鏡のみ割られていない。
 →《目星》<この姿見だけは買ったばかりのようで真新しいが、縁に少しだけ血痕が付着している。>
  《アイデア》<この血痕はまるで鏡の内側から縁を掴んだようである。>
 不可解な血痕の状況に探索者は(0/1d3)の正気度喪失が発生。

 <※KP情報※>
ここには呪いの末路についてのさわり情報が用意されている。
最初の2項目は悪夢により寝ることを恐れた犠牲者の行動である。
覆われたガラスや割られた家具は鏡面を恐れてのことだ。
無傷の姿見はSANゼロ以下になったことで、条件を満たして従属化した後の行動である。
鏡を置くことで時がくれば邪神へ直ぐに身を捧げるためだ。




●警察署や図書館
失踪者について情報が用意されている。
あるいはこれらの情報を聞き込みで渡すのも手である。
探索者たちの職業を考慮して情報提示の場を分けると良いだろう。

警察署なら事件に関する資料室、図書館ならばここ1ヶ月分の新聞を調べることに成る。
膨大な量からの情報収集は《図書館》に成功することで入手できる、がかなりの時間が経過する。
流し読みならば時間を短縮できるもマイナス補正がかかるだろう。
逆にじっくりと時間をかけるのであればプラス補正をつけても良い。
複数人で手分けをすることでこの時間を減らすことも可能だ。
探索者の人数によっては警察の同僚や、司書の助力を乞うてもいい。


初回の《図書館》に成功すると以下の情報が手に入る。
*<バラバラ殺人事件について>
 1ヶ月ほど前にバラバラ殺人が発生している。
 被害者は頭部しか見つかっておらず、発見現場には血痕すら無いとの捜査報告が上がった。
 遺族に確認を取ったところ、被害者は散歩を日課にしており、現場はいつもの散歩コースとのことだ。
<※KP情報※>
 この事件は風窓が邪神からの逃走時に巻き込まれた人間についてだ。
 現場へ言ったとしてもカーブミラーの足下に献花がされているのを見れる程度の情報である。
 つまり事件の進展には関わりない。
 死体が残っているのは、ゴグ=フールを目撃する前に殺されてしまったため。
 邪神は狂気を欲しているので、狂気が薄かった害者は無視されたのだ。


*<自殺者の増加について>
 ここ一ヶ月で失踪者が増えると同時に、自殺者も増加している。
 中には自ら目を潰したらしき死亡者もおり、カルト組織が関係しているのではとの話も浮上している。
 遺族や関係者の多くは、自殺前は暗い部屋に閉じこもる事が多かったと話している。
<※KP情報※>
 呪いの恐怖に耐えきれず、自ら命を絶った感染者たちの話である。
 目を潰したり、暗い部屋に居たのは鏡面を見ることを恐れたためだ。


より詳しい情報を得るためには、再度《図書館》成功と更なる経過時間が必要になる。
聞き込みであれば《交渉技能》などが必要になるだろう。
成功すると以下の情報が得られる。
*<最初の失踪者について>
 口火になったであろう人物は50代の中年男性。
 男性の名前は「風窓 京枝(かざまど きょうえ)」オカルト研究家である。
 現在も行方は分かっておらず、行方不明者の増加に伴って捜査は進展を見せていない。
 彼の遺族である息子「風窓 一(かざまど はじめ)」氏は事件の早期解決を願っている。
<※KP情報※> 
 警察やジャーナリストならば、風窓家の住所を得ることが出来るかもしれない。
 風窓家は郊外から少し離れた場所に居を構えている。
 家の近くには【赤いポスト】がある。これは2回目の悪夢で見かける特徴である。


*<失踪者の目撃情報一覧>
 《アイデア》に成功すると、地図へ情報のあった場所を書き込む事を思いつく。
 (あるいはリアルアイデアが発生したならRPして貰って構わない。)
 地図に目撃情報を書き込むと『庭の広い屋敷の近く』に集中しているのが分かる。
 この屋敷は平屋建ての和風建築であり、近くに行けば分かるほど大きな屋敷である。

<※追加情報案※>
 屋敷については出目やRPが特別良かった場合には追加情報がある。
 屋敷の人物に関しては、念のため警察が一度事情聴取をしたものの事件との関連性は薄いとされている。
 しかしまだ疑惑が晴れたわけではなく、容疑者の一人として数えられている。
 全く進展を見せない捜査状況なため、少しでも疑惑があるならばと考えられているからだ。
 屋敷の主人は「玄朗(げんろう)」と名前が書かれている(若しくは教えてもらえる)。
 しかし、上の名前は潰れていたり思い出せなくなっている。



●インターネットや聞き込み
*<インターネットを調べると得られる情報>
 事件が発生している地域には大きな敷地に古風な家があるそうだ。
 お寺や神社、どこかの家元流派でもなく、門にはなんの表札もない。
 しかし空き家ではないらしく、地元民からの情報によると老人が住んでいるらしい。
 「その怪しい老人が今広まっている失踪事件の元凶かもしれない」とネット間では噂されている。


*<悪夢から逃れた人物の情報>
・インターネットから得る場合
 何でも金子食品の社長の息子で、大金をはたいて呪いを解いたとか。
 金子家はその街の都内近郊に居を構えており、近所でも有名な豪邸に住んでいる。
 金子子息の名前は「金子 安男(かねこ やすお)」

・ジャーナリスのような情報通への聞き込みで得る場合
 その人は街角の骨董屋さんで働いている女性らしい。
 骨董品を扱っていることから何かしらの呪術品を使ったのではないかと予想されている。
 骨董屋は街角でこじんまりと店を開いており、大きな平屋屋敷の近くでもあるそうだ。 
 女性の名前は「鹿角かすみ(かのつかすみ)」




●従属者の追跡
もし従属者になったものを怪しんで追跡する場合は、深夜に行動することとなる。
夜型の人間でもなければ、昼間に仮眠をしないと深夜行動は眠気によるマイナス補正が着くだろう。
 <※KP情報※>
 この追跡はいち早く結末に起こり得る状況を知れるが、大変危険な行為である。
 追跡する従属者は、追跡の途中で正気度がゼロ以下になってしまう。
 そのため山へ向かうよりも、手近な鏡の前にいる事でより早く自分が捕食されるのを待ち構える。
 深く探ろうとその様子を見続けるようであれば、従属者が捕食される場面に探索者は立ち遭ってしまう。
 捕食場面を見ることは、邪神を目撃する事と同意のため(1D10/1D100)の正気度喪失が課せられる。
 よって探索者は立ち止まった事に違和感を覚え、早々に立ち去るべきでなのだ。
 早々の探索者退場を避けるならば、深夜帯なのを考慮してマイナス補正を大きくする事を推奨する。


《隠れる》を振らずとも、従属者は邪魔さえされなければ大して気にすることはない。
彼らの役割は狂気を蔓延させることだ。自ら狂気の淀みへ足を踏み入れるものを拒否する謂われはない。
よって《隠れる》に失敗したならば
<こちらに気づいたかのように振り向いたが、気にする様子はなくまた歩き始めた。>と提示する。
この情報に対して《アイデア》に成功すると
<まるで自分たちを誘い込んでいるようにすら思える。>

《追跡》に成功すれば、山へ向かう従属者を見失わずについていける。
ただし、着いていけるのは<大きな平屋屋敷前まで>である。
平屋屋敷前までくると、山中に入る前に別のイベントが発生する。
事前の情報収集で<バラバラ殺人事件について>入手していれば、《アイデア》ロールが行える。
成功すると<ここは件のバラバラ殺人事件があった場所>だと思い出させる。


★餌となる従属者
平屋屋敷前まで来たところで、従属者は歩を止めて一カ所をじっと見やる。
視線の先には何の変哲もない「カーブミラー」があるだけだ。
従属者へ探索者が声をかけようと、移動させようとしても、その場から動く気配は全くない。
暫くすると、探索者はカーブミラーから感じる視線に気づかされるだろう。

『自分は見ていないはずのカーブミラーから、視線を感じる。
 まるで金切り声でも聞かされているような嫌悪を思わせる威圧の正体は直ぐに現れた。
 青い瞳 棘と牙が生え揃った触肢
 悪夢を嫌でも思い出させられる。
 悪夢そのものが目の前にあるのだから、当たり前だと理解させられる。』
『立ち尽くしていただけの人間が、待っていたと言わんばかりに笑みを深める。
 神の祝福を受けるように、そいつは棘の波へ飲み込まれていく。
 寸断されている 笑いながら
 咀嚼されている 笑われながら
 貪る音が鳴り続く中、鏡の向こうにいる狂気の笑みの主が、貴方に笑みを向けた。』

