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CoCシナリオ「ネクラロリコン」


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01:はじめに


このシナリオは
  「クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPGー」
  「キーパーコンパニオン改訂新版」に対応したシナリオです。
 舞台は閉ざされた空間、推奨人数は3~4人。
*推奨技能:<目星><聞き耳><回避><忍び歩き><言い包め><説得>

 <あらすじ>
 探索者たちは突如として、普段の日常から謎の空間に閉じ込められてしまう。
 迫り来る恐怖に震えながら、奇妙な協力者と共に脱出の手立てを探すこととなるだろう。


 <※KP情報※>
 前提として、探索者に1人以上の非リア充か幼女がいないとクリア難度が上がります。
 「ネクラロリコン」と言うシナリオ名だからと言って「ネクロノミコン」が登場するわけではありません。
 これは登場する魔導書がネクロノミコンだとプレイヤーを勘違いさせるブラフ要素です。
 根暗でロリコンなのは意思を持った白色の本こと、魔導書「ルルイエ異本」の性格です。

 

      ( 目 次 )
      01:はじめに
      02:シナリオ背景
      03:導入
      04:扉と巡回者
      05:四方の部屋
      06:脱出方法と結末
      07:その他補足や裏話


 

02:シナリオ背景と流れ


●背景
探索者を異空間に呼び出したのは「暗闇で待つもの シアエガ」である。
シアエガは封印されたこの場から脱出を目論見、探索者を封印空間へ引き込んだ。
一方で、虐殺による余興を求めていたこともあり、解放されることよりも蹂躙を望んでいる。

シアエガを封印したのは、遠い昔にシアエガにより甚大な被害を受けていた深きものである。
深きものたちは管理者として意思のある魔導書を創りだした。
しかしこの管理者は意思を持つが故に、この空間に束縛され続けることを不服に思っている。
結果ひねくれ、根暗じみた性格と妙な嗜好が生まれてしまった。



●KPに求められる行動
時間制限はゲーム内時間で「1時間」。この間に探索者たちは正解を導かねばならない。
時間は短いため、ある程度は魔導書の誘導をする必要があるだろう。
探索者たちが居る位置、ナガアエの位置の把握も重要になる。
時間管理より位置管理が手間になる可能性が高い。



●探索者に求められる行動
この空間では意思を持った魔導書の知恵を借りる必要がある。
道中では「シアエガ」の従者「ナガアエ」が探索者たちを食らおうと巡回している。
探索者は「ナガアエ」から隠れ、出し抜きつつ、脱出路を見つけなければならない。

制限時間はゲーム内時間で1時間しかない。
時間切れになると「暗闇で待つもの シアエガ」が探索者たちの元へ辿り着ついてしまう。
深き暗闇が支配する頭上から、触手が這い下り嬲り殺すだろう。

魔導書は様々な知識を有しており、探索者が望めば幾ばくかの知恵を貸してくれる。
知恵の一つに、ルルイエ文字を解読する能力があり、これが脱出路の情報に関わってくる。
もし探索者が魔導書から神話生物の詳細な知識を得たなら、正気度喪失が発生する。
シアエガとナガアエの存在についても例外ではない。

魔導書は表面上は協力的だが、探索者たちを試している側面を持つ。
探索者は心理学を使っても、相手が本なのでこの考えを知ることはできない。
脱出方法については、魔導書が簡単な方法を序盤に教えはするが、重要な点は伏せている。
その方法は、脱出のみができるのであり、生還はできない。
空間に封印された「シアエガ」を現代に開放する行為だからだ。
探索者たちはこの事実に気づき、別の脱出法を模索する事が真の目標となる。




●特殊な魔導書
白い本は『ルルイエ異本』の内容を記録した魔導書であり、特殊な力によって意思を持っている。
写本ではなく、オリジナルの粘土版を総て記憶した人物と言える。
この魔導書の中身は文字媒体による情報源は無い。タイトルすらなく、ページ全てが白紙だ。
魔導書としての内容は本自身の記憶のみ。
会話だけで情報を入手する事ができるため、解読時間をかけずに情報を得られる。
反面、内容公開はNPCである魔導書の気分次第。言ってしまえばKPの好きな度合いに出来る。
知りたがりの探索者には、享受された宇宙的恐怖の知識分に相応する正気度値喪失を与えると良いだろう。

