保存庫-シナリオ棟-

シナリオ閲覧用のページ

CoCシナリオ「灼熱の監房」

「灼熱の監房(しゃくねつのかんぼう)」シナリオ概要ページへ戻る


01:はじめに


このシナリオは「クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPGー」に対応したシナリオです。
舞台は謎の施設、推奨人数は2~4人程度。
*推奨技能:<目星><回避>
*使い所のある技能:<聞き耳><コンピュータ><医学>

形式はクローズドサークル
殺意はやや高めで、ほぼ回避不可な大きなSANチェックも複数回発生します。
ルルブに記載されている神話生物に沢山遭遇してみたい、戯れてみたいプレイヤー向けです。
KPは戦闘処理に慣れている必要があるでしょう。
回避不可の戦闘が発生し、NPCの戦闘処理がややこしいためです。


●本文の表記について
各単語や文章によっては以下のように括弧表記を使い分けています。
少々の抜けや誤表記があっても各自で対応して頂くようお願いします。
重要アイテムや特記事項などの単語:【】
特筆する文章情報:<>『』
技能や呪文に関する単語:《》
補足説明やPL・KPへの特記事項:()※
NPCの台詞や名前など:「」

 

02:あらすじ


干からびそうな熱の中、不快な場所で目覚めた探索者たち。
目にするは自分たちの未来を予見させる成れの果て。
地鳴りか唸りか、不穏な胎動を響かせる焦熱地獄の監房で、脱出の糸口を探ることとなるだろう。

 

     ( 目 次 )

     01:はじめに
     02:あらすじ
     03:背景
     04:導入
     05:死体の牢獄(A:鉄格子)
     06:冷たい牢獄(B:鉄格子)
     07:管理室(C:小さい鉄扉)
     08:門番の扉(D:大きな鉄扉)
     09:儀式の洞
     10:結末への分岐
     11:クリア報酬など
     12:NPCステータス一覧
     13:その他補足や裏話
     14:参考・引用(敬称略)


 

03:背景


●施設について
「ガタノソア」を崇拝する「ミ=ゴ」たちの隠れ家である。
よりガタノソアに近づくためにと、溶岩の上に建設された場所のため常に灼熱に晒されている。
この灼熱地獄を対処すべく極寒の地から連れてこられたのが「ノフ=ケー」である。
ノフ=ケーは自分の周りに小規模な吹雪を召喚する力を持っている。
ミ=ゴたちはこの力を流用して灼熱の中でも活動できるようにしているのだ。
そのためノフ=ケーを飼い殺すだけの魔力を必要とし、適当な人間を拉致しては精神などを搾り取って使い捨てている。
監獄の死体や管理室に集められた円筒状の脳収容器は、そういった犠牲者たちの成れの果てである。



●ミ=ゴと紛れ込んだ捕食者
ここのミ=ゴたちは場所の転移に関して研究を深めており、成果の一つに特殊な鏡がある。
儀式の洞に設置されたこの鏡は、接触の呪文さえ唱えればいつでも地の底にいるガタノソアを拝めるという代物だ。
ミ=ゴたちは神との接触だけに止まらず、更なる異世界への探求を深めるために鏡に手を加えていった。
改良を重ねた結果、神格との接触以上の効果を有するようになる。
更に鏡の力を経由することで幻夢境への門を創造することに成功する。
場所の指定はできないものの、ひとまずの門はレン高原へと繋がるようになったのだ。

何度か試験的に門を繋げていると次第に安定して接続できるようになった反面、繋がったままになることが増えていった。
開いたままの出入り口を幻夢境の住人が見逃すはずがなく、「レンの蜘蛛」が餌を求めて侵入してくるようになってしまう。
せめてにと侵入者を洞に閉じこめるため「炎の精」を門番にした扉を増設。施設への更なる侵入を阻んでいる。
彼らは施設の放棄も考えたが、みすみす研究成果を手放すのも惜しいため一時的に洞を封鎖し、対応を検討することとした。
こうして後手に回ったことが災いし、ミ=ゴたちは後悔することとなる。

封鎖したとはいえ、ミ=ゴたちは定期的にガタノソアへ供物を捧げることを約束しており、解決案も無いまま儀式の洞へと入っていった。
しかし、レンの蜘蛛へ時間を与えたことで洞はすっかり蜘蛛のテリトリーと化し、地理の優位性をまんまと与えてしまったのだ。
更には複数体の侵入に気づかず、ミ=ゴたちは次々と餌にされていく有様。
最後のあがきにと幻夢境へ通じる門を閉じることには成功したが、残されたレンの蜘蛛は洞で餌を待ち続けている。



●シナリオ開始時の状況
探索者たちを連れてきたミ=ゴたちだが、レンの蜘蛛により殆どが瀕死か殺されてしまっている。
そのため洞以外の施設内でミ=ゴと遭遇することはないだろう。
補食・捕縛されたミ=ゴたちは、探索者が脱出に必要な【通行証】を所持している。
数体のミ=ゴは命からがら施設外へ逃げ出しているが、慌てるあまり監獄の鍵の束を通路へ落としている。
この鍵の束のお陰で探索者は最初の脱出のきっかけをつかめる。



●「ノフ=ケー」の目的
ノフ=ケーは幽閉され、首に付けられた弱体化の枷から常に魔力を吸い取られているため衰弱している。
枷は力を吸い取るだけでなく、反抗が出来ないように身体能力を下げる効果まで持ち合わせている。
更に独房の檻にさえ壊すどころか触れられない特殊な作りにされているため、どうすることも出来ずにいる。
このままではただ死を待つだけの運命。そこに現れた自由に動ける探索者たち。
奇しくも同じ目的を持っているもの同士、敵意さえ見せなければ協力する姿勢だろう。


 

04:導入


ジリジリと焼けるような暑さに寝苦しさを覚えた探索者は、耳障りで痛烈な叫び声で目を覚ます。
寝そべる床からは、胎動し、蠢くかのような、地鳴りにも似た力強い振動音が聞こえる。
体は重く、どうやら上に何かが乗っているようだ。触れてみれば冷たく固い。
力を込めて重石をどかしてやれば、それが人の形をした肉布団だと分かるだろう。
あたりを見れば、腐敗しかけたもの、臓物をえぐり出されたもの、様々な死体たちで干からびた状態で溢れていた。
人間の死体だらけの牢獄で目覚めたことにより(1/1D6+1)のSANチェックが発生する。

ありがたいことに、死体は乾いているため腐敗臭で満たされてはいない。
また、ここには叫び声の主らしき人物も見当たらない。
探索者の衣服はそのままで、鞄はないが身につけていた持ち物ならあるようだ。
眠気が抜けて明瞭になった視界が、ここは石壁と鉄格子に囲まれた部屋だと教えてくれる。
鉄板の上で弱火でじわじわと焼かれているような暑さは、容赦なく探索者の体力を奪っていく。
長居すれば、脱水症状で倒れてしまう恐れすらあるだろう。


 <※KP情報※>
床から響く音は、ここが溶岩の上に設置された施設であることから。
最初の叫び声はレンの蜘蛛に襲われたミ=ゴのものである。
もしSANチェックで発狂した探索者がいたならば、《狂人の洞察力》を行っても良い。
成功すれば<最初に聞こえた叫び声は人間のものではなかった。>という情報が開示される。


◯追加ルールの提案
熱砂のようなこの環境に耐えられるかのCON対抗ロールを探索者に対して行ってもよい。
[CON×5]をふらせ、目標値以下の成功ならば変化なし。
目標値以上の失敗であれば、耐久-1となる。
ロール発生のタイミングは自由で構わない。
対抗ロールは熱さを回避できる場所にいれば発生しない。
主に獣の近くや管理室内である。


 

05:死体の牢獄(A:鉄格子)


最初に目覚めた部屋である。

死体から分かること
《医学》に成功すると<作意的に殺されており、時期はバラバラだと分かる。>
《目星》に成功したならば<頭部のない死体が多いことに気づく。>
また、暑さのせいか血は乾燥してすっかり固化している。

牢獄部屋を見まわったならば、屋内は熱砂の如き暑さにもかかわらず、壁の一面だけがやけにひんやりとしている。
その壁は隣にある、もう一箇所の牢獄に面した位置だ。
《聞き耳》に成功すると<冷たい壁の向こうから、獣らしき唸り声が聞こえる。>



●檻からの脱出
鉄格子は力づくではとても開きそうにない。鍵はよくある錠前のようだ。
ここは《鍵開け》に成功するか、通路に落ちている檻の鍵を使えば開くことが出来る。
檻の向こうは通路になっており、よく見れば床の真ん中のあたりに【鍵の束】が落ちている。
【鍵の束】は手を伸ばしてもギリギリ届きそうにはない距離である。
鉄格子に対して《目星》に成功するか、念入りに調べれば<外れそうな格子を一箇所見つける。>
因みに、一箇所だけ鉄格子を外したとしても、とても人が通れる幅ではない。
格子を外せば【鉄棒】として使える。通路に落ちている【鍵の束】を取るには十分な長さだ。
(武器として扱う場合は、ダメージ(1D8+db)、耐久20、《杖》技能で扱えるものとする。)



