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CoCシナリオ「噤めぬ情調」

「噤めぬ情調(つぐめぬじょうちょう)」シナリオ概要ページへ戻る


01:はじめに


このシナリオは「クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPGー」に対応したシナリオです。
舞台は白い部屋、指定人数は2人(KPとPLのタイマン推奨)
*推奨技能:《聞き耳》があったほうが楽しめます。

プレイキャラクターに強く感情移入するための茶番シナリオです。
茶番シナリオですが、RPにかなり制約が入るため考えるのが大変です。
素直になれない探索者同士を、妙な方向で困らせるための内容となっております。
なお、SANチェックとちょっとした後遺症もあります。
RP重視なので、オンラインの文字チャットでのセッションを強く推奨します。

 

02:あらすじ


仲が良い悪い関係なしに、気づけばよくいる二人組の探索者。
今日も二人がよく居る場所で、いつものように会話をする。
会話のさなかでふと衣服を探ると、一枚の絵札が紛れ込んでいた。
それは未知の場所への招待状であった。

 

     ( 目 次 )

     01:はじめに
     02:あらすじ
     03:背景
     04:導入
     05:白い部屋
     06:白い石棺
     07:ヘイムダルの部屋
     08:トールの部屋
     09:ロキの部屋
     10:結末の分岐
     11:報酬やペナルティ
     12:フレイヤの部屋(追加案)
     13:その他補足など


 

03:背景


●黒幕の背景
この空間を作っている原因は、とある魔術師さんの強い残留思念である。
彼は生前、真実の愛を求めて必死に修行をこなす日々を一世紀以上もの間続けてきた。
しかし何をやっても上手く行かずついに逝去し、晴らされぬ無念が棺桶の中に留まるようになる。

彼は真実を伝えるもの「アリエル」(マレモンP.131)をの信心深い信者でもあった。
霊体になってなお真実を強く求める心を見込まれてか、真実の光を浴びせられ新たな力を会得した。
積み重ねてきた様々な知恵と新たな力を手に、彼は真実の愛を求めて探求の部屋を作り上げた。
潔白を示すように真っ白な部屋は、様々な人間や異形すら招き入れ、感情の追求を測ってくる仕組みだ。
また、アリエルは真実を体現するかのような存在であるため、本来であれば信者も嘘を嫌煙するだろう。
しかし魔術師はその制約よりも愛を優先したい気持ちが優っているため、あまりお固くはないようだ。

彼は素直になれない人間同士を見ると、自分の悲しい過去を思い出してしまう。
真実へ辿りつけなかった原因は「きっとどこかで素直になりきれなかったせいだ」と思い至ったためだ。
せめてこの場だけでもと、修行の末に身につけた様々な力で部屋には特異なルールを設定している。
また、都合よく選定する力はないため、かなり適当かつアトランダムな選択で犠牲者を巻き込んでいる。
死後ですら神の力を借りてまで研究を続ける彼が、不思議な部屋へ巻き込んだ者たちに求めるもの。
それは「強い愛情」あるいは「愛情を凌駕する強い信念」などである。



●白い部屋の探索者の状態
白い部屋にいる間の探索者はアストラル体(いわゆる霊体)の状態である。
怪我をしても苦痛は感じるものの、耐久の減少は発生せず、疲労も蓄積しない。
アストラル体は別名を感情体、欲望体ともいわれる。
よって感情に作用する魔術効果などが効きやすい状態となっている。
この空間において、探索者へかけられている魔術は以下の2種類。
 *嘘を吐いたり誤魔化しが行えない呪い。
 *何事も思考するだけで止めておけず、全て言葉として口から出てしまう呪い。
また、会話は感情が直接話し合うようなものなので言語の壁も発生しない。
つまり何語で話しても相手にわからないよう誤魔化す事は不可能である。


 

04:導入


探索者二人が仕事なり私情なりで行動を共にしている時に起こる。
片方の探索者がなんとはなしにポケットへ手を入れると、カサリとした感触が伝わる。
何かと取り出してみれば、それは一枚の【白い台紙の絵札】だった。
そこに恋人同士を描いたような絵に「VI THE LOVERS」と書かれている。
《知識》に成功、あるいはPLがリアルアイデアで気づけば
<これはタロットカードの「恋人」を意味する札だと分かる。>
更に《オカルト》に成功すると
<「恋人」のカードは正位置で「試練の克服」を意味する。>と思い出す。


「こんなものを持っていただろうか?」
不審に思いつつ、気づけば近くにいるもう一人へ問いかけようと名前を呼ぶだろう。
あるいは相手が変化に気づいて呼びかけるかもしれない。
相手の名前を呼んで、次いで出る言葉は不自然なほどに無意識に口から飛び出した。
「好きだ」と。

相手は虚を突かれるかもしれないし、呆れたり、はたまた慌てるかもしれない。
そんな反応はお構いなしに間を置かずに更なる怪異が発生する。
『絵札が唐突に熱を持ち、一匹の虹色の蛇が飛び出した。
 蛇は銀に輝く紐を探索者たちへ括りつけ、瞬く間に引きずり込んでしまう。
 行く先は、蛇が飛び出してきた絵札の中へ。』

蛇に連れ去られた探索者は、遠くから嘆くような声が聞こえる。
『たりない たりない ……が たりない』
ゆっくりと意識が明確になっていくと、声は聞こえなくなっていた。
目覚めた場所は、どこか不思議な白い部屋だった。
服はそのままだが、足首はここに連れ込まれた時と同様の淡く輝く紐が繋がれている。


 <※KP情報※>
蛇が登場した時点で周囲に人が居たとしても、時間が止まったように微動だにしていない。
事実時間は止まっており、怪異からの脱出時に再び時は動き出す。
つまり町中の喫茶店や職場でもこの導入は行える。



●白い部屋での制約
この空間に居る限り、目覚めた瞬間から探索者にはある制約が課せられています。
内容を知らなければPLはRPをしづらいので、導入が終わったら伝えることを推奨します。
「これでいいのかな?」と言った判定は、あくまでRPする本人に委ねられるので、気楽に行って下さい。
忘れてはいけないのは、これらはすべて楽しむための茶番用の設定という点です。
辛くなるようであれば、KPとPLで相談して緩和するなり扱いやすいようにしましょう。
 <制約内容>
1.この空間では嘘を吐いたり誤魔化しが行えない。
2.何事も思考するだけで止めておけず、全て言葉として口から出てしまう。
  伝えたくない内容であれば小声になるので、聞く側は《聞き耳》が必要になるだろう。
  どうしても口に出したくない、沈黙をしたいのであれば[POW×5]に成功すれば黙することができる。