白い魔導書は自身を浮遊させて移動する。
探索者たちの母国語が異なっている場合は、この魔導書が自動翻訳してくれている。
共通言語のない人物同士が魔導書から離れてが別行動をすると、突然会話が困難となり困惑することとなる。

本来の『ルルイエ異本』については「キーパーコンパニオンP.42」を参照。




●探索者を狙う巡回者
シナリオ中、探索者たちを捕食しようと狙うクリーチャーであり、シアエガから生み落とされた存在だ。
狡猾かつ邪悪であり、憎しみ、殺人、苦しみへの願望を主人と共有している。
主人の命令がなくとも、動物を殺すことで喜びを得る。対象は生きた動物ならなんでも良い。

見た目は不快そのもの。水陸両用のヒキガエルのようであり、皮膚は半透明のぬめったゴムのようだ。
その表面は固いいぼと濃い毛、しわの寄った傷跡に覆われている。
この見るも恐ろしい外見に加え、ナガアエは腐敗した沼気の悪臭がする。

ナガアエは、聴力と嗅覚が優れている。
探索者が下手な行動をすれば直ぐに察知するだろう。

人間に対峙した際は、ナガアエは肉の味を好むため《噛みつき》を優先的に行う。
噛みつきには毒の効果もあり、毒液を作り出す腺は自発的に制御されている。
毒液量を変化させれば、気絶や麻痺に留めることも可能である。 
これはナガアエが犠牲者を後々貪り食うための能力である。


▼探索者がナガアエを倒した場合
ナガアエを生み出したシアエガが同じ空間にいるので、倒しても5分後には新しいナガアエが生み出される。
生み出される場所は黒い扉の部屋。ぬかるんだ地面から醜い産声をあげて再誕を知らせるだろう。

<ナガアエの死亡時>
 [2D4]分のうちに溶け、吐き気をもよおすほどの腐食性の高い粘着物の塊になる。
 この粘着物は臭いを嗅ぐと、[CON×3]の対抗ロールに成功しなければ猛烈な吐き気に襲われる。
 素手など露出した皮膚で触れた場合は、水ぶくれとなって1ラウンドに1点の耐久ダメージを受ける。


 

03:導入


探索者は現実どこかの扉を開いてくぐると、眩い光が目をくらませる。
扉の向こうへ踏み込んだ足は、パキリと何かを軽く踏み砕いた。
目的の場所は視界には入らず、床も壁も白く、うす暗い部屋に佇んでいた。
天井はなく、どこまでも深い暗闇が真上を支配している。
夢のようなあり得ない事態に探索者は(0/1)の正気度喪失が発生する。

宙に浮かんだ燭台があたりを転々と照らしている。
この部屋の内ならば、何かするのに支障はない。
また、燭台は手に取れば持ち運んで使う事も出来る。

部屋は正方形で、25mプールを真四角にしたような広さだ。
探索者の位置は部屋の中央、目の前には白い台座がある。
四方四箇所は両開きの大きな扉があり、「青・赤・緑・黒」の4色に分かれている。

(※↓色の位置関係。詳細はMAP参照)
┏━青━┓
黒 白 赤
┗━緑━┛

床をよく見ると、白いかけらや棒のようなものが至る所に落ちている。
《アイデア》か《医学》や《生物学》に成功すると<これは人間の骨だ>と分かる。
この事実を知ってしまった探索者は(0/1d3)の正気度喪失が発生する。




●白い本
中央の白い台座は四角柱で、古めかしく分厚い古書が鎮座している。
古書の装丁は白いハードカバー、血管のような細い管が隆起して覆っている。
500ページ以上はありそうな分厚さで、広辞苑並みの大きさと重量感がある。
見た目は古ぼけている割に、丈夫な厚布のように破れることはなく、燃焼もしない。