鏡に潜む狂気を食らうものを目撃した探索者は(1D10/1D100)の正気度喪失が発生。
もしこの場で正気度の20%を喪失した場合、ゴグ=フールは攻撃を行う。
ゴグ=フールが覗ける範囲はカーブミラーだけなので本来の(2D6)よりも少ない攻撃回数となる。
KPは攻撃する触手の本数を(1D6)でロールし、本数に応じて《触手90%:1d6ダメージ》を行う。
なお、この戦闘ラウンドにおいては死者でなければ[DEX対抗]を行わずとも逃走できるものとする。
死者はゴグ=フールに切り刻まれ、すべてを鏡の中へと引きずり込まれてしまう。
現場に戻ると、跡形もなくなりまるで悪夢でも見たかのような感覚に陥るだろう。


 

08:辿り着く人物


●最初の失踪者の家
最初の失踪者である「風窓鏡枝」の自宅である。
風窓家は郊外から少し離れた場所に居を構えており、家の近くには【赤いポスト】がある。
現在は息子が一人で住んでおり、父の行方不明をきっかけに精神的な衰弱を起こしている。
警官ならば「事件の調査として話を聞かせて欲しい」と言えば出迎える。
あるいは事件解決に真摯な態度を見せれば話くらいはしてくれる。
逆に野次馬のような態度で向かえば返事すらしてくれないだろう。


▼「風窓 一(かざまど はじめ)」
彼は元凶の人物の息子であるが、悪夢の話は聞いていないため感染はまだしていない。
しかし探索者が彼に悪夢の話をしてしまえば、問答無用でこの息子も感染してしまう。
父の行方は息子には検討がつかず、失踪届を出したのも彼である。
悲しみに暮れて目元にはクマができ、生気のない表情をしながら話をする。
母は数年前に亡くしているため、唯一の肉親は父だけなのだ。
探索者が親睦を深めれば、「調査のついででもいから」と父の捜索を頼むだろう。

 <息子から聞き出せる話>
父は昔から変なものが好きで、日本だけでなく海外を飛び回っては奇妙な土産を持ち帰っていた。
失踪前にはどこで買ってきたかも分からない、ヘンテコなガラス板を自慢げに見せてきた。
それを見せながら『不思議な世界を覗ける魔法の鏡なんだ』などと言っていた。
ガラス板は随分と大切そうに部屋に持ち込んでいた気がするが、今は見あたらなかった気がする。


 <京枝の書斎から得られる情報>
書斎は失踪後そのままにされているようで埃っぽさが漂う。
辺りには民族的なお面やトーテムポールのような像が飾られている。
ここに魔法の鏡と称されたガラス窓は存在しない。

部屋へ《目星》で成功する
 <赤いチョークで床に五芒星らしき図柄か描かれており、一部が擦れて消えている。>

《図書館》あるいは机などへ《目星》に成功する
 <風窓京枝の手記らしきものを見つける。>
 <手記の内容>
手記はざっと読むのに1時間かかる程度の量である。
『えらくべっぴんさんな女性が僕に声をかけてきた。
 「とうとう春がやってきたか?」なんて思ってしまったが、僕は妻一筋だ!
 なんて事はない「別世界が覗ける鏡を買わないか?」というお土産の押し売りのようだ。
 僕のトキメキを返しておくれよ! いや妻一筋だよ!』
『けれどあんまりに美人な人だったから、試しに値段を聞くとそこらの土産物よりずっと安かった。
 なんとその鏡には呪文まであると言うのだから、僕の好奇心がくすぐられない筈がない。
 気付いた時には意気揚々と買ってしまっていた。
 また息子に怒られるかもしれないが、一は出来た息子だから許してくれるだろう。
 しかしちょっと目つきというのか、怖い瞳をしていたが、あの褐色肌の女性は綺麗だった。
 写真の一枚でも頼めばよかったと少し後悔してしまう。』
『忘れないうちに例の呪文とやらを記しておこう。
 (最後にメモのようにして何か言葉が綴られているが、書き消されて読む事は出来ない。)』


★失踪者の息子「風窓 一(かざまど はじめ)」男性/26歳/会社員
STR:11   DEX:12   INT:14   EDU:14
CON:09  POW:15  SIZ:12   APP:10
HP:11   MP:15   SAN:35  db:0
――――――――――――――――――――――――――
*父が失踪してから欝の兆候が見られ、睡眠障害になっている。
 不安を抱え込んでいるため、失踪原因は自分にあるのではとすら思い込んでいる。
 ただひたすらに父が無事に帰ってくることだけを祈り続けている。




●悪夢から逃れた人物たち
調査を進めるうちに、この悪夢から逃れた人物がいるという話を耳にする。
対象人物は2名おり、どちらを選ぶかでこの後に辿り着く人物の対応が大きく変わる。

下記二名から辿り着く人物は同一人物である。
呪いを解いたという人物は、古く大きな平屋屋敷に住む「玄朗(げんろう)」と言う老人だ。
義娘であるかすみですら本当の名前は知らないほどの変わり者とされる。



▼「金子 安男(かねこ やすお)」
金子安男は父に大金をはたいて貰い助かったという。(安男は金額を聞いていない)
とてもコスい男であり、親のコネで入社してはいるがロクに役立っていない。
今は療養期間と称して自宅に引きこもっている。
夢の話しようとすると、恐怖は残っているため怯える。今でも鏡を見ることは出来ない。
因みに探索者が悪夢の話を聞かせると、安男は再度感染して苦しむことだろう。
彼はとある人物に呪いを解いては貰ったが、誰であるかは本人に口止めされている。
金銭でのゆすりは効かないが、脅しや交渉技能等を行えば言うかもしれない。
脅し行為を行うのであれば、引きこもっている安男を家の外に連れ出す必要がある。
高APP(15以上)の女性ならば《言い包め》《説得》などにプラス30%ボーナスが着いてもいいだろう。

★金で救われた男「金子 安男(かねこ やすお)」男性/22歳/会社員
STR:07   DEX:12  INT:10   EDU:14
CON:07  POW:07  SIZ:12   APP:15
HP:10   MP:07   SAN:21  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[技能]アイデア:50% 幸運:35% 知識:70%
*端的にいうと金持ちのバカ息子。



▼「鹿角かすみ(かのつかすみ)」
かすみは義父に相談したら助けてもらったという。
義父は夫の父のことであり、夫は長期海外出張中である。
健気な性格で、海外へ骨董品を求めてなかなか帰らない夫も一途に愛す優しい女性だ。
夢の話は若干怖がるものの、話そうと思えば話すことが出来る。
彼女は悪夢の話をしても再度呪いかかることはない、特殊なアーティファクトを所有している。
アーティファクトは義父に持たされ小刀だが、彼女にも探索者にもこれの詳細は分からない。
件の義父に会いたいと言うと「義父は人嫌いだから、安易に話す訳にはいかない。」と断られる。
ここで交渉技能に成功すれば、義父の居場所についての情報を渡してくれる。
彼女と親睦を深めることが出来れば、連絡をつけて会う約束も取り付けてくれるだろう。

★身内に救われた女性「鹿角かすみ(かのつかすみ)」女性/25歳/骨董屋
STR:12  DEX:10  INT:14  EDU:13
CON:15  POW:14  SIZ:11   APP:13
HP:13   MP:14  SAN:70  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[技能]アイデア:70% 幸運:70% 知識:65%
*この人物にのみ適応した呪いを弾く小刀を所持している。


▼小刀の詳細
大きさは全長30cm程度、鞘と持ち手は黄土色の下地に紅を混色させたような見た目だ。
刀身はしっかり磨かれており、鏡のように反射する。一見してもよく見ても普通の小刀だ。
刀身の反射面はもちろん呪いを発動させる。

かすみの義父である「玄朗」が彼女に持たせ、呪いに対する抵抗力を持つ小刀である。
義父に手放さないようきつく言いつけられているので、交渉しようと貸す気も譲る気もない。
彼女本人は普通の小刀程度としか思っておらず、詳細は何も知らない。
彼女へ伝えられている事は次の2点。
・夢に関する悪意を跳ね返す呪い(まじない)が込められている
・かすみ自身以外には持たせるべきではない

呪いの抵抗手段は感染体である「不可視の虫」が彼女の近づいた際、「不可視の刃」が虫を凪払っている。
自動的にこの効果は発生し、「不可視の刃」は持ち主であるかすみのMPが消費されている。
1回につき1MP程度なので、かすみは何度もしつこく話されない限り感染することはないだろう。
なお、かすみ以外の人物が小刀を持ったところで、この効果は発揮されないただの小刀となる。