●沈黙を続けると発生する罠
下手に口を滑らせたくないと、無理に沈黙を続けられるのは「5回程度」である。
【5回以上の沈黙ロール】をしてから【相手に自分の名前を呼ばれる】と条件を満たしギミックが発動する。
逆に言えば、5回以上行っても相手に名前さえ呼ばれなければ発生しない。

反動である異常が発生する。それは<相手へ異様に甘えたくなる>と言うものだ。
甘え方は人それぞれ、ベタであろうが狂気的であろうが相手PLが許すのであれば自由にしてよい。
両者ともがだんまりであったなら、二人して同時に甘えモードになるかもしれない。
この症状が発生している間は、決して沈黙ロールは行えなくなり、小声でも言えない。
甘えるというのが表現しづらいなら、「とことん素直になり我慢しない」と考えても良い。

発生時間は[1D3×10]分間。時間経過で我に返る。
普段からただ口べたなだけの人物ならそこまで恥じることはないだろう。
一方で自尊心が高いキャラの場合は、さぞ羞恥にまみれた思いをすることとなる。
一度異常が発生して解除された時点で、再び沈黙ロールのカウントはゼロに戻る。

余談だが、筆談しようとした場合は内容が全て相手への恋文に変わる。
それに気づくのは本人が書ききってからだ。
相手に見られたくない場合はがんばって処理するRPをしよう。
隠すなら《隠す》ロール、破るなら[DEX×5]に成功するといった具合だ。
もし見られたならば、PLはPCになったつもりで恋文を書かなければならない。


 

05:白い部屋


円状の部屋に天井はなく、地面と壁面は白く、大理石のように固く冷たい。
暗くはなく、光はどこから来ているのかを思考すれば、壁と床が優しい光を放っていると気づく。


●虹蛇の壁画
探索者の足首には淡い光を放つ紐が括られており、紐は壁面へと繋がっている。
壁面には「七色の光彩を放つ大きな虹蛇」が描かれた壁画がある。
驚くべきことに絵の蛇はゆったりと動き、まるで生きているようにすら感じるだろう。
ここに引きずり込まれた時に現れた蛇と似ていることから、同じ蛇だと察するかも知れない。

蛇の絵は壁の中を緩慢と動きながら、探索者の足首に繋がれた紐を咥えている。
紐はそれなりに長さはあるものの、時折引っ張られて転びそうになってしまいそうだ。
一方の虹蛇は紐を全く離そうとする様子はなく、悠々と動いたり横たわっていたといる。


●光の紐
光る紐は銀色で、触れると人肌程度に暖かい。
足首に括りつけられているだけでなく、まるで探索者の体内へ繋がるように伸びている。
紐を取ろうと強く引っ張ったのなら、胸を強く打ち付けられたような苦しさが襲う。
《アイデア》に成功すると
<まさか自分の心臓にでも繋がっているのでは?>と感じる。
この光の紐はどこへ向かっても絶対に途切れることなく、足首に括り付けられたままになっている。
また、触れられるのは同じ探索者同士か、虹蛇や後々登場する審判者たちだけだ。

どうしても紐を外したいのであれば、対抗ロールが2回発生する。
1つは引っ張ることで発生する強烈な苦痛への[POW×3]ロール。
2つ目は紐が繋がっている当人のSTR同値との対抗ロールである。
もし両方の対抗に勝ってしまった場合は糸が断絶されてしまい、二度と結び直すことは出来ない。
糸が切れてしまった探索者は、この空間では一度苦しむだけで後は普通に行動ができる。
ただし脱出時、強制的に【結末-●命の糸を切る】へ移行する。


 

06:白い石棺


●白い台座
壁際の方には白い台座のようなものがある。
近づいてみるとまるで石棺のようで、上部は蓋になっていると分かる。
ところがいくら蓋を外そうと力を込めてもびくともしない。
耳を澄ますと石棺の中から「シクシク……」という泣き声が聞こえる。
しかし探索者がいくら声だけかけようと全く反応する声は返ってこない。

声は聞こえど返事はなく、不審に思うことだろう。
試しに石棺を撫でたり叩いたりを行うと、石棺の陰から小さな光が飛んでくる。
探索者の前でふわふわと滑空する様はどう見ても蛍と言った虫ではない。
小虫のように小さいが、蛍よりもハッキリと輝き、羽ばたくことなく宙を舞う様はさながら妖精だ。

光の妖精は滑らかに宙を動き、光の軌跡を描いていく。
軌跡の線は知識にない記号に見えるが、不可思議なことに探索者が理解することができる。
光の文字は次のような意味が示されている。
『私は石棺の従者 この空間の案内係です』
(名前は適当に「ティンカーベル」や「ナビィ」にしても構いません。)



●案内係の説明
以降は案内係による光の文字と会話する。
案内係が示せる情報は以下のような内容。

*この空間について
 ここは石棺の中で泣いている主が創った場所。
 石棺の主は「真実の感情」について研究しているが、成果が得られず嘆いている。
 研究の一端として、ここでは嘘も吐けなければ、隠し事もできないように出来ている。

*注意すべき点
 足に括り付けられた光の紐は、探索者たちを元の世界へ帰すための命綱。
 もし無理矢理引きちぎってしまえば、帰ったとしても無事ではすまない。
 並びに光の紐を銜えている虹蛇は、現実世界とここを繋げる役目を担っている。
 よってあの蛇から無理矢理に紐を離させても危険である。

*求められる行動(帰還の条件)
 ここでは様々なものたちの感情の度合いを測り、集計することで実験に必要な情報を集めている。
 感情の強さを測るために、いくつかの試練を受けてもらう事が探索者への要求である。
 命の危険はないが、時には苦痛が発生する可能性はある。

*試練の内容
 3つの部屋にそれぞれ別の審判者がおり、彼らが内容を決めている。
 そのため案内係は試練の詳細を知らない。
 審判者たちの名前は「ヘイムダル」「トール」「ロキ」。
 向かう順番は自由だが「ヘイムダルの部屋」であれば、さほど難しくないかもしれない。
 「トールの部屋」は乱暴者には向いているかもしれない。
 「ロキの部屋」は何をするのかが一番わからない。
 試練への挑戦は1部屋につき1回だけ可能。

*試練が終わったら
 挑戦を諦めたり失敗すると、審判者からは何も与えられない。
 審判者により試練の結果が評価に値すると認められれば【証の宝石】が与えられる。
 【証の宝石】は主へ渡せば、きっと満足して帰してくれるだろう。
 宝石は数は多いほど良い。場合によっては報酬を与えてくれるだろう。
 逆に数が少ないと、意地悪をされるかもしれない。

石棺の主の意地悪については
『それは主の調子次第ですので。浮き沈みの激しい方ですみません。』
とまるで引きこもりな子供の保護者のように案内係は答えてくれる。

一通り話し終わると、激しい水音と一緒に壁の数カ所で光の滝が流れ始める。
案内係は探索者の目線の位置になるよう、各場所に光の文字で名前を描いていく。
それぞれ「ヘイムダル」「トール」「ロキ」と記されている。
どうやらこの光の滝が、試練の部屋への入り口のようだ。