白い本は、触れると人肌程度の熱を感じる。
探索者が本を手に取るか、暫く近くにいると声がする。
『汝らはこの空間に迷えし愚かな生贄か』

一体どこから声がしたのか知るため、探索者には《聞き耳》か《アイデア》をして貰う。
成功すると<白い本から声がした>と分かる。
技能に失敗したとしても
『ここだ! 気づかぬか愚か者!』と本が叫び、飛び跳ね探索者の顔面へ体当たりする。
体当たりされた探索者は耐久1ポイント減少され、その結果本が喋ったのだと気付かされる。

本が喋るなどというあり得ない現象に対して、探索者は(0/1)の正気度喪失が発生する。
魔導書に対して、燃やしたり破ったりなど危害を加えようとすると、
『愚か者が! 身の程を知れ!』と怒鳴って2連続で金ダライを落としてくる。
不意打ちのため《回避》は叶わず、耐久2点減少となる。


▼白異本です
探索者が戸惑おうと、魔導書は構わず自己紹介をする。
『我は由緒正しき魔力を内包せし魔術書である。貴君らは何という名かね?』
自己紹介をするかは自由、なくても構わない。
探索者も質問をしてくるかもしれないが、構わず次の質問をする。唯我独尊である。
因みに、本に対して「ここはどこだ?」や「何でここに居る?」などという質問をすると、
本はすすり泣くような声を出して嘆く。
『知らぬわ。我だって、我だって幼女に囲まれて暮らしたいわい……。』




●妬みチェック
白い本は探索者に対して『汝は愛しき伴侶がいるか?』と問いかける。
1)YESの場合→『リア充め! 滅べ!!』
 「はい」と答えた探索者の頭上から
 『大量の水が流れ落ち、最後に金ダライが落ちてきて見事に頭部にクリーンヒットした!』
 濡れねずみになり、金ダライが直撃した探索者は耐久1点減少。なお魔導書は濡れていない。
 更に魔導書が今後、この探索者には協力してくれなくなる。
 代わりに可愛い幼女(APP11以上)の写真を挟んでやると協力的になるだろう。
 それか納得の行く理由があれば《説得》や《言い包め》で何とかなるかもしれない。
 リア充が複数いる場合『ええい! 貴様もか!!』と同じ現象を起こす。

2)NOの場合→『そうか、ならばせめてここの脱出に我が協力してしんぜよう。』
 魔導書との親密度が上がり、今後はこの探索者には協力的になる。
 全員が非リア充の場合、『悲しい集団よのう……』と呟く。

3)幼女が答える→『うむ、無垢な子供ならば仕方ない。ここの脱出に協力してしんぜよう。』
 魔導書との親密度がかなり上がり、今後はこの幼女にはとても協力的になる。
 全員が幼女ならば、一瞬動揺しつつ白い本がうっすら赤みを帯びているように見える。


 <※KP情報※>
 全員の回答結果によって、白い本の補助が増える可能性がある。
 ここで一人でもリア充であることを知られてしまったならば発生しない。
 (※難易度を上げるならば、このイベントは消してしまって構わない。)

 [効果] ナガアエによる攻撃で探索者が死に直面した時、一度だけ本が救済を与える。
 [条件] リア充が含まれない、幼女と幼女に優しい探索者だけで構成されたメンバー。
 この補助が発生するのは以下の場合だろう。
  1)ナガアエの即死ダメージの攻撃を回避し損ねた
  2)毒を受けてしまい麻痺などで動けなくなった
 本が救済を与える方法はKPに委ねられる。
 例)本が強い発光を起こしてナガアエに目眩ましを行い、数ラウンド時間を稼ぐ。




●魔導書からの警告
上の質問が終わると、魔導書は協力関係が生まれた探索者へ警告をする。
『ここにはあまり長居せぬことだ。』
『あれも起きてしまったようだしな。』

”あれ”とは「ナガアエ」と「シアエガ」両方の事を指している。
移動前に説明を求められたなら、『直ぐに死んでも構わんというなら教えよう』と脅して構わない。
どこに行けばいいのか聞かれたならば『青い扉の奥に出口がある』と答える。

この時点でナガアエは黒い扉の部屋で動き出している。
早く移動しなければ探索者と遭遇してしまうだろう。
行動を開始したナガアエは好き勝手に動く。
なので探索者が移動の際に不用意に黒い扉を開けたならば、ナガアエと遭遇する。