★小刀に関する罠
 虫が出現するのは悪夢について話した時、話した人物の寄生体が分裂して新たな宿主の元へ取り付く。
 小刀に凪払われた虫は死ぬわけではなく、話した人物の元へ戻ってくる。
 結果、虫は2体となり対象は今後の呪いの進行速度が2倍になる。
 その際には<不快な羽音が聴覚に纏わりつき、頸椎から根を張られたような気持ち悪さを感じる。>
 鏡による進度が3だったならば、次に鏡を見ると一つ飛ばしで進度5までの呪いが発生する。
 悪夢による進度が2であったなら、次に意識を失うと進度4までの悪夢を見てしまう。

 《魔力の感知》などの呪文を使うと、術者には<熱した金属を押し当てられたような、鋭く重い痛みが走る。>
 小刀へ干渉した事への警告であり、外傷は発生しないが(0/1)のSANチェックが発生する。

 小刀を壊そうとすると、壊そうとした者へ実害が発生する。効果は以下の通り。
 <全身に裂傷が走り、小刀を持った手は焼き尽くさんばかりに火が燃え盛る。>
 その拍子に小刀は落とさざるを得ないだろう。離しさえすればそれ以上の傷は負わない。
 道具を使おうとしたならば、その道具を持った手が燃え盛り、離さない限り水をかけても火は消えない。
 犠牲者は裂傷により[1D6]に加え、火傷が軽度なら[1D3 ]、重度なら[2D3]の負傷を負う。
 更に祟りの如き力で傷を負った恐怖から(1/1D4+1)のSANチェックが発生する。
 なお、無理矢理かすみから奪おうとした場合は裂傷だけが先に発生する。

上記の効果はかすみ自身も全く知らない。
もし実害が発生して詰め寄ったなら、彼女は何も答えられないだろう。
代わりに小刀の制作者こと「玄朗」と取り合ってくれる事を約束する。
小刀に関する異常事態は彼女から玄朗へ事前に話されるため、妙な手出しをしたことも察されてしまう。
よって普通に取り合ってもらい会い行くよりも厳しい状況となるだろう。


 

09:大きな平屋屋敷


屋敷は山の近くに建てられている。
忍び込もうとすると、(1d4+4)匹の番犬との戦闘になる。うっかり倒しても警察を呼ばれて御用である。
「呪いを解いてもらった人物」を介さなければ、門前払いをくらうだけだ。
根気よく「呪いを解いて欲しい」と頼んでみれば、対応は冷たいが話だけは聞いてくれるかもしれない。
かすみの紹介ならば事前に連絡が入っているので、名前を言えば入れてくれるだろう。

★「屋敷の番犬(1d4+4匹の超大型犬)」
STR CON SIZ DEX POW 耐久力
13  11  8  13  11  10 
――――――――――――――――――――――――――
ダメージ・ボーナス:なし
[武器]噛みつき 30%:ダメージ 1d8


●屋敷内に招かれる
出迎えは屋敷の主の付き人でもある、スーツを着た長身の人物がしてくれる。
基本的に質問などをしても無言無視と対応は酷いが、部屋まので案内はしっかりするだろう。
探索者に余裕が有るようなら、従者が大きな鏡を持って出迎えれば強制的に呪いの進行が行える。
主人は面倒事を避けたいので、呪いの進行が進み過ぎてる者との接触は避けたいが故の対応だ。
この鏡の呪い進行により従属化したならば、その者は自然と山へ向かい追跡の機会にならなくもない。

屋敷内を案内される際は、何度も角を曲がり自力では出られそうにない回廊のような順路で通される。
途中で他の部屋へ潜入でもすればそこには主人の呪術研究の手記などが大量にある。
かなり難解な中国語で記述されており、相当な時間をかけ《中国語》半分のロールに成功する必要がある。
因みに正気度喪失と時間を消費するだけで実になる情報は何もない。言ってしまえばトラップである。



●屋敷の主
ここの住人は探索者の力程度では殺せない。
主の老人こと「玄朗」は、呪いを取り除く方法を持ちあわせてはいるが、原因とは全く無縁である。
散々噂好きの馬鹿共が迷惑をかけているので表面上は物静かだがかなり苛立っている。
ただしかすみ経由ならばKPが進行しやすい程度に友好的になる。
彼には悪夢の話をしても呪いに感染することはない。対抗手段を持った所謂魔術師である。
最低限の協力はするが、本人は探索者たちの命などどうでもいいと思っている。


●呪いの解呪と別の提案
普通に頼むと法外な値段(億単位)を要求する。
(《値切り》を使うと、成功失敗に限らず「そこまで必死ならばもっと必要だな。」と値上げされる。)
実際はいくら金を詰まれても探索者たちの呪いを解く気など全くない。
金持ちの息子を助けたのは、流布が初期の頃であり、しっかりと金を払ったから。
骨董店の女性を助けたのは義娘だからである。
しつこいようなら次のように突っぱねる。
「お前たちに言った額は冗談だ。いっそ安いくらいだったと反省したところだよ。」
「何故と問うならば、全くの他人に命をかけろと言われて、貴様らは金を詰まれたら助けるか?」
解呪するには勿論呪文を使うため、それなりにSANやMPを削ることからの発言ある。

一方で、原因を見つければ安価で取り除こうと提案してくる。
内心はタチの悪い呪いの蔓延をよく思っておらず、原因を探索者に探らせる目的がある。
玄朗自身は、今回のことは元凶さえ取り除けばなんとかなることを察している。
しかし自ら動いて解決するには、割に合わないと思い行動していない。



●元凶の情報
玄朗は元凶が居る場所の検討が着いている。
しかし、その場所へは呪いの感染者しか行けないようになっており彼は手が出せないでいる。
感染した虫が通行パスポートのような役目を担っているからだ。
元凶の場所とは山中にある廃墟。山道を外れた所にある河川、その川上へ登ると辿り着く場所だ。
場所についての情報は、悪夢を5回見た探索者にも情報入手の機会がある。
金子経由の紹介だったなら、場所以外の情報は《交渉技能》の成功が必要になる。
かすみ経由の紹介ならば、呪いの大まかな効果や、今後予想される危険も合わせて教えてくれるだろう。
ただし、現場に向かいどうやって解決するかは探索者次第である。

 <予告できる危険性>
(※KPの裁量で情報は増やしても減らしても構いません。)
・妨害者について
 呪いの末期者は元凶の操り人形になっている可能性が高い。
 悪夢の蔓延を邪魔する者には、そう言った末期者をけしかけてくるだろう。
 また、簡単に操られていることから、薬物中毒者のようにまともな思考は出来なくなっている。

・呪いの要
 呪いを媒介しているのは「不可視の虫」。無論、探索者たちにも寄生している。
 皮肉なことに、その虫がいるからこそ探索者たちは元凶の場所にたどり着ける。
 辿り着ける場所には女王蜂のような母胎役の虫がおり、母胎の虫さえ消せば呪いは消え去る。

・悪夢の根元
 呪いからは何者かの強い怨念に近い意志を感じる。
 怨念は後悔の念が強く、その裏に混沌とした人外じみた狂気の念が混じっている。
 これらの強い念を糧に、虫たちは呪いを広げる感染役を担っているようだ。
 虫は触れるどころか目視すら難しいが、糧ならば可視できる存在だろう。
 糧を絶てば、呪いの虫も消えるかもしれない。




★不躾な者へのトラップ
探索者が高圧的な対応をし続けた。或いは力づくで情報を得ようしたなら、手痛い対応をされる。
玄朗が少々刺激的なお返しをして、自分へ繋がる情報経路を無くしてしまうのだ。
『玄朗が目を伏せ、斜め後ろに構えていた従者の名前を呼ぶ。
 すると従者は目にも留まらぬ早さで抜刀し、玄朗の首を跳ねた。
 支えを失った頭部が口から血を流し、床に鈍い音を立てて落ちる。
 生々しい切断面からは絵の具かと思えんばかりに鮮やかな鮮血が溢れている。
 従者は無表情を崩さぬまま、まるで録音された内容を流すかのように淡々と言葉を述べる。』
「既に主はこの場にいらっしゃいません、話は諦めて下さい。」
「役目は終えました、私めも失礼致します。」
『締めくくりと同時に、従者は己が喉も切り裂き自害した。』
予想だにしない殺害と自殺の現場を間近で目撃してしまった探索者は(0/1d6)のSAN喪失が発生。
勿論本当に死んではいない。探索者をハメるための玄朗が事前に仕掛けた罠だ。