●試練の部屋
探索者たちの感情の度合いを推し量るため、石棺の主は4つの試練の部屋を用意している。
各部屋にはギリシャ神話の神々を連想させる名前がつけられており、部屋ごとの審判者もその名前だ。
かと言って、本当にそれらの神々が居るわけではなく、模範的に創られたものたちでしかない。
また、試練の内容は各部屋の審判者に委ねられているので、石棺の従者に聞いても詳細は教えてもらえない。


 

07:ヘイムダルの部屋


先ほどまで居た部屋と同じような白い部屋に、白い樹木に白い葉を茂らせた木が生えている。
根本まで近づき見上げれば、白い鳥が止まっているのが分かる。
白い鳥は言葉を話すことができ、探索者が話しかけると返事をする。
もしくは白い鳥自ら話しかけることになるだろう。
『私はヘイムダル 君たちが挑戦者か?』
肯定すれば『では早速試練を開始しよう』とサクサク進行する。
『試練と言っても、私が出す至って単純な問いに答えるだけの簡単なものだ。』
『質問は五つ。ここでは真のことしか言えないのは知っているだろう。』
『よって必ずしも断言せずとも良い。何せ断言できるかは君らの心次第だ。』
『分からなければ、分からないと答えれば良い。答えさえすれば、私の試練を達成した証は必ず与えよう。』
『それが石棺の主の意志でもある。』
『主はここに君らを閉じ込めるのが目的ではない。最低限の達成ラインを与えるのが私の務めだ。』


●ヘイムダルの試練
試練と言っても至って単純な問いに答えるだけの簡単なものである。
因みにKPの裁量で質問内容は変えても増やしても良い。
言ってしまえば所謂「○○に100の質問」をやっているようなものだ。

<五つの問>
問1 - 相手の嫌いなところを述べよ。5項目程度で充分。
問2 - 相手の好きなところを述べよ。5項目程度で充分。
問3 - 相手を愛せるか述べよ
問4 - 相手を殺せるか述べよ
問5 - 共にいてどう思っているか述べよ

前半2問は無いなら「無い」と答えてしまっても良い。
他3問においても、ハッキリとした回答でなく「わからない」と答えても受容される。
全ての質疑が終わった所でヘイムダルは木から飛び去って行き、【尊敬の宝石】が果実のように落ちてくる。
宝石の内部には印のようなものが刻まれているが、何を意味するかはわからない。
色は水晶のように透き通っている。
宝石を拾い、元来た出入り口を抜ければこの部屋は終了だ。


○KP選択ルール
もし1番か2番を答えきれなかった探索者には追加の制約が発生する。
茶番要素を高めるだけの効果なので、PLと相談して入れるかどうか決めると良いだろう。
 <追加の制約>
3.相手に対して嫌悪を持って罵倒を行おうとすると、好意的な言葉が変化、追加してしまう。
  「死ね」「消えろ」などが全て「好き」「愛してる」などになる、あるいは最後につけてしまう。
  例外として、好意を持った上での貶し言葉であれば変化することはない。
  (※これに関しては嘘でも変化してしまう。)
例)内容は好意的な言葉であれば自由に変えれます。
「お前なんか大嫌いだ」→「お前なんか大好きだ」
「死んでください」→「結婚してください」
「このクズ野郎」→「このクズ野郎 好きだ」
「好きだバカ」「殺したいくらい愛してる」→そのまま


 

08:トールの部屋


広い空間に高い天井。
精密かつ繊細な彫刻が彫り込まれた石柱並ぶ、荘厳な神殿のような場所だ。
松明が煌々と照らしだす道はまっすぐと行く先を示し、沿ってゆけば凛々しい姿の石像が鎮座している。
石像はギロリと探索者を睨むと、堅い口を開いた。
『我はトール 汝らが挑戦者か』
肯定すれば『ならば3つの武器から自らに相応しき一つ選ぶが良い』と答える。
すると探索者それぞれの眼前に【剣】【盾】【杖】が出現する。


●トールの試練
探索者が選択している最中に、トールは更に説明を続ける。
『これより汝らには力試しの場を与える。』
『死に近き境遇の中で如何な行動を示すのか、その様を見聞させて頂く。』
『汝らが試練の怪物を打ち倒したならば、証の宝を渡そう。』
『選びし武器は怪物と戦うに充分な力を貸し与えてくれよう。』
『完全に死ぬこともない。だが血は流れれば、傷を負った感触や痛みもある。』
『己が心に忠実な行動をとるが良い。』

試練の内容は、トールからけしかけられた怪物と選んだ武器を用いての戦闘行為。
クリア条件は「敵を倒す」あるいは「味方を庇い死ぬ」ことである。
片方だけ生き残って勝利しても、前記の条件は満たされる。
探索者が二人とも敵に破れてしまったならば、試練不達成となる。

クリア条件を満たすと「お見事であった」と言う言葉と共に、怪我も治癒されて白い部屋へ戻される。
最後にトドメをさした、あるいは庇って死んだ探索者の手には【可能性の宝石】が握られている。



●戦闘ルールやステータスの変動
怪物との戦闘に当たって、トールからフェアに戦えるようステータスの上昇が発生する。
これら以外の部分は通常のCoCの戦闘と変わらない。

*「かばう」設定
 近くにいれば自動成功。
 離れた位置にいる場合は[DEX×5]に成功する必要がある。
 かばった後は《回避》は行えないが、《受け流し》はロールできる。

*選んだ武器ごとの補正
【剣】を選択
・回避技能にプラス補正20%
・好きな戦闘技能1つにプラス補正25%
・武器は選んだ戦闘技能に合わせた武器が与えられる
 杖ならハンマーなど、こぶしならサック、拳銃なら任意の銃火器など
 また武器によっては追加ダメージボーナスを付与しても良い。
 キックを扱うならば、鉄板入りブーツや仕込みナイフで[1d6+db+1d4]と言った具合だ。
(※周囲を巻き込みかねないので爆発物は選択不可)
・銃器について
 この戦闘においてのみ故障ナンバーは適用されず、弾切れも発生しない。(=弾数∞)
 銃器で1ラウンド中に複数回攻撃が可能な場合、技能値が変動する。
 プラス補正25%が着くのは1回目のみ。2回目以降の攻撃は元の技能値となる。

【盾】を選択
・強化された《受け流し》《回避》を行える。
・特殊な《回避》:元の値+補正20%
 《回避》に成功すると、自動でカウンター攻撃が行える。ダメージは(1D3)。
・特殊な《受け流し》:技能値60%
 あらゆる物理的な攻撃に対して行える。
 《受け流し》をしても耐久減少のない盾が貸与される。
・離れた場所でも「かばう」を自動成功で可能。
・通常の耐久値に加えて、DEX値と同等の装甲が付与される。