●死体牢屋を出ると
通路へ出ると、隣は自分たちが居た牢獄より更に堅牢そうな檻、向かいには鉄扉。
目視できる突き当りには一際大きな鉄扉、その反対は細長い通路が続いている。

▼細長い通路
細長い通路の床はやけに黒く、進んだならばいくら歩いても走っても前へ進むことが出来ない。
まるで動く歩道を逆走し続けているかのようにだ。
立ち止まって通路の奥に対して目星や聞き耳、あるいは進もうとすると、次の現象が発生する。

『空気がぬめり、体全身を膜で覆われたかのごとき不快感を感じ始めた。』

『幾重もの生ぬるい手で掴まれたような感覚に襲われる。
 掴んできた手の力が強くなる。しかしそこには手どころか何もない。
 皮膚が凹んでいる様子もなく、肉に紛れた神経だけを束ね、手綱を引かれているかのようだ。
 引かれる手綱は進めないはずの奥へ奥へと引きずり込んでくる』
異質な通路に違和感を覚えた探索者は(1/1D3)のSANチェックが発生する。

抵抗を示すなら[POW11]とのPOW対抗ロールになる。
対抗に失敗する、あるいは引きずり込む力に抵抗する気がないのであれば、次の現象が起こる。

『真っ暗闇に呑まれ、何も見えず、何も聞こえなくなる。
 頭痛がする。まるで脳を蛆虫に食い這いずられているようだ。
 粘着質な痛みの租借音は、やがてあることを訴えている音に思考されていく。』

『証がない』

『体に打ち付ける強く鈍い痛みが走る。
 目の前には干からびた死体ばかり。
 しかし見覚えがある。どうやらここは最初の檻のようだ。』
通路から弾き出された探索者は(1/1D4)のSANチェックが発生する。


 

06:冷たい牢獄(B:鉄格子)


この牢獄の近くはあまり暑さを感じず、逆に涼しいくらいだ。
鉄格子は氷のように冷たく触っていられないほどで、その向こうには更に鉄格子がこしらえてある。
先は暗くて見えないが、耳を澄ませば生物の息遣いが聞こえる。
《目星》に成功すれば<大きな巨体がその身を寝かせている様子が見える。>

手前の檻は《鍵開け》で開くことが出来るが、奥の檻は【鍵の束】の鍵でなければ開くことが出来ない。
手前の檻だけを開いて近づいたならば、よりハッキリと獣の唸り声が聞こえるだろう。
《生物学》か《アイデアの半分》に成功すると
 <息遣いや唸り声の様子から、獣は弱っているのでは?と察する>
もし牢屋越しで何かを投げ入れて獣に当てたならば、威嚇の雄叫びを上げるだろう。
調子に乗って煽るような真似をしたなら、苛ついた獣が檻の隙間を縫って角で刺してくるかも知れない。
更に獣は声を覚える程度なら容易いので、煽った人間には非協力的になっても仕方ないだろう。
意を決して奥の牢獄を開き中へ入ると、座り込んでいた獣が身を起こし暗闇からのっそりと姿を現す。

『獣からは心まで凍りつかせそうな冷気が溢れ、雪のように真っ白の長い体毛が巨体を覆っている。
 鋭く尖った角を伸ばす頭部には、獰猛さを示す肉を引き裂く牙が生え揃い唸りを漏らす。
 巨躯を支える6本のどっしりとした足からはカギ爪が伸び、薙ぎ払えば人間など容易く肉片にしてしまいそうだ。』
冷気の巨獣を目撃した探索者は(0/1D10)の正気度喪失が発生する。



●獣の様子
随分と衰弱している様子で、苦しそうに唸り続けながら探索者を睨んでいる。
無抵抗そうに構えると、何かを求めるようにじっと見つめてくる。
獣からは攻撃は行わないが、探索者から攻撃行為を行うと反撃に《かぎ爪》攻撃が1回行われる。
逆に探索者は獣に危害を加えるつもりがない事を示せば、獣はただじっと見つめるだけになる。
首には重そうな枷がかけられている。鎖などは繋がれていないようだ。

枷に対して《目星》に成功すると<魔術めいた文字を思わせる模様が刻まれており、鍵穴があることに気づく。>
なお、鍵の束の鍵では開錠する事はできない。
枷に対して《クトゥルフ神話×2》か《アイデアの半分》に成功すると
<この枷は獣から力を奪い取っている、若しくは抑制する効果がありそうだ。>と分かる。

《アイデア》に成功すると
<この獣は元々は極寒の大地にでも居そうな姿をしており、灼熱の環境が獣を弱らせいる。>
<弱らせている原因を排除するか、何か栄養に成るものを与えれば少しは元気になるのではないか>と察する。

もし《クトゥルフ神話》に成功するか、《アイデア》でクリティカルしたならば
<冷気は獣の精神的な力によるものであり、自分たちがその力を分け与えることが出来れば回復するのでは?>と思いつく。
メタ的に言い換えると<探索者が自らの意思で獣へMPを与えると伝えれば、獣はMPを吸収し回復する。>

 <※KP情報※>
上記のクトゥルフ神話情報は難しいため、きっかけを掴みにくい色が濃い。
そのためKPは、探索者が「敵意はなく無抵抗」だと分かるRPをしたならば、獣の意志として勝手にMPを吸収しても構わない。
気をつけるべき点は近づく表現を伝える際に、獣自身に敵意はないとPLたちに分かるようにすることだろう。



●獣を助ける
MPを与える場合、探索者に与える意志があると判断した獣は、鼻先をグイッと押しつけて息を吸うような動作を行う。
与える探索者は冷水に浸されたような凍えに震え、強烈な脱力感にひざを着くこととなるだろう。
【※MPを獣に与えた探索者は、残りMP1となる。】
極限まで何かを吸われ、疲労困憊となった探索者は(1/1D3)のSANチェックが発生する。

獣がMPを吸収し終わると、周囲の熱さは衰え牢屋内が肌寒いくらいにまで気温が下がる。
回復したらしい獣は立ち上がり、檻の一箇所へ目線をやるだろう。
その先を見れば<青い炎を揺らめかせるランタンが檻の上部にぶら下がっている。この牢獄の四方の角全てにだ。>
ランタンに対して《アイデア》に成功すると<檻でなく青いランタンが獣を出れなくしているのでは?>と思いつく。
鉄棒で叩き落としたり、水をかけてやればランタンの炎は消え失せる。
獣へ真摯に頼めば上に乗せてくれるかもしれない。
その場合は手が届くので、消さずとも四方全て取り外せばこの檻の封印術は解かれる。
取り外してみたならば、青い炎は光こそ灯しているものの熱がない事に気づくだろう。
探索者には何を燃料にしているかも分からない。
このランタンは持ち運ぶことも可能だ。

 <※KP情報※>
このランタンの燃料は生物から吸い取ったMPであり、吸い取ったMPは徐々に燃焼されていく。
青い炎には特定の生物を拘束する呪術がかけられており、ノフ=ケー以外にも拘束できる生物がいる。
大きな鉄扉の門番をしている「炎の精」だ。
もし「炎の精」に遭遇したならば、このランタンの青い炎の差し出すと、炎の精は吸い寄せられるように向かいランタンの中に消えてしまう。
MPをギリギリまで消耗した探索者が逃げ延びるための救済措置ではあるが、気づけるかはPLのアイデア次第だろう。


4箇所全てを消すか外すと、獣は檻をへし折って牢獄の外を歩けるようになり、探索者と同行するようになる。
協力的な姿勢を見せれば己が開放されるために協力し、敵意を見せれば容赦なく殺しにかかるだろう。
なお獣は知性はあるものの、探索者の言葉がわかるわけではない。
何か話しかければ、理解できない言語か無言の行動で示すだろう。


※【通行証】を入手する前に獣が死んだ場合は【結末への分岐:●獣が死んだ場合】へ移行する。


★「ノフ=ケー」冷気の巨獣(弱体化)(ルルブP.185-186)
STR:20(36)   DEX:16   INT:16
CON:16(24)  POW:24(36)  SIZ:20(36)
HP:18(装甲+9) MP:12(遭遇時) 回避:32  db:+1D6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]角で突く 65%:ダメージ 1D10+db
    かぎ爪 45%:ダメージ 1D6+db
[装甲]9ポイントの軟骨、毛皮、皮膚
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(0/1D10)
*首枷の効果で能力値が大幅に削られ、呪文が使えなくなっている。