この後、発狂しなかった探索者にだけ《聞き耳》をさせる。
成功すれば<パトカーのサイレンがこの場所に近づいている音が聞こえる。>
直ぐに屋敷を出れば、なんとか逃げ果せるのも可能だ。
後日訪れると、何故か玄朗も従者も普通に暮らしている。
目撃した探索者は、死んだはずの人物を見たことで(1/1d6+1)の正気度喪失が起こる。
家探しをしたならば、通報で呼ばれたらしき警官に問答無用で逮捕されるだろう。
この屋敷は警察も今回の事件で疑った背景があるため、怪しいものが居れば行動は大変迅速である。

全員が《聞き耳》に失敗すると殺害現場に居る探索者たちの元に警官がやってきてしまう。
逮捕後は事情聴取や様々な手配などにより(1d4+1)日間強制消費となる。
勿論呪いも日数分の進行ロールが行われる。
長々と事情聴取をされた後での眠気への抗いは、[(POW+CON)÷2]以下の値を出せば成功とする。
事情聴取の部屋には、室内の様子が見えるようマジックミラーが常設されている。
そのため鏡面による進行も起こり易く、下手をするとここで従属化する羽目になる。
更にこの数日間の間に平屋屋敷では火事が起こり、屋敷から得られてであろう情報は全て失われる。
死んだものが生きていると色々面倒事が起こるため、主人が自ら証拠を抹消したのだ。
情報を絶たれれば、探索者には悪夢をギリギリまで見て地道に探索するしかなくなるだろう。
あるいは従属化された人物を追跡すれば、最終目的地へ辿り着くかもしれない。
しかし、追跡しようとした人物が途中で捕食されない保証など無い。


○呪文を使って虫を取り除く例
(ページ数は全てルールブック参照)
《イブン=グハジの粉》(P.252)、或いは《霊の識別》(P.292)で「不可視の虫」を視認化する。
更に他の呪文やアーティファクトによる魔術的ダメージを与えることで狂気の原因は取り払える。
呪文なら《刀身を清める》(P.273)や、《幽体の剃刀》(P.290)である。
因みに《タールクン・アテプの鏡》(P.270)を使うと発狂する。

★怪しい屋敷の主人「玄朗(げんろう)」男性/60代以上
STR:14   DEX:11   INT:21  EDU:25
CON:11  POW:30  SIZ:14   APP:10
――――――――――――――――――――――――――
[技能]心理学の察知:90%
[武器]従者
[装甲]従者
[呪文]「後追い夢」を解く為に必要な呪文や、KPが望む呪文。
    その他《魔法の感知》(P.284)、《平凡な見せかけ/仮面》(P.280)等
*力押しな探索者に対してのトラップ的な存在である。
*攻撃は従者任せだが、KPが望むなら好きなように技能を追加すると良い。


★主人の従者「直刃(すぐは)」女性/20代以上
STR:25   DEX:18  INT:15   EDU:08
CON:17  POW:13  SIZ:16   APP:15
HP:17   MP:13   SAN:0   db:+1d6
――――――――――――――――――――――――――
[技能]アイデア:50% 幸運:65% 知識:50% 
    回避:80% 居合い:99% 日本刀:99% 武道:50% キック:60%
[武器]日本刀 99%:ダメージ 1d10+db (貫通20%)
    靴の仕込みナイフ(キック) 60%:ダメージ 1d6+1d4+db(貫通12%)
    ベルトの仕込み刀(居合) 99%:ダメージ 1d10+db(貫通20%)
[装甲]魔術装甲 10ポイント
[呪文]なし
*正気度のないの攻撃マシーンのような人物。待機中は無言。
*心理学をされても何も考えておらず、事前に主人に言われたことだけを遂行する。
*目星をすると、防弾ベストをスーツの下に着込んでいることが分かる。
*ベルトの仕込み刀は1回のみの使い捨て攻撃である。
 ペラペラの薄い金属板のような状態で仕込まれており、ムチのようにしなる。
<「日本刀」耐久:20 ダメージ(1d6+db)貫通 射程:タッチ 技能《日本刀》>


 

10:元凶の場所


山道へ入り暫く進むと、山道順路と河川に続く分かれ道を示す看板がある。
看板の支持に従って川へ抜けて川上へ登っていくと、開けた原っぱに出る。
原っぱには捨てられた施設跡のような小さな建物がある。
建物はコンクリートの白壁で窓はなく、金属製の錆びついた扉が一つだけだ。
《目星》に成功すると<錆びてはいるが開きそうだと分かる。>
《聞き耳》に成功すると<何人かの息遣いが聞こえる。>



●屋内に潜む従属者たち
(1d3+2)人の従属化した失踪者たちが、元凶を排除しようとする探索者たちの前に立ちはだかる。
多人数相手になるので、KPは事前にPLたちに伝えて様々な準備RPをさせることを推奨する。
もしくは相手させる敵NPC数を少なくするといいだろう。

扉を開くと従属者たちが気づいて戦闘開始となる。
逆に扉さえ開かなければ、多少物音を立てても屋内に居る者たちが出てくることはない。
従属者たちについての危険性を事前に知っているならば、先手を打っておくことも可能だ。
草を結んでひっかけ罠を作ったり、あるいは屋内へ火炎瓶を投げ込む事もできなくはない。

ただし従属者と言えど、元々はただの一般人だ。
事件を解決しても、危害を加えすぎれば正当防衛では済まないだろう。
殺せば正気度喪失が起こる上に、下手をすれば殺人罪である。
殺さずに無力化するには、以下のような方法がある。
 ・ノックアウト攻撃を行う
 ・ショックロールが発生するほどのダメージを与える
 ・スタン効果のある攻撃を行う
他にもPLから提案があれば、KPは考慮することを推奨する。

★「3~5人の従属者たち」
STR CON SIZ DEX POW 耐久力 仮名称
13  15  15  16  12  15  A(松田)
13  12  12  11  10  12  B(鈴木)
12  11  15  11  11  13  C(本田)
12  14  14  10  11  14  D(豊田)
14  12  12  08  15  12  E(三菱)
――――――――――――――――――――――――――
ダメージ・ボーナス:+1D4
[武器]棍棒 40%、ダメージ 1D6+db
    こぶし/パンチ 40%、ダメージ 1D3+db
*意識がしっかりしていないため《回避行動》はしない。
*全員SANは一桁まで減少している。
(従属者の能力値はあくまで一例です。変化させても問題ありません。)



●屋内の様子
扉を開くと、薄暗い屋内に大きな鏡が設置されている。
最初に扉を開いた探索者は【鏡面を見たことによる呪いの進行】が発生する。
鏡面を見るかはPLの発想やKPの配慮次第で《幸運》を使って回避が可能だ。
鏡の前には一人の伏した男を取り囲むように複数人の人間が立っている。
彼らは薄気味悪い笑顔を浮かべ、手には凶器らしきものを持ち、探索者たちを視界に入れる。
そのまま探索者は邪魔者だと判断され、従属者たちは襲いかかってくる。

床の男に対して《医学》か《目星》に成功すれば
<囲まれている伏した男は既に死んで干からびている。>と判断できる。
この情報から《アイデア》に成功すると
<この場で一際怨念が籠もっていそうなのは、あの死体だ>と思いつく。

従属者たちを鎮めるのに確実な方法は【屋内にある死体を燃やす】ことである。
死体を処分さえできれば、従属化していた人物たちも解放されて自動気絶する。
ただし、屋内に入ると言うことは、鏡をみて発狂する危険性も高まるのと同意だ。




●元凶の遺骸
従属化したNPCに取り囲まれていた人物を見ると、既に死亡してミイラ化している。
このミイラ化した死体が「風窓京枝」の末路である。
近くには砕けたガラス片とボロボロの木枠の屑が散らばっている。これは【レンのガラス】の破片である。
呪いの根本的解決方法は、狂気の夢の母胎となっている【死体を燃やす】ことだ。
探索者の持ち物に火種が無いならば、従属者の一人が煙草を吸っていた設定にしておくと良い。
戦闘中は難しいだろうが、倒してしまえば後からライターを回収できる。

元凶の死体は触れた人間を一時的に発狂させる効果を持ち、発狂の種類は決まっている。
時間は(1D6)ラウンドの間続く。

 <ヒステリー症>
『何の脈絡もなく世の中全てが敵であり、恨みの対象に思ってしまう。
 暴力的な精神的動揺状態となり、周囲に対して人物・物に限らず攻撃的に当たり散らす。』