シアエガも天からゆっくりと降り始めており、探索者たちの元へ辿り着くには約1時間はかかる。
シアエガの接近は魔導書が感知しているので、KPは魔導書を通して猶予時間を伝えることが出来る。


 

04:扉と巡回者


●四方の扉
4箇所の扉はどれも分厚くて重く、普通に開くと<小さく軋んだ音>がする。
不用意な開閉は、音でナガアエに気づかれる可能性がある。
静かに開こうと思えば、そう宣言さえすれば可能だ。
開いたままにすることは出来ず、バネの力でゆっくりと閉じていく。
無理にでも開いておくと、ナガアエは嗅ぎつけ、忍び歩きをしてくるだろう。
扉を閉じておけば、ナガアエに探索者たちの匂いを嗅ぎつけられることはない。
防音効果はないため、大きな音を立てればナガアエは勘付き真っ先にやってくる。

扉が閉じていても、長時間同じ部屋に居続けることはできない。
ナガアエはしらみつぶしに部屋にやってきてしまうからだ。
ナガアエ侵入の際は《聞き耳》が必要だろう。
気づかなければ、不意打ちで攻撃される可能性は高い。
或いは誰かが見張っていれば、気づくことはできる。




●部屋にある通路
全ての部屋には、探索者だけが通れる通路がある。
扉から見て左右の壁に通路口が存在し、逃走経路として利用できる。
通路は人間一人が通れる幅しかないため、ナガアエをまいて隣の部屋へ移動可能だ。
ただし、そのまま通り抜けられない通路が2箇所ある。

①青と赤の連絡通路
 赤の部屋に存在する通路口の鉄扉により、一方通行にされている。
 鉄扉は通路側からのみ開き、赤の部屋側からは開かない。
 扉は鉄で頑丈に出来ているため、人間の力ではとても壊す事は出来ない。

②赤と緑の連絡通路
 崩れた瓦礫によって塞がれているため、SIZ10以下の探索者でなければ通れない。
(※参加探索者の状況を見て、通れるSIZの値を変動しても構わない。)




★ナガアエとの遭遇
『悪意で染まった顔が、腐臭を漂わせ、探索者を覗き込んでいた。
 それが顔と呼べるかは定かではない。
 膨らんだ目と、二つに裂けた舌がのぞく特大の口がその大部分を占めているからだ。
 ヒキガエルのような巨体は半透明で、探索者たちの2倍はある。
 脈打つ内蔵が、薄い皮のような皮膚の層で覆われていた。
 カエルの後ろ脚と、鉤爪のついた人間の腕が前脚となって4本ついている。
 前脚をカマキリの如く持ち上げ、でこぼこした腹で這いながらカエルのように前へ飛び跳ねる。
 獲物を求め、巨体が腐臭を撒き散らし揺れる。』
忌まわしい両生類のような怪物を目撃してしまった探索者は(1/1d8)の正気度喪失が発生する。



★「ナガアエ」シアエガの使用人、探索者を狙う巡回者
(参照:キーパーコンパニオンP.90、マレウス・モンストロルムP.85-86)
STR:23   DEX:6   INT:8
CON:32  POW:15  SIZ:26
HP:29   MP:15   回避:12  db:2d6
――――――――――――――――――――――――――
[武器]かぎ爪 60%:4回攻撃 ダメージ 1d6+db
    噛みつき 40%:ダメージ 1d8+毒(POTはナガアエのCONの半分)
[装甲]丈夫な半透明の皮膚による2ポイント
[呪文]なし
[正気度喪失]目撃した場合(1/1d8)
[技能]物音を聞く:60% 静かに這いよる:70% 
    犠牲者の匂いを嗅ぎつける:80%