 

07:管理室(C:小さい鉄扉)


ここの扉は《鍵開け》や【鍵の束】で開く。扉が小さいため、獣は中に入ることができない。
扉を開けると、ツンとした臭いが探索者の鼻を突く。
部屋は冷気の獣がおらずとも中は涼しい。
最初に目に付くのは、薄暗がりでも分かるズラリと並ぶ異質な光景だ。

『部屋の中は薬品臭で満ちており、原因であろう液体が詰められた透明な円筒状の装置が整然と並んでいる。
 ホルマリン漬けのように筒のなかで浮かんでいるもの、それらは全て”人間の脳”であった。』
非人道的な人体実験場を見てしまった探索者は(0/1D3)のSANチェックが発生する。

これを見た探索者は《アイデア》を行う。
失敗した者は自分も同じ末路になる可能性だったことには気付かなくて済む。
ファンブルならば<凝ったハロウィンのセットか何かだろう>と的外れなことを考えるかも知れない。
成功者は<牢屋の死体の末路は全てこの惨状であり、自分たちもこうなる運命だったかもしれない>と気付いてしまう。
更にクリティカルならば<こんな行いが出来るのは人間以外の”何か"である可能性が高い>と察してしまう。
イデア成功者は(SAN-1)、クリティカルした者は(SAN-1D2)の追加SAN減少が発生する。

 <※KP情報※>
脳収容器の液体は粘液質で、消火液と同じような性質をもっている。
「炎の精」に遭遇した場合、ここの収容器を壊せば退ける手段になり得るだろう。
ただし壊すには収容器の特殊ガラス(耐久10)を破る必要がある点に注意。


【円筒状の脳収容器】に対して《目星》に成功すると
<装置は一見独立しているように見えるが、コードを辿れば統括しているコンピュータを発見できると分かる。>
コードを辿れば、正四角形の【黒い箱】のようなものが置いてある。
蓋はなく触れると発光するので、何かの機械であることが分かるだろう。

事前に獣の首輪へ目星に成功しているならば、部屋を全体に対して《目星》に成功すると
<天井の一部に、獣の首枷にあった模様と同じような模様が描かれている事に気づく。>
模様の下へ行くと特に涼しくなっており、【黒い箱】を発見できる。
模様に対して《アイデア》に成功すると<模様を通じて獣から冷気の力を吸い取っているのでは?>と過る。

触れることで発光した【黒い箱】に《コンピュータ》で成功すると<起動ボタンらしき箇所を発見できる。>
もしくは手当たり次第に触ったならば《幸運》に成功することで、偶然にも起動ボタンを押すことが出来る。

起動ボタンを押すと、次々と円筒状の装置内部が発光するようにチカチカと光が瞬き出す。
幾何学的な光の線が浮かび上がり、装置が起動を始めたことが伺える。
起動を完了したところで、機械的な音声が探索者に語りかけてくる。

『キミラ タチ キミタチ ハ ワタシ ボクラ ト オナジ か?』

機械的な声は、探索者が返答を返すまで様々な国の言語で語りかけるだろう。
何か言葉を返せば、機械の声は知りうる限りの様々な事に答えてくれる。



●「脳収容器の人間たち」
ミ=ゴがデータベース化するために用意した【円筒状の脳収容器】に入れられた何人もの犠牲者たち。
すべての脳が連結され、既に個体としての意識が消えてしまっており、精神の崩壊が通常より早い。
その影響で一人称が安定しなかったり、同じ単語を何度も繰り返して話してしまう。
連結されたことで様々な知識を共有・吸収する事ができたため、ミ=ゴの言語も理解できる。
話せる事は以下のような情報


*この施設と獣について
 この場所は溶岩の真上に作られた建造物らしく、異常なほど熱いのはそのためである。
 獣は冷気を生み出せるため、この場所でも作業ができるよう捕獲され利用されている。
 本来ならば獣は易易と捕まえていられるほど弱くはないが、今は首の枷で力を吸い取られ弱体化している。
 もし獣が死んでしまった場合は、ここは文字通りの灼熱地獄と化すだろう。
 首の枷を外す鍵を持ったものは奥の部屋へ向かった。


*犯人の目的
 犯人は人間ではなく、虫や甲殻類にも似た異星人たち。
 探索者たちが連れて来られたのは我々のように脳を利用するため、若しくは何かの生贄にするため。
 何かは分からないが、定期的に生贄を捧げなければ自分たちが殺されると怯えていた。
 今はその何かが居るという奥の部屋へ行ったはずだが一向に戻ってこない。


*奥の部屋について
 何かに生贄を捧げるための部屋らしいが、最近問題が起きたらしい。
 また、奥の部屋へ行く前に異星人たちは次のようなことを話しあっていた。
『あの害虫めはいつの間に入り込んだのか、洞中が糸だらけで儀式を行うことも叶わない。』
『一時的にでもあの空間へ繋げてしまったことがミスだった。』
『今は扉の仕掛けのお陰か、こちらの部屋にまでやってくることはない。』
『即刻対策を行わねばなるまい。何より優先すべきはアレを回収することだ。』


*脱出方法について
 脱出には異星人が持つ【通行証】が必要であり、1体につき1つ持っている。
 通行証を所持していれば、細い小路から望みの場所へ行けるらしい。
 大きさは握りこぶし大で、【黒い箱】と同じく触れると発光する。



●犠牲者の願い
ひと通り話し終わると、最期に自分たちを装置ごと破壊して欲しいと願う。
元に戻る方法はないに等しい。まだ人間としての意識があるうちに死にたいのだ。
破壊するなら【黒い箱】を壊せば達成される。
無理強いはされないため、これを行うかは探索者たち次第である。
破壊を行えば、機械的な声は『ありがとう』と最期の謝辞を述べる。

望まれて破壊したとは言え、人殺しに近い行為を行ったことと成る。
罪悪感に苛まれている探索者が居るならば(0/1D3)のSANチェックを行う。


 

08:門番の扉(D:大きな鉄扉)


大きな鉄扉には見たところ鍵穴らしきものは見当たらなく、押しても引いいてもびくともしない。
上を見上げると<手が届きそうにない位置に4つのランタンが設置されているのが見える。>
 <※KP情報※>
探索者に順当に進んで欲しいならば、獣がいない状態の際にはランタンの情報を提示しないことを推奨する。
不正解でも正解でも、ろくなことにならないのは目に見えているだろう。
とは言え、探索者が《目星》までしてしまったなら公開するほかない。
この選択は難易度の変更にもなる。
後から公開する場合は、同行中の獣がランタンに気づいたように情報を提示すると自然になる。


この扉を開くためには、扉の上に設置された4つのランタンの仕掛けを解かなければならない。
うち一つには「炎の精」が門番として宿っており、正しく仕掛けを解かねば敵と見なして襲ってくる。
仮に無作為に外された場合を想定して、KPは門番のランタンを(1D4)で決定しておくといいだろう。
(1:左端 2:中央左 3:中央右 4左端)
探索者が安易に外したならば(1D4)を振ってもらい、該当出目に当たったならば罠を発動させるとよい。
なお、無理に開けようとしても、扉上部に設置されているランタンから「炎の精」が現れ攻撃を仕掛ける。


《目星》に成功すると<うち3つは綺麗だが、1つだけやけに煤けているのが分かる。>
綺麗なのは何度も火が消されているからであり、煤けているのは消されたことがなく、ずっと燃え続けているからだ。
よってこの1つ以外のランタンを消す、あるいは取り外してしまえば扉は開く。
ランタンの高さは人間では手が届かないため、獣に頼むか肩車などをする必要があるだろう。
うまく取り外したランタンは火元として持ち運ぶこともできる。
もし間違えて煤けているランタンを消そうとしてしまうと、「炎の精」が現れて敵意を見せる。

『手を差し伸べたランタンから、油でも注いだように炎が吹き出す。
 激しく火を揺らめかせ入れ物を飛び出してきたのは、生きている炎の怪物であった。』

炎の門番を目撃してもSANチェックは発生しない。
しかし極端に怯える探索者がいるのであれば(0/1)程度はしてもいいだろう。


 <※KP情報※>
炎の精が出現した場合倒してしまっても構わないが、タイミングによっては更なる阿鼻叫喚を呼びかねない。
ここの「炎の精」は「レンの蜘蛛」が通路側へ入るのを防いでいる役割もあるからだ。
もし倒してしまったなら儀式の洞からレンの蜘蛛が出てこれるようになってしまう。
倒してから悠長に管理室などを調べようものなら、レンの蜘蛛が通路にまで入り込んでしまうだろう。
更に脱出時に獣が弱体化したままならば、探索者は追跡してきた蜘蛛2体とDEX対抗で勝たなければならなくなる。