探索者が触れてしまったならば、他の探索者との戦闘になってしまうだろう。
若しくは誰かが取り押さえ、《精神分析》に成功すれば直ぐに元に戻る。
また、特殊な発狂なので《交渉技能の半分の値》で対応することも可能だ。

死体を燃やす前に《目星》に成功すると<メモらしきものを見つける。>
<【字が滲んだメモ】の内容>
メモには震えをこらえて書いたような文章が記されている。
『はじめ、ぼくのじまんのむすこよ
 ふがいない父をゆるしてくれとは言わない
 たださいごに もういちど あいたかった』
文章はここで終わり、まるで血で書いたような文字は滲んでいる。

狂気の発生源だった死体を燃やした時点で事件自体はほぼ解決である。
最後のメモや、その後をどうするかは探索者たちに委ねられるだろう。


 

11:悪夢の最後


次のイベントは<遺骸処理後に探索者が廃墟内に居る>ということが条件になる。
イベントを回避させたいならば、入り口から廃墟へ火炎瓶などを投げ入れれば安全に遺骸を処理できる。
他にも、山中なのを利用して枯れ枝を燃やして投げ入れれば、時間はかかれど屋外から燃やせなくはない。
《アイデア》ロールをさせるより、なるべくPLのリアルアイデアで回避して貰うべきだろう。

●廃墟を出る瞬間
死体処分後に廃墟内に居る、あるいは出入口付近にいる探索者には、最後に危機的イベントが残っている。
鏡の向こうで食事を待ちわびていたゴグ=フールが、探索者へ接触しようとしているのだ。
邪神と風窓との強制的な呪詛契約は、死体の処理によって解除されている。
しかし、諸悪の根元たる邪神まで消えたわけではない。
留まる理由は無くなった事で自ら消える頃合いではあるが、邪神は去り際の食事を望んでいる。
その餌食に、探索者は選ばれてしまったのだ。
ヒステリー症やその他の発狂を起こしていた探索者も、発狂を凌駕する恐怖により強制的に解除される。

『廃墟を離れようとした瞬間、臓腑をむしり取られそうな畏怖を背後から感じ取った。
 進もうとしても、絡め取るような恐怖が足を震えさせてその場で立ち止まらされる。
 すると、耳元で消化器官が蠕動運動でもするような蠢きの声が囁いてくる。
 言葉として認識することを拒否しようと、次第に何を訴えているのか聞こえてしまう。』
『…………』
『……せ… く……ろ』
『…わ…… ……せろ』
『…………』
『 く わ せ ろ 』

底知れぬ狂気が、貴方を飲み込ませろと望む声。
それを聞かされてしまった探索者は(1/1D4+1)のSANチェックが発生する。

このSANチェックに失敗してしまった場合、5以上の喪失点でも発狂せずに別の思考が沸き起こる。
(※発狂するかどうかの《アイデア》は、次のイベントが終わってからロールする。)
<声を聞いたことで、脅迫観念的に「鏡を見なければならない」と言う思考に支配される。>




●鏡を見るかの選択
鏡を見たところで既に「後追い夢の呪い」は解呪されているが、呪いとは別の恐ろしいものが待っている。
前述の脅迫観念に支配されてしまった探索者は、自分の意志とは関係なしに鏡を見ようとしてしまう。
この時点では失敗した者を連れだそうとしても、足が地面に縫われたかのように動いてくれない。
担ぎ上げようとしても、硬直した人間を担ぐのは容易いことではないだろう。
目を塞ぐ程度ならできるかもしれないが、向きによっては塞ごうとした者が鏡見ることになるだろう。

チェック失敗者が一人も居ないのであれば、KPは「鏡を見ますか?」と提示し探索者に選択させよう。
全員が見ないことを選択したなら、その場から早々に離れるべきだろう。
成功者であれば、縫いつけられた足は[POW×5]に成功すれば自分の意志で動かせるようになる。
POW対抗に失敗したなら、誰かに強く引っ張ってもらわなければならない。

チェックに成功しても鏡を見てしまった探索者が居たのなら、失敗者と同様の対応がされる。
鏡を見た者は、呪い悪夢の結末を直に体験することとなる。

『鏡から溢れんばかりの期待、情愛、辛抱に満ちた大きな青い目が貴方を凝視している。
 それだけで一体の巨大生物にも見える頭部が、数多の青い目を瞬かせる。
 巨大な頭部の下、鏡の奥に広がる無限の空間そのものが途方もないそのものの体で溢れている。
 禍々しい青い星空に混じった黒点は、一つ一つが口吻のように開閉を繰り返している。
 まるで貴方に語りかけているようだ。』

鏡に潜む狂気を食らうものを目撃した探索者は(1D10/1D100)の正気度喪失が発生。
声によって発狂する値まで減少していた者は、ここで発狂するかどうかの《アイデア》ロールを行う。
以降の処理は状況によって変化する。




●邪神の食餌
ゴグ=フールは状況に応じて一撃だけ攻撃をしてくる。
攻撃の優先順位は狂気の状態によって変化する。
【永久的狂気(特殊対応)>>不定の狂気>一時的狂気>SAN減少量が最も高い>発狂なし】
最大6人まで触肢で攻撃が行え、複数人が対象になったならばその全員へ触肢が襲いかかる。
攻撃は《触肢90%:ダメージ1D6》を行う。
本来は(2D6)本の触肢が襲いかかるが、今回の攻撃は1人1本のみ。

触肢攻撃が失敗したならば、探索者の髪や服を軽く刻んだだけだろう。
触肢攻撃に成功されると、回避行動が行えるかどうかには狂気の発症有無が関わってくる。
発狂したならば回避行動は行えない。
発狂しなければ、動けなくされていた足は正常に戻り、《回避》ロールが行える。
なお、触肢には付属器として棘や刃が生えているため、素手による《受け流し》は行えない。
《受け流し》を行うのであれば、武器を介する必要があるだろう。

近くに鏡を見てもなお発狂していない探索者が居たならば、攻撃の身代わりになれる可能性がある。
狙われた発狂者を《かばう》権利が与えられるからだ。
《かばう》に成功するには、ゴグ=フールの[DEX16]との対抗になる。
DEX対抗に失敗したなら、元の対象へダメージが入る。
対抗に成功したならば、かばった人物へダメージが入る。
見ていないものが《かばう》を行うのであれば、ゴグ=フールを目撃する必要がある。

上記の例外として、永久的狂気(SAN0以下)を発症したものには、別の処理が行われる。



▼1人も発狂しなかった場合
最も正気度喪失量が高かった探索者へ、一撃だけ攻撃をしかける。
最大値が複数人で同じならば、該当者全員へ触肢攻撃が襲いかかる。
触肢攻撃が成功したならば、探索者は《回避》か、武器による《受け流し》ロールが行える。
このダメージで死亡した探索者がいたとしても、邪神はこれ以上の手は加えてこない。
攻撃が終わったところで、ゴグ=フールは自分が住まう次元へと帰って行く。
邪神が帰ったことを示すように、廃墟内の壁には鏡が無くなり、ただのコンクリート壁となっている。



▼1人でも発狂者がいる場合
ゴグ=フールは狂気を発症した者を優先して食らおうとし、一撃だけ攻撃をしてくる。
複数人が発狂したなら、発狂者全員へ触肢が襲いかかる。
触肢攻撃に成功されると、発狂した本人は発狂直後のため回避行動を行えない。
ダメージを受けても全員が生存しているならば、ゴグ=フールは自分が住まう次元へと帰って行く。
邪神が帰ったことを示すように、廃墟内の壁には鏡が無くなり、ただのコンクリート壁となっている。

耐久がゼロ以下になってしまった探索者が居たならば、ゴグ=フールは更に行動を起こす。
ゼロ以下の探索者の遺骸を、鏡の中へ引きずり込みはじめるのだ。
愚かにも死体を守ろうとしたものが居るならば、巻き込まれる可能性が高い。
よって、手出ししたものは(1D6)ダメージを負ってしまう。
遺骸には触肢が巻き付けられ、みるみる死体を千切り刻んでいく。
血飛沫と肉片が飛び散り、それら残骸すべてを触肢は鏡の中へと引きずり込んでいく。
悪夢が夢でなくなり、現実として目の前で起こっているのだ。