▼<攻撃手段>
*1ラウンドにつき4回かぎ爪で攻撃
 或いは、2回のかぎ爪攻撃と1回の噛みつき攻撃が行える。

*噛みつきによる毒の効果
 ナガアエのCONの半分の値(端数切り上げ)がPOT値となって影響する。
 この個体の場合はCON32なので、POT16である。
 POT対抗はKPが行う(能動:毒のPOT値、受動:探索者のCON値)
 ・毒の失敗 → POT対抗に犠牲者が勝つ
   犠牲者は弱い幻覚作用を受けるだけで済む。
   [3d10]ラウンドの間、すべての技能値ロールに10%のマイナス補正がかかる。
 ・毒の成功 → POT対抗で毒性が勝つ
   犠牲者は[1d10]ラウンド以内に死亡する可能性が有る。
   たとえ生き残っても遅効性の効果を受ける可能性もある。


 

05:四方の部屋


――◆青い扉の部屋◆――
白い部屋と同じく燭台が浮かんでおり、一番奥の壁は巨大な石版となっている。
石版には<サンゴのような形をした記号>が記されている。

《知識》に成功すれば<探索者たちが知り得るどの言語にも当てはまらない>と分かる。
《オカルト》に成功すれば<イースター島で発見された謎の板に、これと似たような文字が記されていた>と思い出す。
クトゥルフ神話》に成功すれば<人間以外の冒涜的な種族が操る言語である>と分かってしまう。
クトゥルフ神話の情報を入手してしまった探索者は(0/1)の正気度喪失が発生する。

<白い本による石版情報>
白い本が石版を見ると、次のような事を言う。
『堅牢たる封印を打ち破りて 光の地へと招来せし言葉──とある。』
『この後に続いている開く言葉とやらは、貴君らへ伝えられる発声音をしていない。』
『我ならば唱えることも叶うだろう。』
『だが呪文だけでなく、相応の力がなければ言葉も意味を成さないようだ。』
『最後にはこう書かれておる。』
『留意せよ 封印は一度限りである……とな。』

もし白い本へ他に脱出路が無いかを聞かれたならば
『ここ以外の出口は知らんな』と答える。


 <※KP情報※>
 石版に記されているのはルルイエ文字だ。
 白い本ならばこの文字を読むことができ、石版を調べる探索者に要点だけ伝える。
 石版の相応の力とは、緑の扉の部屋にある【緑の結晶体】が該当する。
 封印はこの空間にシアエガを閉じ込めていることを示す。
 白い本が示した情報の通りに、石版の解放を行った場合はバッドエンドとなる。




――◆赤い扉の部屋◆――
白い部屋と同じく燭台が浮かんでおり、奥に本棚が鎮座している。
本棚は奥の壁に面した3架、手前に2架で合計5架ある。
正面から見ると色鮮やかな背表紙の本がグラデーションとなって収められている。
________
[青] [赤] [緑]

  [紫]  [黄]

―――扉側―――

どの本を手にとって開いても、探索者が読めそうな本はない。石版と同じ解読不能な文章の羅列ばかりだ。
もし魔導書に読んでほしいと頼むと『時間もないのにこれを全部読めと言うのか』と文句を言う。
しつこければ「地球上の有史以前のクトゥルフ神話(参照:ルルブP.119)」でも長ったらしく語ろう。
付随して正気度喪失と《クトゥルフ神話》を与え、時間を進めてナガアエと遭遇させても構わない。


▼書架裏の一文
《目星》か時間をかけて探すことで<紫の本棚の後ろにある一文>に気づく。
ルルイエ文字で書かれており、白い本へ見せれば読んでくれる。
『紫の道で明かりを砕け さすれば光の地へ導かれん』

《知識》に成功すると<紫は赤と青を混ぜると出来る色>だと考える。
絵画系の《芸術》持ちであれば、判定せずに自動成功として良い。
紫の道について白い本へ聞いても、わからないと答える。


▼紫の道
青と赤の部屋を繋ぐ連絡通路が、紫の道である。
この通路の突き当りを《目星》するか、時間をかけてよく見ると
<床に不思議な記号で取り囲まれた円が描かれている>と気づく。
円の周囲には何かをぶつけた傷と、破片が床に散らばっている。
破片に光を照らして見たならば<薄っすらと紫色をしている>と分かる。