★「炎の精」扉の門番(ルルブP.191)
STR:該当なし  DEX:19   INT:1
CON:9     POW:10  SIZ:1
HP:4  MP:10  db:該当なし  移動:飛行11
――――――――――――――――――――――――――
[武器]タッチ 85%:ダメージ 2D6火傷+MP吸収
[装甲]弾丸その他を含め、ほとんどの物質的な武器ではダメージを与えることは出来ない
    水をかければ、2Lにつき耐久1ポイントを失わせることが出来る。
    普通の手動式消火器で(1D6)、バケツ1杯の砂で(1D3)ダメージを与えることができる
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合の喪失なし
*火傷ダメージは(2D6)を振り、その出目と対象のCONとで対抗ロールを行う
 炎の精が勝つ → 対象は対抗で使用した(2D6)の出目と同じ値のダメージを受ける
 炎の精が負ける → 対象は対抗で使用した(2D6)の出目の半分の値のダメージを受ける
*MP吸収は炎の精のPOWと対象のPOWとで対抗ロールを行う
 炎の精が勝つ → 犠牲者から(1D10)ポイントのMPを盗み取る
 炎の精が負ける → 自分のMPを1ポイントを喪失

 <※KP情報※ 炎の門番への対抗手段>
*青い炎のランタン
 檻内で破損させず、取り外しただけであれば使える。
 冷気の巨獣を捕らえていたランタンには、内包されたMPと、MPを吸収する能力が備わっている。
 青い炎の差し出すと、炎の精は内包されたMPに釣られて吸い寄せられるように向かう。
 それと同時に、MPの吸収能力によってその身ごとランタンの中へ吸収され自然消滅してしまう。
 ランタンが使えることに気づけるかはPLのアイデア次第である。

*脳缶収容器
 中の液体は炎の精に対して有効であるが、壊すには収容器の特殊ガラス(耐久10)を破る必要がある。
 対象は静止物体なので、鉄棒であれば《杖》技能にファンブルでもしない限り当てたことにしても良い。
 成功で正規の値(1D8+db)、失敗で正規の半分弱の値(1D4)のダメージと言った具合だ。
 耐久を削り切れば、ガラスがひび割れて液体が漏れはじめ、更に脳缶収容器ごと取り外せるようになる。
 炎の精へ向けて《投擲》に成功すれば、触れると同時にガラスが割れ、中の液体が消火ダメージを与える。
 消火ダメージは(1D3+3)。炎の精は耐久4なので、この一撃さえ当たれば消滅する。
 ダメージ覚悟で近づいて《投擲》を行うのであれば、30~50%のプラス補正を与えても構わない。
 その際の探索者へのダメージは(1D3)程度。



●洞への通路
ギミックを解除するか炎の精を消してしまえば、大きな鉄扉がひとりでに開き広い通路へ通じる。
広い通路は異質な大きさの蜘蛛の巣らしき糸で、壁・床・天井、そこいら中覆われてしまっている。
糸や足下に気をつけて通ると宣言すれば、問題なく通れる。
どうしても心配ならば、鉄棒を使って取り除いたり、火を使って燃やすことも出来なくもない。
鉄棒を使うならば丈夫な糸を切るのは難しく、燃やすならば加減する必要があるため、時間がかかることは確実だ。

通路の大きさはSIZ25以下でなければ通れない。SIZ20の獣などは少し余裕がある程度だ。
よってここで時間がかかったとしても、後々遭遇する洞の蜘蛛(SIZ26)などは入ってこれない。
また、獣が存在することが牽制となって通路に入れるような大きさの蜘蛛たちも襲ってこない。


 <※KP情報※>
ここの糸をどうするかで、最後の逃走時の命運が分かれる可能性がある。
放置した場合、急いで通るため足を取られかねない。
時間をかけて取り除いたならば、難なくここを通り抜けられるだろう。
ここで時間がかかったとしても、更に奥にいるレンの蜘蛛が気づく可能性は低い。



●獣が同行していない場合
貧弱な人間たちだけでこの通路を通ろうとすると、目ざといレンのクモが探索者を襲いにやってくる。
KPはクモの《忍び歩き》を行い、失敗すれば探索者は近づいてくる音が聞こえ接近を察知できる。
成功したならば、探索者は《聞き耳》に成功しなければ接近に気づけ無い。

『目の前に現れたのは、自分たちと同じ、あるいはより大きい紫がかった化け物だった。
 デキモノだらけのように膨らんだ体からは複数本の長い足を生やし、毛と言うにはあまりに剛毛な体毛が覆っている。
 そいつは、およそ自分たちが知っているはずの大きさとは比べ物にならないほど、巨大な蜘蛛に似た怪物だ。』
飢えた蜘蛛の化け物に遭遇した探索者は(1/1D10)のSANチェックが発生する。


逃走のために牢獄側へ戻るならば、DEX対抗で勝たなければならない。
扉にまだ炎の精がいるならば通路から外へは追いかけてこない。
炎の精が消えてしまっているならば、クモはしつこく探索者を追いかけてくる。
かろうじて追いかけてこないのは、獣がいる冷たい牢獄の中だけだろう。
獣を引き連れて改めて通路を通ろうとすれば、獣の脅威を警戒して通路では襲ってこなくなる。
無理やり儀式の洞へと強行突破したならば、更に大きなレンの蜘蛛に対して、探索者だけで対応することとなるだろう。


★「レンのクモ」行きの通路で遭遇する捕食者(ルルブP.194)
STR:14   DEX:15   INT:9
CON:10  POW:10  SIZ:16
HP:13(装甲+6)  MP:10  回避:30  db:+1D4  移動:6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]噛みつき 40%:ダメージ 1D3+毒
    クモの網を投げる 60%:ダメージ からめ取り
*毒のPOTはクモのCONと同じ値(この個体はPOT10)
*からめ取りのSTRはクモのSIZ半分と同じ値(この個体はからめ取りSTR8)
 逃れるためには対象のSTRをクモのからめ取りのSTRと対抗ロールを行う
[装甲]6ポイントのキチン質
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1D10)
[技能]隠れる:50% 忍び歩き:80%
(※結末の分岐、【●獣や仲間を見捨てて逃走する】で出現するクモと同じ能力値だが別個体。)


 

09:儀式の洞


更へ進んでみると、広々とした空間に出る。ここも辺り一面を蜘蛛の巣が張り巡らされている。
洞の中で《目星》に成功すると<糸でグルグル巻きにされた何かがあるのに気づく>
近づいて見てみれば、それは人間とは異なる生命体であった。
『ピンクがかった色の生き物は、甲殻類のような胴体と翼らしき膜を生やしている。
 複数の間接肢は糸で雁字搦めにされ、もはや虫の息なのか痙攣するように小さく跳ね、止まった。』
異星人の死骸を目撃してしまった探索者は(0/1D6)のSANチェックが発生する。

異星人の死骸に対して《目星》に成功すると
<握りこぶし大の黒い塊が、死骸と一緒に糸に巻き込まれている>のを発見する。

この黒い塊が【通行証】だ。
手にとって見れば幾何学的な光のラインが浮かび上がり発光する。
【通行証】を所持して進めなかった【細長い通路】を通れば、1つにつき1人が地球上の望む場所へ移動できる。
探索者全員で帰りたいならば、人数分の【通行証】を探さねばならない。



●巨大蜘蛛との遭遇
 <※KP情報※>
1つ通行証を発見した所で、レンのクモが探索者たちに気づき這い寄ってくる。
KPはレンのクモの《忍び歩き:80%》をロールする。
成功したならば、探索者たちは《聞き耳》に成功しなければレンのクモの接近に気づけ無い。
失敗すれば、技能ロールなしに探索者たちはレンのクモの接近に気づくことが出来る。
近づいてくる際には
<何かが近づいてくる音と、食器を擦り合わせたような耳障りな音が真上から聞こえる。>

『音の方へ向けば、その巨体は静かに、だが確実にこちらを認識していた。』

『紫がかったあまりに大きな蜘蛛がそこにいた。
 膨らんだ体は粒状にイボが浮き立ち、針金でも生やしているかのような長い足が糸の上を蠢いている。
 紫から藍色、黒へとグラデーションがかった表面色は、毒蜘蛛らしい危険さを脳へ警告する。
 真っ黒の複眼に反射した光が、どう我々を捕食しようかと企む知性を垣間見せた気がした。』

迫り来る巨大な蜘蛛の捕食者を目撃した探索者は(1/1D20)の正気度喪失が発生する。


 <※KP情報※>
発狂者が出たならば、《狂人の洞察力》ルールを用いて次のことに気づかせても良い。
 *<蜘蛛は腹を空かせており、より大きな獲物を標的にしている。>
 *<蜘蛛の体の表面に鍵のようなものが張り付いている。>