『反射面を通ってそれはやってきたそれは、多数の触手で貴方をつかみ、包み込んだ。
 幾重もの瞳で途切れることのない視線が突き刺される。
 茨のごとき無数の棘を思わせる鬼歯、それに覆われた触手で肉が削がれていく。
 肉が綺麗に何枚にもおろされ、剥き出された骨までも幾分に寸断される。
 溢れる血肉や臓物は、全てかき集められ青い瞳の主の元へ運ばれる。
 微塵切りにされた体と共に生まれた狂気、それら全てを狂気の怪物は貪り食らっていった。』

邪神が仲間を食らう様を目撃してしまった者は(1D6+1/2D10)の正気度喪失が発生する。
まだゴグ=フールを見ていなかった者が目撃したのであれば(2D10/1D100+4)となる。

気づけば、まるで質の悪い悪夢でも見ていたかのように、壁面の鏡と遺体は跡形もなくなくなっている。
しかし自分たちの嘆く声に混じり、まだ肉を貪り食らう咀嚼音と、冒涜的な笑い声が聞こえただろう。



▼永久的狂気(SAN0以下)の者がいる場合
邪神は熟れた狂気を食らうために、確実な方法に出る。
開いていただろう扉は閉められ、探索者の力では開けなくされる。
廃屋内居たもの全員が、ゴグ=フールの食餌皿の中に幽閉されてしまったのだ。
ただし、一部の者には閉じこめられる前に脱出するチャンスはある。
条件は目撃によるSANチェックでの発狂を回避し、ゴグ=フールの[DEX16]との対抗に勝つことだ。
成功すれば寸での所で脱出でき、失敗すれば閉じこめられてしまう。

次の光景は、閉じこめられた探索者へのみ公開する。
屋外に居るものには、見えない状況で選択するイベントが残っているからだ。

『反射面を通ってそれはやってきたそれは、多数の触手で貴方をつかみ、包み込んだ。
 幾重もの瞳で途切れることのない視線が突き刺される。
 茨のごとき無数の棘を思わせる鬼歯、それに覆われた触手で肉が削がれていく。
 肉が綺麗に何枚にもおろされ、剥き出された骨までも幾分に寸断される。
 溢れる血肉や臓物は、全てかき集められ青い瞳の主の元へ運ばれる。
 微塵切りにされた体と共に生まれた狂気、それら全てを狂気の怪物は貪り食らっていった。』

探索者は最期に、狂気と捕食者に捕らわれた恐怖をRPしてもらう。
その叫びは屋外に居る探索者への最期の警告にもなる。
RPが終わった時点で、ゴグ=フールに捕らわれた探索者の生涯は終了する。
熟した狂気は邪心の舌を堪能させたことだろう。


以降は外で待機させられていた探索者への対応となる。
外に居た探索者は屋内から聞こえてくる阿鼻叫喚の悲鳴を聞くこととなる。
異常を察して、いくら扉を開こうが破壊しようがびくともしない。
暫くすると叫びは止み、扉も開くようになる。
入る前に《聞き耳》に成功すると<中から咀嚼音のような音が聞こえる。>

咀嚼音が止んでから入ったのであれば、廃墟の中は驚くほどに何もない。
叫び声は確かに聞いた。しかし何もないのだ。
鏡も、遺骸も、叫びを上げていただろう探索者の痕跡も、何一つ残されていない。
まるで悪い夢でも見ているように何もない異常を目撃した探索者は(1D4/1D10)の正気度喪失が発生する。
後日、いくら捜索しようと悲鳴の主は二度と見つかることはない。

 
音が止むのを待たず、直ぐに扉を開いたのであれば次のような光景を目にする。

『意を決して扉を開けた瞬間、正面から何かが落ちてきた。
 それはついさっきまで生きていたはずの、探索者の生首だ。
 悲痛して叫びを上げる間もなく、何かが生首を四方から突き刺し引き裂いた。
 目玉が跳ね、脳が飛び散り、皮膚がこびりついた頭蓋が砕けはじける。
 残骸になった人間を無数の触肢がかき集め、青く明滅する光の群集へ吸い込まれていく。』
『青い光に思えたものは、数え切れない瞳の瞬きだった。
 満たされた期待の光を宿し、貴方を愛しげに、舐るように凝視していた。
 触肢の主は肉と骨が擦り潰され、新鮮な血肉が粘液質な音を響かせる。
 鏡の向こうで食餌を堪能する巨魁は、想像を放棄させる巨大さを深淵に潜ませていた。
 口吻らしき裂け目から、ここに居たであろう人間の体を啜りながら。』

狂気を食らうものが仲間を咀嚼する様を目撃した事により(2D10/1D100+4)の正気度喪失が発生する。
これにより狂気を発生させた者がいたのであれば、邪神はその者までも食らおうとする。
辛うじて発狂していない者がいたならば、[DEX16]の対抗に勝利すれば逃走できる。
しかし、全員が行動不能な狂気に陥ってしまったのであれば末路は決まっている。
先に食われていった仲間と同じように切り刻まれ、ゴグ=フールの餌となる運命だ。
奇しくも従属化して監禁されていた仲間が居たならば、唯一の生き残りはその人物だけになるかもしれない。




○エピローグ要素
風窓の死体を燃やす前に【滲んだ字のメモ】を入手した場合に行える。
並びに彼の息子である「風窓一」と関係を結んでいる必要がある。

【滲んだ字のメモ】を息子へ渡すと、彼は涙してその紙を握りしめるだろう。
そうして返事もままならないほど嗚咽をもらしながら、紙を届けてくれた探索者へ感謝する。

息子は父の失踪をすべて自分の責任と感じていた。
しかし遺書とも言える紙を渡したことで、自責の念は軽くなり、父の愛情を思い出せたのだ。
もし遺書を渡さなければ、事件が解決したとても息子は辛さに耐えきれず自殺するだろう。
一の自殺は、偶然探索者が見ていたニュースや新聞で報されるかもしれない。

 

12:クリア後の処理


●元凶を排除した
(1d3)のクトゥルフ神話技能が与えられます。
呪いに晒されながら、風窓の死体を処理できた探索者が対象です。


●元凶を排除して生還した
全員が生存かつSANゼロ以下になっていなければ(1d10)の正気度回復が行えます。
一人でも探索者がロストした場合は(1d4)の正気度回復となります。


●風窓京枝の遺書を息子に渡した
探索者は(1d4)の正気度回復が行えます。
息子である一は悲しむものの、遺書を渡したことで鬱が少し改善されます。


●従属者の存命
従属者を一人も殺さなかった探索者たちは、(1D3)の正気度回復が行えます。
戦った従属者のSANの残数に関係なく、全員生きている事が条件です。


●従属化しながらも生還
クトゥルフ神話技能が5%与えられます。
シナリオの途中で従属化しながらも、SANが残り生還した探索者が対象です。


○特別報酬
守るべき人物を救い出せた探索者は(1D6)の正気度回復が行えます。
これは呪いに巻き込まれたNPCを、死亡やSANゼロ以下にせず救い出せば与えられる報酬です。
適用されるのは、導入や従属者で使用されたNPCが探索者に縁深い人物だった場合。
例)・導入での会話で既に感染していたNPCが探索者にとって親しい人物
  ・廃墟で遭遇した従属者が探偵探索者が依頼主から捜索を依頼された人物
   或いは、警官探索者が捜索していた失踪者
この報酬を設定するには、KPが探索者の人となりを踏まえた導入にする必要があるでしょう。



●不定の狂気
不定の狂気を発症した探索者は、KPとPLの相談の上で次のような狂気を患うことができます。
選択は自由なので(1D3)でランダムに決定してもいいでしょう。
期間は[1D10×10日間]。相談して両者の了解が得られれば変更しても構いません。

<睡眠傷害>
悪夢による呪いで正気度が多く削れたり、呪いの進度が高かった人物に該当する。
深い眠りに入る前に、1回は体を寸断、喪失させられたような衝撃を感じて覚醒させられる。
痙攣を起こしながら目覚めた直後は、金縛りで動くこともできない。
寝起きは手足の痺れがひどく、寝不足の日々が続く。

<鏡面恐怖症>
鏡面による呪いで正気度が多く削れたり、呪いの進度が高かった人物に該当する。
鏡面を見ると、自分の背後から何かが這い寄ってくる恐怖を覚えるようになってしまう。
這い寄ってくるものは呪いと同じようなものであったり、黒く蠢く影でもいい。
鏡を見ていると得体の知れない何かが近寄ってくる幻覚を見る事には変わらない。