【杖】を選択
・特殊技能《攻撃呪文》《治癒呪文》を扱える
 100技能ポイントが与えられ、通常の技能と同様に割り振る。
 ポイントはそのまま技能の目標値となる。
 例)攻撃を特化するなら80ポイント振り、治癒は残りの20ポイントになる。
・《攻撃呪文》の効果
 遠くから対象に雷を落とすことができる。
 コスト[MP2]、ダメージは[1D(INT値)](INT12なら[1D12]ダメージ)
・《治癒呪文》の効果
 遠くにいても味方を治癒できる。
 コスト[MP3]、回復量は[1D(POW値)(POW15なら[1D15]の回復が行える]

 <死亡の処理>
戦闘中に死亡すると、本当に死んだかのように息も心臓も止まってしまう。
そのため本来よりも軽度なSANチェックが発生する。
死を体験した当人は(1/1D6)、死を目撃した側は(1/1D4)である。
相手が大切な人物であるならば、このSANチェックはもっと大きくしても良い。
注意すべき事は、これが戦闘中に発生すると言うことだ。
発狂すれば試練不達成になる可能性があることを留意して欲しい。



●怪物との戦闘
トールとの会話と武器の選択がが終了すると、探索者二人に光の衣を纏わせる。
衣は合っという間に二人の姿をどこかファンタジーチックな衣装へ変身させてしまった。
汚れても構わないようにと、動きやすく、戦いやすくするための審判者からの配慮だ。

覚悟が決まった様子を確認した所で
『これより試練を開始する 挑戦者たちの健闘を祈ろう』と告げられる。
それと同時に、二人の下に魔法円らしきものが浮かび上がらり、一瞬で景色が移り変わりる。
気づけば探索者は鬱蒼とした穴蔵へと場所を転移させられていた。
近くには川があるらしく、水の流れる音が聞こえる。
するとせせらぎに混じり合いながら、段々と地響きが近づくような足音が聞こえてきた。

『巨躯をしならせ大地を震わし歩いてきたものが、穴蔵へ体を滑り込ませる。
 二人の眼前に現れたのは、大蛇に足が生えたような体躯の怪物だった。
 自分の寝床を荒らしに来た輩をこらしめようと、沼地のような呼気を吐き出し息巻いている。』
試練の怪物ファーブニルを目撃した探索者は(0/1d10)のSANチェックが発生する。

このSANチェックで発狂の値を引いてしまっても、トールが気付けの電撃を与えて目を覚まさせてくれる。
よって発狂は最初の1ラウンドのみで解除される。
なお、この気付け電撃はこのSANチェックでしか発生しない。
以降の戦闘は通常通りとなる。

★「ファーブニル」試練の怪物
STR:30   DEX:20   INT:16
CON:24  POW:20  SIZ:36
HP:30(装甲+10)   MP:20   回避:40  db:+3D6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]噛みつき 80%:ダメージ 1d8
    かぎ爪 40%:ダメージ 1d4+db
    毒噴霧 自動成功:ダメージ POT10の毒(※耐久半分(15)以下になると使いはじめる)
     →毒はコストとしてMP5消費する。持続時間は1ラウンド間のみ。
[装甲]10ポイントの硬質な皮膚、スタン耐性持ち
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(0/1D10)


 

09:ロキの部屋


●ロキの試練
偽物の探索者を、もう一人の探索者が見破るのかロキの試練だ。
すり替わられたKP側の探索者は動物されてしまい、同行はできるが話すことは不可能である。

▼偽物について
偽物の探索者の正体は審判者である「ロキ」自身だ。
彼は探索者や他の審判者たちと違い、自由に嘘偽りを騙ることができる。
そんなロキの演技は一人称や口調、動作は正に化けた探索者そのもの。
足首の光の紐までそっくりにこしらえてあるほどの周到さである。
記憶は石棺の部屋に来た時点からのものは全て知っている。
逆に言えば、シナリオ開始より前のことは知らない。
《心理学》も通用しない。もし振られたならば虚偽の情報を提示しなければならない。
失敗なら<特に変わりないようだ>、成功なら<嘘も隠し事もないようだ>と言った具合だ。
しかしCLをしたならば<随分と落ち着いている気がする>と伝えるくらいはいいかもしれない。
確実に見破る術は、探索者同士しか知らない思い出を聞くことだ。

もちろん見破るきっかけが無いわけではない。
偽物はPLの探索者と協力する風に装いながら出口へと誘導しようとする。
その様子は随分と落ち着いており、やけにこの場に関しての情報を知っている風だ。
考えが惜しくあと一歩足りないPLには《アイデア》などで<相手はやけに落ち着いている>と言っても良い。
KPは表面上ではダイスを振るフリだけはしておこう。
ロキによるダイスロールであれば、成功失敗に関係なく情報は開示されていく。
もしFBしても情報が普通に出るようであれば、それに怪しまないPLは居ないだろう。
また、動物にされた本物の探索者もいる。
吠えたり泣いたり、あるいは仲間を引き留めたり、偽物へ攻撃できなくもない。
必死に行動を示せば、PLの探索者は気にかけてくれる可能性がある。


▼偽物を見破る
クリア条件は「偽物を見破り、本物を見つけだすこと。」
もしPL(或いは探索者)が漠然とした直感だけで偽物か聞いたなら、まだ答えとは認められない。
突然のことに驚いたり、苦笑したりそんなことはないと反応する。
ただ「理由もないのに疑われては、良い気はしない」と返すくらいはしていいだろう。
逆に言えば、理由を示せば偽物だと疑ってもちゃんと聞いてくれる。

偽物に対して確信をもって「本物はどこだ」と問えば、動物の方を見やるだろう。
或いはロキが答えられない、二人の過去に関する問いかけをするのも効果的である。
(継続探索者同士であれば、出会ったNPCのことを聞くなど。)
すると動物にされていた探索者は元に戻り、偽物はその姿のまま二人を出口へ案内する。
出口の前に着くと【絆の宝石】を渡され、白い部屋へ繋がる扉を開いてくれる。

見破れないまま脱出口らしき扉から出ようとするとクリア失敗となる。
試練に失敗すると、探索者になりすましたロキは演技は続けたまま悪戯を開始する。
急いで出口扉を開けようとしても何故か扉は開かず、動物にされた本物も体が麻痺して動かなくなる。
悪戯はPLの探索者が偽物を偽物だと気づくまで続けられる。

悪戯内容はKPの自由だ。喧嘩をけしかけても、光の紐を千切ってしまおうかと脅しても構わない。
ただし、本当に千切るのは石棺の主の本意外なのでアウトだ。
それ以外は許される範囲で好き勝手しよう。