1つ目は《アイデア》情報、2つ目は《目星》情報として提示可能だ。
張り付いている鍵は、獣の首枷を外すための鍵である。


★「レンのクモ」洞に潜む捕食者(ルルブP.194)
STR:21   DEX:18   INT:7
CON:14  POW:14  SIZ:28
HP:21(装甲+6) MP:32  回避:36  db:+2D6  移動:6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]噛みつき 40%:ダメージ 1D3+毒
    クモの網を投げる 60%:ダメージ からめ取り
*毒のPOTはクモのCONと同じ値(この個体はPOT14)
*からめ取りのSTRはクモのSIZ半分と同じ値(この個体はからめ取りSTR14)
 逃れるためには対象のSTRをクモのからめ取りのSTRと対抗ロールを行う
[装甲]6ポイントのキチン質
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1D10)、非常に大きいクモの場合は(1/1D20)
[技能]隠れる:50% 忍び歩き:80%


 <※KP情報※>
POT対抗に毒が勝つと、犠牲者はPOT値分のダメージ。
犠牲者が勝ったとしてもPOT値の半分はダメージとして入ります。
そのため獣に対して毒を使うと、確率は低いですが2ラウンドで死にかねないので扱いには注意してください。
もしくは獣の装甲(9)を貫いてから毒の効果は発生するようにするといいでしょう。




●探索者の選択
必ずしも巨大蜘蛛を倒さなければならない訳ではなく、探索者には選択肢が与えられている。
獣も仲間も見捨てて逃走を図るか、皆で協力するために何か行動を起こすかである。

獣はクモを敵と見なして攻撃態勢に入っており逃げる様子はない。
一方のクモも獣を大物の餌と認識して意識が逸れている。
なお、”弱体化している獣”と協力して蜘蛛を倒したとしても、新たな捕食者が再びやってくる。
大きな獲物が弱ってきているのに、みすみす見逃す気はないと言うことだ。
あまり倒しすぎると、2体3体と同時にやってくる可能性すらあるだろう。
これは獣が弱体化中限定であり、首の枷を外して元の力を取り戻せば話は別だ。


この段階であれば、蜘蛛とDEX対抗を行わずとも洞から逃走することが可能である。
もし逃走中に獣が死んでしまった場合は、施設の冷却機能が停止してしまう。
探索者は(2D3+4)ラウンドの間に脱出しなければ灼熱地獄の中死ぬこととなる。
なお、最初に発見できた【通行証】は1つのみ。
全員で脱出したいのであれば人数分を探さなければならない。

見捨てて逃走を行う探索者がいるならば【結末の分岐:●獣や仲間を見捨てて逃走する】へ移行する。



●首枷の鍵の入手方法
鍵はレンの蜘蛛の胴体に引っかかってしまっている。
しっかりとくっついてはいないので、蜘蛛に対して1撃でも攻撃を当てれば鍵は蜘蛛の体を離れる。
獣に任せれば一撃くらいはお見舞いしてくれるだろう。
仮に探索者が攻撃を当てた場合、蜘蛛の標的が切り替わり真っ先に狙われる。
蜘蛛から離れた鍵は《目星》で発見することができる。

事前に首枷に対して《目星》を行っていれば、鍵穴の位置を把握しているのですぐに鍵を使える。
しかし首枷を一度も調べていなかったのであれば《目星》で探さねばならない。

鍵を使い獣の枷を解くと次のような変化が起こる。
『錠が外れると同時に、首枷から靄のような何かが流れ出して獣の中へと吸い込まれていく。
 すると弱っていたはずの獣が、一回り…二回りとみるみる体をふくらませていく。
 ついには二倍近くにまで巨大化し、蜘蛛をも凌駕する大きさになってしまった。』

(もし毒や糸による拘束を受けていたとしても、元に戻った能力値なら自動成功で打ち消している。)

『本来の力を取り戻した冷気の巨獣は、蜘蛛に絶対的強者は誰かを知らしめるように猛々しい咆哮を蜘蛛に浴びせかける。
 蜘蛛が脅えるようにたじろぎ後ずさる様を露呈すると、巨獣はその瞬間を逃さなかった。
 六本の足で踏ん張りながら、頭の角による鋭いひと突きを蜘蛛へお見舞いする。
 巨大蜘蛛は痙攣しながら体液を滴らせ、身動きを止めたようだった。』

(演出的ダメージロール可。《角で突く》を自動成功で2回以上行える。)


★「ノフ=ケー」冷気の巨獣(ルルブP.185-186)
STR:36   DEX:24   INT:16
CON:24  POW:36  SIZ:36
HP:30   MP:24   回避:48  db:+3D6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]角で突く 65%:ダメージ 1D10+db
    かぎ爪 45%:ダメージ 1D6+db
[装甲]9ポイントの軟骨、毛皮、皮膚
[呪文]5つの呪文
[正気度喪失]目撃した場合(0/1D10)
*首枷の効果を無くして元に戻ったノフ=ケー
 種族の中でも群を抜いて強い存在である。
*呪文は5つの内一つは《門の創造》
 残り4つはKPが必要だと判断した場合に記入。




●巨獣との別れ
力を取り戻した巨獣は《門の創造》が使えるため自力で帰れるようになる。
探索者には分からない言語を鳴きながら帰り路となる門を創り、極寒の大地へさっさと帰って行くだろう。
ここで重要なのはノフ=ケーが居なくなる事は、施設の冷却機能が失われるということだ。
(どうなるかは【結末への分岐:●【通行証】を入手する前に獣が死んだ場合】を参照。)
ノフ=ケーが消えてから探索者に与えられる猶予は(2D3+4)ラウンドである。

ノフ=ケーが門を創るには数分間はかかる。
いち早く察したプレイヤーならば、急いで脱出行動へ移ることだろう。
ノフ=ケーは探索者まで元の場所へ帰す義理などなく、蜘蛛を倒したことで探索者に借りも返したと考えている。
万が一に仲がよくなったとしたら、人数分の【通行証】が集まるまで待ってくれるかもしれない。
因みに、体が大きくなりすぎて洞から出ることは出来なくなっている。通路が通れないほど大きいのだ。

獣が施設から居なくなった時点で【結末への分岐:●獣が帰還してから脱出する】へ移行する。

 <※KP情報※>
もしも探索者が《門の創造》を使って脱出を計るならば、次の条件が発生する事を伝えるといいだろう。
なお、ノフ=ケーが創った門を通ろうとした場合でも同様の対抗ロールが発生する。
・《門の創造》には距離にしてPOW3のコストが必要
・門を通ろうとする際にこの施設にかけられた魔術的な防壁(POW23)との対抗ロールが発生する
・対抗に失敗すると門ごと探索者も潰され消滅する
(ノフ=ケーに関しては《門の創造》後も対抗に自動成功できる能力値である。)

もしノフ=ケーが創造した門を、対抗ロールにも勝った上で通りきった探索者がいたならば
【結末への分岐:●ノフ=ケーが創造した門を通る】へ移行する。




●【通行証】を探す
《目星》に成功すると<複数体の異星人の死骸らしき糸の塊があるのを発見する。>
近づいてみると糸に覆われた黒い岩が鎮座しており、異星人たちはその岩を中心に取り囲むように糸で捕縛されている。
状況だけを見て《アイデア》に成功すると
<異星人たちはこの何かから糸を取り除こうとしたところで、蜘蛛にやられたのでは?>と察する。
【通行証】を目視した探索者が、黒い岩に対して《アイデア》に成功すると
<【通行証】はこの岩を元に作られたのではないか?>と察する。

最初に入手した【通行証】と同じものは、異星人の死骸と一緒に糸に絡まっている。
《目星》で死骸を確認すれば、次のように分かる。
<糸に紛れて黒い塊が異形の体に密着している。取るには少し手間が掛かりそうだ。>
<また、僅かに痙攣していることからこの異星人はまだ息がある。>
耐久3しかないため、先に息の音を止めてさえしまえば、後述されている呪文も叫ばないので罠も発生しない。


 <※KP情報※>
背景にて記述した鏡は、この黒い鉱石を念入りに磨いたものであり、何も知らないものが見ればただの岩だろう。
この鉱石は人間たちにとっては未知の物質である。ミ=ゴとたちが創りだしたものかもしれないし、神話生物の一部かもしれない。
【通行証】もこの黒い鉱石を元に作られているが、探索者が脱出するにはミ=ゴたちが所有している【通行証】を入手する必要がある。
ミ=ゴたちが加工したものでなければ【通行証】としては機能しないため、鏡から破片を入手しても意味は無いためだ。
破片自体は糸を取り除いて鉄棒などで殴れば簡単に入手できる。存外と硬度は高くないのだ。
しかし人間がこの岩の破片を入手したところでただの石ころにすぎず、糸を取り除けばそれどころではなくなるかもしれない。