<閉所&暗所恐怖症>
従属化で監禁されて居たり、廃墟で仲間が消えた光景を見た探索者に発生する可能性がある。
暗く狭い場所にいると、暗闇から何者かが自分を見つめている錯覚を感じる。
時には耳元に生温い息が吹きかかり、呪詛めいた呟きが聞こえてくるかもしれない。
これは布団の中に包まっていても起こる。明るい場所でないと眠れなくなるだろう。


 

13:NPCステータス一覧


★狂気を食べるもの「ゴグ=フール」
STR:100   DEX:16   INT:18
CON:380  POW:35   SIZ:計測不能
HP:380   MP:38   db:該当せず
――――――――――――――――――――――――――
[武器]触手 90%:ダメージ 1d6(各1ラウンド毎)
[装甲]なし
[呪文]ゴグ=フールが望むもの全て
ただし通常、夢、悪夢、狂気に関するものを使用できる。
ゴグ=フールはクトゥルフ神話のほかの存在や種族とほとんど関係はない。
[正気度喪失]目撃した場合(1d10/1d100)
*各触手には2d6の耐久がある。
 触手が破壊されたら、ゴグ=フールの総耐久力から差し引く。
*ゴグ=フールは目がついた触手で犠牲者を調べる。
 次に、2d6本の棘の生えた触手か、歯のついた触手で犠牲者を刻み始める。
 大量の血液が吹きこぼれ、肉片が飛び散る。
 血と肉は集められ、ゴグ=フールのいる次元へと吸い込まれてむさぼり食われる。


★狂気の媒介者「不可視の虫」
STR:1   DEX:20   INT:10
CON:3  POW:10  SIZ:1
HP:2   MP:10
――――――――――――――――――――――――――
[武器]攻撃も回避もしない
[装甲]視認された上での魔術的な攻撃以外は全て無効
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1d3)
*ゴグ=フールが生み出した呪いの媒介生物
 青色の外殻に何本もの触覚が蠢き、その先端に付属する小さな目が周りを伺っている。


★オカルト研究家「風窓 京枝(かざまど きょうえ)」男性/55歳
STR:9   DEX:11  INT:14   EDU:18
CON:13  POW:16  SIZ:11   APP:9
――――――――――――――――――――――――――
昔から民族的なオカルト研究に没頭しており、世界中を飛び回っていた。
妙な趣味だが気さくな性格で人当たりはよく、妻と息子にも恵まれた。
妻が他界してしまうも、男で一つで息子を育て上げ独り立ちさせる。
息子の職も落ち着いた頃に、久しぶりに海外へオカルト研究の足を伸ばすようになった。
しかし出張先の国でナイラトテップに「レンのガラス」を買わされたのが運の尽きである。
シナリオ開始時には既にゴグ=フールに殺された後となる。


★失踪者の息子「風窓 一(かざまど はじめ)」男性/26歳/会社員
STR:11   DEX:12   INT:14   EDU:14
CON:09  POW:15  SIZ:12   APP:10
HP:11   MP:15   SAN:35  db:0
――――――――――――――――――――――――――
*父が失踪してから欝の兆候が見られ、睡眠障害になっている。
 不安を抱え込んでいるため、失踪原因は自分にあるのではとすら思い込んでいる。
 ただひたすらに父が無事に帰ってくることだけを祈り続けている。


★金で救われた男「金子 安男(かねこ やすお)」男性/22歳/会社員
STR:07   DEX:12  INT:10   EDU:14
CON:07  POW:07  SIZ:12   APP:15
HP:10   MP:07   SAN:21  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[技能]アイデア:50% 幸運:35% 知識:70%
*端的にいうと金持ちのバカ息子。


★身内に救われた女性「鹿角かすみ(かのつかすみ)」女性/25歳/骨董屋
STR:12  DEX:10  INT:14  EDU:13
CON:15  POW:14  SIZ:11   APP:13
HP:13   MP:14  SAN:70  db:0
――――――――――――――――――――――――――
[技能]アイデア:70% 幸運:70% 知識:65%
*この人物にのみ適応した呪いを弾く小刀を所持している。


★怪しい屋敷の主人「玄朗(げんろう)」男性/60代以上
STR:14   DEX:11   INT:21  EDU:25
CON:11  POW:30  SIZ:14   APP:10
――――――――――――――――――――――――――
[技能]心理学の察知:90%
[武器]従者
[装甲]従者
[呪文]「後追い夢」を解く為に必要な呪文や、KPが望む呪文。
    その他《魔法の感知》(P.284)、《平凡な見せかけ/仮面》(P.280)等
*力押しな探索者に対してのトラップ的な存在である。
*攻撃は従者任せだが、KPが望むなら好きなように技能を追加すると良い。


★主人の従者「直刃(すぐは)」女性/20代以上
STR:25   DEX:18  INT:15   EDU:08
CON:17  POW:13  SIZ:16   APP:15
HP:17   MP:13   SAN:0   db:+1d6
――――――――――――――――――――――――――
[技能]アイデア:50% 幸運:65% 知識:50% 
    回避:80% 居合い:99% 日本刀:99% 武道:50% キック:60%
[武器]日本刀 99%:ダメージ 1d10+db (貫通20%)
    靴の仕込みナイフ(キック) 60%:ダメージ 1d6+1d4+db(貫通12%)
    ベルトの仕込み刀(居合) 99%:ダメージ 1d10+db(貫通20%)
[装甲]魔術装甲 10ポイント
[呪文]なし
*正気度のないの攻撃マシーンのような人物。待機中は無言。
*心理学をされても何も考えておらず、事前に主人に言われたことだけを遂行する。
*目星をすると、防弾ベストをスーツの下に着込んでいることが分かる。
*ベルトの仕込み刀は1回のみの使い捨て攻撃である。
 ペラペラの薄い金属板のような状態で仕込まれており、ムチのようにしなる。
<「日本刀」耐久:20 ダメージ(1d6+db)貫通 射程:タッチ 技能《日本刀》>


★「屋敷の番犬(1d4+4匹の超大型犬)」
STR CON SIZ DEX POW 耐久力
13  11  8  13  11  10 
――――――――――――――――――――――――――
ダメージ・ボーナス:なし
[武器]噛みつき 30%:ダメージ 1d8


★「3~5人の従属者たち」
STR CON SIZ DEX POW 耐久力 仮名称
13  15  15  16  12  15  A(松田)
13  12  12  11  10  12  B(鈴木)
12  11  15  11  11  13  C(本田)
12  14  14  10  11  14  D(豊田)
14  12  12  08  15  12  E(三菱)
――――――――――――――――――――――――――
ダメージ・ボーナス:+1D4
[武器]棍棒 40%、ダメージ 1D6+db
    こぶし/パンチ 40%、ダメージ 1D3+db
*意識がしっかりしていないため《回避行動》はしない。
*全員SANは一桁まで減少している。
(従属者の能力値はあくまで一例です。変化させても問題ありません。)


 

14:その他補足や裏話


●レンのガラスについて
KPCに記載されている使用方法の差異などについて
本シナリオでは「レンのガラス」は怪異発生のきっかけの一つに過ぎません。
ブラフ情報にするにも混乱を起こしかねない。更に怪異解決には役に立たないので殆ど突き詰めませんでした。
作者自身が必要ないと考えてしまっているため、詳細の突き詰めは本シナリオを回されるKPさんへ任してしまうことをお許し下さい。

「悪夢にレンのガラスを持ち運ぶ描写は無いのですか?」とご質問を頂きました。(ご意見ありがとうございます!)
後追い夢の悪夢は「追いかけられる恐怖」「向かった場所の情報」を探索者へ示すことを重点にしています。
前者は邪神の意志によるもの、後者はシナリオに必要な情報としてです。
悪夢ではレンのガラスを持ち出すシーンはありませんが、息子のことを一番に思う父の意志によりガラスは持ちだされています。
鏡枝には狂気に飲まれながらも遺書を残すほどの思いがあったので、危険物を置いておくことはしないだろうと作成中に判断しました。
並びに、上記2点の目的に合わなかったため、描写には入れませんでした。
何より部屋から無くしたかった理由は、「レンのガラス」は不完全であってもアーティファクトには違いありません。
無ければ諦めも付きますが、目の前に存在するだけで探索者たちがシナリオ路線から脱線しかねない無駄な情報になる可能性が高いです。
作者はそう言った深読み沼による苦い経験もあり、破損していようと渡したく無かったので部屋からは排除しました。