 <※KP情報※>
 探索者が無事に生還できる唯一の脱出路である。
 隠し穴を開くには、【紫の結晶体】を発光している間に特定の場所へ叩きつけ砕く必要がある。
場所は紫の道(赤と青の部屋を繋ぐ通路)に描かれた円の中心だ。
もし【緑の結晶体】を使った場合は、膨大すぎる力の過負荷に耐え切れずに紫電が流れて探索者を襲う。
紫電を受けてしまった探索者は、耐久2ポイント減少と(1d6)分間は行動が出来なくなってしまう。





――◆緑の扉の部屋◆――
薄暗い室内で、至る所に【紫の結晶体】が生えている。
【紫の結晶体】は発光しており、人の力でも簡単に折ることが出来るが。
しかし手折った水晶の光は、数分で失われてしまう。

 <※KP情報※>
 紫の結晶体にはMPが内包されている。
 折れれると断面部分からみるみる流れ出てしまい、同時に光も失せていく。
 もし紫の結晶体を持ち運ぶならば、[1D6+2]分間程度しか保たない。

この部屋で《目星》に成功すると
<【緑色の結晶体】が生えているのでなく、地面に転がっている>と気づく。
【緑色の結晶体】はイガ状(例えるならドリアンのような表面)をしている。
発光しており、触れると冷たすぎてとても素手では触れない。

 <※KP情報※>
 この緑の結晶体には大量のMPが付与されている。
 ひどく脆く、強く握りしめたりうっかり落とすと、容易く砕けて使い物にならなくなる。
 青部屋の石版の道を開くには、この緑の結晶体が必要となる。




――◆黒い扉の部屋◆――
ナガアエの住処であり、発生場所である。
ここへ繋がる連絡通路にいるだけで、鼻が曲がりそうな臭いがするだろう。
室内は暗くジメジメとしており、ひどい腐臭を漂わせた粘着液にまみれている。
床は堆積した粘着物でぬかるんだ土のようになっている。
床の状態から、ここでは探索者の運動関係の行動は全て10%のマイナス補正がかかる。

奥まった角には、堆積物の小山が出来上がっている。
劣化して崩れた骨や、腐蝕した肉がこびりついた死体の山だ。
この光景を目撃した探索者は(0/1d3)の正気度喪失が発生する。

死体の山をよく見ると、両手を握りしめた頭部のない死体が有る。
握りしめられていたのは【腐敗物にまみれた紙】だ。
開いて見ると書き殴られた文章が記されているが、短い文章は汚れで潰れてしまっている。
 <【腐敗物まみれの紙】に書かれた文章>
 『本の××ことを××××ならない』

 <※KP情報※>
 『本の言うことを行ってはならない』が元の文章。


 

06:脱出方法と結末


●結末1:通路の隠し穴からの脱出
紫の通路で、紫の水晶を叩き砕いた場合である。
『結晶が粉々に砕け散り、光が失われる。
 同時に円が紫色に発光し、光は消えること無く輝き続けている。
 光を飲み込みながら、円の内部に真っ黒の穴がパッと開いた。』
もし探索者が円の中に居たならば、そのまま穴の中へ落ちることとなるだろう。

一度穴が開けば[1D6+4]分間は開いたままになる。
時間が経過したならば、再び同じ行為をする必要がある。

穴へ落ちた探索者はやがて意識を失う。
その瞬間『よくやったな』と魔導書の声が聞こえた気がするだろう。
そして──
この空間へ迷い込む前に開いた扉の前で、つまずいた状態で目を覚ます。
周囲に人が居たならば、何もないところで転んだ探索者に声をかけるかもしれない。
探索者は自分が居なくなった間のことを尋ねても、同じ境遇だった人物でなければ不思議がるだけだ。
あの空間で過ごした時間は元の世界では経過しておらず、転んだ一瞬にまで短縮されている。
ただし所持していた結晶体はどれも砕け、魔導書に関しては意思を失ってしまうため、ただの白紙の本となる。

以下、白い本を持ち出さなかった場合。
時間は無かったことにされてはいるが、状態は維持されたままだ。
怪我をしていればそのままであり、持ち帰ったものがあれば持ち越せる。