●神の御前
前述にある黒い岩は【ガタノソアと接触するための鏡】である。
ただ置いてあるだけならば何の変哲もない磨かれた黒い岩だが、特定の呪文を近くで唱えると効果を発揮する。

もし探索者が糸を剥いで鏡を露わにした。あるいは通行証を入手するため糸を解いたならば、糸の拘束が緩んだミ=ゴが鏡から糸を取り除こうとする。
後者であれば、ミ=ゴが這いずりながら鏡へ向かっている姿を探索者が目撃する可能性がある。
もしミ=ゴが這いずって行く場合にラウンド形式中ならば、3ラウンドはかかるだろう。
鏡へ辿り着く前に殺してやれば問題はないが、放置すると悲惨な事態になるだろう。

鏡から糸が取り除かれた瞬間、他の瀕死のミ=ゴが断末魔に呪文を叫び鏡の効果を発動させてしまう。
効果が発動された鏡からは「ガタノソア」が見えるようになってしまう。
これはレンの蜘蛛に殺されかけた恐怖から、縋るように神を崇めた行為だ。
この段階では、探索者は鏡の前にさえいなければガタノソアを目撃する心配はない。

更に厄介なことに、ミ=ゴは招来の呪文さえも唱える気でいる。
招来の呪文が完遂されてしまうと、鏡が門へと変化してガタノソアを招き入れてしまう事となる。
ガタノソア目撃SANチェック後も、ミ=ゴは不快な羽音を鳴らしながら醜い叫びをあげ続けるだろう。
《ガタノソア招来》の呪文を唱え終わるのは5ラウンド目の終了時。
その間に虫の息(耐久3)であるミ=ゴを殺すなりして黙らせなければならない。
もし5ラウンドの間も放置しておくようならば、火山の主は鏡からその御身を這いずりだしてくるだろう。

鏡越しに「ガタノソア」を目撃してしまった探索者は次のような光景を目にする。

『突如として死に損ないの化け物が醜い叫び声を響かせた。
 何かを求めるような叫びと同時に、黒い岩を中心に覆いかぶさるような重力が襲いくる。
 黒い岩から燐光が発せられ、磨かれた岩面全体を暈光が覆う。
 光揺らめく鏡のような岩の表面には、忌まわしき強大な恐怖が映しだされていた。』

『無数の触手を蠢動させ、幾つもの醜悪でいて暗黒そのもののような感覚器官の穴を覗かせている。
 あらゆる希望が押しつぶされんばかりの暗澹(あんたん)たる邪悪さは、人間などという矮小なる精神を持つものには形容しきれない。
 永劫なる闇の存在は、我々に宿っていた名状しがたき鬼胎(きたい)を、膨らませ破裂させんばかりに育たせた。』

火山の主を目撃したことにより(1D10/1D100)の正気度喪失が発生する。
加えて「ガタノソアの呪い」ロールが発生してしまう。


鏡越しからの呪いの発生を止める手立ては少ない。
呪文を叫ぶミ=ゴの息の根を止める、あるいは鏡を破壊するしかない。
しかし鏡は脆いとは言え岩である。ロケットランチャーでも使えば別だろうが、壊し切るのは現状無理と言える。


更にこの後、《ガタノソア招来》の呪文が完遂されてしまったならば
【結末への分岐:●ガタノソアが招来されてしまった】へ移行する。



※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
★ガタノソアの呪い(ルルブP.211参照)
ガタノソアを御身を目撃してしまったものは、あらゆる生物がその身に呪いを受けてしまう。
範囲は招来される前であれば、対象は鏡の前にいるものだけである。
姿を表したラウンド中に目撃したものは[CON×5]ロールを行う。
成功すればそのラウンドは呪いに反発できたものとする。
失敗してしまったならば(1D6)のDEXを永久喪失し、筋肉の硬化を伴った進行性の麻痺が始まる。
呪いによる体の異常を察した探索者は(1/1D4)の正気度喪失が発生する。

ガタノソアの姿が見えてしまう限り、呪いは効力を発揮する。
発症していないものは、呪発症の[CON×5]ロールが毎ラウンド発生する。
一度呪いが発症してしまったものは呪いが逆行することはない。
麻痺が進行し続け、毎ラウンドDEX(1D6)の永久喪失ロールを行う。
DEXがゼロ以下になった時点で犠牲者の筋肉や腱は急激になめし皮のような硬さになってしまう。
意識はあるが、体は動かせるはずもなく目さえ見えない。
柔軟性を失った体は、地面とぶつかるだけで簡単に砕けるだろう。
体の硬化により意識を閉じ込められた探索者は(1D8)の正気度喪失が発生する。

<DEX減少による症状の度合い>
減少初回:体が動かしづらくなり、表皮が硬化しボロボロと崩れる。体を動かす技能に-10%補正。
DEX5~3:体の動きが極端に鈍くなる。体を動かす技能が全て半減。
DEX2~1:見聞きはできるが体を動かすことはできない。言葉すら発しづらくなっている。
DEX0:体は精神を閉じ込めるだけの石棺と化す。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※


 

10:結末への分岐


●【通行証】を入手する前に獣が死んだ場合
数分もしないうちに辺り一帯全てが灼熱地獄へと化す。
脱出の手だてを持たない探索者たちは、体中の水分は瞬く間に失われ、眼球すらもしぼみ視界を失う。
呼吸をしようとするたびに喉は焼け爛れ、叫び声すら上げることは叶わず干からび死んでいくだろう。
許容量を越えた苦痛に走馬燈を過ぎらせる余裕すらなく、探索者の人生は幕を閉じる。



●獣や仲間を見捨てて逃走する
最初に入手できた【通行証】を使い、一人だけ逃走する場合である。
見捨てたわけでなく、他の探索者に先に行くよう促された場合でも該当してしまう。

逃げる探索者の背後から2体のレンの蜘蛛が追いかけてくる。
これらは獣と対峙している個体とは別の存在である。
獣から離れた探索者を餌にしようと洞から出てきたのだ。
大きさは洞に居るものよりは小さいが、人間にとっては充分に驚異となり得る化け物だ。
倒せるならば挑戦しても構わないが、それは無謀と言えるだろう。

探索者は糸が張り巡らされていた大きな通路で、この2体とDEX対抗で勝たなければならない。
事前に通路の糸を取り除いていたならば元の値でDEX対抗を行える。
糸が張り巡らされたままであれば、DEX対抗に10%以上はマイナス補正が入るだろう。

更に、大きな鉄扉にて炎の精を排除したかどうかでも状況は変わってくる。
炎の精が生きているのであれば、蜘蛛たちは大きな鉄扉より外へは追いかけてはこない。
炎の精を殺してしまったならば、蜘蛛たちに追いつかれずに細い通路へ逃げきれるのDEX対抗を再び行わねばならないのだ。

これらの苦難を全て乗り越えた探索者のみが脱出を成し遂げられるだろう。

もしこの分岐に入ってから獣が力を取り戻したなら、追跡する蜘蛛は巣へと帰っていく。
ただし蜘蛛が退場するのは、それまで探索者が生きていればの話である。
死亡したならばその場で捕食が開始され、後から通路を通る別の探索者は惨たらしい現場を見ることになる。
さっきまで生きていた仲間が、無残な姿で化け物に捕食されている惨状の目撃により(1/1D6)のSANチェックが発生する。
その一方で捕食中の蜘蛛は食餌に夢中なため、後から来た探索者は襲われない。
しかし仲間の死に激情した探索者が攻撃を仕掛けるのであれば、クモは捕食を中断してその探索者を襲うだろう。


★「レンのクモ」逃走時の2体の捕食者(ルルブP.194)
STR:14   DEX:15   INT:9
CON:10  POW:10  SIZ:16
HP:13(装甲+6)  MP:10  回避:30  db:+1D4  移動:6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]噛みつき 40%:ダメージ 1D3+毒
    クモの網を投げる 60%:ダメージ からめ取り
*毒のPOTはクモのCONと同じ値(この個体はPOT10)
*からめ取りのSTRはクモのSIZ半分と同じ値(この個体はからめ取りSTR8)
 逃れるためには対象のSTRをクモのからめ取りのSTRと対抗ロールを行う
[装甲]6ポイントのキチン質
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1D10)
[技能]隠れる:50% 忍び歩き:80%




●獣が帰還してから脱出する
ノフ=ケーが施設から消えてしまったことで、直ぐにでもここは灼熱地獄と化す。
前述通り(2D3+4)ラウンド以内が探索者たちが耐えられる範囲内の温度だ。




儀式の洞の一番奥に居たなら、通路へたどり着くまでに1ラウンドはかかってしまうだろう。
なお、黒い岩の周囲に居たミ=ゴから通行証を入手するも、トドメを刺していなかったならば少し描写を挟む必要がある。
<通行証を入手した数だけの異星人が、黒い岩に向かって這いよっている。>