●難易度調整にあたって
もし廃屋前での難易度を調整したいのであれば、従属者との戦闘は丸ごと排除しても構いません。
その場合は従属者は屋内で無抵抗に転がしておくだけでいいでしょう。
薄気味悪い笑いを浮かべながら、目線は鏡か上の空で、とても正気には見えません。
従属者たちを残したまま風窓の遺骸を燃やす事はないでしょうが、彼らは体が焼かれても逃げません。
一緒に焼かれながら、全身を陸に上がった魚のように痙攣させ、狂った笑いを叫びます。
彼らを外へ出すには引きずるしかありません。
或いは、廃墟を出る瞬間のイベントで使う事もできます。
一度は邪神と深く関わってしまった身のため、呪いが解かれようと操られやすい状態には変わりありません。
探索者が外へ逃げ出そうとした際に、足を掴んだり、覆い被さって邪魔をする役にすると良いでしょう。



※※※※※※※※※※NPCの裏設定※※※※※※※※※※
製作者が考えた設定ですが、変えてしまっても特に問題ありません。
以下はの設定はあくまで一例とし、実際に回す際はKPさんが自由に想像していってください。


●風窓親子(父親:鏡枝、息子:一)
「風窓」の苗字の由来は「レンのガラス」の出典「破風の窓」より。
「鏡枝」は主軸が鏡であったこと、呪いが枝のように張り巡らされていくことから。
「一」は風窓家の一人息子であり、シナリオ内では一人きりの家族になってしまったことから。

鏡枝は未亡人。祖父母も居らず、父と息子の二人だけの家族。
妻が亡くなったのは、鏡枝が遺跡調査の仕事で海外出張中の出来事。一は小学校3~4年の頃である。
死因は不慮の事故であり、鏡枝は急いで帰国するも看取ることすら叶わなかった。
妻の死に向き合えず、出張は抑えめにしつつも、家のことは全て家政婦を呼んで対応した。
この時期は一に孤独への恐怖をより植え付けていたが、父親は自分の事に精一杯で気づけなかった。
ところが、一が事故に遭い入院する事態が起きたことで、鏡枝は再び家族を失う恐怖に襲われる。
幸いにも息子の怪我は軽い骨折程度だったが、父にとっては大きな衝撃であった。
奇しくも親子の関係が薄らぐきっかけだった事故が、二人を向き合わせるきっかけとなる。
病室で親子二人きり、お互いのつらさを共有し、親子の絆を深めた。

事故の一件以来、鏡枝は仕事より息子を優先するようになる。
ほどほどに親馬鹿をしつつ、一の大学卒業と就職までを見届けていった。
一が社会人になって落ち着いた頃、息子自身から「また海外へ行ってみたら?」と父へ申し出た。
鏡枝は息子の成長に寂しさと嬉しさ両方を抱きながら、その言葉に甘えて国外調査を再び始めるようになる。
奇妙な手土産と土産話を持ち帰り、話す日々は確かに幸福であった。
全ては国外調査中に、鏡枝がナイラトテップの目に止まってしまうまでの話である。



●金子安男
名前の由来は金で出来た子供で、価値観が安っぽい男だから。
金子家の本妻は子供が産めず、代理出産で生まれた子供。
代理出産を決めたのは跡取りを欲しがった父親であり、本妻は自分は用無しと思いこみ安男に厳しくあたる。
安男は長男として甘やかされるも、母親の愛情を知らずに育った。
父親も親愛と言うよりは「高い金を払って生ませた子供」という気持ちで接した。
そのため安男には「愛情=金額」という考えがあり、無償の愛情などあり得ないと思っている。
呪いの件で高い金を支払って救われた事を、内心では嬉しく思っている。



●鹿角かすみ
「自分は海外出張中の夫の帰りを待つ妻」という記憶を、玄朗に刷り込まれた女性。
かすみは生まれた頃からとある実験施設で管理されていたため、まともな幼少期を育っていない。
玄朗と深い縁を持っていたため、実験施設から救い出され、匿うように過ごさせて貰っている。


●直刃
玄朗の無二の親友が打った刀。精神力を吸い取る効果を持つ妖刀である。
持ち主の精神力を注ぐと刀の思念体が顕現する。
主の精神力が元になるため、気弱な者が主なら気弱な化身が顕現する。
逆に、邪悪な者が主ならば主さえ食らおうとする化け物が出てくる。
人型は思念体であり、玄朗が器を用意して物質体として動けるようにした。本体の刀は別の場所にある。


●玄朗
神話生物を食べる特殊な能力持ちで、人の形を保っているのが奇跡的。
能力は生まれもっての体質もあるが、そのように”作られた”のも原因。
また精神力(POW)を吸収する体質でもあり、虫は取り付く度に精神力を吸われて消滅している。直刃も同様の理由。
精神力吸収の力抑えるため、同じく精神力を吸収する呪い刀を所持することで相殺している。
かすみは玄朗を義父と思っているが、血縁のある親子。かすみは真実を知らない。



※※※※※※※※※※追加NPC案※※※※※※※※※※
★「此世 読子(このよ よむこ)」 大学生/18歳女
STR:12   DEX:12   INT:14  EDU:12
CON:10  POW:13  SIZ:09   APP:11
――――――――――――――――――――――――――
[技能]アイデア:70% 幸運:65% 知識:60% 図書館:60% 写真術:60%
[設定]ジャーナリストを目指す活発な女の子。オタク気質で噂好き。
    導入の時点このNPCを使えば勝手に悪夢の話をしてくれるだろう。
    名前の由来は「此世(世の中)を一生の娯楽として読んでいく」
[裏設定]
本物の読子は初日の導入日だけであり、2日目からは呪いに怯えながら家で待機するようになる。
代わりに行動するのは、ジャーナリストを目指すピチピチの女子大生♪という体で来たナイラトテップ様。
「彼(風窓)にプレゼントした”レンのガラス”気に入ってくれたかしら♪」と見に来たテンションの高い邪神様。
何かあったらサポート、あるいは邪魔する役目をして頂きます。



●偽の読子だと発覚した際のイベント
探索者が本物の読子かと疑うような素振りを見せたなら、次のように突っぱねる。
「ほうほう、疑うなら別行動にしよっか。それなら心配あるまいし?」
探索者の意見も聞かずに、読子はさっさと移動を始める。
このまま行かせてしまえば、特に害も加えることなくお別れしてくれる。
引き留めようとすると、次のイベントへ移行する。

読子が頭を後ろへぐねりと向けた。
「わざわざ話題そらしてあげてるのわからないのかい?」
背中を反らさず首に骨がないかのように、真後ろを頭を逆さまにして、こちらを見ている。
「そんなに知りたいなら見せてあげるよ? いいの?」
逆さ三日月になった口元が「正体を見たいか?」と問いかけてくる。
見る見ないに関わらず、偽読子がとる行動は変わらない。

『そいつは首を元に戻して、読子のように微笑んだ。
 「まあ今回は目的が違うから、アレの手伝いを少しだけして帰るとしよっかな。」
 周囲がまるで冷凍庫のような鋭い外気に包まれる。
 辺りに白く舞うのは雪だろうか、小さく光を反射する何かがあちらこちらで結合していく。
 白い粒は集まり結晶となって、磨かれた底面が探索者を取り囲んだ。
 鏡だ、逃げ場もないほど鏡が取り囲んでいるのだ。』
『全ての鏡から、貴方の背後に”あなた”が近づいてくる。
 振り返っても、鏡面越し背後から近づくあなたがいる。
 「このままでは追いつかれてしまう」と、恐怖に狼狽える貴方の首筋に冷たく濡れた手が触れた。』

『まだだよ もっともっと 足掻いてもらわないと』

読子を真似たものが、人間の声とは思えない異次元めいた音で囁いた。

『おやすみ』

頭部が多弁の肉花となって咲き、人を模した食人花は貴方の視界も思考も噛み砕き溶かした。
這い寄る狂気に正気を貪られ(1D6/2D10)の正気度喪失が発生。
SANチェック後、自動で気絶する。気絶に伴い、悪夢の進行ロールも発生させる。

目覚めたところで、偽読子によるSANチェックで発狂する値を引いた者は《アイデア》ロールを行う。
成功すれば発狂はするが、改めてアイデアを行わなくとも悪夢の内容を思い出せるようになっている。
つまり悪夢情報への《アイデア》と成功による追加SANチェックを行わなくてもよくなる。



 

15:参考・引用(敬称略)


クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPGー」
「マレウス・モンストロルム」
「キーパーコンパニオン 新訂新版」


***ここまで読んで頂きありがとうございました。***
(2013/12/05) シナリオ製作:kanin(http://kanin-hib.hateblo.jp/
(2014/04/06) 一部修正
(2015/06/06) 全体の修正と変更
(2015/08/16) 補足に追記
(2017/12/15) ギミックに追記