●最初の洗礼
暗い通路に探索者は一人きりで立ち尽くしている。
あたりを見回せど同行者の姿はなく、PLの探索者一人きりだ。
後ろは空間ごと削り取られたような絶壁の行き止まりで、進める場所は正面のみ。
仕方なく前へ進んで行くと、いつまで歩いても一向に扉も果ても見えてこない。

しばらく歩いた後、探索者には《聞き耳》を行って貰う。
成功すれば<背後から岩が崩れるような音が聞こえる。>
失敗しても、暫くすれば聞こえるほどにまで音は近づいてくる。

『音はどんどん近づいてくる。
 振り返り確認してみれば、絶壁がみるみる近づいて居るではないか。
 壁や床が崩れているのではない。背後から空間を貪り喰らう何かが迫り来ていた。
 わずかに垣間見える光の反射が、そいつの黒目であると教えてくれる。
 黒い固まりに思えたそれらは、殆どが真っ黒の目玉の集合体だったのだ。
 全ての瞳はこちらを見据え、じゅるりと舌なめずりでもするかのごとく租借音を響かせている。』
空間を貪る壁を目撃した探索者は(1/1d6)のSANチェックが発生する。

この怪物からの逃走には[DEX10]とのDEX対抗ロールに勝たなければならない。
負けた場合は化け物に食われる感覚と、絶壁から落ちる恐怖により(1/1d4)のSANチェックの後気絶する。

対抗に勝ったのであれば、走る抜けるうちに突き当たりの扉へ辿り着くことができる。
扉へ入れば逃走成功、SANチェックは回避して次のシーンへ移る。


 <※KP情報※>
このイベントはロキの策略によるものだ。
最初に探索者を孤立させ不安を煽り、同行者との再会で安堵感を高めるのが目的だ。
恐怖からの脱却と一人でなくなった安堵感を与え、偽物への猜疑心を持たせづらくしている。



●探索者の動物変化
PLの探索者が大変な目に遭っている一方で、KP側の探索者もとんでもない事態に遭遇する。
自分の姿が動物(野良犬か野良猫)になっているのだ。
この変化により、KPの探索者は(1/1d6)のSANチェックが発生する。
更に後々の合流時には偽物の自分を見たことでそれなりの衝撃を受けることだろう。
よってドッペルゲンガーにでも遭遇したような衝撃を受け(1/1d4)のSANチェックも追加される。
(※KPは事前に上記2つのSANチェックを行っておくことを推奨する。)

見た目から元の姿がわかるような特徴は作ってはいけない。
また、足首にあったはずの光の紐は、見えないようにカモフラージュされてしまっている。
変化した動物らしい行動は行えるが、言葉を発したりはできない。
偽物の自分が居ることを示すために、PLの探索者を引き留めようと服を引っ張ったりなどは可能だ。



●出口探し
PLの探索者が化け物から逃げ延びて扉を通るか、食われ落ちるとこの部屋へやってくる。
部屋の隅にはKP側の探索者(偽物)が、壁へもたれ掛かるようにしてぐったりと倒れている。
外傷はなく、声をかけたり揺すってやれば直ぐに目を覚ます。
PLの探索者がどうしたのか聞けば「自分もそちらと同じ用な目に遭って、食われて落ちた」と答えるだろう。

この部屋には【3つの扉】【1枚の張り紙】【台に乗せられた本】が存在する。

【3つの扉】にはそれぞれ別の文字が書かれている。
 <「Galldr(ガルドル)」「Seidr(セイズ)」「Gandr(ガンド)」>
(場所を示す場合:「左扉:ガルドル」、「中央扉:セイズ」、「右扉:ガンド」とする。)

【1枚の張り紙】には次のような文章が書かれている。
 『歌の呪い 予言の呪い 変化の呪い
  歌は奏でず 予言は語られず 変化の兆しは現れり
  辿れ 紡げ 物語は幕を開けた』

【台に乗せられた本】には次のような文章が綴られている。
 <本の内容>
 『ガルドル 歌を口ずさみてあらゆる願いを成就せり
  されど奇跡叶いしは 季節移り変わりし時にけり』
 『セイズ 数多の声を聞きては未来を見据えたり
  されど予言を口にするは 季節終わりし時にけり』
 『ガンド 杖を指されしは獣へ姿を変えにけり
  されど友と旅をするは 季節の始まりし時にけり』


▼最初の正解の扉を抜ける
1番目に選ぶべき正解の扉「ガンド」の扉を抜けると、全く同じ部屋へ繋がっている。
しかし中央には一匹の動物が横たわっているのが見えるだろう。
この動物が本物のKP側の探索者だ。
最初は気絶しており、PLの探索者に起こして貰う必要がある。
起こして貰ってからは、行動を共にすることができるようになる。


▼正解の順番で通り抜ける
正解の順番【「ガンド」→「ガルドル」→「セイズ」】の順で扉を通り抜けると、別の部屋へ辿り着く。
順当に来れば4番目の部屋にあたるここには、何も書かれていない白い扉があるだけだ。
この白い扉が脱出口であると同時に、試練終了の合図でもある。
扉を抜けようとする前に、偽物を見破っていれば試練クリア。
見破っていなければ試練失敗となる。


 <※KP情報※>
ここでは正しい順番で扉を通り抜けていくことで出口へと繋がる仕組みだ。
正解は【「ガンド」→「ガルドル」→「セイズ」】の順番。
詩の季節についての一節、「始まり→移り変わり→終わり」がヒントとなっている。
正解でも不正解でも、扉の向こうは同じ部屋に繋がっている。
そのため正しい道を歩めているかの実感は沸きづらいだろう。
なお、間違えたら最初からやり直しのループとなる。

しかし探索者の偽物を見破るまでは、間違えた方が賢明だろう。
この試練自体の謎解き一番にヒントは「ガント」の詩にある。
「杖を指された=魔法をかけられた」
「友=探索者」は獣へ姿を変えられ、次の部屋から行動を共にする事を意味している。
並びに、張り紙の情報にも同じようにヒントを含めてある。
「歌」と「予言」の呪いは行っていないが、「変化」の呪いだけは行われ事実を示している。
「物語は幕を開けた」というのは、「試練はここから開始された」と言うことでもある。

余談だが、上記の3つの呪いはゲルマン文化圏に伝わる、独特の魔法文化の一つである。
北欧版の黒魔術や白魔術と言ったところだ。


 

10:結末の分岐


●宝石を捧げる
案内係へ宝石を提示すれば、宙に浮かせながら受け取ってくれる。
渡すタイミングは自由なので、試練を全て終わらせるか、一つ終わらせるごとに預けても大丈夫である。