 <※KP情報※>
ミ=ゴは黒い岩にたどり着くまでに3ラウンド、招来の呪文を唱え終わるまでに5ラウンドかかる。
放置するのであれば、3ラウンド目以内に洞を脱出しなければ「ガタノソア」を目撃。
(正確には確実に鏡が見えなくなる位置の意。3ラウンド目以降は常に邪神が鏡に映っているため。)
8ラウンド目以内に施設を脱出しなければ、強制的にバッドエンドへ向かう。
制限時間が7ラウンド以下ならば探索者への惑わし要素でしか無い。
KPは脱出にギリギリ感を追求するなら、この情報を秘匿するのも手だろう。



まだ残っていたレンの蜘蛛たちは巨獣の咆哮により、脅えて儀式の洞からは出てこなくなっている。
よって追ってくる”まともな追跡者”は居ないが、張り巡らされた糸は別である。
事前に通路の糸を取り除いていたならば、大きな通路は問題なく通ることが可能だ。
糸を残してしまったならば、急ぎながら絡まないよう進むため[DEX×4]に成功しなければならない。
もし絡まってしまったならば、絡まった糸を引きちぎるために[糸のSTR11]との対抗ロールが発生する。
燃やしたり切ったりするのであれば、1ラウンド以内に器用に糸を取り除く事は難しい。
よって耐久(1D3)減少は覚悟した方が良いだろう。
あるいは服や靴を脱いでしまえば、易々と抜け出せるかもしれないが……思いつくかはPL次第である。
糸の道さえ抜けてしまえば邪魔するものは何もない。まっすぐ脱出路へ向かうべきだろう。


※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※
◯追加トラップの提案
次のトラップは難易度を上げるだけのイベントです。
KPは状況を見て起こすかどうか決めてください。
途中が順調過ぎて探索者に余裕が有り余っているなら、最後にハラハラさせるぐらいは出来るかもしれません。

★対抗に失敗し続けると
糸との対抗で3ラウンド以上時間をかけてしまうと、熱さに荒れ狂った「レンの蜘蛛」が一匹やってきてしまう。
狂乱状態に近く、技能値へのマイナス補正や、自滅行動が混じっている。
通路を抜ければ追いかけてくることもないが、脅威には違いない。

★「レンのクモ」狂った捕食者(ルルブP.194)
STR:7   DEX:10   INT:7
CON:9  POW:10  SIZ:11
HP:10  MP:10  回避:30  db:0  移動:6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]噛みつき 20%:ダメージ 1D3+毒
    クモの網を投げる 30%:ダメージ からめ取り
*行動前に自滅判定が入る。
 自滅の確率は1/3、(1D3)で「1・2」は通常攻撃の判定、「3」が出たら自滅して自らにダメージを与える。
 自滅は蜘蛛自身に(1D4)ダメージが入る。
*毒のPOTはクモのCONと同じ値(この個体はPOT9)
*からめ取りのSTRはクモのSIZ半分と同じ値(この個体はからめ取りSTR5)
 逃れるためには対象のSTRをクモのからめ取りのSTRと対抗ロールを行う
[装甲]なし
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1D10)
※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※




●【通行証】を手に細い通路を抜ける
前述のラストダッシュを乗り越えた探索者たちが、条件をクリアして細い通路を抜けようとすると次の現象に見舞われる。

『通路を進んでいくと、段々と施設の光と高熱が遠のいていく。
 なま温く重い、粘りでも帯びていそうな空気をかきながらひたすら進んでいく。』
『進みながら沈んでいくような錯覚を覚える。
 すると不意に冷えた空気が肌を差し、視界が明るさで開けた。
 そこは自分たちが居るべき元の場所。
 探索者は灼熱の監房から脱出することに成功したのだ。』

所持していた【通行証】は通ってきた細い通路にしか効果を示さない。
恐怖を忘れようと河原に捨てるなり、そのまま記念に所持するなり自由にするといいだろう。




●ノフ=ケーが創造した門を通る
そうそう発生することはないだろうが、ノフ=ケーが創造した門を通り、対抗に見事勝利した探索者である。
探索者が狂気を発症し、ノフ=ケーに対して偏執症(フェティッシュ)などを起こした場合ならあるかもしれない。

『凍えそうなほど冷たい門をくぐると、激しい吹雪で目の前すら見えない。
 ところが不思議なことに、自分自身は凍えていないことに気づくだろう。
 ふと足元をみれば、あの獣のものらしき前足が見えた。』
『声をかけようと言葉を発する。しかし聞こえたのは獣の唸り声。
 やはり近くにいるのだろうかと見回せど、白い景色しか見当たらない。
 近くにいるらしきあの獣を探そうと、不思議と寒くない体を動かす。
 同時に足元にあった、獣の前足が動いた。』
『そして人間だったあなたは気づいてしまう。
 自分が、あの獣と同じ姿になっていることに。』

これは創造された門をくぐると、繋がった土地に適応した体になるという効果の影響である。
更に門を創造したのは種族の中でも特に強力な力を有していたノフ=ケーであったことも影響する。
ノフ=ケーもどきと化した探索者は、やがて人間だった記憶も消え、偏狭の凍える土地で獣同然にその生涯を遂げるだろう。




●ガタノソアが招来されてしまった
5ラウンドに及ぶ招来の呪文が完遂されてしまった場合だ。
この状況から逃れられるのは、完遂される前に他を見捨てながらも運良く追跡者をまいた探索者のみだろう。

招来と同時に儀式の洞だけに留まらず、施設全体にガタノソア呪いが更に強力に効果を及ぼす。
施設に居た生物は全て意識だけを持たされた石となり、ガタノソアによって殺される。

『虫じみた異形の叫び声が止んだ。
 叫ぶことで命を削りきったかのごとく、だらりと体を垂れ下げている。
 沈黙を一時挟み、黒い岩から放たれていた冷たい光が消えていった。
 あなたは「あの恐怖の根源たる姿はもう見えないのだ」と、安堵に胸を撫で下ろす。』

『つかの間の心の平穏を感じようと思ったときだ。
 体が動かない
 皮はボロボロと剥がれ落ち、筋肉は繊維が硬い針金にでもされたかのように言うことをきかない。
 霞む視界、遠ざかる音。意識はしっかりとあるにも関わらず、まるで自分が石になってしまったかのようだ。
 消えてい視界が最期に見たものに、もう見開くことすら許されない瞳が恐慌に揺らぐ。』

『暗黒と混沌と果てしない夜の禁じられた落とし子
 その巨躯から伸ばされた無数の触肢が 洞の全てを覆い尽くして行き
 壁面を破壊して溶岩を雪崩込ませていた』

『最早、自分自身の体が脱出不可能な檻だ。
 身動きはとれず、何も見えない、聞こえない、叫ぶことすら叶わない。
 石棺の体の中で、灼熱に血を沸騰させ、脳を溶かしながら意識も苦痛の混沌へと溶解していくだろう。』

火山の主ガタノソアを目撃した者は、(1D10/1D100)の正気度喪失が発生する。
(「ガタノソア」のステータスはルールブック(P.211)を参照。)


 

11:クリア報酬など


●灼熱の監房からの脱出
(1D8)の正気度回復が行えます。
クトゥルフ神話を(1D4)%与えられます。


●巨大蜘蛛から冷気の巨獣を助けた
(1D6)の正気度回復が行えます。


●脳収容器にされた人間たちを葬った
(1D3)の正気度回復が行えます。

もし後で破壊することを約束するも壊す余裕がなく、獣が施設から居なくなってしまった場合。
灼熱地獄と化した施設に取り残された犠牲者たちは、必然的に死ぬこととなる。
探索者にとっては偶然であるが約束は果たされるので、自分たちで葬った扱いにしても良い。



●ガタノソアの呪いを受けた
誰かに運ばれ脱出したとしても呪いが逆行することはなく、失われたDEXは二度と回復しない。
つまり皮膚や筋肉の硬化もそのままであり、APPが12以上ある探索者は(1D4+3)の減少が起こる。
体を使う技能も、まともに使うことはほぼ不可能だろう。

DEXがゼロ以下になった探索者であれば、自身の体が精神の檻となったままだ。
死んだも同然な日々は精神をすり減らし続け、毎日(1D6)ポイントの正気度を失わせる。
この探索者が解放される手立ては、脳を破壊してやるか、永久的狂気に堕ちるほか無い。

もし呪いを解く手段があるとすれば、希少な魔術書に書かれているらしい解呪の祈祷文だろう。
(サプリ2010に記載されているシナリオ「腕に刻まれる死」を参照。)


 