○クリア報酬
1)シアエガの封印空間からの脱出
  全員にクトゥルフ神話技能が5%与えられる。
  探索者が全員生還したならば(1d6)で正気度回復が行える。


2)意思を持った魔導書を満足させた
  紫の道から脱出した際に、魔導書を持ち出した場合である。
  探索者の耐久や失った所有物は全てもとに戻っている。正気度は戻らない。
  また、魔導書は持ち出せず、ただの白い本が代わりに手元に残る。
  白い本を入手した探索者は(1D3)の正気度回復が行える。





●結末2:時間切れ
1時間経過すると、シアエガが探索者たちの元へ辿り着く。
探索者が通路の中に居たとしても、シアエガは通路の天井──暗闇から触肢を伸ばせる。
逃げ場もなく、以下の現象に襲われる。

『探索者は悪寒を感じて視線を上げる。
 黒く長い大きなヒルのようなものが、壁を伝っているのに気づいた。
 一匹だけではなく、それらは可視できないほど暗い上方から伸びてきている。
 頭上からの威圧的は背筋を逆撫でする。
 人間には耐えきれない畏怖を与える視線を感じ、探索者は真上を見ざるを得なかった。』

『天が二つに分かれ、巨大な一つ目が、じっと見下ろしている。
 天に出来た深い裂け目の間から、闇が染み出し始めている。
 夜よりも暗い闇は粘着質な触肢の塊となって、這い寄り降りてくる。
 頭上には、緑色に輝く目が”いた”
 闇の触肢を延ばし、黒い空を体とした暗闇の瞳が、待ちわびたと降りてきた。』
暗闇で待つものを目撃してしまった探索者は(1d10/1d100)の正気度喪失が発生する。

ここからは探索者の強制死亡RPとなる。
PLにPCが無残に死ぬ瞬間をRPしてもらうことになるだろう。
『探索者は逃げる間も、場所もない。
 闇に浮かぶ目玉から伸ばされた無数の触肢に絡め取られるしかない。
 どれだけもがいても小虫程度にも至らない抵抗だった。
 苦しみ、恐怖し、恐れ、狂いゆく獲物を、
 緑の瞳は喜びを湛えてゆっくりと堪能していった。』





●結末3:石版の封印を解いて脱出
緑の結晶体を所持し、道を開くための呪文を唱えることで封印は解かれる。
緑の結晶体はの使用法は、石版と呪文を唱える魔導書の近くにあれば自然とMPが使用される。

▼呪文が唱え終わるまでのイベント
魔導書が言葉なのかも分からない呪文を唱えきるまでには[1D6+2]ラウンドはかかる。
6ラウンド以上かかる場合は、KPは50%でナガアエが来るかどうかの判定をする。
50%で成功した場合は、[決定済のラウンド数-5]ラウンドの間、探索者は耐えなければならない。
ナガアエは呪文を唱える魔導書は攻撃しない。
白い本の詠唱を止めるならば、探索者が行動するしかないだろう。

魔導書が呪文を唱えきると、以下の現象が起こる。
『白い本の声が止むと緑の結晶体が砕け散り、石版が光り輝き出した。
 光はほんの数秒で消えると、石版の中心にまっすぐ縦の亀裂が走る。
 亀裂の入った石版は自重に耐え切れず、煙をあげて崩れ落ちた。』
『崩れた石版の向こうには、黒く大きな穴が広がっている。
 その穴は壁を、床を、その場に居る探索者をも飲み込み、広がっていった。』
『飲み込まれる瞬間、探索者達は不意に後ろへ意識を引き寄せられた。
 振り返り目に映ったのは、貴方を見つめる巨大な一つ目だった。』


▼封印の外
はじき出されたように転がり落ちた先は、どこかの丘の上だ。
探索者たちの近くには何かの紙切れが落ちており、手に取るとぼろぼろと崩れる。

ここはドイツ西部の片田舎にある小さな村の近くだ。
村の住民たちはシアエガを崇拝するカルト教団「主なる目の従者」である。
シアエガ自身は崇拝されることに興味など無く、ただ解放される日だけを望んでいた。
シアエガはこの丘に護符によって捉えられていたが、探索者たちの行動によりこの封印は解かれてしまった。
護符と石版は連動しており、石版が砕けたことで護符も崩れ落ちている。