*1~3個の宝石を捧げる
石棺から嘆くような泣き声が止み、案内係が戻ってきて光の文字で探索者に聞いてくる。
『これが精一杯かと、主が聞いています。』
これに対する答えで少々分岐する。
・「はい」と応える
 →『なら諦めましょう』と文字が記され【結末-●虹蛇を通じた脱出】へ移行する。
・「いいえ」と応える
 →試練が残っているなら、それを終えるまで待つと答えられる。
  全て終わった後なら『ならば新しい試練を与えましょう』と文字が記される。

<最後の試練>
案内係が審判者となり試練を提示する。
内容は『相手に強い思いをぶつけ、相手の心に変化を与えてください』と言うものだ。
つまり相手に対する強い感情を言葉や行動なりで、自分が思いつく最大限の方法で示さなければならない。
実質上の判断は案内係でなく相手PLにある。
相手PLが「これは自分の探索者に影響があった。」と判断したら試練達成である。
示された行為によって相手の心に変化が起きたならば、示した側に【変化の宝石】が与えられる。
それぞれの判定は相手探索者のPLにある。


*4個以上の宝石を捧げる
石棺から嬉しそうな声が聞こえてくるようになり、案内係が戻ってくるとあることを伝える。
『「たくさんの感情をありがとう」と、主が申しております。』と光の文字が記される。
以降は【結末ー●星へ還る脱出】へ移行する。




●虹蛇を通じた脱出
石棺の主は満足できなかったため、少しだけ意地悪な脱出方法を伝えてくる。
主から方法を聞かされた案内係は、ただそれを伝えるだけだ。
『おつかれさまでした。お帰りはあちらの蛇に飲まれれば戻れるそうです。』

あちらの蛇とは光の紐をくわえた虹蛇の事だ。
案内係は「痛みも何もないので心配ないですよ」とは伝える。
が、虹蛇は獰猛な目つきで探索者を睨んでいることだろう。
飲まれるためには、虹蛇の壁画に触れれば良いという。
意を決して近づいていけば、触れる前に探索者を丸飲みにして驚かせてくれる。
この脱出方法を選んだ時点で、探索者に拒否権など無くなっていたのだ。

まどろみを感じつつも、探索者二人はすぐに意識を覚醒させる。
体に痛みもなく、思考もハッキリと明瞭だ。思ったことを直ぐに口に出すなんて事もない。
きっかけとなったであろうタロットカードは既になく、まるで夢でも見たのかと思いたくなる。
しかし記憶は二人の頭にしっかりと残っているだろう。

安堵に落ち着く最中、ふと気づかされる。ただ一つ、最初と違う点がある。
探索者二人の心臓を結ぶように、銀の光の紐が結ばれていたのだ。
気のせいか、相手の心臓の鼓動が自分の体内でも響いた気がした。



●星へ還る脱出
嬉しそうな声が石棺から響いてくるようになったかと思うと、眩い光があたり一円を包み出していた。
お互いを見やれば全身を優しい光が包み込み、まるで自分が光にでもなってしまいそうだ。
すると白い石棺からすり抜けるようにして何かが起きあがってくる。
その姿は人型のようではあるが輪郭はぼやけ、幽霊を彷彿とさせるも冷たい意志は感じさせない。
幽霊じみたその人物は、両手を広げて何かの文言を唱え始める。
同時に、探索者の体の発光が強まっていき、更には体が宙を浮き始めた。
そのままどんどんと天井のない、星も月もない夜空へと上昇していく。
上へ上へと空を昇っていき、まるでこれから星にでもなってしまいそうなほど輝きは増していく。
やがて暖かい光に包まれたまま、意識は遠ざかっていくだろう。
意識が途切れる間際「僕の分まで仲良くするんだよ…」というささやき声が聞こえたかもしれない。

まどろみを感じつつも、探索者二人はすぐに意識を覚醒させる。
体に痛みもなく、思考もハッキリと明瞭だ。思ったことを直ぐに口に出すなんて事もない。
二人の手にはそれぞれ恋人を暗示するタロットカードが握られていた。
それがあれは夢ではなかったと示しているかのようであった。

カードの裏は真っ白で何も書かれていない。
すると絵札の人物が二人にだけ聞こえるように囁いた。
『望みのものを記しなさい。小さき望みであれば叶えられよう』
どうやらこれが、石棺の主からのささやかな報酬のようだ。




●命の糸を切る
精神が元の場所へ帰されるものの、糸を断絶されてしまった人間の精神が帰ってくることはない。
あの糸は現実の体と切り離された精神を繋ぐ命綱でもあったからだ。
精神を失った人間の体は生きているが、白痴となってしまう。
また、一人きりにしてしまうと何かに呼ばれるようにどこかへ行方をくらませてしまうだろう。
拘束でもして監禁すればどこかへ行ってしまうことはない。


 

11:報酬やペナルティ


アストラル体が現実の世界へ帰る
[1D(宝石を得た数)]分の正気度回復が行えます。
1つなら固定で1ポイント、4つなら1D4ポイントと言った具合だ。


●入手した宝石が4個以上だった
<魔術師からの報酬>
探索者が欲しいと思うものが1つだけ与えられる。
制限は両手で抱えられる程度の非生物かつ物質的なもので、豪邸1件や人間の体などは無理である。
またアーティファクトや魔術書のような今後の継続時に影響のでるものは認められない。
該当するのは価値のある貴金属や骨董品であったり、無くしてしまったはず思い出の品などだ。
欲しいのであれば、好きな人物の過去の写真や、下着なども得られるが、そこはモラルの問題を考えよう。
※使用制限※
 札が使えるのは幕間(シナリオに参加していな間)のみです。
 他シナリオ参加中は品物を得られません。


●入手した宝石が3個以下だった
<虹蛇の呪い>
虹蛇に飲まれて脱出した探索者には、少々面倒な呪いがかけられてしまう。
二人の探索者は片方が死ねばもう片方の命も亡くなるという、運命共同体な呪いだ。
別行動が出来ないわけではなく、どこまで行っても光の紐は伸び続け、切れることはない。
逆に言えば、相方が地球の裏側へ行こう心臓の鼓動を感じることができる。
また見えるのは繋がった者同士、他者に見えることはない。

この呪いは永久的でないが、2・3日で解呪されることもあれば、死ぬ間際まで続く場合もある。
解呪の条件はあの空間に新しい犠牲者が巻き込まれること。
これは呪いが白い部屋へ新たな訪問者が来ると、そちらへ転移するためだ。
明確に期間を設けたいのであれば[1D10×5日間]で決めるといいだろう。





※※※※※※※※※※ 追加の部屋案 ※※※※※※※※※※
あえて省いていたものを公開用に改変しました。
それでも入れるにははばかられる内容なので、KPの選択式とします。
追加する場合は、最良の結末への必要宝石数が1個上昇します。
 ・【●星へ還る脱出】へ移行する条件が4→5個以上になる。
 ・【●虹蛇を通じた脱出】へ移行する条件が3→4個以下になる。