12:NPCステータス一覧


★「ノフ=ケー」冷気の巨獣(弱体化)(ルルブP.185-186)
STR:20(36)   DEX:16   INT:16
CON:16(24)  POW:24(36)  SIZ:20(36)
HP:18(装甲+9) MP:12(遭遇時) 回避:32  db:+1D6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]角で突く 65%:ダメージ 1D10+db
    かぎ爪 45%:ダメージ 1D6+db
[装甲]9ポイントの軟骨、毛皮、皮膚
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(0/1D10)
*首枷の効果で能力値が大幅に削られ、呪文が使えなくなっている。



★「ノフ=ケー」冷気の巨獣(ルルブP.185-186)
STR:36   DEX:24   INT:16
CON:24  POW:36  SIZ:36
HP:30   MP:24   回避:48  db:+3D6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]角で突く 65%:ダメージ 1D10+db
    かぎ爪 45%:ダメージ 1D6+db
[装甲]9ポイントの軟骨、毛皮、皮膚
[呪文]5つの呪文
[正気度喪失]目撃した場合(0/1D10)
*首枷の効果を無くして元に戻ったノフ=ケー
 種族の中でも群を抜いて強い存在である。
*呪文は5つの内一つは《門の創造》
 残り4つはKPが必要だと判断した場合に記入。

<戦闘ロールの値>
*「弱体化したノフ=ケー」
 角で突く:65%
 角突きダメージ(かぎ爪なし):1D10+1D6+2D6
 角突きダメージ(かぎ爪2本):1D10+1D6
 角突きダメージ(かぎ爪4本):1D10+1D6-2D6
 かぎ爪:45%
 かぎ爪ダメージ:1D6+1D6
 回避:32%
 STR対抗(獣STR20→蜘蛛の糸STR14):80%

*「力を取り戻したノフ=ケー」
 角で突く:65%
 角突きダメージ(かぎ爪なし):1D10+3D6+2D6
 角突きダメージ(かぎ爪2本):1D10+3D6
 角突きダメージ(かぎ爪4本):1D10+3D6-2D6
 かぎ爪:45%
 かぎ爪ダメージ:1D6+3D6
 回避:48%




★「炎の精」扉の門番(ルルブP.191)
STR:該当なし  DEX:19   INT:1
CON:9     POW:10  SIZ:1
HP:4  MP:10  db:該当なし  移動:飛行11
――――――――――――――――――――――――――
[武器]タッチ 85%:ダメージ 2D6火傷+MP吸収
[装甲]弾丸その他を含め、ほとんどの物質的な武器ではダメージを与えることは出来ない
    水をかければ、2Lにつき耐久1ポイントを失わせることが出来る。
    普通の手動式消火器で(1D6)、バケツ1杯の砂で(1D3)ダメージを与えることができる
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合の喪失なし
*火傷ダメージは(2D6)を振り、その出目と対象のCONとで対抗ロールを行う
 炎の精が勝つ → 対象は対抗で使用した(2D6)の出目と同じ値のダメージを受ける
 炎の精が負ける → 対象は対抗で使用した(2D6)の出目の半分の値のダメージを受ける
*MP吸収は炎の精のPOWと対象のPOWとで対抗ロールを行う
 炎の精が勝つ → 犠牲者から(1D10)ポイントのMPを盗み取る
 炎の精が負ける → 自分のMPを1ポイントを喪失




★「レンのクモ」洞に潜む捕食者(ルルブP.194)
STR:21   DEX:18   INT:7
CON:14  POW:14  SIZ:28
HP:21(装甲+6) MP:32  回避:36  db:+2D6  移動:6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]噛みつき 40%:ダメージ 1D3+毒
    クモの網を投げる 60%:ダメージ からめ取り
*毒のPOTはクモのCONと同じ値(この個体はPOT14)
*からめ取りのSTRはクモのSIZ半分と同じ値(この個体はからめ取りSTR14)
 逃れるためには対象のSTRをクモのからめ取りのSTRと対抗ロールを行う
[装甲]6ポイントのキチン質
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1D10)、非常に大きいクモの場合は(1/1D20)
[技能]隠れる:50% 忍び歩き:80%

<戦闘ロールの値>
*「洞にいるレンの蜘蛛」
 回避:36%
 網を投げる:60%
 噛みつき:40%
 噛みつきダメージ:1D3
 POT対抗(蜘蛛の毒POT14→弱体化した獣CON16):40%



★「レンのクモ」行きの通路で遭遇する捕食者(ルルブP.194)
STR:14   DEX:15   INT:9
CON:10  POW:10  SIZ:16
HP:13(装甲+6)  MP:10  回避:30  db:+1D4  移動:6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]噛みつき 40%:ダメージ 1D3+毒
    クモの網を投げる 60%:ダメージ からめ取り
*毒のPOTはクモのCONと同じ値(この個体はPOT10)
*からめ取りのSTRはクモのSIZ半分と同じ値(この個体はからめ取りSTR8)
 逃れるためには対象のSTRをクモのからめ取りのSTRと対抗ロールを行う
[装甲]6ポイントのキチン質
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1D10)
[技能]隠れる:50% 忍び歩き:80%
(※結末の分岐、【●獣や仲間を見捨てて逃走する】で出現するクモと同じ能力値だが別個体。)



★「レンのクモ」逃走時の2体の捕食者(ルルブP.194)
STR:14   DEX:15   INT:9
CON:10  POW:10  SIZ:16
HP:13(装甲+6)  MP:10  回避:30  db:+1D4  移動:6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]噛みつき 40%:ダメージ 1D3+毒
    クモの網を投げる 60%:ダメージ からめ取り
*毒のPOTはクモのCONと同じ値(この個体はPOT10)
*からめ取りのSTRはクモのSIZ半分と同じ値(この個体はからめ取りSTR8)
 逃れるためには対象のSTRをクモのからめ取りのSTRと対抗ロールを行う
[装甲]6ポイントのキチン質
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1D10)
[技能]隠れる:50% 忍び歩き:80%



 

13:その他補足や裏話


●特異な力を得たミ=ゴ
本シナリオでのミ=ゴたちは、ガタノソアに供物(人間や他の神話生物たちの精神など)を捧げることで、様々な招来や接触呪文を恩恵として享受しています。
それらの呪文を活用・応用させていくことで、彼らは異空間との接触に関しての見識を深めていきました。
一方で莫大な力が必要とされたため、捕まえやすくかつ個体数の多い人間に狙いを定め、度々拉致しては燃料にしてきました。


●レンの蜘蛛が侵入してきた理由
当初は補食目的でしたが、ミ=ゴたちが扱う鏡の力に魅せられ儀式の洞の乗っ取りを考ええるようになります。
鏡があれば、彼らが崇拝する蜘蛛の神アトラク=ナチャへより近づけると考えたからです。
しかし鏡を扱えるのはここのミ=ゴだけと気づくには、蜘蛛たちにとって時間が足りませんでした。


●ミ=ゴがレンの蜘蛛に負けた原因
ミ=ゴたちが何故レンの蜘蛛に無惨にやられてしまったのかと言うと、単純に数の差によるものです。
最初はそれほど数もおらず、余裕を持って駆除を行えていました。
しかしその余裕が徒となり、大量の卵が運ばれ隠されていたことに気づかなかったのです。
それらが孵化した頃合いを狙い、混乱する隙をついて蜘蛛たちはなだれ込みました。
しかも居座ってしまったのは儀式の洞、大切な儀式用の鏡がある場所です。
下手に科学兵器で吹き飛ばしてしまえば、鏡も粉みじんとなってしまうでしょう。
いくら技術力が勝っていようと、圧倒的な数を前にしては勝つことは困難を極めます。
ミ=ゴたちはやられたものの尽力しました。
結果、探索者が訪れた際には相当数の蜘蛛が減らされていました。


●炎の精の門番
大量のレンの蜘蛛に対して炎の精一体だけで門番が勤まったのは、施設の場所が溶岩の上にあることが関係します。
洞側の通路から扉を無理矢理開ければ、溶岩が通路を覆いほとんどの生物が燃え死ぬ仕組みになっています。
炎の精にとって溶岩程度どうという事はありません。
その溶岩がなだれ込む穴を管理するには打ってつけだったのでしょう。
レンの蜘蛛は一度その罠にかかり、洞に居たもの以外は全滅したことで炎の精が居る限り通りたがらなくなっています。
また探索者が脱出時に無事に通れたのは【通行証】を所持していたお陰です。


 

14:参考・引用(敬称略)


クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPG



***ここまで読んで頂きありがとうございました。***
(2014/11/29) シナリオ製作:kanin(http://kanin-hib.hateblo.jp/
(2015/02/09)テストプレイ後の調整
(2015/11/12)一部文章の修正・イベント追加
(2021/10/19) データ表記の修正