一時遅れて、シアエガが愚かな人間たちの頭上に招来される。
『ついさっきまで太陽が照らして周囲が、見る間に暗くなっていく。
 探索者は雨雲でもやって来たのかと空を見上げた。』

『天が二つに分かれ、巨大な一つ目が、じっと見下ろしている。
 天に出来た深い裂け目の間から、闇が染み出し始めている。
 夜よりも暗い闇は粘着質な触肢の塊となって、這い寄り降りてくる。
 頭上には、緑色に輝く目が”いた”
 闇の触肢を延ばし、黒い空を体とした暗闇の瞳が、待ちわびたと降りてきた。』
暗闇で待つものを目撃してしまった探索者は(1d10/1d100)の正気度喪失が発生する。

『おぞましさを体現したような恐ろしき存在は、その巨眼だけでは終わらない。
 腐臭を固めた粘着質のごとき化物が、緑の瞳から生み出されていく。
 あの空間で目撃した怪物が、何体も、何十体も、何百体にもなる勢いで這い出てくる。
 怪物は大量の獲物を見つけると、嬉々とした様子で手当たり次第に奪い合う。
 悲鳴をスパイスに、動物も人間も、引き裂き、噛みちぎり、貪り食らう。』

ここからは探索者の強制死亡RPとなる。
PLにPCが無残に死ぬ瞬間をRPしてもらうことになるだろう。
『探索者は逃げる間も、場所もない。
 闇に浮かぶ目玉から伸ばされた無数の触肢に絡め取られるしかない。
 どれだけもがいても小虫程度にも至らない抵抗だった。
 苦しみ、恐怖し、恐れ、狂いゆく獲物を、
 緑の瞳は喜びを湛えてゆっくりと堪能していった。』

探索者や村が全滅しても、シアエガとナガアエたちの蹂躙は終わらない。
再び封印されるか、何らかの方法で耐久をゼロにされるまで続く。
それまでは、目についた動物の皆殺しが止むことはないだろう。
(シアエガのデータは、ルールブックP.215、或いはマレウス・モンストロルムP.175を参照)


 

07:その他補足や裏話


●魔導書の性格や言動について
元は茶番専用に考えていたシナリオです。
ネタでしかないシナリオ名や、開始時にふざけた質問をしているのはその名残です。


●空間の仕掛けやヒントについて
空間は遠い昔に、深きものが管理していた場所です。
シアエガが外部の者を拉致していると知り、同胞の犠牲を減らすため追加の脱出路を用意しました。
時は流れ、この空間は深きものの管理の手から離れます。
シアエガはどれだけ時を経ようと、飽きること無く犠牲者を空間へ拉致し続けていました。
その中にルルイエ文字を読める稀有な人物がいました。
人物は「主なる目の従者」の一員でもあり、赤い部屋の本棚の書籍から封印しているものを知ります。
本が示した以外の脱出方法を模索しますが、ナガアエの犠牲となってしまいます。
せめてもの足掻きにと、忠告を示した紙を握りしめて息絶えました。
黒い部屋の死体の紙切れはこの人物のものです。



●結晶体について
緑の扉の部屋自体が、シアエガのMPを吸い取り弱らせる効果があります。
結晶体の力の源も、シアエガのMPを吸い取ったものが水晶となって生えたに過ぎません。
緑の結晶体は犠牲者が招き入れられた時だけ、シアエガの意思で生み出されています。
部屋の仕組みを利用して、間接的に封印を解く力を貸していました。
またシアエガの瞳が緑であることから、緑の結晶体は悪い結末に繋がるようにしました。


 

参考・引用(敬称略)


クトゥルフの呼び声クトゥルフ神話TRPG
キーパーコンパニオン改訂新版
マレウス・モンストロルム



***ここまで読んで頂きありがとうございました。***
(2013/11/08) シナリオ製作:kanin(http://kanin-hib.hateblo.jp/)
(2014/09/19) 文章の修正と追加
(2019/03/09) 文章の修正と内容の一部変更
(2021/10/15) データ表記の修正