12:フレイヤの部屋


案内係が最初に説明するならば以下のとおり。
フレイヤの部屋」は好き嫌いが分かれそうなことをしそうである。
(出現する光の扉も追加され、「フレイヤ」と記されている。)


フレイヤの試練
最初は子供をあやすのが試練のように思わされる。
本当の試練は探索者たちの人間性を試すというものだ。
親しい人間が人間でなくなった瞬間に対して、どう対応するかが見られる。


▼子づくり温泉
光の扉をくぐると、不意に足場が消えて真っ逆様に落ちていく。
さほど高くはなかったらしく、すぐに着地……ではなく着水する。落下先は水の中だ。
水面に叩きつけられた痛みはあるだろうが、怪我をすることも溺れる深さでもなく無事ですむ。
離ればなれになることも無く直ぐに合流できるものの、互いの状況に驚くかもしれない。
なにせお互い素っ裸になっていることに気づくのだから。

落ち着けば、ここは池や湖でなく温泉だと気づける。
しかし辺りはもやで何も見えず、少し離れると相手が見えなくなってしまいそうなほど濃い。
よってしばらくは温泉に浸かっているしか無い。

ある程度時間を置くともやは晴れていき、出口らしき洞が見える。
洞にはふんわりやわらかなタオルや、薄手の肌着が置いてある。
着替えるなどして奥へ進むと、二手に別れた道になる。
行けるのは片方のみで、左右どちらかを選ぶ。
二手に分かれてしまっても、たどり着く場所は同じなので意味はなくなる。


▼二人の子供
進んでいくと曇りガラスの扉があり、明るい場所へ繋がっていることがわかる。
聞き耳と立てたなら、寝息が聞こえるかもしれない。
入ってみると寝室だ。天蓋付きの大きなベッドに小さな盛り上がりを確認できる。
なお、部屋に入った時点で扉は開かなくなっている。
シーツをめくれば、小さな子供がすやすやと寝ている。
起こしてやると、辿々しく探索者二人の名前を呼ぶ。
手には小さな紙切れを握っており、言えば渡してくれる。
小さな紙には「愛を示しなさい」とだけ記されている。

更にメモには「試練を放棄するならば子を殺しなさい」とある。
これは後の本当の試練に対して、直ぐに殺すことを惑わせるのが目的だ。
試練放棄と見なされるのは、獣化イベントが始まる前に殺した場合のみ。
また、どうしても無理だと思ったならば、強く願えばこの部屋からは出してもらえる。
ただしこの部屋の宝石は二度と入手不可になる点は注意しよう。


▼<子供の特徴>
仮初めの存在ではあるが、血色の良い温かい肌にころころと変わる表情は人間そのものである。
分かれ道の結果は左右で育てる子供の性別が変わる。左は女、右は男だ。
二手に別れたのであればダイスで性別を決める。
年齢はまだ言葉もあまり話せないほど幼い。
赤ん坊ではないが、ようやく歩き出したくらい。2~4歳程度。
髪や眼の色など、子供の特徴はどことなく探索者二人に似た節を感じる。
似ているのは最初の温泉は探索者たちの特徴を読み取る場所だったため。
よって温泉に長く浸かっていた方がいたならば、そちら側の特徴がより現れる。
子供に名前はなく好きに呼んでよい。
どんな名前にしても子供は意味を知らないので、沢山呼んでやるほど喜ぶ。
例え「たらこ」だとか「クソガキ」でも喜ぶのである意味無邪気だ。

最初は子供との軽い交流時間だ。
メモの内容を見て子供に愛情とやらをどう示すか奮闘する茶番をすればいい。
あまりやりたくないならば、直ぐに次のイベントへ移る。



●獣のナイフ
時間が経過すると、子供めがけてナイフが襲ってくる。
ナイフが襲ってくる直前《目星》に成功すると
<天蓋の装飾の一つが、鋭い刃物へ変化する瞬間を目撃した。切っ先の狙う目標は子供だ。>
ナイフに気づけた探索者のみ[DEX×5]でかばう行動がとれる。
強制ではないので、かばわないことも選択可能。
失敗すれば庇えず、そのまま子供が刺される。
子供を庇うことに成功したなら探索者が刺されてしまう。
出目が酷く悪ければ、ナイフが深々と探索者へ刺さってしまい[1D3+2]の耐久減少が発生する。
出目がとてもよかったならばかすり傷程度で済むが、この後に起こる変化は変わらない。
襲ってきたナイフ自体は果物ナイフ程度であまり大きくはない。
また傷は残るが、ナイフは煙の如く消え失せている。

恐ろしいことに、ナイフに刺された者は人間性を封じられてしまう効果がある。
人間性を見失った者は、理性を失った獣のようになってしまう。
 <獣化>
 ナイフに傷つけられた者は、次第に頭にもやがかかったような状態になる。
 『傷口がじくじくと痛み、痛みにだけ思考が奪われ周囲の声が聞こえない。
  言葉は話すことも理解することもできず、唸ることしかできなくなっていく。
  やがて目に見える動く者は全て餌として認識され、人間を大小でしか区別しなくなっていた。
  ついには白目をむいて歯を剥き出しにしながら涎をたらし、遠慮なしに襲い始めた。』
 理性を失った人間を目撃したことにより(0/1)のSANチェックが発生する。
 もしそれが大切な相手であった場合は(1/1D3)でSANチェックを行う。

人間性を失った者は[STR+3点]したステータスとなり、周囲の者を襲い始める。
なお脳内麻薬が過剰に分泌されるため、ショックロールは発生せず、瀕死になろうと気絶はしない。
止めるには自分が殺されるか、一人を殺さなければならない。

子供の場合はSIZ、INT、EDU以外は両探索者の能力値の平均値になる。
STR13とSTR11の探索者が投入されていたのであれば、子供は[STR12]となる。
子供は平均値で攻撃を行うので[STR+3点]は付与されない。



●人間性を取り戻す
止める手段は行動によって様々。思いつく手段で相手へ働きかけよう。
ひたすら呼びかける、力ずくで押さえつける、思いも寄らない行動で驚かせる等々……
RPがそれらしければ、適当にそれに沿った判定をしてよい。
分かりやすいものであれば《精神分析》が一番てっとり早い。
RP内容によっては《交渉技能》を用いてもかまわない。
力尽くなら[STR対抗]や《戦闘技能》の判定になるだろう。

だが働きかけが成功したとしても、それで直ぐに戻るわけではない。
獣化した者は獣のナイフの[POW 2D6+6]とのPOW対抗ロールに勝たなければならないからだ。
POW対抗に失敗し続ける限り、その者は人間性は封じられたままとなり獣から戻れない。
POW対抗に成功した時点で、ナイフに封じられていた人間性が解放され元に戻り試練達成。
獣化していた人間は理性が戻り誰を襲うこともなくなり、ナイフで傷つけられた痕もすっかり治っている。
ただ極度の疲労状態になり、部屋を出るまでの間は動くのが酷く億劫になる。

どうしても判定をクリアできないのであれば、後は殺されるか殺すしかない。
探索者二人と子供一人の中から最低限一人が死ねば、その時点で人間性は戻ってくるので試練達成となる。
ただし殺害により(1/1D6+1)のSANチェックが探索者へ発生する。

この部屋で死んだ人間は、生き残った探索者が部屋を出るまでは復活しない。
因みに、殺害したからといって試練失敗ではないので安心してほしい。
この試練では殺すことも一つの選択と見なされているからだ。


▼試練達成
人間性を取り戻す、あるいは誰かが死んだ後は、磨り硝子の向こうに人影を見ることができる。
子供が生きているならば「だれかきたよ」と言い、扉へ向かう。
曇りガラス越しの人影は扉を開ける前に離れていく。
確認しに行くと誰も居ないが、代わりに【存続の宝石】とメモ書きが地面に置かれている。
メモには「試練を続けるならば 再び洞を抜けなさい」と書かれている。
また裏面を見ると「間違いの選択などない あらゆる過程が貴方の結実へ導く」と記されている。

言うとおりに部屋を出て洞を進むと、入ってきた時と同じ光の粒子の滝がある。
ここを抜ければ元の石棺の部屋へ戻ってくる。
探索者は二人とも元通りだ。傷痕はなく服も着ている。
なお子供は連れ出すことはできない。生きているなら見送るくらいはするだろう。
力ずくで連れ出しても、光の滝をくぐれば居なくなる。




●補助アイテム
フレイヤの部屋で探索をすると、はこの部屋でのみ使える補助アイテムがある。
使うかは探索者次第。記憶の引き出しは獣化した人間と戦うならば有用だろう。


▼星屑の飴
仲の悪い探索者同士の場合、暫く時間経過させたら《聞き耳》をする。
成功すると<床下から「キン…キン…」とトライアングルを鳴らしたような音が聞こえる。>
近づいて見れば床の一部隙間があることが分かる。
隙間にそって床板を外してみれば、透明なガラス瓶に星屑のように瞬く飴が入っている。
瓶の下にはメモ書きが一枚入っており、短く一文が書かれている。
<星屑の飴は惚れ薬 一時の愛をあなたに>

<【星屑の飴】の効果>
大きさや形は金平糖に似ており、味は果実のような甘さと酸味のバランスが取れた美味しさだ。
効果はメモ書きの通りの惚れ薬。効果時間はフレイヤの部屋を出るまで。
食べてから次に見た相手に惚れてしまい、二人とも食べれば一時的に両思いの恋仲になれる。


▼記憶の引き出し
ここでは物質でなく精神体として存在するため、様々なものが入手しやすい。
探索者が実際に接触したこのあるものであれば記憶を辿って部屋の家具から取り出すことができる。
制限はタンスや机といった家具の引き出しに収まる程度の大きさであること。
収まるのであれば、生物すら出すことも可能だ。(ネズミやタコなど)
記憶を辿るため、無くしてしまった過去の物品や、遺品や写真も本人が覚えていれば取り出せる。
完璧に取り出せないものとしては、複雑な魔導書やアーティファクトなど。
元々は魔術的な力で空間ができているため、例え入手できてもかなり効果が劣化したものとなる。
なお部屋の外へ持ち出しはできない。

※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※


 

13:その他補足など


●虹の蛇と光の紐
紐については、霊体(アストラル体)と肉体を幽体離脱中につなぐ「シルバーコード」と呼ばれる銀の紐があるという説から。
虹色の蛇は「エインガナ」と呼ばれる、人間の運命の手綱を引くと言われる始祖蛇だ。
先住民アボリジニのポンガポンガ族に伝わる神話に登場し、姿は七色の光彩を放つ虹蛇である。
かつては無限の砂漠で横たわっていたが、やがて飽きたことで様々な万物を生み出したとされている。
最後に身ごもったのは人間であったが腹の中で暴れられ、古き精霊バイライヤの助力の元で生み出した。
しかし人間はエインガナを置き去りにして逃走を計ろうとしたため、蛇神は彼らを呑み込んでしまった。
あわてた子らは蛇神へ忠誠を誓ったことで、吐き出され難を逃れた。
ところが蛇神はそれだけは信用できず、人間たちのかかとに紐を括り付ける。
この紐は人間の生命へと繋がっており、紐をはなすとたちまち絶命するとされている。
(「エインガナ」運命の糸を手繰る始祖蛇(参考書籍P.146))
この空間に存在するのは本当のエインガナでなく、エインガナをモデルにして作られた魔術師の使役生物だ。
エインガナについては深読み沼要素でしかなくなるため、情報公開するかはKP次第となる。


●審判者と宝石の名前の繋がり。
宝石の中に刻まれている謎の記号は全てルーン文字です。
審判者の名前は北欧神話の神々、その神々と関係するルーンの意味が宝石の名前となっています。
(神性:ルーン:意味や認識)
・ヘイムダル神:マン:尊敬(他…人間性、友情)
・トール神:オーク:可能性(他…成長、信念、忍耐)
・ロキ神:ニイド:絆(他…必要、義務、希望)
フレイヤ神:フェオ:存続(他…豊穣、財産)



●試練の部屋の種類について
試練は3種類用意してありますが、試練の種類を増やしたいのであれば自由に部屋を増設して構いません。
部屋の審判者の名前はギリシャ神話から適当に見繕ってください。
ルーンに対応させた程度で、あまり深い意味はないので入れ替えるのも自由です。





【あとがき】
このようなシナリオはKPとPLの信頼と思いやりがあってこそ成り立つものです。
自分と相手が楽しむ気持ちを忘れずにプレイする事が大切だと思われます。

きっかけは深夜テンションからの思いつきでした。
部屋さえ増やせば、試してみたかった展開をある程度まで簡易的に体験することができるでしょう。
自由な発想と無限大の欲望で自由に改変してください。

 

14:参考・引用(敬称略)


クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPG
「ライトのベル作家のための魔法辞典」 著:東方創造騎士団 出版:ハーヴェスト出版
「幻想世界 幻獸辞典」 著:幻想世界を歩む会 出版:笹倉出版社
ルーン文字 古代ヨーロッパの魔術文字」 著:ポールジョンソン 出版:創元社



***ここまで読んで頂きありがとうございました。***
(2015/02/28) シナリオ製作:kanin(http://kanin-hib.hateblo.jp/
(2015/03/13) シナリオ調整
(2015/03/30) 再調整
(2015/07/07) 公開用に調整
(2016/05/30) 部屋案の追加、報酬の変更など